愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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アースライト・ホーリースライム編

孤独と機械と人の肌

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 雫のピンチに狼狽えるオレ。

「まあ、焦るな…シェル様。目の前にいる二人が本来の職業が何か忘れましたか?」
「…オレの恋人」
「……それは…嬉しいけど…違います」強気のレイラがデレるだけでちょっとほっこりする。
「んもー冗談はその辺にして、私もレイラも冒険者ギルドの元盟主なんだよ?」ナディアが私を誰だと思っている…と言う。

「…わかった、二人に依頼しよう」
「フフ、頼られて嬉しいよ…分かっているよルドルフの身柄を確保して」ナディアが笑う
「アースライトホーリースライムの本体制圧しそこからマナを得られれば…」
「そうだな、理解が早くて嬉しいよ…よろしく頼む」

「「成功したら…」」レイラとナディアの視線を一身に受ける。
「何でもするよ」「約束だよ」

 ブリギッタは「私もとりあえず、ルドルフの居場所をを探りましょう…正面から交渉してみます」
「すまない…頼む」
「まあ、溶け合うまで肌を重ねた仲ではありませんか…お任せを」

 彼女たちを派遣し、宿舎で雫を休ませる。
「我はしばらくは大丈夫だ…汝そんな顔をするな…」
 彼女が心配なのもそうだが、彼女なしには何も出来ないと思える自分が情けなくて怖かったのだ…

 いかなる時にどんな女性と肉体を重ねても、常に雫はオレに寄り添い、全てを受け入れ肯定し後押ししてくれていた。
 その繋がりを否定するものでは無いし、今も感じる。だが、その繋がりは細くなり弱くなり、そしていつ途切れるのか?と言う恐ろしさが、ジワジワと心を騒つかせる。

 最近いささかマヒし始めていた感覚。
 その恐怖の名前は【孤独】

 異国の文化の土地で味方の信用度も分からない、実戦で試した事もない様々なスキルもどう活かせばいいかピンと来ていない。
 欲望に任せて女を抱き、肉体と精神の支配を雫の力を借りて行ってきただけのオレ。

 ふと転生前を思い出す。
 IT土方と言われるシステムエンジニアで、プログラマーとして社内のシステムを一斉に管理し、上司の無茶な要求に対応し、大して能力も無い口先だけで数字を持って居る営業の同僚に馬鹿にされて忸怩じくじたる思いをしていたオレが、今のこの立場になって初めてその立場に依存し、甘えていたのか…

 宿舎に取り残されたオレは孤独に蝕まられる。

 ふと起き上がった雫が寄り添う。
「汝の恐怖、今の我には分からない」
 その一言に心が凍る。雫に見捨てられたらオレは生きていけない。
「だが、我は汝を見捨てない。だから恐れるな…」
 その優しい笑顔はオレを安心させたくて無理をして居ることが、繋がりが薄くても分かる。

 悲しくも無いのに涙が溢れる。
 ソレを掬う雫の指。

 
 誰が?オレが?
 オレの顔を覗き込む雫の美しく優しい笑顔。
 彼女はスレインの分身だが、受肉した人間でもある。不安も状況も同じだ。むしろ、オレをソレでも守ろうとしてくれて居る。

 コレで何が男性社会の復権か?
 雫に向かって笑う。
「ありがとう。いつも支えてくれて……余り口に出すのは苦手なんだけど…愛している」
 雫は少し驚いた顔をしてソレから涙を浮かべながら花の様に笑う。

「初めてその言葉を聞いたが…思っていたより我の心に響くな……もう一度」
 えっ?!いゃあ…と困っていると、不意に雫からキスをされた。貪欲な体を求める欲情のキスでは無い。感謝と愛情のキスだ。

 コンコン

 部屋の扉がノックされる。
 誰が来たかも分からない。
 慎重になりながらも声を落ち着かせる。
「どちら様ですか?」

「ガンツです、シェル様ですね。少しよろしいでしょうか?」
 見知った、しかも男なら問題ないとホッとする。
 だからと言って帝国の人間だ一応取り繕ってから応じる。
「どうぞ」

