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―― 本編 ――
【005】シャワー室と仮眠室の存在理由(★)
しおりを挟む目を覚ますと、体が清められていた。誰に? 分からないが、隣に相……相様の姿は無かった。気怠い上体をなんとか起こして、掛け布団を取り、下を見ればシーツには生々しい痕跡があった。これ、体が綺麗になるのは、エロゲの仕様なんだろうか? その辺りは分からないが、中だしされたけれど腹痛もない。
そんなことを考えていると、襖の向こうから声がかかった。
『祭理様、ご起床されましたか?』
「うん、おはよう」
俺が返事をすると、使用人が襖を開けた。昨日も着付けなどを手伝ってくれた俺専属の使用人の若槻だ。若槻は黒い髪に鋭い目をしていて、どちらかといえばモブ顔――即ち平凡な顔をしているのだが、俺の記憶に寄れば、エロゲにも出てきた。若槻と類似の顔のモブが頻出していた。ただ、今世の記憶を遡るかぎり、この顔の持ち主は現在、若槻だけである。二十代後半で、ジト目だ。飄々としている。
「昨夜はおするおするとお済みのようで、おめでとうございます」
「う、うん……」
エロ因習村であるから、昨夜の宴後になにが行われたのかは、みんな知っているのだろう。隠そうにも俺は全裸であるし、ちらっと見たが鎖骨付近などに朱いキスマークが散らばっている以上、情事があったことを隠すのも難しい。それに隠す必要もないのだろう。
「朝食のご用意は整っております。先に入浴なさいますか?」
「うん。お風呂に入りたい」
「それではお着替えの準備を致します」
と、こうして俺はお風呂に入ることになった。宝野家のお風呂は、小さな温泉である。檜風呂と、外に露天風呂がある。まず洗い場で丹念に体を洗いつつ、まだ中に相様の存在感が残っているような感覚に、俺は目を据わらせた。どう考えても相様はヤりすぎだ。どこに優しさがあったというのか? 俺様基準を俺に当てはめられても困る。
その後じっくりと湯船に浸かってから、俺は外へと出た。そしてシャツとボトムスに着替えてから、朝食の席へと向かう。もう日も高いからなのか、俺一人の食事だった。それがまた美味である。さすがは名家。専属の料理人さんがいるのだが、腕前が凄すぎる。
「祭理様」
「はい?」
若槻の声に、俺は箸を持ったままで顔を向ける。すると若槻が頭を垂れてから、顔を上げた。和服姿で、正座をしている。
「本日は午後二時より、黒鷺家の執務室に来るようにと相様からの伝言です」
「……そ、っか」
はぁっとため息をつきそうになったが堪える。
一応秘書のようなことを俺はしている以上、昨日の今日で気まずさもあるが、行かないわけにはいかないだろう。働かざる者食うべからずだ。
こうしてブランチ後、俺はジャケットを上に着てから、黒鷺家へと向かった。
専属の運転手が俺の送迎をしてくれる。
黒塗りの車を降りると、ちょっと目を惹く洋館……いいや、ある種の城のような邸宅がそこにはそびえ立っていた。黒鷺家の先祖が海外から移築したそうで、いくつか家があるのだが、ここは主に相様が執務に使っている場所だ。
中に入ると、相様専属の執事に一礼された。執務室の場所は分かっていて、俺は自由に行き来して良いので、一人で向かう。この執務室、横に仮眠室やシャワー室もあって、俺が思うに中々に黒鷺家は残業も多いブラックなんだろうなという感想なのだが、俺はあまり相様が残業をしている姿は見たことがない。というのは、夜が遅くなると危ないと相様に言われて、俺は帰宅を促されるからだ。
コンコン、っと、執務室の扉をノックをする。
するとすぐに相様の返事があったので、俺は中へと入った。
「来たか。遅かったな」
「時間の三十分前ですけど」
「……ま、待ちわびていた、だとか、言えというのか? この俺に?」
「へ?」
「な、なんでもない……! ベルトを外して下を下ろせ」
「は?」
相様の言葉に、俺は目を丸くした。
「そしてそこの机に両手を突いて、尻を突き出せ」
「仕事じゃ?」
「まだお前は儀式をこなすには体を開き切れていない。俺の慈悲だ。抱いてやる」
「えぇ……」
「なんだ? 不服だというのか? この俺が直々に――」
「……」
俺がしょんぼりすると、相様が焦った顔に変わった。そして足早に歩み寄ってくると、少し屈んで俺の目を見てから、不意に俺の顎を持ち上げた。
「まさかとは思うが、き、昨日、ま、まさかとは思うが、気持ちよくなかったとでもいうつもりか……?」
「いえ? 最高に体がドロドロでしたけど」
「そ、そうか。焦らせるような態度を取るな」
相様のような俺様であっても、ド下手くそだったらどうしようだとか、気にするのかと、ちょっと意外だった。だが、俺の顎を持ち上げたまま、片手で手際よくベルトを外しにかかってくるのは頂けない。
「ちょっ……本当にお仕事は!?」
「いいからつべこべ言わずに脱げ。俺は優しいが、気は短い」
「なにその矛楯!」
「本当にお前のその減らず口はなんとかならないのか? 以前はもっとぽやっとしていただろう……あまり深く関わっていなかったから、俺が知らなかっただけかもしれないがな。まぁ、いい。今の方が、啼かせがいがある」
口角を持ち上げた相様が、俺の下衣を下着ごと脱がせた。
そして俺の腕をグッと引くと、机の正面に立たせる。
「手を突くのはそこだ」
