23 / 68
【23】そろそろ覚えている限りの未来(処刑へ至るまで)の整理をしてみよう!②
とりあえず。
――なんとしても俺は生き残る!
再決意したそんな夜だった。
その後俺は、16歳になった。
極力、余計なことには関わらないことにしよう。
ただ失踪も視野に入れた方が良いかも知れない……。
さて……――前世の通りに事が動いたのは晩秋のことだった。
その日俺は、父王陛下に呼び出されていた。
「ただいま参りました」
玉座の前で膝を突き頭を垂れると、父は微笑していた。
「実はフェルにお願いがあってね」
「なんです?」
「ウィズも今年で二十歳だ。そろそろこの国の跡継ぎのことを考えなければならない。けれどね、頑なに後宮を持つことを拒否しているんだよ。困ったものだね」
「結婚……ですか」
過去世の事を思い出し、俺は嫌な冷や汗を掻いた。
「仲の良いフェルの口からであれば、ウィズも耳を貸してくれるかも知れないと思ってね。打診してみてもらえないかな?」
「……」
俺は言葉に詰まった。
兄はこの国の跡取りだ(俺は継承戦争をしないからな!)。
けれど余計なことを言って、兄を激怒させるのは避けたい。兄は優しいが。
「フェル、頼めないかな?」
「……わかりました。機会がありましたら」
無理矢理そう言い、俺は微笑した。ああ、これが険悪な仲になるフラグではありませんように!
退席した俺は、その時、ライネルに声をかけられた。
「先ほど、お待ちいたしていたとき、奇跡の大賢者様がお見えになりました」
「え? 賢者が?」
「”いつもの酒場で待っている”との事でした」
「いつもの……?」
残念ながら、今世で俺はまだ飲酒も解禁されてはいないし、一度も酒場になど顔を出したことはない。いつもの、と口にしたライネルもまた怪訝そうな表情をしていた。
前世では、一カ所だけ、いつもの場所があった。街の場末の大衆酒場だ。
こころあたりなどそこしかないが――いつもの?
思案する。まさか、まさか、だ。
俺の動悸が激しくなった。あいつも……俺が転生したことを分かっているのか? ドクンと響いた鼓動。だが、それが道理である気がした。
「ライネル、街へ降りるからついてきてもらえないか?」
「――御意」
ライネルは決して俺には逆らわない。そして実際に賢者がそこにいるのかも分からなかったが、俺は、ライネルを伴い、前世でよく顔を出したその店ワーロックへと向かうことにした。
「やっぱり来たね」
目指したその店に、果たして賢者はいた。
「早急に耳に入れておいた方が良いと思うことがあってね」
「なんだ?」
俺がどうしてここが”いつもの”なのか問う前に、賢者はつらつらと語り始めた。
「フェル様は、魔族の王のことを知ってる?」
「……全魔族を統べる実力者だと聞く。どこからともなく現れて、いつの間にか就任する」
「引きこもりの病弱な殿下にしてはすごい知識だね」
賢者はそう言うと喉で笑った。
「ねぇ、フェル様」
「フェルで良い」
「フェル。魔力の強い人間と、魔族の違いはなんだと思う?」
唐突な言葉に、俺は一応酒の入っていないメイプルビールを頼みながら腕を組んだ。
それは、命題の一つだ。魔族と人間は容姿には差異がある。そして寿命にも差がある。
しかし、強い魔力を持つ人間は、特異な容姿に変化することも多く、大概の場合長命だ。
分かっているただ一つのことは、互いに敵対していると言うことだけだ。
魔族は人間を襲う。理由なく襲うのだ。
「僕は”今”の君の生き方が好きだよ」
賢者の言葉で、俺は我に返った。
「どういう意味だ?」
「僕が釘を刺したことを覚えている?」
その言葉に息を飲む。俺は、ライネルに聞こえないように気を配りながら、声を小さくして尋ねた。
「それって前世のことを知ってるのか?」
「僕は今、フェルを良い友人だと思っているから」
「答えになっていない」
流されたなと思い俺は目を伏せ、メイプルビールを飲んだ。
だが、それならば。俺だって聞きたいことがある。
「……だったら名前教えてくれよ」
俺は無理難題を突きつけたつもりだった。だから答えを期待してはいなかった。
「ワイズだよ」
しかし短く帰ってきた返答に目を瞠った。
――やはり彼は、賢者と言うだけあって、何か知っているのかも知れない。
「……あるいは、始祖王ならば……」
「え?」
「なんでもない、こっちの話」
俺には、沢山沢山聞きたいことがあった。俺が転生したと言うことを知っているのか、だとか。けれどそこから俺達は、雑談に移行した。
ただし帰り際、賢者は、フードの奥で笑った。
「僕はね、フェルの幸せを誰よりも祈っているよ」
なんとなく、それだけでも、嬉しかった夜だった。
――なんとしても俺は生き残る!
