もしも生まれ変わったら異世界へと思っていたら、転生先も俺でした。

猫宮乾

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【23】そろそろ覚えている限りの未来(処刑へ至るまで)の整理をしてみよう!②

 とりあえず。

 ――なんとしても俺は生き残る!
 再決意したそんな夜だった。

 その後俺は、16歳になった。
 極力、余計なことには関わらないことにしよう。


 ただ失踪も視野に入れた方が良いかも知れない……。



 さて……――前世の通りに事が動いたのは晩秋のことだった。
 その日俺は、父王陛下に呼び出されていた。

「ただいま参りました」

 玉座の前で膝を突き頭を垂れると、父は微笑していた。

「実はフェルにお願いがあってね」
「なんです?」
「ウィズも今年で二十歳だ。そろそろこの国の跡継ぎのことを考えなければならない。けれどね、頑なに後宮を持つことを拒否しているんだよ。困ったものだね」
「結婚……ですか」

 過去世の事を思い出し、俺は嫌な冷や汗を掻いた。

「仲の良いフェルの口からであれば、ウィズも耳を貸してくれるかも知れないと思ってね。打診してみてもらえないかな?」
「……」

 俺は言葉に詰まった。
 兄はこの国の跡取りだ(俺は継承戦争をしないからな!)。
 けれど余計なことを言って、兄を激怒させるのは避けたい。兄は優しいが。

「フェル、頼めないかな?」
「……わかりました。機会がありましたら」

 無理矢理そう言い、俺は微笑した。ああ、これが険悪な仲になるフラグではありませんように!

 退席した俺は、その時、ライネルに声をかけられた。

「先ほど、お待ちいたしていたとき、奇跡の大賢者様がお見えになりました」
「え? 賢者が?」
「”いつもの酒場で待っている”との事でした」
「いつもの……?」

 残念ながら、今世で俺はまだ飲酒も解禁されてはいないし、一度も酒場になど顔を出したことはない。いつもの、と口にしたライネルもまた怪訝そうな表情をしていた。

 前世では、一カ所だけ、いつもの場所があった。街の場末の大衆酒場だ。
 こころあたりなどそこしかないが――いつもの?
 思案する。まさか、まさか、だ。

 俺の動悸が激しくなった。あいつも……俺が転生したことを分かっているのか? ドクンと響いた鼓動。だが、それが道理である気がした。

「ライネル、街へ降りるからついてきてもらえないか?」
「――御意」

 ライネルは決して俺には逆らわない。そして実際に賢者がそこにいるのかも分からなかったが、俺は、ライネルを伴い、前世でよく顔を出したその店ワーロックへと向かうことにした。


「やっぱり来たね」


 目指したその店に、果たして賢者はいた。

「早急に耳に入れておいた方が良いと思うことがあってね」
「なんだ?」

 俺がどうしてここが”いつもの”なのか問う前に、賢者はつらつらと語り始めた。

「フェル様は、魔族の王のことを知ってる?」
「……全魔族を統べる実力者だと聞く。どこからともなく現れて、いつの間にか就任する」
「引きこもりの病弱な殿下にしてはすごい知識だね」

 賢者はそう言うと喉で笑った。

「ねぇ、フェル様」
「フェルで良い」
「フェル。魔力の強い人間と、魔族の違いはなんだと思う?」

 唐突な言葉に、俺は一応酒の入っていないメイプルビールを頼みながら腕を組んだ。
 それは、命題の一つだ。魔族と人間は容姿には差異がある。そして寿命にも差がある。
 しかし、強い魔力を持つ人間は、特異な容姿に変化することも多く、大概の場合長命だ。
 分かっているただ一つのことは、互いに敵対していると言うことだけだ。
 魔族は人間を襲う。理由なく襲うのだ。

「僕は”今”の君の生き方が好きだよ」

 賢者の言葉で、俺は我に返った。

「どういう意味だ?」
「僕が釘を刺したことを覚えている?」

 その言葉に息を飲む。俺は、ライネルに聞こえないように気を配りながら、声を小さくして尋ねた。

「それって前世のことを知ってるのか?」
「僕は今、フェルを良い友人だと思っているから」
「答えになっていない」

 流されたなと思い俺は目を伏せ、メイプルビールを飲んだ。
 だが、それならば。俺だって聞きたいことがある。

「……だったら名前教えてくれよ」

 俺は無理難題を突きつけたつもりだった。だから答えを期待してはいなかった。

「ワイズだよ」

 しかし短く帰ってきた返答に目を瞠った。
 ――やはり彼は、賢者と言うだけあって、何か知っているのかも知れない。

「……あるいは、始祖王ならば……」
「え?」
「なんでもない、こっちの話」

 俺には、沢山沢山聞きたいことがあった。俺が転生したと言うことを知っているのか、だとか。けれどそこから俺達は、雑談に移行した。

 ただし帰り際、賢者は、フードの奥で笑った。

「僕はね、フェルの幸せを誰よりも祈っているよ」

 なんとなく、それだけでも、嬉しかった夜だった。


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