1 / 9
―― 本編 ――
1:三連休(現実)
俺は、自他ともに認めるゲーマーだ。いや、他っていうか、少なくとも妹にはそう認められている。俺はドMゲーというか、SRPGとか、やり込みゲーが好きなのだ。
「お兄ちゃん、お願い」
パンっと音を響かせて、妹が手を合わせて、俺の前できつく目を伏せた。
妹は所謂腐女子という奴で、男同士の恋愛が好きらしい。しかしゲーム好きの血は受け継いでいる。何せ俺たちの両親なんて、どちらもゲーム会社で働いているのだから。
しかしながら、妹は、RPG系の戦闘が全く出来ない。
そこで今回……SRPGのBLゲームの、戦闘部分だけを手伝って欲しいと頼まれているのが俺である。
「……わーった。分かりました。お兄様が、ちゃっちゃとクリアしてやんよ」
そんな俺の言葉に、妹が瞳を輝かせた。
「えっとね、四人の攻略キャラクターと、隠しキャラが一人で、それぞれに、HAPPYとノーマルとBADとDEADの四つのENDがあるの」
――5×4?
ちょっとソレは多くないだろうか。20ENDも俺は、BLゲーに付き合わなきゃならないのか……。しかしクリアするといった手前、ここは兄の威厳を見せるべくやり遂げるしかない!!
こうして俺は、三連休の初日から、最後の日まで、そりゃあもう頑張った、頑張ったんだよ。目の前で快楽に蕩けた目をした主人公を見たり、BADで強姦される主人公を見たり、DEADでヤり殺されるところを見たり……何よりきつかったのは、SEXシーンではない。
男×男という事実だ。お友達になるノーマルENDの素晴らしさを実感した。普段俺はエロゲとかやらないから、こんな世界もあるんだなぁと不思議な気持ちになった。
「よし隠しキャラも含めて、コレで終わりッ!!」
俺が宣言すると、シナリオに号泣していた妹が、何度も何度も頷いた。
どこに泣いているのか、俺にはよく分からない。
基本的に、男に後ろ掘られたら、誰だって男なら泣くような気がする。しかしそういう事じゃなくて、純愛が良いらしい。
しかしゲームをクリアすると、それがどんなゲームであろうが、達成感がある。
「約束通り、松茸で茶碗蒸しを作ってくれよ」
超ド田舎に住んでいるため、俺の家の裏山には、松茸が生えているのだ。
しばしの間感動に浸っていた妹が、頷いてから立ち上がった。
「今すぐ作ってくるね。お兄ちゃん、本当に有り難う!」
曖昧に頷きながら、俺は嘆息してから、最近放置していたRPGをやりはじめた。
俺は、茶碗蒸しが好きだ。
多分ゲームの次に好きだ。ゲームで魔法ぶっ放すのも快感だし、ゲームをクリアするのも好きだが、茶碗蒸しも好きなのだ。
戦闘をしながら、ぼんやりと考える。先ほどまでの、ゲーム内容を、だ。
≪リリー・キングダム≫というゲームで、舞台はアーガスト魔法王国だ。
コテッコテのありがちなファンタジー設定である。
王族と貴族は大概全員魔法が使える。ごくまれに、平民の中にも強い魔力を持つ者が生まれる――それが主人公だった。主人公の名前は、デフォルトだと『ヒイロ・ソール』である。このヒイロとやらが、妹曰く『受』だそうで、様々な『攻』を攻略していくのだ。RPG要素、入れる必要あったんだろうか。
それで、攻略対象の四人は、二つ上の学年であり、王子様である『ルス・アーガスト』と、同級生の侯爵『ウル・カレンツァ』、同級生の伯爵『トール・ナイトレイ』、教師の『ワーバ・デディール』の四人だ。隠しキャラは、不老不死の伝説的賢者である(外見は)少年の『キヅナ』である。
そしてこの王国には、魔法学園がある。
一定以上の強い魔力を持つ者の所に、入学許可証が手紙で届くのだという。
――ハリー・○ッター?
だなんて感想を抱いた俺は、魔法使いばっかりの世界観だけは、ちょっと良いなと思った。
俺も魔法使いだったら良かったのになってたまに思う。
だが、このゲームの主人公になるのは絶対に嫌だ。何せ平民出身だと差別されて貴族A・B・C・Dに陰湿なイジメを受けたりするのだ。何せ、この主人公は、新入生の中で一番魔力量が高いのだが、それに対する嫉妬だってあるようだ。あるいは攻めキャラに貴族A・B・C・Dが惚れていたりする。平穏に暮らしたい俺は、最強の力を持つよりも、平凡で良いから長閑に暮らしたいタイプなのである。
「出来たよー!」
妹の声で我に返り、俺は、ゲームを中断して、ダイニングへと向かった。
この三連休は、両親共にゲームの納期が迫っているらしく、いない。
だから妹が料理をしてくれているのだ。多分、ゲームをやらないと言ったら、俺が料理をする事になっていただろう。
食卓には、ご飯とみそ汁、サラダ、焼き魚――そして俺リクエストの茶碗蒸しがあった。
茶碗蒸しの中に入っている松茸は、俺が採ってきた代物である。
「いただきます」
そう言って俺は食べ始めた。勿論茶碗蒸しから食べた。
そして――「っ!!」
飲み込んだ瞬間、思わず喉を押さえて、俺は震えた。
「お兄ちゃん!?」
「これ……松茸じゃなかったみたいだ……食べるな……かは」
毒キノコを俺は食べてしまったらしい。
そのまま俺の意識は遠のいた。
あなたにおすすめの小説
【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。
白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。
僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。
けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。
どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。
「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」
神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。
これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。
本編は三人称です。
R−18に該当するページには※を付けます。
毎日20時更新
登場人物
ラファエル・ローデン
金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。
ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。
首筋で脈を取るのがクセ。
アルフレッド
茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。
剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。
神様
ガラが悪い大男。
当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。
俺は勇者のお友だち
むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。
2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
悪役のはずだった二人の十年間
海野璃音
BL
第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。
破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。