愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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ムーンライト・ホーリースライム編

オーバーロードの慧眼

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「汝何を感傷的になっている…その様なことを気にしてどうする?我らは強くならねばならぬ…国を手に入れ、勢力を伸ばし、戦力を生み出してこの洞窟を難攻不落に変えていく…そうすることで他のホーリースライム勢力に対抗しえることになる。それとも汝は滅びの道を黙って受け入れるつもりなのか?」

 難しいことを考えるな…お前は欲望に赴くまま、雫を好きなだけ弄び、凌辱し、その欲望を十分に放ちこれまで通りにすればよいのだ…
 前世の記憶が戻ったことによる、常識的な判断…は、正直意味をなさなかった。なぜならここでの理不尽はオレを傷つけるような類のものではなく、俺さえよければ何に問題もないという点だ…前世は全ての判断がオレを地獄に叩き落した。

 理不尽がオレを蹂躙した。

 すべての頑張りが否定される世界だったじゃないか…それに比べてこの世界はどうだ…オレのすべてを受け入れ、何もかも叶えてくれる。何より女性と交わることが、こんなに素晴らしく他人に受け入れてもらえることがこんなに感動し、役に立っているという実感がここまで感じられたことがあるか?
 甲斐=貝=シェルよ、オレよ…オレをすべて受け入れてくれたこの世界をオレが受け入れなくてどうする…

「わかったよ雫…先ずは餌が出来たのだから、釣りをしよう…多様性を持った人間を積極的に一部改造してでも手に入れて、発展と維持、それとは別にモンスターを育てて繁殖し、純粋な戦力として揃えよう…オレ達の覇道を妨げるものは全て打ち砕く…そのための力を手に入れよう」
「我、汝の願いを叶えるべく、今後も従いその要望を叶えよう…」

 そうだよ、これこそがオレが望んだ世界だ。

 ともかく、ネタを仕込んだのだ、マックスを通してギルドの盟主にケルベロス中隊が去ったあとに、調査では発見されなかった別の怪物モンスターが住み着き、尚且つこれまでのギルド活動の中で『報告されたことが無い種類である』ことを強調して、盟主の出陣を願う。

 数日後、当初の目論見通り探検ギルドマスター: ナディア・ウィンドウォーカーが、神速の索敵能力と、マッピング能力を駆使して新種のモンスターの正体とそこまでの洞窟のマッピングを請け負って、マックスのギルド事務所にまで来ていた。頭髪は濃い赤髪で癖っ毛のショートヘア。愛くるしいルックスはそばかすもチャームポイントのボクっ子。
 ホットパンツから伸びる太腿は健康的に美しく、お尻は鍛えて張りがあるがそのボリュームが中々な安産型で締まったウエストから急激に左右に広がっており、そのボディを支える足は全体的にムチムチだ。

「君がウワサのシェル君か…ボクはナディアって言うんだヨロシクね…」
「あ、はい…ウワサって何ですか?ちょっと怖いですね」
「あはは、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ…まあ、運が良すぎるよね…ってくらいかな?…君、いい匂いがするね…」

 その観察眼と索敵能力の高さというのはどうやら本当そうだ…これは罠に落とす前に悟られたら終わりだ…
 マックスがヘタウマな絵を持ち出してナディアに説明する「目撃情報をまとめると…身の丈は人を超え、何本もの頭部を持つヘビの化け物だそうです…」
「ふうん…興味深いね…新種のモンスターって魔獣と違い出現自体極めて稀な話だからね…まあ、先ずはその目撃証言を当てにして私が調査してみるよ。大丈夫ボク一人で挑むほど無鉄砲じゃないんだ…今回はその多頭ヘビの化け物を確認したらすぐに脱出するよ」

「そしたら、今回もシェルが入り口まで案内するのがよさそうですね」
 マックスの提案にナディアも「そうだね、是非お願いするよ」という。
「オレっすか…」ととぼけるけど、どのみちその後の誘導は必要なので、どういう流れでもオレが付き添うようにそもそもマックスと事前に仕込んでいた。

 洞窟の入り口に案内するとナディアは「ふうん…」とだけ言って入り口の様子を伺い、こちらを向いて告げる。

「ねぇ…キミがこの茶番の主なのかな?」

 ゾわっと鳥肌が立つ感覚…「えっと…」と言った時にはオレは後ろに吹っ飛ばされていた。

 かろうじて衝撃吸収の術を使うが、意識が飛ぶ直前だ…木の幹に当たって前のめりに倒れるところに横一線の剣筋が飛んできている。
 ナディアの回し蹴りで飛ばされたと気づいた時にもう頭と胴体がサヨナラする寸前だった。

 だが、オレは前のめりには倒れなかったし、ナディアは横一線の剣を振り切ることは出来なかった。

「うーわ…流石オーバーロード、その実力や慧眼は半端ないっすね…」
「ち、何だこのワイヤーみたいな…さっきまで無かったぞ…」
「スライムの粘鋼糸ねんこうしです…」洞窟の中から雫が現れる。
「我が主を足蹴にするとは…殺していいですか?」「何でだよ…」まあ、彼女がその気なら既にナディアはこの世にいないだろう…

「ナルホド…魔王には強力な参謀がついているわけだ」
 ナディアのセリフに聞き捨てならない内容が含まれている。
「いやいや、ちょっと待ってください…誰が魔王ですか?」

 ナディアは割と呆れた顔で「…ボクはね、無鉄砲とかおっちょこちょいとか言われているんだけど…まあ、そういう面があることを認めなくはないけど…それでもちゃんと派遣先に行く際は、下調べをするんだ。シェル君、君は最初冒険者ですらなかったね?」

 そういえばそうだった…たまたま装備も無いまま落ちた先がスレインの上だった。
「君は生還したが、報告書では何のスキルも持たずに運だけで生き延びた…となっていた。だが、タダの案内人としてケルベロス中隊と同行しただけで、後日から十分な働きをし始める…正直出来すぎだ」
 そんな報告書が上がっていたのか…さては支配される前のマックスか…?

「まあ、その辺り読んでいれば、その後の展開は読めるよ…君はケルベロス中隊を堕としたね…どんな技を使ったのか知らないけどね…実は、ケルベロス中隊のエルト団長にも直接会って話を聞いてきているんだ…彼女は定期的に部下をこちらに寄越しているね?何のために?事後報告?定期監視?」
 動けないはずのナディアの躰が突然消える。

「正解はスパイ報告だ…どっちに?コッチだよな…ケルベロスは王国でも独立愚連隊だ。実力はあるが信用されてない…つまり、そういう訳だ」オレの後ろにいつの間にか回ったナディアが短剣をオレの首に突き付けている。

「まあ、あまり使わないようにしているんだけど…関節外しとか…あっ!」ナディアは間接を外してその束縛を抜けていたのだ。
 だが、オレの身体ごと足元に空いた穴に落下するナディア。

「やはり、ギルド盟主って伊達じゃないんですね…」
 既にそこは入り口から下に延びている洞窟からの縦穴で、そこに落下したのだ。
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