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【24】兄に後宮を持つように進言したら、冷戦になる未来。①
――十六歳の冬が来た。
無事に二次性徴も終わった俺は、目線と同じ高さになった窓に手を添えて、遠くに見える医療塔を見た。幸い、この年、医療塔の取り壊しはなかった。最初は俺がいるからかと思ったのだが――なんでも、ユーリスが議会で、薬草の有効性を唱えたため、取り壊し案がなくなったらしかった。さらにユーリスの生家であるアルバース子爵家が輸入した苗で、大流行していた食中毒がピタリと止まったため、その栽培をしている医療塔への注目度は高まっている。
取り壊しがなかったことの他に、この件により、俺の記憶よりも早いが、アルバース子爵家は、伯爵位を賜っていた。アルバース伯爵家となったのである。また、ユーリスを次期宰相にと推す声が出始めているというのも、噂で聞いていた。まぁ、俺は国政には関わらないのだから、どうでも良いが。
どうでもよくないのは――兄に、後宮を勧める件である……。
どのように切り出せば良いのか、いまだに俺は逡巡している。
この日も悩みながら、ため息をついた。窓が少し曇った。
「どうかなさったんですか?」
するとお茶を手にやってきたユーリスが首を傾げた。
振り返り、俺は腕を組んだ。
考えてみると、腹黒いユーリスは、非常に頭が回る。なのだから、こういう時の良い案を何か持っているかもしれない。
「兄上に後宮を持つように進言することになっているんだ」
「なるほど、ウィズ殿下も適齢期ですからね。しかしまぁ、言い出しづらいでしょうね」
「なぜだ?」
どうして言い出しづらいと知っているのかと、俺は驚いた。
まさか今後の展開を俺が知っていると、悟られたわけではないだろう。
「あれだけ溺愛されていたら、迂闊に言えないでしょう」
「……」
「ちょっと度を越えてますからね、ウィズ殿下の愛は。麗しき兄弟愛というにはちょっとなぁ――あ、申し訳ございません、つい本音が」
「兄上は俺に良くしてくださる」
俺は適当に濁した。確かにあのブラコンっぷりは、傍目から見てもやばかろうとは思う。当事者の俺自身でも引くほどなのだから、見ている周囲だって引いているだろう。
「それはそうと、兄上に結婚するように伝える、何か良い言葉はないか?」
「――そうですね、言葉というか……」
「何か案があるのか?」
「ほら、フェル殿下も結婚してしまえば良いのではないかと」
「なに?」
「弟殿下が結婚したとなれば、もちろん第一王子殿下だって結婚を意識するかなと」
納得してしまった。言われてみれば、その通りだ。
「参考になった」
これは良い案かもしれない。
さらに俺は、婿入りについて考えた。そして、結婚先で、悠々自適な生活を送るのだ。最高ではないか! 軌道修正も図ることが可能だ! 俺の目的はスローライフなのだ。
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