愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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アースライト・ホーリースライム編

鋼鉄帝国との終戦協定

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 ガルバルディ帝国の使節団が来て、終戦協定の公文書のやり取りが行われた。

 代表同士の署名の前の相互の条件文の交換だが、基本的に侵略戦争を起こしたのは帝国で、負けたのも帝国なので、エルダリア王国が基本的な骨子を提示できる立場にある。

 オレが介入しなければ、一方的な虐殺戦争に成りかねない理不尽な行為に対して、結果負けた帝国が全ての戦争責任を被る形だ。黒曜は表彰ものだ。

 エラリア女王は二度と理不尽な侵略は封じ込めたいとかなりの無茶な要求を突きつけた。流石に全てに合意してサインはできないとして、その場は一度解散になった。
 改めて皇帝含む帝国は代表使節団が来訪し、交渉を持って合意に結びたいと言う話だ。

 評議会メンバーであるブリギッタも当然その場に参加要請があって、想定より早く帰還を命じられた。

 オレも参加者のリストを見せてもらったが、その中には見過ごせない名前もあったため、参加を申し出たが、列席は無理と言われて裏で動くことにする。
 まあ、かしこまった席に座ってるより合っている。

 当日、武装解除した帝国の戦艦に乗船して現れたのは――

 皇帝:アウグスタ・フェルンブラット
 宰相:ルドルフ・クロムヴェル
 将校:ヴァレリア・ストーム
 副官:ライリー・ブラックストーン
 衛兵:ガンツ・シュタルヴァーク

 対する王国のメンバーは

 女王:エラリア・ヴォス
 宰相:セレスト・アルヴィナ
 財務長:リアナ・ゴールドウィン
 軍事長:ブリギッタ・アイアンスピア
 司法長:ミリアム・シルヴァーレイン
 文化長:イゾルデ・ムーンライト
 外務長:フィオナ・スターウィンド

 名前しか知らない評議会全員そろい踏みである。

 場所はエルダリア王宮・光の玉座の間
 天井は水晶ドームで、朝陽が虹色に反射。床は白大理石に金の稲穂模様があしらわれた王国の豊穣を意匠化された装飾で美しい。正面玉座に幼女王エラリアが座る光の座があり、背後にスレインの女神像が置かれている。
 オレと雫はナディアの隠遁スキルを使って少し離れた位置から様子を見守る。
 いざという時に、外には黒曜も待機させている。

 出迎えの警護はシルバーローズ騎士団が正装で迎えたが、建物はケルベロス中隊で包囲している。

「ガルバルディ帝国皇帝アウグスタ・フェルンブラッド御一行到着」
 エラリアは玉座から動かないが、セレスト以下評議会メンバーは形式上立って出迎える。
 巨大で質量のある黒檀のテーブルに相対する様に並び着席する。

 下座に座るガルバルディ帝国皇帝…アウグスタは、銀髪を流してその不機嫌そうな表情を崩さないが、それでもなお美貌で美しい。
 鋭い目つき、赤褐色の瞳…鋼鉄帝国の皇帝かくあるべき…という鉄壁さを持っている。
 ドレスは着用せず、最高指導者は軍事国家の代表であると言わんばかりに軍服に近い制服だ。

 まあ、虎の子の艦隊を潰されて一方的に支配するつもりだったのだろうから、機嫌が良かったらびっくりだが、それにしてももう少し表情抑えられないものなのか…コワイ。

 そして実質の黒幕と言っていいだろう…宰相のルドルフがその横に座る。痩身だが科学者というより昔の歴戦のあまたを潜り抜けた将軍と言えなくもない体格だ。彼もホーリースライムとの融合を果たしているのだろうか?