再決意したそんな夜だった。
その後俺は、16歳になった。
極力、余計なことには関わらないことにしよう。
ただ失踪も視野に入れた方が良いかも知れない……。
さて……――前世の通りに事が動いたのは晩秋のことだった。
その日俺は、父王陛下に呼び出されていた。
「ただいま参りました」
玉座の前で膝を突き頭を垂れると、父は微笑していた。
「実はフェルにお願いがあってね」
「なんです?」
「ウィズも今年で二十歳だ。そろそろこの国の跡継ぎのことを考えなければならない。けれどね、頑なに後宮を持つことを拒否しているんだよ。困ったものだね」
「結婚……ですか」
過去世の事を思い出し、俺は嫌な冷や汗を掻いた。
「仲の良いフェルの口からであれば、ウィズも耳を貸してくれるかも知れないと思ってね。打診してみてもらえないかな?」
「……」
俺は言葉に詰まった。
兄はこの国の跡取りだ(俺は継承戦争をしないからな!)。
けれど余計なことを言って、兄を激怒させるのは避けたい。兄は優しいが。
「フェル、頼めないかな?」
「……わかりました。機会がありましたら」
無理矢理そう言い、俺は微笑した。ああ、これが険悪な仲になるフラグではありませんように!
退席した俺は、その時、ライネルに声をかけられた。
「先ほど、お待ちいたしていたとき、奇跡の大賢者様がお見えになりました」
「え? 賢者が?」
「”いつもの酒場で待っている”との事でした」
「いつもの……?」
残念ながら、今世で俺はまだ飲酒も解禁されてはいないし、一度も酒場になど顔を出したことはない。いつもの、と口にしたライネルもまた怪訝そうな表情をしていた。
前世では、一カ所だけ、いつもの場所があった。街の場末の大衆酒場だ。
こころあたりなどそこしかないが――いつもの?
思案する。まさか、まさか、だ。
俺の動悸が激しくなった。あいつも……俺が転生したことを分かっているのか? ドクンと響いた鼓動。だが、それが道理である気がした。
「ライネル、街へ降りるからついてきてもらえないか?」
「――御意」
ライネルは決して俺には逆らわない。そして実際に賢者がそこにいるのかも分からなかったが、俺は、ライネルを伴い、前世でよく顔を出したその店ワーロックへと向かうことにした。
「やっぱり来たね」
目指したその店に、果たして賢者はいた。
「早急に耳に入れておいた方が良いと思うことがあってね」
「なんだ?」
俺がどうしてここが”いつもの”なのか問う前に、賢者はつらつらと語り始めた。
「フェル様は、魔族の王のことを知ってる?」
「……全魔族を統べる実力者だと聞く。どこからともなく現れて、いつの間にか就任する」
「引きこもりの病弱な殿下にしてはすごい知識だね」
賢者はそう言うと喉で笑った。
「ねぇ、フェル様」
「フェルで良い」
「フェル。魔力の強い人間と、魔族の違いはなんだと思う?」
唐突な言葉に、俺は一応酒の入っていないメイプルビールを頼みながら腕を組んだ。
それは、命題の一つだ。魔族と人間は容姿には差異がある。そして寿命にも差がある。
しかし、強い魔力を持つ人間は、特異な容姿に変化することも多く、大概の場合長命だ。
分かっているただ一つのことは、互いに敵対していると言うことだけだ。
魔族は人間を襲う。理由なく襲うのだ。
「僕は”今”の君の生き方が好きだよ」
賢者の言葉で、俺は我に返った。
「どういう意味だ?」
「僕が釘を刺したことを覚えている?」
その言葉に息を飲む。俺は、ライネルに聞こえないように気を配りながら、声を小さくして尋ねた。
「それって前世のことを知ってるのか?」
「僕は今、フェルを良い友人だと思っているから」
「答えになっていない」
流されたなと思い俺は目を伏せ、メイプルビールを飲んだ。
だが、それならば。俺だって聞きたいことがある。
「……だったら名前教えてくれよ」
俺は無理難題を突きつけたつもりだった。だから答えを期待してはいなかった。
「ワイズだよ」
しかし短く帰ってきた返答に目を瞠った。
――やはり彼は、賢者と言うだけあって、何か知っているのかも知れない。
「……あるいは、始祖王ならば……」
「え?」
「なんでもない、こっちの話」
俺には、沢山沢山聞きたいことがあった。俺が転生したと言うことを知っているのか、だとか。けれどそこから俺達は、雑談に移行した。
ただし帰り際、賢者は、フードの奥で笑った。
「僕はね、フェルの幸せを誰よりも祈っているよ」
なんとなく、それだけでも、嬉しかった夜だった。
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません
カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」
ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。
(これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!)
妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。
スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。
スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。
もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます?
十万文字程度。
3/7 完結しました!
※主人公:マイペース美人受け
※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。
たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)
婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる
古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。
【完結】暁の騎士と宵闇の賢者
エウラ
BL
転生者であるセラータは宮廷魔導師団長を義父に持ち、自身もその副師団長を務めるほどの腕のいい魔導師。
幼馴染みの宮廷騎士団副団長に片想いをしている。
その幼馴染みに自分の見た目や噂のせいでどうやら嫌われているらしいと思っていたが・・・・・・。
※竜人の番い設定は今回は緩いです。独占欲や嫉妬はありますが、番いが亡くなった場合でも狂ったりはしない設定です。
普通に女性もいる世界。様々な種族がいる。
魔法で子供が出来るので普通に同性婚可能。
名前は日本名と同じくファミリーネーム(苗字)・ファーストネーム(名前)の表記です。
ハッピーエンド確定です。
R18は*印付きます。そこまで行くのは後半だと思います。
※番外編も終わり、完結しました。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。