異世界クリエイター ~ゲームをしていたら、神様に剽窃されました~

猫宮乾

文字の大きさ
13 / 22
―― 第二章 ――

【013】微妙な空気

しおりを挟む

 残った俺達の空気は、微妙に重くなった。
 全員、高橋を心配しているからだ。なんだか味がしなくなってしまったメロンソーダを、俺は無理に飲み込む。

「ったく、仕方ねぇな。お前らは待ってろ。俺も行ってくる」

 不機嫌そうな顔のまま、梓馬さんが立ち上がった。
 それを見て、ハッとしたよう夕陽が顔を上げて見上げる。

「お前らは待ってろ。夕陽は、陽射を見てろ。〝お兄ちゃん〟なんだからな」
「っ、梓馬……気をつけろよ」

 兄の声に、ニヤッと梓馬さんが格好良く笑った。

「俺の心配か? お前も可愛いとこもあるんだな」
「ち、違う! そんなんじゃ……いや……その……心配はしてる。無事に戻ってこい」

 夕陽は素直だ。心配そうな顔のままで、梓馬さんに対して頷いた。

「行ってくる」

 そう言うと梓馬さんが歩きはじめた。見送った俺達は、残っている大量の料理を見る。

「なぁ、夕陽。本当に俺達は行かなくていいのかな?」
「陽射、俺はお前が危険な目に遭うのは絶対に見たくない。だから頼むから、自分も行くなんて言わないでくれ。俺だって高橋くんと梓馬のことは心配だ。でも、梓馬がいるなら、きっと高橋くんは大丈夫だ。俺は梓馬を信じる。あいつは、大切なところでは、嘘だけは絶対につかないんだ。そこだけは信用してる」
「そっか」

 普段は夕陽を好きじゃないとバレバレの嘘をついているが、本気の時や仕事上では違ったのだろう。俺は兄の言葉に頷きつつ、高橋が残していったラザニアを食べる。少しだけ味がするようになった。

 なんとか二人で食べ終えてから、俺達はそれぞれの部屋へと戻った。
 一人きりの宿の部屋は、なんだか空しい。
 俺は魔導具シャワーを浴びてから、タオルで髪を拭き、ベッドに横になって毛布を掛けた。硬く質素な寝台で、寝心地はお世辞にもよくない。

「大丈夫かなぁ……」

 心配と言えば、ロイドのことだって心配だ。この世界で唯一の、俺の顔見知りだ。
 溜め息ばかりが零れ落ちそうになる。

「俺達、この世界でやってけるのか……?」

 なにせ俺は、平々凡々な大学生で、中の中、全て平均的な大学生だった。
 特に取り柄らしいものも、勇気も無い。
 あるものといえば――……。

「【神様モード】か。うーん。積極的に使っていくべきだけど……これで、何をしたらいいんだろうな?」

 たとえば、世界を平和にする、なんて言うことは可能だと思う。
 魔王ですら、俺の前ではレベルに圧倒的な差がある。
 だがそれは勇者の仕事だし、この世界の人々が自分の手でつかみ取るべきではないだろうか。無闇に使うべきではないと思う。ここはもうゲームの世界ではないし、本当の神様はショタ神だ。

「じゃあ、俺には何が出来るんだろう?」

 ある程度は、俺の欲望も叶う。この世界でなら、好きなことが出来るだろう。
 だが……。

「俺って無趣味だし、特にやりたい事って思いつかないんだよな……」

 はぁっと深く息を吐く。
 この日は悩みながら、俺はいつの間にか微睡んだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

処理中です...