 扉を開けて入ってきたのは、ガンツを従えた人民潤滑省とか言うふざけた名称の総帥だったか…「ロザリンド・ヴェルクマイスターだ。シェル殿」

 普段なら飛んで火に入る夏の虫…と言いたいところだが…今はそんな状況ではない。
「かような末端の使節員の私に何かご用でしょうか?」

 ガンツもそのつもりで気を利かせて連れてきて様だが、タダならぬ気配を察知して言う。
「ロザリンド卿は帝国と王国の文化交流に感して興味をお持ちで、直接お話しされたいと…」
「もう良い、ガンツ・シュタルバーグ。ココからは私が引き継ぐ…シェル・ヴォス殿。率直に伺おう……」

 ロザリンドは鋭い目つきを向けてオレと雫しかいないことを確認すると切り出した。
「シェル殿は宰相補佐官で外交担当と…聞いておりますが、本来エルダリア王国の外交担当はフィオナ・スターウィンド女史と当方は把握している。何ゆえに宰相の腰巾着こしぎんちゃくがノコノコと出てきているのか?」
片目の機械の眼帯がガチガチと動いている。鉄と油の匂いがする。
その残った左目の視線は差すように冷たい。

「初対面の御仁から、そこまでの言いようを聞くのは少々驚きますな…詳細の自己紹介や今後の両国のやり取りに関しては明日以降の協議をもって行われると理解しておりますが?」ドキドキと早鐘の様に打つオレの心臓。独特の緊張感……汗が服の中の背中を伝う。だが、ここで引いたり狼狽えたりは出来ない…

「ふふ…今日はご挨拶に伺っただけである。オスの高級将校と聞くからどんなものか…と思いましたが。前哨戦と全艦隊出撃時…あのヴァレリア・アイゼンハウアーが二度も戦を仕掛けて敗退するなど、この世界にあってあり得ないこと。しかも、帰ってきたら…あんな…」クールな顔が少しだけ歪む。

「あのような脆さをもって逃げ帰る羽目になった原因が…王国の…魔王だと…にわかには信じがたいと思っていた!だが、今確信した…私の思い違いだった様だ。ヴァレリアは…彼女は強い…お前の化けの皮を剥いでやる」

随分な言われようだ…にしても…意外だったのはヴァレリアは意外と人気なのだな…強い帝国の象徴だったからだろうか…いや、……あの微妙な反応は、さてはヴァレリアとヤっているな…副官のライリーとだけでなく…まあ、あまり他人のこと言えないが。

「何でしたら、今…剥いで貰っても構いません…ロザリンド人民潤滑省総帥」
「ふ…ふふふ…安い挑発に乗ってしまうのは…些か余裕がないのではありませんか?」
「何?!」

「いいえ…確かにあなたの高いアレの能力はヴァレリアから聞き及んでいます…が、ここでは私は未だ何も感じておりません。たしか…強いフェロモンがあなたからは出ているとか…」
どこまで掴んでいるのか…分からないが…まあ、ヴァレリア色々聞いているのだろう。

「そこまで言うのでしたら…」底なしの魅了という訳には行かないが、温存しようとしていたフェロモンの発揮をおこなう。
「ほう…なるほど…ふふふ…ヴァレリアと同じ匂いがするな…成分も同じか…お前の体質を解剖で解析して人工的にこの芳香を独占したら我が党で世界征服に近づきそうだ…」
そう言うと、懐から簡易的なマスクを取り出し口元を隠してしまう。

「分かっていて何の備えも無しにノコノコとお前の前に出てくるとでも思ったか…」
勝ち誇るロザリンドは、マスクで口元は見えないが眼帯と反対側の左目が狂喜に歪む。

これは…ちょっと挑発は失敗だったか…?
「まあ、そんなに単純な話ではないことを証明して差し上げます」
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