「……はーい」
しぶしぶと俺は手を突き、臀部を突き出す。するとチェストの上に何故なのか堂々と鎮座していたローションのボトルを、相様が手に取った。過去の俺はオブジェだと思っていて、存在を気にしたことがなかった。
相様は指にローションをまぶすと、俺の窄まりをつつく。
そして指を一気に二本差し入れた。ぐちゅりと音がし、指が弧を描くようにしながら入ってくる。
「んっ、う……」
すぐに前立腺を探り出され、そこをぐりっと刺激され、俺は背を逸らした。
「あ、ハ……」
前立腺を刺激される度に、俺の息が上がっていく。すぐに陰茎が反応を見せ、反り返る。気持ちが良い。絶対コレは、エロゲ仕様の感度だ。ビクビクビクと肩を震わせながら、俺は涙ぐむ。
「ン、ぁ……ァ、あ……」
「昨日の今日で、まだ解れているな。俺の形は覚えているか?」
「は、っッ」
「覚え込ませてやる、永劫、忘れられないようにな。お前はもう、俺なしではいられなくなる。そう心得ろ」
やっぱりエロゲ風のセリフだ。ただ、俺は類似のセリフを、相様がエロゲの女ヒロインにかけていたのを見たことがある気がした。相様ルートだと、相様なしではいられなくさせられるようなプレイが多かったのだ、あのゲームは。どんなプレイがあったけなぁ。まぁ、ヒロインがいつか村に来れば、相様の方は、俺の事は忘れるのだろうが。相様ルートの場合だが。
「考え事か? この俺様が鳴らしてやっているというのに……頭にくるな、本当」
「えっ、う、ア――!!」
指を引き抜いた相様が、急に俺に挿入した。指とは比べものにならない圧倒的な質量に、俺の背が撓る。肉と肉が蕩けるような熱で交わり、俺は机の上の手に、思わず指先に力を込めた。
「あ、あ、あ」
相様が激しく打ち付けてくる。
「いえ、何を考えていたのか」
「あ、あ、ッ、う……相様のことです、ぁァ」
相様ルートと相様のプレイについて、思い出そうと試みていたのだ。
「えっ」
すると相様が驚いたように息を呑んだ。俺は涙目で、快楽に浸る。
急に相様が動きを止めたものだから、もどかしくて自然と腰が揺れる。もっともっと奥に欲しいのに、浅い位置で動きが止まってしまった。
「あ、ぁ……も、もっと……奥にッ」
「おいおい、急に素直になるな、ッ――そうか、お前も俺を想って……」
? 『も』――とは?
他にも相様に想いを寄せる人がいるだとか、相様もまた俺を好きだとか?
そういうニュアンスに聞こえたが、俺が思い馳せていたのはあくまでもルートだ。それよりも、もっと激しくガンガンと動いて欲しい。
「やぁ、ぁ……早く、っ、動い――ああああ!」
「容赦しない。手加減はもうしない」
俺の腰を掴み、激しく相様が打ち付け始めた。その内に、俺は理性を飛ばし、上半身を机に預けて快楽に浸り、ポロポロと涙を零した。本当、相様はエロが上手い。SEX神だ。きっと爛れた性活をそれだけ行ってきたのだろう。性生活というよりは、儀式的性的な活動だ。あるいは聖活かもしれない。なにせ、儀式は神聖だし。
「イっ、ぁア――!」
「俺も出す」
そのまま最奥を穿たれて、俺は果てた。相様もまた、ほぼ同時に果てたようだった。
はぁはぁとお互いの息が、静かな室内に谺する。ぐちゅりと音をたてて相様が引き抜いた時、俺の後孔からは白濁が垂れた気配がした。
「シャワー室を使え。下着の替えは出しておく」
……。
残業時でなく、シャワー室はどうやらエロ用途で用いるらしい。ということは、仮眠室も、か?
「祭理」
「……はい」
「いつも素直にしていろ」
「……」
「そうすれば、悪いようにはしない」
相様の声が、少しだけ優しくなった気がした。
「悪いようにって、具体的には?」
「公衆の面前で輪姦するような儀式は避けてやってもいい」
「わ、っ、わっかりましたー! 素直になりますっ!」
俺は巻き舌で食い気味に答えた。
「ああ。それで? 俺の事をどう想っている?」
「本当にエロゲの主人公みたいだなって」
「おい。そこに直れ! シャワーでは冷水を浴びて頭を冷やしてこい!」
相様は口元だけに笑みを浮かべ、眼差しは冷たく険しいものを俺に向け、トントンと足の爪先で貧乏揺すりをしてから、ビシリと浴室の方向を指差したのだった。
だって、ねぇ? 素直にって言われたしな……。
「俺はもっと、俺を賞賛すべきだと思うが? 俺は黒鷺家の次期当主だぞ?」
「でも、素直にって……もしかして、お世辞を言われたいって意味でした?」
「っ、そうではないが……はぁ。そうだな。本音で話してもらえる方が嬉しい。俺に対して本音を向ける者は少ないからな。だが、な? 祭理」
「はい」
「エロゲはどこから出てきたんだ? お前は、エロゲが好きなのか?」
「あ……え、えっと……」
「成人向けの事柄は、以後俺が教えてやるから慎むように!」
「は、はい!」
そんなやりとりをしてから、俺はシャワー室へと向かった。勢いで返事をしたわけだが、実地で教わりたいわけでは――……ないと思うが、今日も気持ちよかったため、ちょっと癖になりそうだと、俺は思ったのだった。
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アルファさんで感想書いた事あったか忘れちゃったんですが(他所ではお返事いただいた事あります)、
奨励賞おめでとうございます。
また素敵な作品をよろしくお願いします。