図書室ピエロの噂

猫宮乾

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【SeasonⅢ】―― 第一章:人面犬 ――

【091】カレー

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 次の日ローレルの会議に行くと、道家くんと人面犬が出迎えてくれた。

「よく来たな」

 人面犬に言われた。すっかりこの家になじんでいるみたいだ。昨日来たばっかりなのに。
 哀名もすでに来ていた。
 ぼく達はリビングに座る。すると人面犬が、道家くんの横に座った。

 なんだか三人と一匹でも、この部屋にいるとしっくりきて、自然に感じる。

 さて、今日はみんなでカレーを作って食べようと話していたので、ぼくと哀名は材料を持ち寄った。ぼくは人面犬を見る。

「ねぇ、人面犬はなにを食べるの?」
「俺は人間と同じ物を食べるぞ」
「じゃあカレーができたら、食べる?」
「食べる」

 大きくうなずくように、人面犬が首をたてに動かした。
 それを見てから、ぼく達三人はキッチンに向かった。
 こうしてカレー作りがはじまった。

 手際よく哀名が、野菜のかわを向いていく。ぼくもそれを手伝う。道家くんはめずらしそうに見ていた。哀名が包ちょうで切り始めたので、ぼくは皮を剥いた野菜を洗って渡す。哀名は料理が上手みたいだ。

 こうしてできあがったカレーをお皿にもりつけて、ぼく達はリビングで食べることにした。道家くんが一口食べて、目を丸くした。

「おいしいね。人間ってすごいな。ボクも料理をおぼえてみようかなぁ」
「うん。おぼえたら食べさせてね」
「私も食べたい」

 そんな話をしてから、道家くんが思い出したように、四つ目の皿を見た。そしてスプーンでカレーとご飯をすくうと、待ちかまえていた人面犬の口に近づける。人面犬がぱくりと食べる。

「うん、なかなかだ」
「食べなくてもいいんだよ? ボクが代わりに食べるから」
「いや……本当は、うまいと思ってる!」

 二人はそんなやりとりをしていたので、ぼくは笑った。

「おかわりあるよ」

 その後おなべがからになるまで、ぼく達はカレーを味わった。


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