異世界クリエイター ~ゲームをしていたら、神様に剽窃されました~

猫宮乾

文字の大きさ
10 / 22
―― 第二章 ――

【010】残っていた、【神様モード】。

しおりを挟む
 あまりの眩しさに閉じていた瞼の向こうで、光が収束したのを感じてから、俺はおそるそる目を開けた。俺の黒髪を、頬を、風が撫でていく。正面には、羊の牧場があった。これは俺が最初にチュートリアルで見た風景と同じだった。

「此処は何処だ? 国名とか位置とか」

 高橋の言葉に、俺は咄嗟に【神様モード】を起動しようとした。そして、【ログアウト】は前も無かったが、【シェア】と【PLAY】も消失していることに気づいた。だけど……

「……――あ」

 俺は【神様モード】が残っていることに気づいた。それは【シェア】などが無いと気づいた時には、起動していたからだ。視線操作してみると、現在位置が右上に四角いマップとして表示され、その下に文字で地名が書かれている。

 ここは【原初都市メア】のはずれにある【羊の牧場】と書かれている。
 俺はその後、左下に視線を向けた。
 すると【全体連絡】という表示が現れ【招集】などの文字が並んでいた。【個別連絡】などもある。これは俺が望んだチート能力だ。だが……【神様モード】は……? そこにある【ステータス】を見てみれば、俺の《神様》としてのステータスが表示された。つまりレベルが99999で、全ての能力が使える。たとえば高橋の治癒能力も、梓馬さんが望んだ力も、全てだ。

「……」

 これ、もしかしてショタ神の消し忘れでは……?
 多分そうだ。【神様モード】までパク……コピーしてしまったのだろう。本当に丸パ……一つも自分で考えなかったのだろうな。まぁ、神様も大変なんだろう。確認する余裕も無かったのだろうし。

「陽射?」

 すると高橋が首を傾げ、兄と梓馬さんも俺を見ていた。

「あ、なんでもない。ここは【原初都市メア】みたいだ」
「ふぅん、来たことがあるから場所が分かるのか?」
「う、うん。チュートリアルで一回来た」

 俺は【神様モード】が残っていることを言いそびれた。別に隠すつもりでは無かったのだが、単純に高橋の質問に答えた結果、タイミングを逃したのである。

「じゃ、とりあえず今日の宿を取ろうぜ」

 梓馬さんが財布を手に取りながら言う。兄と高橋が頷いた。
 三人が一本道を歩きはじめたので、俺も慌てて追いかける。

 これが、俺達の異世界生活の幕開けとなった。

 一本道が舗装された石畳に代わり、少しすると大きな道に出た。酒場が並んでいて、宿屋も多い。どこも〝冒険者〟が過ごす場として、自動生成されたものだ。

「どこかお勧めはあるか?」

 梓馬さんに問いかけられたので、俺は【神様モード】で各宿の詳細を見る。

「そこの右角の宿が、朝食と夕食つきで、長期滞在ができるみたいです。それに、四人部屋も二人部屋も一人部屋もある。一階は冒険者ギルドの仲介もしていて、依頼書の張り出しもしてるみたいだ。暇つぶしには、依頼をするのもいいかも」

 俺が述べると、三人が頷いた。
 宿も無いが、そもそも俺達はまだ、やることも特にない。
 その時、俺はポケットに、入れた覚えが無いのに何かが入っていることに気がついた。

「ん? ……あ!」

 見るとそれは、身分証だった。冒険者証としても、通行札などにも仕える、万能な大陸共通の個人管理カードだった。俺がそれを取り出すと、他の三人もハッとしたように、皆がポケットからそれを取り出した。すると梓馬さんが口角を持ち上げてニッと笑った。

「あのショタもいいこともしてくれるな。これで俺達は不審者扱いは免れる」
「そうだな。身分証は重要だろう」

 夕陽が静かに頷いた。ただ高橋が俺を見て、不思議そうな顔をした。

「個別の宿の内容まで覚えてるって、お前記憶力よかったんだな」
「その、っ……ええとな」

 俺は【神様モード】が残っていることを告げようとした。だが、夕陽が笑顔で頷いた。

「ああ。陽射は、すごく記憶力がいいんだ。そこも自慢の弟なんだ」

 夕陽のブラコンが発動した。夕陽の目には、俺が補正されて映っているらしい。
 高橋が若干呆れたような顔で頷いている。

「よし、宿に入るぞ」

 梓馬さんが歩き出した。俺達は石畳を進んでいく。
 そして、目的の宿【宿屋・柊】に到着し、扉を開けた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...