異世界クリエイター ~ゲームをしていたら、神様に剽窃されました~

猫宮乾

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―― 第三章 ――

【020】魅了魔術

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 領主宅は、街を一望できる山を削るようにして建てられていた。
 浮かない顔をしているサリアのあとについて、玄関の前に立つ。そして輪っか状の呼び鈴を鳴らすと、すぐに扉が開いて、執事が出てきた。サリアを見ると、不憫そうな面持ちになる。

「オズウェルとマシスに会いたいんです」
「……畏まりました」

 執事は俺達のことには触れず、中に通してくれた。そして廊下を先導しながら歩き、奥の一室に入った。そこでは、立っている背の高い青年が、もう一人の青年の顎を持ち上げている光景があった。背の高いほうが、屈んでチュッと唇に唇を押しつけた。

「可愛いな、マシスは」

 なるほど、背の高い青年がオズウェルなのだろう。サリアは泣きそうになって震えている。俺はマシスの首を見た。やっぱり。魅了魔術が込められた、赤い魔石が嵌まった首飾りをつけている。

「おい、オズウェル」

 すると夕陽が声をかけた。横には仁王立ちしている梓馬さんがいる。
 高橋は気が乗らないそぶりだったわりに、慰めるようにサリアの背中を撫でている。

「どういう気持ちでサリアくんを捨てたんだ?」
「捨てただなんて人聞きが悪い。俺は運命の恋に出会ってしまっただけだ! 俺の愛する相手は、マシスだったんだ!」

 熱弁したオズウェルの瞳が、恍惚としたように変わっている。明らかに焦点があっていない。俺は【神様モード】で魅了されている度合いを確認した。MAXと表示されている。

「ふふっ。オズウェル様は、僕のものなんですよっ」

 マシスがニコリと笑った。

「オズウェルとマシスは、どこで出会ったんだ?」

 梓馬さんが問いかける。

「マシスは男爵家のご令息で、元々が商人だから、この家に品を納品してくれたんだ。そのときに、一目見て、俺は惚れてしまったんだ。俺が口説き落とした」

 オズウェルが断言したとき、キラキラとマシスがつけている赤い魔石が光った。
 魅了魔術をより強くかけ直しているみたいだ。
 俺はひそやかに、腕輪型にしておいた杖に触れる。右手で左手首に触れた形だ。
 そして頭の中に魔法陣を思い浮かべ、魔石を破壊するために、透明な風の攻撃魔術を放つ。刃となった風が、魔石に直撃すると、赤い破片が飛び散った。

「え!?」

 マシスが声を上げる。するとガクンとオズウェルの体が揺れた。

「一体……俺はなにを……?」
「そ、そんな! オズウェル様! 僕、僕です。貴方の運命のマシスです」
「違う! 俺の運命の相手は、サリアだ。サリアだけだ!」

 睨み付けるようにオズウェルがマシスを見る。首飾りを握りしめて、マシスが真っ青になった。オズウェルはサリアに歩み寄ると、正面から抱きしめた。

「俺はどうかしていた。どうか、どうか俺を嫌わないでくれ。もう嫌いになってしまったか?」
「いいえ。ぼ、僕はオズウェルが大好きです。オズウェルこそ、本当に? 僕でいいのですか?」
「ああ、俺はサリアを愛している!」

 サリアが泣きながら笑って、頬を染めている。呆然とマシスがそちらを見ている。
 夕陽と梓馬さん、高橋は不思議そうに首を傾げている。

「あー、えっと、武器屋でちらっと聞いたけど、魅了魔術が入った首飾りがあるらしいよな? 今、なんか壊れた首飾り、マシスってもしかして、魅了魔術を使ってたのか?」
「――ッ、そうだよ! どうして壊れたりするの!? 秘密裏にせっかく隣国から輸入したのに!」

 泣きながらサリアが怒鳴った。それを聞いたオズウェルが、サリアを抱いたまま、首だけでふり返る。

「なんてことを。国王陛下にかけあって、男爵家の爵位取り上げをお願いする」
「えっ、そんなぁ!」
「ぜったいに許すことは出来ない。俺の気持ちを惑わせ、サリアを傷つけたことは」

 ボロボロとマシスが泣き始めた。

「帰ろうか。あとはサリア達の問題だし」

 俺が言うと、三人が頷いた。こうして俺達は、執事を見る。すると笑顔の執事が、頷いて、俺達を玄関まで案内してくれた。

「ありがとうございました」

 深々とお辞儀をした執事に対して、俺は首を振る。そうしていたら、執事がポケットから封筒を取り出した。

「よろしければ、これをお持ちください」
「これは?」

 梓馬さんが受け取りながら、首を捻る。

「お礼です。オズウェル様がマシス様にねだられて手に入れた、近隣の都市の――湖水都市エルファにある城の滞在チケットです。もう必要ないようなので、この度のお礼です。湖水都市はリゾート地なので、どうぞごゆるりと」
「ありがとうございます」

 夕陽が頭を下げる。これは、次の行き先も無事に決まったと思う。
 俺達は領主宅を後にし、今夜泊まる宿を見つけて、そこの一階の酒場で大陸地図を広げた。そこに湖水都市という地名があり、この都市の隣なので、半日歩けば到着しそうだった。

「明日はここに行くぞ」

 梓馬さんの声に、俺達三人は頷いた。リゾート地か、楽しみだな。そう考えながら、この日もゆっくりと眠った。



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