愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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アースライト・ホーリースライム編

破壊文明vs.破壊黒龍

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 敵艦隊の主力は当然ながら揚陸艦隊で、前回ほぼ抵抗が無かった艦隊戦に置いては多くの戦力を割かないと踏んでいたが、今回の戦力で前回と決定的に違うのが、航空戦力の投入であった。

 石炭で飛行機が飛んだ話は聞いたことがないので、既に石油からガソリン等の精錬燃料の技術も入手したと思われる。進化のスピードが尋常ではない。

 航空機による制空権の奪取は地の利を無くしたもの同様で、城塞も城壁もその効果は爆弾の前では発揮出来ない。

 弓で撃ち落とす事など殆ど無理な中、このまま制空権を押さえられたままでは勝ち目がない。
 虎の子の黒曜を出すには時期尚早では?と言う考えもあったが、ここでこのままでは地上の被害がデカすぎる。

「黒曜!」「はい、とーさま!」
 空中に伝説のドラゴンが現れると流石に敵の航空機も想定外だった様で散り散りに散開して逃げ惑う。
 航空母艦から発艦してきた艦載機は十機ほどだが、腹に爆弾を抱えている。
「あの飛んでいる人の乗り物を堕とせるか?」「んーやってみる!」
 飛行機に対して人間が放つ火球程度ではそもそも狙って充てることが難しい…少なくとも訓練していないオレには無理そうだ。自ら飛べる黒曜は追いついて翼を食いちぎると言った肉弾戦で二機ほど堕とせたが、効率が悪い…

「一旦母艦を狙う!」空母を狙い黒曜は飛ぶ。艦砲射撃も対艦対戦を想定していて高高度を飛ぶ黒曜を狙うことは不可能。空母の甲板を大火球で焼き、煙を吐いている煙突の中に火炎放射させるとボイラーが爆発して航行不能になる。

 次に艦隊の旗艦を狙う。
 前回の指令だったヴァレリアは不在の様だ。責任取らされて拘束されてるとか無いと良いが…。
「撃沈する必要はない…艦橋を焼け」「りょーかい」

 少し小さめの火球(と言っても直径3mくらい)で黒曜が旗艦の艦橋を焼くために急降下する。
 甲板に兵士が出てきて必死に重火器で応戦するが、彼女の鱗に弾かれてほぼ意味をなさない…が、オレは合ったら死ぬので、必死に彼女の背中にしがみついて祈る。魔法の防御はシールド魔法で防げるが、鉄の弾はオレが持っている魔法では無効化できない。

 また、残った航空機が必死に銃撃を仕掛けてくる。近づきすぎると黒曜の翼が起す乱気流に巻き込まれて墜落する。
 だが、彼らも必死の抵抗でオレ達の周りを飛び回る。

 …冷静に考えてオレ無謀過ぎたか?と跳弾がかすめた時に思う。
 が、それまでずっと無言で隣に居た雫が言う「汝の事は我が守る…何を恐れようか?」
 丁度その時オレの目の前に弾丸が飛んでくる。だがその音速を超える弾丸よりも早く
 雫の手がオレの前に飛び出してきて、受け止める。
「そうか…まあ、雫は黒曜の母でスレインの化身だもんな…可愛い妻だから忘れてたよ」
「汝…そう言うのは今言うことではない」と頬を染める。

 …というくだらない茶番をやっている内に黒曜が旗艦の艦橋に火球をぶつける。
 すさまじい熱量で鋼鉄で覆われた艦橋が飴細工のように溶けた後に爆発炎上する。
 戦争というのは本当に人の命が数字に置き換わってしまうろくでもない行為だが、男子たるものそこに情熱を持ってしまう悲しい性があるのだとあらためて思い知る。

「黒曜、上昇だ」「りょーかいです、とーさま」反転急上昇する。

「よし、黒曜、下に向けて火球を出力最大で三発。ただし、船には当てるな」
「当てちゃダメなの…むずかしいよ」
「大体で良い」
「はーい」
 黒曜…邪悪に見える巨大なドラゴンが火球を三連続で放つ。
 艦隊の中心に着水し爆発を起こす。
 中には転覆する船もあるが細かいことは気にしない。上手く脱出してくれ…

 風の魔法を使って声を全体に届ける「あーガルバルディ帝国の諸君、旗艦の艦橋は潰した…つまり君たちの艦隊司令は亡くなられた…作戦行動が不可能になった以上、考えずに本国に帰還して頂きたい」

 空気を大きく振動させる増幅魔法、アストリッドから学んだ風魔法の応用だ。
「尚まだ進行し、上陸を試みるというのであれば…容赦はしない」

 十万の大兵力である。統一指揮系統が死んだ場合その指揮系統は逐次下士官に引き継がれ継続される。優秀な士官であれば勝ち目のない戦闘である以上、撤退を判断してくれると良いのだが…
 すると、一つの艦船から白旗が上がる。さらにスピーカーから音声が…
「偉大なるシェル殿…艦隊司令代理ヴァレリア・ストーム大佐です…総力戦として派兵された我らに温情あるお誘い大変感謝します…が、我ら片道の燃料と食料のみを持ちここに挑んでおります…引き返すこと叶いません」

「そうか…では、殲滅だな…」何とも言えない気持ちが押し寄せる。
「黒曜!」「はい、とーさま」旋回して蚊トンボの様な複葉機の残りを追うが、戦艦の艦砲射撃も始まる。
 マリヴェイルの港及び海岸線を護る防壁が崩れ落ちる。地上側で控えるケルベロスをはじめとする兵力は長距離攻撃にはどうにも対抗できない。
 空を制したあと、艦砲射撃を繰り返す戦艦を沈めて回る。砲塔は真上に向けられないので直上からの急降下による火球攻撃で弾薬室もろとも貫き爆破する。自軍を護るためとは言え、こんなに冷静に敵に破壊行為ができるのだと我ながら心が凍って感覚がマヒする…何とも言えない気持ちになる。

 ヴァレリアは敵将ながら、前回の侵攻で抱いた女だ…だが、個別に助けてという余裕も考えも持てず、敵意を向ける相手に対して敵意を返すしかないと割り切り、黒曜にはマナが尽きるまで火球を吐かせて艦隊の半数を葬った。
 少なくとも艦砲射撃の行える戦艦、戦闘艦は全て葬った。

 揚陸艦の一部は接岸し、兵士を送り込んだが待っていたのは鉄魁率いるオーク軍団が質量で圧倒し、潰し蹂躙し、そして食った。重火器による被害もオーク側に少なくなかったが、対人兵器の殺傷力ではその突進を止めることは難しかった。港の周辺が赤い血の海で満たされる。

 黒曜にも「食って良い」と敵兵の捕食を許可した。

 転がる死体の山は雫が素早くスライム化をする処理を行い、地下に集められていく。
 生き残った兵士は敵味方なく、教会で保護し治療させた。
 日を跨がず決着はついた。

 捕虜の内三名の将校が俺の前に連れてこられた。
 ヴァレリア・ストーム大佐
 ライリー・ブラックストーン少佐
 マデリン・アイアンハート参謀長

 何か前回から一人増えてる…まあ、何かしら有効な話が聞ければいいが
「よく無事だったね…ヴァレリア大佐、それと恋人のライリー少佐…それと」
「マデリン参謀長であります…上陸作戦指揮官であります」
「敗軍の将として何か言うことはあるか?」
「何もありません」
 まあ、そう言うよな…

「では、体に聞くとしよう…」ヴァレリア大佐だけは何をされるのか分かっている様で、期待に満ちた目をしている。全く困ったモノである。






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