図書室ピエロの噂

猫宮乾

文字の大きさ
83 / 101
【SeasonⅡ】―― 終章:学校の七不思議 ――

【082】打ち合わせ

しおりを挟む
 次の土曜日、ぼくはタブレット端末をカバンにいれて、バスで道家くんの家へと向かった。今日もおばあちゃんがいたけど、本当によく会うと思う。

 本日は、先に哀名が来ていた。靴を見てわかった。
 中に入り、ぼく達は、テーブルを囲んで座る。

「『学校のお化け図鑑』完成したよ」
「すごい」
「へぇ、瑛って……というか、人間ってすごいね、こんな機械があるんだ」

 哀名も道家くんも、タブレット端末を見て、目を輝かせている。
 ぼくも自分は頑張ったと思う。

「さすがは、自由研究でひょうしょうされるだけの考察力だね」

 道家くんの言葉に、哀名もうなずいた。ほめられすぎて、ぼくはおろおろしてしまう。

「それでね、学習発表会の資料のふりをしてアプリでみんなに送信したら、自然じゃないかと思うんだ。ただ椿ちゃんには言っていないから、どうしよう?」

 ぼくがていあんすると、哀名が小さく笑った。

「男子が二人で独自にやったことにしたら? 私も知らないことにしたらいいと思うの。女子は知らなかったってことにするの」
「いいの?」
「ええ」

 こうして、そういうことに決まった。ぼくは資料の最後に、ぼくと道家くんが作ったとつけたした。

「いつ送る?」

 ぼくが聞くと、野菜ジュースを飲んでから、道家くんが答えた。

「今送っちゃえば?」
「私もそれがいいと思う」
「わ、わかった」

 二人の言葉に緊張しながら、ぼくは授業で使うアプリを起動して、学校のみんなのグループを表示させた。そしてファイルを送るマークを押す。

「送るよ」

 ぼくが言うと、二人がうなずいた。
 きんちょうしながら、ぼくはファイルを送信した。

 すると――すぐにスタンプのあらしになって、コメントが並び始めた。
 みんなが、『すごい』『さすが』とぼくと道家くんをほめてくれている。
 その反応をみて、ぼくのカタから力が抜けた。緊張がやっととれた。

 それから二人を見ると、どちらも笑顔でまんぞくそうにぼくを見ていた。


 ――次の月曜。
 学校に行くと椿ちゃんが、ぼくと道家くんのほうにふり返った。

「すごかったね、教えてくれたらよかったのに! 同じ班なんだしさぁ。でも、男子すごい!」

 そう言って笑う椿ちゃんも、どこかほこらしそうだった。

 こうしてぼく達は無事に、ローレルの初任務を達成した。多分みんなもある程度、学校の都市伝説に対応できるようになったと、ぼくは思っている。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

ぽんちゃん、しっぽ!

こいちろう
児童書・童話
 タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

エリちゃんの翼

恋下うらら
児童書・童話
高校生女子、杉田エリ。周りの女子はたくさん背中に翼がはえた人がいるのに!! なぜ?私だけ翼がない❢ どうして…❢

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。  大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance! (also @ なろう)

処理中です...