愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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サンライト・ホーリースライム編

七人の侍・血風録

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 ケルベロス聖騎士団団長エルフェルトはオレが女性の扱いも雫以外よく分かって居ない頃に抱いた思い出深い人物だ。
 隻眼だった彼女に新しく与えたその眼は赤外線を捉える特殊な爬虫類の目だ。

 オレ達が彼女達に追い付いたのは良かったが、エルトはガウェインの砦に掲げられた首級を見ての乱れはオレとは比にならなかった。

 まぁ、無理もない…長年連れ添った仲間なのだ。

 陣形を組むケルベロスその中心に立つエルト。

 砦からサムライの棟梁が出て来て立つ
それがしジパングより参りしサムライ棟梁カンベイと申す者。そこに立ちし女人がこの国を代表する武人であるか?」

「我名はエルフェルト・フォン・アイデンブルグ。エリダリア王国騎士団ケルベロスの団長也。我同胞の惨たらしい遺体を回収させて頂きたい」
「我等は仕来りとして、強者の首級を誉とする。返して欲しくば、力を見せよ!」

「最強を出せと所望だったな…」
「待て!エルト!」オレがエルトの前に立ち塞がるより先に騎馬先遣隊十八名を連れて突貫する。
「敵七人、各個二騎にて分断撃破!カンベイ名乗った棟梁は私とクラリス副長で叩くぞ!
 敵は砦右手に二人、中央二人、左手二人だ!」

「ほう、我等の配置を読むか…気配は消しているはずだが」
 馬上のエルトの剣がカンベイの顔面を捉えるが、霞の様に消えてしまう。
「エルト団長!」クラリスがエルトを突き飛ばす…その瞬間に彼女の鎧を無数の太刀が刺し貫く。
「クラリス副長!」騎馬から落ちながらクラリスが切り裂かれるのを見る。

 右翼に回る索敵のエラ、熟練のオルデン、若手剣士のリース、弓兵ライナは…エラが位置を把握し、ライナが弓を撃ち牽制をして老練オルデンと新人リースが突撃する。
 応じるのは強面のガタイの身幅の広いゴツい大太刀持ちの男と、軽装の女。「シチロジ!」「サユリ!問題ない!」オルデンとリースの王国最強の連携攻撃を受け切る。
 直後リースの懐に滑り込んで来た匕首を鎧の脇の隙間に滑り込ませる。
 切り裂く間も無くオルデンがサユリと呼ばれた女を殴り倒す。
 リースが失血で力抜けて倒れ込み、殴った衝撃でオルデンがバランスを崩した処をシチロジの大太刀が肩口から袈裟斬りに掛ける…両断するには到らずとも致命傷である。
 だが、オルデンは長きを戦場で過ごした兵であった。致命傷を悟って太刀が抜けぬところをそのままに片腕一本でシチロジの首を斬りつける。
 勿論首を落とすには至らないが、頸動脈に達し致命傷である。
「見事也…」首を抑えて力無く膝を着くシチロジの感嘆を聞くことなくオルデンは絶命している。
 リースも倒れて起き上がること無く死亡。サユリの一撃はあばらを通り肺を貫通して心臓迄達していた。
 殴り倒されたサユリと呼ばれた女性はエラが抑え込む。

 正面のカンベイを迂回して背後の壁に潜む二名には、豪腕のギルダ、熱血先鋒のレオナ、防壁のワレリア、神速二刀のフィーナが向かう。
 立ち向かうは2メートル近い巨漢の斧を武器にした、毛皮のミノを身に着けた大男と、細身で軽装な、細身の太刀を構える目つき鋭い剣士。
「取った!」レオナが巨漢の足元に滑り込み股関節に斬り込む…内腿の大静脈を斬ってしまえば致命傷だ。だが、鈍重そうに見えたその男はスルリとその剣を飛び越すように跨いで躱し、後から追撃に来たギルダの大槌を斧で受け止める。
 躱されたレオナは即座に切り替えて、もう一人の細身の剣士に起き上がりながら刺突一閃。
「乱雑な攻めだな…」細身の太刀が、剣をいなして流し入り身でレオナの小手の内側隙間から手首の健を斬る。ニヤリと笑う細身の男。だが「ヘイハチ!後…!」巨漢が横目で見て叫ぶが、フィーナの二刀が後方上部から襲い掛かる。
 ヘイハチと呼ばれた細身の太刀が飛んでくるフィーナを迎撃するが、フィーナは片方の剣でソレを受けながら反対側の剣で斬り込む。
 ヘイハチは躱そうとしたが小手を切られたレオナがそのまま組み付く!一瞬の膠着が致命傷で首を斬られて倒される。
 斧の巨漢はギルダを巻き取るように崩して後に投げ飛ばしフィーナの着地点にぶつけて二人が折り重なって倒れたところに斧を振り下ろす。ギルダは起き上がるのを捨てて振り向きざまに大槌を横薙ぎに振り回す。
 大男の脇腹にヒットするが斧は止まらずギルダの鎧ごと腹部を貫通、そのまま下に重なっていたフィーナのところに届く直前に後方からワレリアが渾身のチャージアタックで吹き飛ばす。
 飛んだ先で利き手が使えないレオナが懐剣で迎撃。
 脾腹、鳩尾、首筋を切裂く。だが巨漢の男は絶命せず片手でレオナの頭を鷲掴みすると「女であるがこのキュウゾ容赦せん…」と言って壁に叩きつける。
 力任せの必殺の一撃。顔面が砕け頭蓋が割れる…二撃目で即死…だがその前にフィーナの二刀がその頑丈な腕の脇を斬り裂いて居る。

