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―― 第一章 ――
【第三話】二人の来訪者
しおりを挟む蒼い瞳を玄関へと一度向け、それから壁にかかる丸い時計をゼクスは見る。
既に時刻は八時半だ。こんな時間に、いいやそうでない日中であっても、最下層にあるゼスペリア教会には、滅多に来訪者など来ない。
「誰だろう」
衝撃的なテレビの報道から意識を切り替えて、ゼクスは玄関へと向かった。
ゼスペリア教会には、外部モニターのような上質な代物は設置されていないため、扉を直接押し開く。するとそこには、オリーブ色のコートを纏った青年が一人立っていた。長身で、眼鏡をかけている。髪の色は狐色で、瞳の色は緑だ。
「ゼクス・ゼスペリア神父ですか?」
「え? ええ。俺がゼクスですけど」
「そう。見つかって良かったよ」
頷いたゼクスに対し、青年が小さく頷いた。そして振り返る。するとそちらには、ゆっくりと歩いてくる黒髪の人物がいた。こちらは黒いコートを羽織っていて、瞳の色はどこか紫茶味が差し込んでいる黒色をしている。
「高砂、そちらが?」
狐色の髪をした青年に対し、歩み寄ってきた人物が声をかけた。
「そうみたい。時東、俺としては時間もない事だし、事情の説明は車内でいいと思うんだけど、どう?」
頷いた高砂と呼ばれた青年は、僅かに首を傾げている。
すると隣に立った時東と声をかけられた青年が、腕を組んだ。
「神父様にだって、持ち物の一つや二つあるんじゃないのか?」
「俺は断捨離派で不要物は捨てていくから、その感覚は分からないね」
「俺は意外と、写真とか、取っておく方だぞ」
二人のやりとりに、ゼクスが困惑した顔をしている。
「あの……? どういった用件だ?」
「俺は高砂祐介と言います。ゼクス・ゼスペリア神父、貴方を迎えに来ました」
向き直った高砂はそう言うと、スッと目を細くして、ゼクスの背後の家屋を見た。
「迎え?」
「箱舟に乗船してもらう。そのメンバーにお前は選ばれたんだよ」
時東が補足したのを耳にし、ゼクスは息を飲んだ。
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