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【30】お祖父様の家で二番目の召喚獣を手に入れようと考えた。②
しおりを挟む父上が立っていた。
なぜここに?
そう思ってから――俺は、強い既視感に襲われた。
そうだ、俺は、前世でもこの光景を見たことがある。
何故なのかそう理解した途端、全身が震えた。
本能的に、絶対に父に、自分の存在を気づかれてはならないと思った。
――どうして? 自分の思考の理由がわからない。
ドクンドクンと騒ぐ心臓の音に、焦燥感が浮かんでくる。こめかみから汗が伝った。俺は木に頭をあずけて、静かに目を閉じた。気配を殺さなければならない。
どれくらいそうしていたかは分からない。
嫌な風が、不意に消えた。途端、安堵で全身の力が抜けた。
ホッとしながら、俺は再び、父がいた方角に視線を向け――硬直した。
そこでは、父上が嗤っていた。しっかりと目が合った。瞬間、嫌な気配が舞い戻ってくる。一度気配が途切れたのは、罠だったのだと理解した。体が凍りついたようになって動かない。じっと見据えられ、蛇に睨まれた蛙よりも、己が無力であると気づかされた。果てしない絶望感が襲ってくる。なんだ、これは?
「!」
その時、後ろからグイと抱き寄せられた。
驚いて息を呑み、瞬時に視線で振り返ると、そこには険しい顔のラクラスが立っていた。
「今度こそ渡さない」
「っ」
俺を抱きしめて、そのままラクラスは転移した。
何が起きたのか分からなかったし、ラクラスの言葉の意味も分からなかった。
ただ、助かったということは分かった。
「フェル様!」
俺がラクラスに連れられて戻ったのは、お祖父様の家の庭だった。
使用人達が走ってきた。
「お一人でであるかないでください! みんなで心配していたんです! ライネル様も探しておられます!」
おずおずと頷きながら、俺は、俺を抱きしめているラクラスを見上げた。
普段ならば、ラクラスの気配に人々は近寄らないから、不可思議に思ったのだ。
だが現在は、ラクラスが強い威圧感を押し殺しているのが分かる。
「そちらの召喚獣は?」
誰かが言った。俺は驚いて、ラクラスだと答えようとした。だが――……
「フェルの新しい召喚獣だ。二番目の」
「!」
「これからは常に共にいる」
いつも気まぐれで束縛されるのも定住するのも大嫌いなのがラクラスだと、俺はよく知っていた。そのラクラスの口から、「共にいる」だとか、「常に」などという言葉が出てきたものだから、心底驚いた。しかし、ぎゅっと俺を抱きしめる腕に力を込めたラクラスは、それ以上何も言わない。使用人達もそれなら安全だと頷いている。
「ラクラ――……名前は?」
「ラクラスと呼んでいい。周囲には別の名前に聞こえ、別の外見に見えるように魔術をかけておいた」
「そうか」
頷いてから、俺は思い出して口にした。
「助けてくれたんだな、ありがとう」
「――ああ」
頷いたラクラスは、俺の頭の上に顎を乗せた。
こうして――この日から、ラクラスがいつも俺のそばにいるようになった。
近衛のライネルよりも、同じ部屋にいるから、ラクラスの方が距離は近い。
そもそも関係性からして異なるが。
さらに、俺は祖父の家で、新たな召喚獣を得たことになっているから、これでいつでも魔族を撃退できるようになった。しかもそこそこ強い召喚獣ではなく、そこそこの力に抑えているラクラスを従えているわけだから、怖いものなしである。
なお、王宮に帰還して、父上である国王陛下に召喚獣の報告をしたのだが、いつもどおり柔和に微笑んでいた。顔立ちは同じなのだが、あそこで見た嫌な気配は微塵もない。白昼夢だったとは思えないが、父とあの異質な気配の持ち主が、同一人物だとも思えなかった。
「なんだったんだろうな」
俺が呟くと、ラクラスがこちらを見た。
「忘れろ」
ラクラスは、それしか言わない。
「俺が必ず守るから、安心しろ」
そう言ってラクラスは、ソファに座って膝を組んだ。
まぁ、最強の召喚獣がそういうのだから、大丈夫だろうか。
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