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サンライト・ホーリースライム編
正義のミカタ
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味方陣地に戻ると、休戦状態の前線は騎士も魔法使いも、オークもオーガもリザードマン達も皆消耗したのか、折り重なるように休息し、中には寝ているものも少なくない。
ケルベロスの斥候リーダーのエラ・モーガンがオレのところに来て告げる。
「シェル様…エルト団長が…」
天幕に慌てて駆けつけると、充血した目で譫言を語るエルトが寝かされていた。
ケルベロス従軍医師マルーラ・グレイヴスが引き継ぐ。「エルフェルト様は、何度かケガをされながらも前線を駆け回り、そしてその都度あの波動…癒しのあの光です…に当たっては回復し、だいぶハイになられていました。そして今日の前線であの波動を受けた際、倒れられ、そして立ち上がることが叶いませんでした」
「死んではいないようだが…コレは…確か最初に喰らった際にも周囲が急に殺意を無くして…と言っていたな」
「はい、シェル様さすがのご慧眼…あの癒しの波動なる急激な治癒は、最初は一瞬意識が飛んで、攻撃性が堕ちる程度でした。しかし、今日になってからの治癒はそのまま受けた者が廃人になってしまっています」
「おい、エルト…」
「あはっ…うは…」
近くに居た雫と顔を合わせる。
すると、今度は鉄魁が駆け込んでくる。
「あっシェル様!…雫姉様も…良かった、いや良くないのだが…娘たちが!」
最早良い話が聞けるようなイメージはない
「鉄平、鉄心が意識が…」
オーガのシンが二人を抱えて戻る。シンも怪我をしてあの波動を受けているはずだが、巨漢が幸いしているのかあまり印象は変わらない。
先ずはエルトだ…前回も意識を飛ばしていたが、今回は混乱さえ見受けられた。
口づけをして意識に潜ってみる。
リュミエラの中で遭遇したあの暗闇が彼女の心を包んで閉塞していた。
それでも彼女ほどの深い闇ではない…手を差し伸べてエルトの意識を引っ張り上げる。
「はっ!!…シェル殿下!……またしても…騎士として恥じ入ります」
「いや、気にするな…」
3m近い巨体の鉄平と鉄心の赤青鬼にも躊躇せずに口づけをして意識の深層に潜る。
立派になったな…いろんな意味で…彼女たちとは肉体的な繋がりがないが、血縁がないわけではないので、何とか真相までたどり着いて闇から救い出す。
「魔族の意志を持っているものはそこまでのダメージを食らっていませんが、純粋な人間は廃人に近い状況です…」
ブリギッタは状況を冷静に分析して報告してくる。
………アルヴァの示したあの無慈悲な相方の処刑…恐ろしいことにオレは理解し始めていた。
だが、それを認めたくはなかった…認められないと思った。
「雫…オレは単騎でもう一度アルヴァと戦わなければならないと思う」
「汝が叶う相手ではないことを先刻理解してると思うが?」
残酷な事実を平然と言う雫。だが、それはその通りだ。再生してもらった腕はすでに意識しなければ気づかないほど違和感はない…だが、意識してしまえばそこで感じる感触に前と同じということは無い。
「……あいつは正しいと思うか?」
「汝の疑問には意味がない…もし、アルヴァなるサンライト・ホーリースライムの代表が、正解を知って世界を統べているなら何ゆえに我等は四つに分かれてせめぎ合うのか…この争いと覇権を掴む戦いは、正義と悪などと言う汝の価値観を問うものではない…最後にホーリースライムを統べた者が正しいものなのだ」
「聞き方を間違えた…かな」
オレはオレの自分の生き方を否定されることはあるだろうという覚悟はある。だが、オレに関わった人を不幸にしたいとは思っていない。エルフは大自然と共にあり、世界を統べる大地の願いを聞き届ける種族ではないかと考えていた。長い年月を生きる術を知らない人類には及ばぬ叡智に至った達観した視点で物事を見ているのかと…あの澄ました切れ長の目、立派な体格スキのない所作にオレは無力を感じてしまっていて、リュミエラの処刑の意味を探ろうとしてしまっていた。
現に、リュミエラの全方位の治癒は傷の治療とは別に歪んだ余波をまき散らし始めていた。
リュミエラは殺されるべくして殺されるに至ってしまっていたのかもしれないとも考えた。
オレは迷っていた。
いやもっと正直に言おう…ビビっていた。奴の前に立って分かった…全く完璧に歯が立たない。
実際感情に任せたオレの剣は腕ごと斬り落とされてしまった。
次奴の前に立って、オレはまともな会話刷らせ率しないのではないかと言うほど敗北感を感じてしまっていた。
リュミエラの中で見た、世界で一番水圧の高い海溝の日の光の届かない深海の中の暗闇に圧縮されるほどの悪夢を作り出した張本人がアルヴァだった。
オレは片割れを掬って排除すれば、アルヴァの戦力を、あわよくば半減させて少しでも有利になろうと考えていた。
