ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾

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―― 本編 ――

1:三連休(現実)

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 俺は、自他ともに認めるゲーマーだ。いや、他っていうか、少なくとも妹にはそう認められている。俺はドMゲーというか、SRPGとか、やり込みゲーが好きなのだ。

「お兄ちゃん、お願い」

 パンっと音を響かせて、妹が手を合わせて、俺の前できつく目を伏せた。
 妹は所謂腐女子という奴で、男同士の恋愛が好きらしい。しかしゲーム好きの血は受け継いでいる。何せ俺たちの両親なんて、どちらもゲーム会社で働いているのだから。

 しかしながら、妹は、RPG系の戦闘が全く出来ない。
 そこで今回……SRPGのBLゲームの、戦闘部分だけを手伝って欲しいと頼まれているのが俺である。

「……わーった。分かりました。お兄様が、ちゃっちゃとクリアしてやんよ」

 そんな俺の言葉に、妹が瞳を輝かせた。

「えっとね、四人の攻略キャラクターと、隠しキャラが一人で、それぞれに、HAPPYとノーマルとBADとDEADの四つのENDがあるの」

 ――5×4?

 ちょっとソレは多くないだろうか。20ENDも俺は、BLゲーに付き合わなきゃならないのか……。しかしクリアするといった手前、ここは兄の威厳を見せるべくやり遂げるしかない!!

 こうして俺は、三連休の初日から、最後の日まで、そりゃあもう頑張った、頑張ったんだよ。目の前で快楽に蕩けた目をした主人公を見たり、BADで強姦される主人公を見たり、DEADでヤり殺されるところを見たり……何よりきつかったのは、SEXシーンではない。

 男×男という事実だ。お友達になるノーマルENDの素晴らしさを実感した。普段俺はエロゲとかやらないから、こんな世界もあるんだなぁと不思議な気持ちになった。

「よし隠しキャラも含めて、コレで終わりッ!!」

 俺が宣言すると、シナリオに号泣していた妹が、何度も何度も頷いた。
 どこに泣いているのか、俺にはよく分からない。

 基本的に、男に後ろ掘られたら、誰だって男なら泣くような気がする。しかしそういう事じゃなくて、純愛が良いらしい。

 しかしゲームをクリアすると、それがどんなゲームであろうが、達成感がある。

「約束通り、松茸で茶碗蒸しを作ってくれよ」

 超ド田舎に住んでいるため、俺の家の裏山には、松茸が生えているのだ。
 しばしの間感動に浸っていた妹が、頷いてから立ち上がった。

「今すぐ作ってくるね。お兄ちゃん、本当に有り難う!」

 曖昧に頷きながら、俺は嘆息してから、最近放置していたRPGをやりはじめた。
 俺は、茶碗蒸しが好きだ。

 多分ゲームの次に好きだ。ゲームで魔法ぶっ放すのも快感だし、ゲームをクリアするのも好きだが、茶碗蒸しも好きなのだ。

 戦闘をしながら、ぼんやりと考える。先ほどまでの、ゲーム内容を、だ。




 ≪リリー・キングダム≫というゲームで、舞台はアーガスト魔法王国だ。
 コテッコテのありがちなファンタジー設定である。

 王族と貴族は大概全員魔法が使える。ごくまれに、平民の中にも強い魔力を持つ者が生まれる――それが主人公だった。主人公の名前は、デフォルトだと『ヒイロ・ソール』である。このヒイロとやらが、妹曰く『受』だそうで、様々な『攻』を攻略していくのだ。RPG要素、入れる必要あったんだろうか。

 それで、攻略対象の四人は、二つ上の学年であり、王子様である『ルス・アーガスト』と、同級生の侯爵『ウル・カレンツァ』、同級生の伯爵『トール・ナイトレイ』、教師の『ワーバ・デディール』の四人だ。隠しキャラは、不老不死の伝説的賢者である(外見は)少年の『キヅナ』である。

 そしてこの王国には、魔法学園がある。
 一定以上の強い魔力を持つ者の所に、入学許可証が手紙で届くのだという。

 ――ハリー・○ッター?

 だなんて感想を抱いた俺は、魔法使いばっかりの世界観だけは、ちょっと良いなと思った。
 俺も魔法使いだったら良かったのになってたまに思う。

 だが、このゲームの主人公になるのは絶対に嫌だ。何せ平民出身だと差別されて貴族A・B・C・Dに陰湿なイジメを受けたりするのだ。何せ、この主人公は、新入生の中で一番魔力量が高いのだが、それに対する嫉妬だってあるようだ。あるいは攻めキャラに貴族A・B・C・Dが惚れていたりする。平穏に暮らしたい俺は、最強の力を持つよりも、平凡で良いから長閑に暮らしたいタイプなのである。

「出来たよー!」

 妹の声で我に返り、俺は、ゲームを中断して、ダイニングへと向かった。
 この三連休は、両親共にゲームの納期が迫っているらしく、いない。

 だから妹が料理をしてくれているのだ。多分、ゲームをやらないと言ったら、俺が料理をする事になっていただろう。

 食卓には、ご飯とみそ汁、サラダ、焼き魚――そして俺リクエストの茶碗蒸しがあった。
 茶碗蒸しの中に入っている松茸は、俺が採ってきた代物である。

「いただきます」

 そう言って俺は食べ始めた。勿論茶碗蒸しから食べた。
 そして――「っ!!」

 飲み込んだ瞬間、思わず喉を押さえて、俺は震えた。

「お兄ちゃん!?」
「これ……松茸じゃなかったみたいだ……食べるな……かは」

 毒キノコを俺は食べてしまったらしい。
 そのまま俺の意識は遠のいた。

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