67 / 101
【SeasonⅡ】―― 第二章:黒板じじい ――
【066】保健室から聞こえたセキ
しおりを挟む
自由研究のことを帰って亮にいちゃんに話すと、ものすごく喜んでくれた。
なんだかうれしな気持ちのまま、次の日も登校した。
そして給食が終わりお昼時間に入ろうとしたとき、ぼくは日直だったので黒板の前に向かった。消し残しを見つけたからだ。すると泰我先生がぼくを見た。
「あ、楠谷。悪いんだけどな、午後の授業で模造紙を使うから、資料室から二枚持ってきてくれないか?」
「はい!」
ぼくは元気に返事をした。というのも、自由研究で哀名がほめてくれたのが頭にあって、いろいろ頑張ったら、もっとほめてくれるんじゃないかと思ったからだ。哀名にかっこいいところを見せた。そう思ってちらっと哀名のほうを見ると、哀名はすっかり治った椿ちゃんと話をしていた。ぼくのほうには気づいていない。逆に道家くんが、呆れたような顔でぼくを見ていた。ぼくが手招きしてみると、道家くんがこちらに来た。
「お、道家もいってくれるのか。いやぁ助かる」
泰我先生は、笑顔だ。道家くんは小さくうなずいたが、めんどうくさいというのが顔に出ていた。
「行こう!」
こうしてぼくは道家くんと一緒に教室を出た。
少し歩くと、道家くんがボソっといった。
「ボクには理解不能だね。女子にかっこいいところを見せるために、色々がんばるとかって」
「えっ」
「哀名に見せたいのがよくわかったよ、見てて」
「……そ、その」
道家くんはするどい。ぼくが思わず赤くなると、道家くんが大きく息をはいた。
「自分をいつわって、無理をして付き合うのって楽しい?」
「!!」
「そのままの瑛でチャレンジすれば?」
それも〝いちり〟ある気がした。
そんなやりとりをしんがら、資料室がある、保健室の前の廊下を通ろうとしたときだった。ゲホゲホと大きなセキが聞こえてきた。
「大丈夫?」
ぼくは思わずその場で声を出した。
やっぱり風邪ははやっているのかもしれない。
「あ、おい――」
道家くんがあわてた声を出したときには、ぼくは保健室の扉を開けていた。
「大丈夫?」
もう一度声をかけたけど、聞こえてくるのはセキだけだ。保健の先生はいないみたいだけど、苦しくて呼べないのかもしれない。ぼくはベッドの周囲のカーテンを開けた。
「ねぇ、大丈夫!?」
そう言ったぼくは、ベッドを見て目を丸くした。誰もねていなかったからだ。
びっくりして、ぼくは口を半分開けた。
「今のが、七不思議の一つの『保健室の少女』だよ。『大丈夫』と三回言うと消えるんだ。心やさしい相手だと判断すると、なにもしない。だけど、中身を知らずに、本当にやさしく声をかけるお人好しはあんまりいないけどね」
ぼくは歩み寄ってきた道家くんを見る。道家くんは笑っていた。
「え、えっと……じゃあこの七不思議の一つも確認したことにして、『大丈夫』って三回言えばいいってまとめようか?」
「そうすれば」
道家くんの言葉に、そうすることに決めてから、ぼく達は資料庫へと向かい、無事に模造紙を手に入れた。
なんだかうれしな気持ちのまま、次の日も登校した。
そして給食が終わりお昼時間に入ろうとしたとき、ぼくは日直だったので黒板の前に向かった。消し残しを見つけたからだ。すると泰我先生がぼくを見た。
「あ、楠谷。悪いんだけどな、午後の授業で模造紙を使うから、資料室から二枚持ってきてくれないか?」
「はい!」
ぼくは元気に返事をした。というのも、自由研究で哀名がほめてくれたのが頭にあって、いろいろ頑張ったら、もっとほめてくれるんじゃないかと思ったからだ。哀名にかっこいいところを見せた。そう思ってちらっと哀名のほうを見ると、哀名はすっかり治った椿ちゃんと話をしていた。ぼくのほうには気づいていない。逆に道家くんが、呆れたような顔でぼくを見ていた。ぼくが手招きしてみると、道家くんがこちらに来た。
「お、道家もいってくれるのか。いやぁ助かる」
泰我先生は、笑顔だ。道家くんは小さくうなずいたが、めんどうくさいというのが顔に出ていた。
「行こう!」
こうしてぼくは道家くんと一緒に教室を出た。
少し歩くと、道家くんがボソっといった。
「ボクには理解不能だね。女子にかっこいいところを見せるために、色々がんばるとかって」
「えっ」
「哀名に見せたいのがよくわかったよ、見てて」
「……そ、その」
道家くんはするどい。ぼくが思わず赤くなると、道家くんが大きく息をはいた。
「自分をいつわって、無理をして付き合うのって楽しい?」
「!!」
「そのままの瑛でチャレンジすれば?」
それも〝いちり〟ある気がした。
そんなやりとりをしんがら、資料室がある、保健室の前の廊下を通ろうとしたときだった。ゲホゲホと大きなセキが聞こえてきた。
「大丈夫?」
ぼくは思わずその場で声を出した。
やっぱり風邪ははやっているのかもしれない。
「あ、おい――」
道家くんがあわてた声を出したときには、ぼくは保健室の扉を開けていた。
「大丈夫?」
もう一度声をかけたけど、聞こえてくるのはセキだけだ。保健の先生はいないみたいだけど、苦しくて呼べないのかもしれない。ぼくはベッドの周囲のカーテンを開けた。
「ねぇ、大丈夫!?」
そう言ったぼくは、ベッドを見て目を丸くした。誰もねていなかったからだ。
びっくりして、ぼくは口を半分開けた。
「今のが、七不思議の一つの『保健室の少女』だよ。『大丈夫』と三回言うと消えるんだ。心やさしい相手だと判断すると、なにもしない。だけど、中身を知らずに、本当にやさしく声をかけるお人好しはあんまりいないけどね」
ぼくは歩み寄ってきた道家くんを見る。道家くんは笑っていた。
「え、えっと……じゃあこの七不思議の一つも確認したことにして、『大丈夫』って三回言えばいいってまとめようか?」
「そうすれば」
道家くんの言葉に、そうすることに決めてから、ぼく達は資料庫へと向かい、無事に模造紙を手に入れた。
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
ぽんちゃん、しっぽ!
こいちろう
児童書・童話
タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance!
(also @ なろう)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる