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【SeasonⅡ】―― 第三章:放送室の幽霊 ――
【072】放送室の幽霊
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月曜日、そうじの時間に、ぼくは西くんと道家くんと一緒にほうきではく係をしていた。
「なぁ、楠谷ってさ」
「うん?」
「な、七海のこと好きじゃないんだよな? 哀名が好きなんだろ?」
「七海さんのことは好きじゃないけど……えっ!? どうして!?」
「仲良いし」
西くんが当然のようにいう。すると道家くんもうなずいた。
「見てるとわかるよね」
「だよな? 道家くんもわかるよな?」
「うん」
ぼくは真っ赤になった。
そのとき、キーンという放送が入った。
それまで流れていたそうじのときの音楽がとまる。
放送用の機械がこわれてしまったのだろうか? そう思っていたら、声がした。
『たすけて……たすけて……たすけて……』
ゾクッとして、ぼくは両うでで体をだいた。放送室でだれかが困っているのかもしれないけど、人間の声に聞こえなかったからだ。すると泰我先生が教室から出てきて、走り出した。放送室に行ったんだろう。
ぼくは道家くんを見た。
「今のは、放送室の幽霊だよ」
「放送室の幽霊?」
「うん。放送室で病気で死んじゃった子の幽霊だよ。放送室には、二人いるんだけどね」
道家くんの説明に、西くんが目を丸くした。
「道家くんってくわしいんだな、すごい! もう一人は、どんな幽霊なんだ?」
「今の声のぬしのほかには、放送委員会だった児童の幽霊がいるよ。その子は、失恋して亡くなったんだ」
失恋した気持ちはぼくもわかるから、かわいそうになってしまう。
「だから、放送室の全体放送で、学校中に聞こえるように告白すると、その子がとりもってくれて、恋が実るっていうよ」
道家くんの言葉に、西くんが息をのんだ。
「本当か!?」
「うん。ボクはそう――……聞いてるよ」
たぶん幽霊本人から聞いたんだろうと思ったけど、ぼくは何も言わなかった。
そこへ泰我先生が戻ってきた。
「お前ら、安心しろ。ええと、もう大丈夫だ。心配はしなくていい」
先生は廊下にいたぼく達に、まずそういった。そして教室の中に入っていく。
くわしいことは教えてくれなかったけど、きっと、先生が幽霊をどうにかしたんだと思う。きっとまた、『破!!』ってしたのかもしれない。
そのとき、西くんが、かべにほうきを立てかけた。
「俺、行ってくる」
「え? どこに?」
「全体放送で、告白してくる!」
そのまま西くんは、走ってはダメな廊下を、先生のように走っていった。信じられない気持ちでぼくはそちらを見ていた。するとすぐに、全体放送がはじまるときの音がした。
『俺、六年三組西 肇は、七海 佳音のことが好きだー!! 付き合ってくれ!!』
響いてきた全体放送の声に、ぼくは目を丸くした。ぼくは哀名が好きだけど、さすがに全体放送をする勇気は出ない。すると教室から再び泰我先生が出てきた。片手で目をおおいながら、深くため息をついて、放送室のほうへと歩いて行った。
それを見送り、そうじの時間が終わったので、ぼくと道家くんは教室の中に入った。
七海さんが真っ赤になって、女子に囲まれていた。哀名もその中にいる。
そちらを見ていると、西くんが帰ってきた。
ハッとしたように、赤い顔のままで七海さんがかけよる。
そしてポコポコと西くんのうでをたたいた。
「ば、ばか! あんなのはずかしいでしょ!」
「返事は?」
「か、考えてあげてもいいわ!」
そんな二人に、みんなが拍手をした。ぼくも拍手した。両思いみたいだ。
