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【三十一】初めて触れる温度Ⅱ
しおりを挟む震えていると、ユーガ殿下が立ち上がった。そして、俺の隣に座り直した。手を伸ばしてきた殿下が、端正な長い指先で、俺の唇に触れ、静かになぞった。
「ゆっくりで良いんだ」
柔和な笑みを浮かべた殿下は、どこか困ったような顔をしていた。
「ネルス殿下の事が知りたい。聞かせて欲しい」
「……っ、俺は最低の罪人で、それで報いを受けて……」
「貴方の罪とは何だ?」
「ミネスを置き去りにした罪人で……その上、俺の体はおかしくて……」
ここに来てから、何度も言い聞かせられた。俺は淫乱なのだと。だがそれを述べる事は出来なかった。どう表現すれば良いのか分からなかったのだ。
「罪は償える。だが、まだ幼かったのだろう? 恐怖に駆られても仕方が無いと俺は思うけどな」
「っ」
「それに、体がおかしくなったというのは……決して貴方のせいではないだろう。触れて分かる。酷い目に遭ったんだな。俺の叔父上の所にいたと耳にし、嫌な予感はしていたが」
「……っ」
「泣きたい時は、泣いていいんだ。誰も、この部屋には、咎める者はいない」
「……」
「ネルス殿下。辛かったな」
その声を聞いた瞬間、俺の双眸から涙が零れた。まるで救われたように、肩から力が抜ける。俺は嗚咽を堪えきれず、片手で唇を覆った。
「逃げようとは思わなかったのか?」
「っ、思った……何度も思った。実際に、俺は逃げた。だけど……だけど……――何も上手くいかなかった」
「そうだったのか。安心して良い。これからは、俺が守ってやる」
「え?」
「だから泣くな。俺は、貴方が気に入った」
ユーガ殿下はそう言うと、優しく俺を抱きしめた。その腕の中で、俺は目を見開く。虚を突かれて、思わず殿下を見上げると、そこには温かな微笑があった。
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