全然甘かった。
それを雫は指摘しているのだ。奴に弱点などないのだ。
奴の弱みを握るのではなく、オレの強みを生かさなければ、筋を通しきらなければならないという事なのだ。
よし、最期だ。
オレは決意を固めて、エラリアに声を掛けた。
ケルベロスの斥候リーダーのエラ・モーガンがオレのところに来て告げる。
「シェル様…エルト団長が…」
天幕に慌てて駆けつけると、充血した目で譫言を語るエルトが寝かされていた。
ケルベロス従軍医師マルーラ・グレイヴスが引き継ぐ。「エルフェルト様は、何度かケガをされながらも前線を駆け回り、そしてその都度あの波動…癒しのあの光です…に当たっては回復し、だいぶハイになられていました。そして今日の前線であの波動を受けた際、倒れられ、そして立ち上がることが叶いませんでした」
「死んではいないようだが…コレは…確か最初に喰らった際にも周囲が急に殺意を無くして…と言っていたな」
「はい、シェル様さすがのご慧眼…あの癒しの波動なる急激な治癒は、最初は一瞬意識が飛んで、攻撃性が堕ちる程度でした。しかし、今日になってからの治癒はそのまま受けた者が廃人になってしまっています」
「おい、エルト…」
「あはっ…うは…」
近くに居た雫と顔を合わせる。
すると、今度は鉄魁が駆け込んでくる。
「あっシェル様!…雫姉様も…良かった、いや良くないのだが…娘たちが!」
最早良い話が聞けるようなイメージはない
「鉄平、鉄心が意識が…」
オーガのシンが二人を抱えて戻る。シンも怪我をしてあの波動を受けているはずだが、巨漢が幸いしているのかあまり印象は変わらない。
先ずはエルトだ…前回も意識を飛ばしていたが、今回は混乱さえ見受けられた。
口づけをして意識に潜ってみる。
リュミエラの中で遭遇したあの暗闇が彼女の心を包んで閉塞していた。
それでも彼女ほどの深い闇ではない…手を差し伸べてエルトの意識を引っ張り上げる。
「はっ!!…シェル殿下!……またしても…騎士として恥じ入ります」
「いや、気にするな…」
3m近い巨体の鉄平と鉄心の赤青鬼にも躊躇せずに口づけをして意識の深層に潜る。
立派になったな…いろんな意味で…彼女たちとは肉体的な繋がりがないが、血縁がないわけではないので、何とか真相までたどり着いて闇から救い出す。
「魔族の意志を持っているものはそこまでのダメージを食らっていませんが、純粋な人間は廃人に近い状況です…」
ブリギッタは状況を冷静に分析して報告してくる。
………アルヴァの示したあの無慈悲な相方の処刑…恐ろしいことにオレは理解し始めていた。
だが、それを認めたくはなかった…認められないと思った。
「雫…オレは単騎でもう一度アルヴァと戦わなければならないと思う」
「汝が叶う相手ではないことを先刻理解してると思うが?」
残酷な事実を平然と言う雫。だが、それはその通りだ。再生してもらった腕はすでに意識しなければ気づかないほど違和感はない…だが、意識してしまえばそこで感じる感触に前と同じということは無い。
「……あいつは正しいと思うか?」
「汝の疑問には意味がない…もし、アルヴァなるサンライト・ホーリースライムの代表が、正解を知って世界を統べているなら何ゆえに我等は四つに分かれてせめぎ合うのか…この争いと覇権を掴む戦いは、正義と悪などと言う汝の価値観を問うものではない…最後にホーリースライムを統べた者が正しいものなのだ」
「聞き方を間違えた…かな」
オレはオレの自分の生き方を否定されることはあるだろうという覚悟はある。だが、オレに関わった人を不幸にしたいとは思っていない。エルフは大自然と共にあり、世界を統べる大地の願いを聞き届ける種族ではないかと考えていた。長い年月を生きる術を知らない人類には及ばぬ叡智に至った達観した視点で物事を見ているのかと…あの澄ました切れ長の目、立派な体格スキのない所作にオレは無力を感じてしまっていて、リュミエラの処刑の意味を探ろうとしてしまっていた。
現に、リュミエラの全方位の治癒は傷の治療とは別に歪んだ余波をまき散らし始めていた。
リュミエラは殺されるべくして殺されるに至ってしまっていたのかもしれないとも考えた。
オレは迷っていた。
いやもっと正直に言おう…ビビっていた。奴の前に立って分かった…全く完璧に歯が立たない。
実際感情に任せたオレの剣は腕ごと斬り落とされてしまった。
次奴の前に立って、オレはまともな会話刷らせ率しないのではないかと言うほど敗北感を感じてしまっていた。
リュミエラの中で見た、世界で一番水圧の高い海溝の日の光の届かない深海の中の暗闇に圧縮されるほどの悪夢を作り出した張本人がアルヴァだった。
オレは片割れを掬って排除すれば、アルヴァの戦力を、あわよくば半減させて少しでも有利になろうと考えていた。
全然甘かった。
それを雫は指摘しているのだ。奴に弱点などないのだ。
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