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―― 第二章 ――
【013】微妙な空気
しおりを挟む残った俺達の空気は、微妙に重くなった。
全員、高橋を心配しているからだ。なんだか味がしなくなってしまったメロンソーダを、俺は無理に飲み込む。
「ったく、仕方ねぇな。お前らは待ってろ。俺も行ってくる」
不機嫌そうな顔のまま、梓馬さんが立ち上がった。
それを見て、ハッとしたよう夕陽が顔を上げて見上げる。
「お前らは待ってろ。夕陽は、陽射を見てろ。〝お兄ちゃん〟なんだからな」
「っ、梓馬……気をつけろよ」
兄の声に、ニヤッと梓馬さんが格好良く笑った。
「俺の心配か? お前も可愛いとこもあるんだな」
「ち、違う! そんなんじゃ……いや……その……心配はしてる。無事に戻ってこい」
夕陽は素直だ。心配そうな顔のままで、梓馬さんに対して頷いた。
「行ってくる」
そう言うと梓馬さんが歩きはじめた。見送った俺達は、残っている大量の料理を見る。
「なぁ、夕陽。本当に俺達は行かなくていいのかな?」
「陽射、俺はお前が危険な目に遭うのは絶対に見たくない。だから頼むから、自分も行くなんて言わないでくれ。俺だって高橋くんと梓馬のことは心配だ。でも、梓馬がいるなら、きっと高橋くんは大丈夫だ。俺は梓馬を信じる。あいつは、大切なところでは、嘘だけは絶対につかないんだ。そこだけは信用してる」
「そっか」
普段は夕陽を好きじゃないとバレバレの嘘をついているが、本気の時や仕事上では違ったのだろう。俺は兄の言葉に頷きつつ、高橋が残していったラザニアを食べる。少しだけ味がするようになった。
なんとか二人で食べ終えてから、俺達はそれぞれの部屋へと戻った。
一人きりの宿の部屋は、なんだか空しい。
俺は魔導具シャワーを浴びてから、タオルで髪を拭き、ベッドに横になって毛布を掛けた。硬く質素な寝台で、寝心地はお世辞にもよくない。
「大丈夫かなぁ……」
心配と言えば、ロイドのことだって心配だ。この世界で唯一の、俺の顔見知りだ。
溜め息ばかりが零れ落ちそうになる。
「俺達、この世界でやってけるのか……?」
なにせ俺は、平々凡々な大学生で、中の中、全て平均的な大学生だった。
特に取り柄らしいものも、勇気も無い。
あるものといえば――……。
「【神様モード】か。うーん。積極的に使っていくべきだけど……これで、何をしたらいいんだろうな?」
たとえば、世界を平和にする、なんて言うことは可能だと思う。
魔王ですら、俺の前ではレベルに圧倒的な差がある。
だがそれは勇者の仕事だし、この世界の人々が自分の手でつかみ取るべきではないだろうか。無闇に使うべきではないと思う。ここはもうゲームの世界ではないし、本当の神様はショタ神だ。
「じゃあ、俺には何が出来るんだろう?」
ある程度は、俺の欲望も叶う。この世界でなら、好きなことが出来るだろう。
だが……。
「俺って無趣味だし、特にやりたい事って思いつかないんだよな……」
はぁっと深く息を吐く。
この日は悩みながら、俺はいつの間にか微睡んだ。
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