だけど……七海さんの好きな人が西くんだったとすると、こっくりさんによれば、七海さんの好きな人の好きな人は哀名だっただから、こっくりさんははずれたということになるようだ。ならば、ぼくの恋のライバルではなかったらしい。それに少しだけ、ほっとした。
「なぁ、楠谷ってさ」
「うん?」
「な、七海のこと好きじゃないんだよな? 哀名が好きなんだろ?」
「七海さんのことは好きじゃないけど……えっ!? どうして!?」
「仲良いし」
西くんが当然のようにいう。すると道家くんもうなずいた。
「見てるとわかるよね」
「だよな? 道家くんもわかるよな?」
「うん」
ぼくは真っ赤になった。
そのとき、キーンという放送が入った。
それまで流れていたそうじのときの音楽がとまる。
放送用の機械がこわれてしまったのだろうか? そう思っていたら、声がした。
『たすけて……たすけて……たすけて……』
ゾクッとして、ぼくは両うでで体をだいた。放送室でだれかが困っているのかもしれないけど、人間の声に聞こえなかったからだ。すると泰我先生が教室から出てきて、走り出した。放送室に行ったんだろう。
ぼくは道家くんを見た。
「今のは、放送室の幽霊だよ」
「放送室の幽霊?」
「うん。放送室で病気で死んじゃった子の幽霊だよ。放送室には、二人いるんだけどね」
道家くんの説明に、西くんが目を丸くした。
「道家くんってくわしいんだな、すごい! もう一人は、どんな幽霊なんだ?」
「今の声のぬしのほかには、放送委員会だった児童の幽霊がいるよ。その子は、失恋して亡くなったんだ」
失恋した気持ちはぼくもわかるから、かわいそうになってしまう。
「だから、放送室の全体放送で、学校中に聞こえるように告白すると、その子がとりもってくれて、恋が実るっていうよ」
道家くんの言葉に、西くんが息をのんだ。
「本当か!?」
「うん。ボクはそう――……聞いてるよ」
たぶん幽霊本人から聞いたんだろうと思ったけど、ぼくは何も言わなかった。
そこへ泰我先生が戻ってきた。
「お前ら、安心しろ。ええと、もう大丈夫だ。心配はしなくていい」
先生は廊下にいたぼく達に、まずそういった。そして教室の中に入っていく。
くわしいことは教えてくれなかったけど、きっと、先生が幽霊をどうにかしたんだと思う。きっとまた、『破!!』ってしたのかもしれない。
そのとき、西くんが、かべにほうきを立てかけた。
「俺、行ってくる」
「え? どこに?」
「全体放送で、告白してくる!」
そのまま西くんは、走ってはダメな廊下を、先生のように走っていった。信じられない気持ちでぼくはそちらを見ていた。するとすぐに、全体放送がはじまるときの音がした。
『俺、六年三組西 肇は、七海 佳音のことが好きだー!! 付き合ってくれ!!』
響いてきた全体放送の声に、ぼくは目を丸くした。ぼくは哀名が好きだけど、さすがに全体放送をする勇気は出ない。すると教室から再び泰我先生が出てきた。片手で目をおおいながら、深くため息をついて、放送室のほうへと歩いて行った。
それを見送り、そうじの時間が終わったので、ぼくと道家くんは教室の中に入った。
七海さんが真っ赤になって、女子に囲まれていた。哀名もその中にいる。
そちらを見ていると、西くんが帰ってきた。
ハッとしたように、赤い顔のままで七海さんがかけよる。
そしてポコポコと西くんのうでをたたいた。
「ば、ばか! あんなのはずかしいでしょ!」
「返事は?」
「か、考えてあげてもいいわ!」
そんな二人に、みんなが拍手をした。ぼくも拍手した。両思いみたいだ。
だけど……七海さんの好きな人が西くんだったとすると、こっくりさんによれば、七海さんの好きな人の好きな人は哀名だっただから、こっくりさんははずれたということになるようだ。ならば、ぼくの恋のライバルではなかったらしい。それに少しだけ、ほっとした。
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