図書室ピエロの噂

猫宮乾

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【SeasonⅡ】―― 第二章:黒板じじい ――

【066】保健室から聞こえたセキ

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 自由研究のことを帰って亮にいちゃんに話すと、ものすごく喜んでくれた。
 なんだかうれしな気持ちのまま、次の日も登校した。
 そして給食が終わりお昼時間に入ろうとしたとき、ぼくは日直だったので黒板の前に向かった。消し残しを見つけたからだ。すると泰我先生がぼくを見た。

「あ、楠谷。悪いんだけどな、午後の授業で模造紙を使うから、資料室から二枚持ってきてくれないか?」
「はい!」

 ぼくは元気に返事をした。というのも、自由研究で哀名がほめてくれたのが頭にあって、いろいろ頑張ったら、もっとほめてくれるんじゃないかと思ったからだ。哀名にかっこいいところを見せた。そう思ってちらっと哀名のほうを見ると、哀名はすっかり治った椿ちゃんと話をしていた。ぼくのほうには気づいていない。逆に道家くんが、呆れたような顔でぼくを見ていた。ぼくが手招きしてみると、道家くんがこちらに来た。

「お、道家もいってくれるのか。いやぁ助かる」

 泰我先生は、笑顔だ。道家くんは小さくうなずいたが、めんどうくさいというのが顔に出ていた。

「行こう!」

 こうしてぼくは道家くんと一緒に教室を出た。
 少し歩くと、道家くんがボソっといった。

「ボクには理解不能だね。女子にかっこいいところを見せるために、色々がんばるとかって」
「えっ」
「哀名に見せたいのがよくわかったよ、見てて」
「……そ、その」

 道家くんはするどい。ぼくが思わず赤くなると、道家くんが大きく息をはいた。

「自分をいつわって、無理をして付き合うのって楽しい?」
「!!」
「そのままの瑛でチャレンジすれば?」

 それも〝いちり〟ある気がした。
 そんなやりとりをしんがら、資料室がある、保健室の前の廊下を通ろうとしたときだった。ゲホゲホと大きなセキが聞こえてきた。

「大丈夫?」

 ぼくは思わずその場で声を出した。
 やっぱり風邪ははやっているのかもしれない。

「あ、おい――」

 道家くんがあわてた声を出したときには、ぼくは保健室の扉を開けていた。

「大丈夫?」

 もう一度声をかけたけど、聞こえてくるのはセキだけだ。保健の先生はいないみたいだけど、苦しくて呼べないのかもしれない。ぼくはベッドの周囲のカーテンを開けた。

「ねぇ、大丈夫!?」

 そう言ったぼくは、ベッドを見て目を丸くした。誰もねていなかったからだ。
 びっくりして、ぼくは口を半分開けた。

「今のが、七不思議の一つの『保健室の少女』だよ。『大丈夫』と三回言うと消えるんだ。心やさしい相手だと判断すると、なにもしない。だけど、中身を知らずに、本当にやさしく声をかけるお人好しはあんまりいないけどね」

 ぼくは歩み寄ってきた道家くんを見る。道家くんは笑っていた。

「え、えっと……じゃあこの七不思議の一つも確認したことにして、『大丈夫』って三回言えばいいってまとめようか?」
「そうすれば」

 道家くんの言葉に、そうすることに決めてから、ぼく達は資料庫へと向かい、無事に模造紙を手に入れた。


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