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―― 第六章 ――
【第五十話】危機アラート
しおりを挟む入院というのは総じて退屈なものであるが、何かをしようという気力が特に起きない事もあり、誰が見舞いに来るわけでもない病室で、昼斗は窓の外を見ていた。先日、初雪が降った。遠くに見える山の頂きが、薄っすらと白く見える。殺風景な雪化粧をまじまじと眺めた昼斗は、あと何度、己は冬を迎えるのだろうかと漠然と考えた。
様々な事があった十年という歳月だが、一年はいつもあっという間だ。
まだ全身が痛い。だが心が空虚なせいなのか、肉体的な苦痛と心が切り離されているような感覚がしていて、確かに体は痛むのに、奇妙なほど内心は凪いでいた。
その時、サイレンが鳴り響いた。Hoopの飛来を告げる危機アラートだ。
息を飲み、昼斗が顔を上げる。
すると病室の扉が開いて、煙道三月が入ってきた。司令官の姿に、昼斗は姿勢を正す。すると背骨んが軋むように痛んだ。
「太平洋上空にHoopを確認しました。今、瀬是が応戦中ですが、難航しています。意識は清明で眼球に異常はなく、右手も動くと報告を受けていますが、間違いはありませんね?」
三月の瞳は険しい。昼斗は静かに頷いた。
「ああ。いつでも出られる」
「では、格納庫へ」
淡々とそう告げた三月の後ろから、軍人が一人、車いすを運んできた。
事は急を要するのだろうと判断し、昼斗は素直に従う。
格納庫までの道中、軍人は何も話しかけなかったし、昼斗も無言だった。少し前に保が殴り飛ばした軍人だったが、今は不安そうな顔をしている。
到着した格納庫で、昼斗は人型戦略機を見上げた。既に修繕は成されている。
大怪我をしたままではあるが、パイロットスーツに身を包み、昼斗はコクピットへと搬入された。床の上に立っている環は、不安そうな顔をしている。
《人間の体は脆いな》
球体に触れると、そんな声がした。するとコクピットの中に、淡い緑の光が溢れる。
体が軽くなった事に気づき、昼斗は苦笑した。
「お前、もしかして人間の体を楽にできるのか?」
麻酔効果でもあるのだろうかと、昼斗は漠然と考える。
《秘宝の力は、人類の想像力の外にあるのは確かだろうな。ただ、本当に分からん。何故その体で、戦いに出ようとするんだ?》
そうしなければ、大勢が死ぬからだと答えようとしたが、既に多くの人々を見殺しにしてきているからと、昼斗は口を噤んだ。その瞳が暗くなる。
《俺はお前が死ぬのを見たくないぞ》
戦意が鈍るような事を述べる機体の声に苦笑を零してから、昼斗は操縦桿に痛む左手を伸ばす。ギプスで固定されているが、指で握る事は出来る。こうして、思いっきりレバーを引き、昼斗は出撃した。
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