 ヴェレリアは、散々前線で負けた当事者ではあるがここに連れてこられたということは、もしかしたらオレの顔を見たら知らせなければならない…と言った任務があるのかもしれない…というのも、尋常では無い顔色の悪さだからだ。

「ヴァレリア様?…大丈夫ですか?」エルダリア王国文化長のイゾルデが思わず声を掛けた程である…
「何も問題ありませぬ…心配無用」ルドルフが構わないでくれと制する。

 ライリーも副官として当事者としてこの場に連れてこられたのであろう…彼女も青い顔をしている。
 そして末席にはあの時の男子将校ガンツが居るが…元々体格は良かったと記憶しているが、脚を不自由そうに癖のある歩き方をしている。よく見れば腕も義手になっている。こりゃぁ…と思う。

 セレストが最初に発言を行う。
「では、ガルバルディ帝国はわが国エルダリアに対して、宣戦布告も事前の交渉もなく突然の奇襲に始まり、その後本隊率いての一方的な侵略戦争を仕掛け、少なからずの施設、人員、に被害を及ぼし、結果戦果を挙げずに引き上げるに至った経緯をご説明頂きましょう」

「ガルバルディの侵略はエルダリアの聖なる土を踏みにじった。しかし、月下の女神は赦しをしめす。——条件付きでだ」セレストの言葉に被せてエラリアが玉座からアウグスタに向かって攻める口調で語る。

「赦し? 鋼は折れぬ。屈服はしない。」帝国の皇帝は、尚まだ不遜な態度を崩さない。

 財務長のリアナが要望書を読み上げる。
「帝国領東海岸の領土をエルダリアの領地として査収する」
 ルドルフ・クロムヴェルはこめかみに血管を浮かべて反論する。
「待て。東海岸は工業都市だ。港もある…査収されれば我らは外海に出ること叶わず、漁業も成り立たぬ。そもそも農業国家に工業都市は運営できると思うか?」

 ブリギッタ・アイアンスピアは軍事長として発言する。
「工場? 貴国が戦争機械を量産した場所だ。解体が条件。」
 ルドルフは反論する「工業こそわが国がよって立つ根幹だ…我らの手足を奪う気か?」
「お前たちは手足ではなく武器を作り、殺戮の兵器を作っているではないか」
「我らは戦争だけをするために機械を作っていない」
 こちらに無い科学技術で何を作っているのかとか精査は難しい。オレの元いた世界だって部品見て兵器か車の部品かなんて少なくとも俺には見分けは付かない…だが、今後の監視と制作物の精査は必要だよな…

 リアナ代替案を提示する。
「では、賠償金年間5,000万金貨。乳製品で払え。貴国の乳牛は健在だろう。」

「乳製品? 屈辱だ。工業製品で代替を。」

 エラリアが口を開く。
「主等の侵攻で港は荒れ、商船は沈み城壁が崩壊し守備隊の多くが命を失った…その者たちはもう帰らん」
 幼王女に涙が浮かぶ。だが、直ぐに冷静な見下す顔をする。明らかな劇場的な演技だ。

「お前たちは資源の枯渇を自覚し、それでも工業製品…武器の生産をやめずに作り続け、我らの土地にソレ求めたのであろう?その料金を払ってもらおう…」

「我等は対価を支払う資源の提供を受けていない」
 アウグスタは不遜を崩さない。

「お前たちが一方的に我が国に攻め入って置いて、奪うことを失敗してどういう了見だ!お前達は今や戦争犯罪を裁かれる立場ぞ!」
 ブリギッタが激昂する。

「我等は敗れておらぬ!」
 アウグスタが机を叩く。
 それを合図に末席のガンツが義手をスライドさせるとと小型拳銃がニ丁飛び出す。
 ヴァレリアとライリーが手に取り「お覚悟!」とエラリアを狙う。セレストが庇おうと席から飛び出す。
 だが、引き金を引くより早くブリギッタが抜刀し、二人の腕を斬り飛ばす。
 ソレを冷静に眉ひとつ動かさないで傍観しているルドルフが懐から小さなボタン付きの機械を取り出す。

オレは隠遁を解いて突進する。

 そのボタンをルドルフはニヤリと笑いながら、カチリと押す……
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