 左翼はベテランオスカー、双剣ケイト、剛剣ゴッドフレア、弩弓ルビーが見張台のトーチカに潜む二名を追込む。
  精悍な顔つきの大太刀を持った男が、粗雑な衣装で四人を待ち構える。筋骨隆々の姿は鍛えられた力強さを感じ、只の無謀な戦士ではないことが一見して分かる。
 ルビーが弩弓で狙うと何処からとも無く石礫が襲来し、騎乗していた馬が倒される。落馬しながら冷静に礫の飛んできた方向に矢を飛ばす。手応えはない…移動しながら攻撃いている。
 次矢装填の為に立ち止まるのはこの開けた場所では厳しい…
 移動しながら敵の動きを探る。
 一方大太刀を振り回す男はその間合いの広さから近付き難い。その上石礫が四方から飛んでくる。
 敵は二人のはず…
「ケイト!ルビーと二人で石礫の方を!ゴッドフレア、私とこの狂剣士をやるぞ!」
「狂犬じゃあねえ、狼獣人ワーウルフさ…このキクチヨ様を舐めるなや?!」
 そう言うと全身が獣毛に覆われていく。大太刀を担いで構え、突進斬撃を繰り出す。
「豪腕自慢結構!」オスカーが短刀を投擲。腕部に刺さるが、ものともせずに突進するキクチヨ。
 低い姿勢から斬り上げる大太刀の刃筋をオスカーは剣の側面に沿わせていなし、返す剣で身体ごと回して後ろに回り込む。
 いなされて前につんのめるキクチヨの体勢にジャンプして上から斬ると言うより撲殺せんとする剛剣を振り下ろすゴッドフレア。だがキクチヨは想定より早くその一撃は掠るだけ。床の石畳が砕けて土埃が舞う。
 周囲が霞む中すかさず二刀三刀の短剣を投げつけるオスカー。狙ってなどいない。
 煙の中から飛び出すキクチヨ横薙ぎに大太刀が振り回されるが威力は弱い受けきれると剣を構えるオスカーだが、その後頭部を石礫が直撃する。一瞬意識が飛ぶところにキクチヨの大太刀が到達。
 剣で防御は出来るが受けられない。そのまま壁に叩きつけられる。
 叩きつけたキクチヨの後からゴッドフレアが剛剣で胴を薙ぎ払う…肋と背骨が砕ける音がしてキクチヨも壁に叩き付けられる。
 直ぐ様石礫が襲来するがそのまま剛剣で防ぐ。
 キクチヨ援護に気を取られた男の肩に弩弓の矢が突き立つ。見張台に上がっていた所をそこにケイトが双剣で斬りかかる。スリリングショットの紐が鎖で編まれてて鞭のように襲い掛かって来てケイトは近づけない。
 だが、その時間で弩弓次矢装填に十分な時間だった。腹部に一発。ヘッドショットは狙わない。動きを止めれば良い。
 ケイトがとどめを刺す。

 ほんのか僅かな時間で双方に甚大な被害が出る。
 オレは瞬きする間に起きたこの斬り合いに戦慄する。ここは戦場なのだ…!
「うわぁあああ!」オレは硬直から解けるやいなや突進していた。ラカスタ達が人の姿を捨ててそれより早く前に出る…!

「ほう、貴国にも獣の戦士がおるか…」
 きり刻まれて朦朧とするエルトの前に立ち悠然と構えるカンベイ。
 黒豹のカイラが槍さばきで追込むが動きに余裕が有る。タイガがエルトを抱えると離脱するに合わせてカイラも離脱する。
「アストリッド!治癒を!」
 カイラが戻って瀕死のエルトを横たえると再び戦場に戻る。

 オレの横には、雫とカイラが控えた状態で
 オレはカンベイと向き合う。

 灰色のローブを纏い、額に古代のルーンが刻まれた鉢金を着用。白髪混じりの長髪で、冷静沈着な中年男性風。片目を輝く魔晶石で補っている。

「お前がエルフ?」どう見てもただの人間だが一応尋ねる。

「ソレがしはサムライの末裔カンベイと申す。主のタダならぬ妖気…『月下の雫』の手の者か?」

「シェル・ヴォスだ。月下の雫の共鳴者だ」
「ほう…大将が早くもお出ましか…僥倖」

「お前はサンライト・ホーリースライムの共鳴者か?」
「拙者は…」
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