もしも生まれ変わったら異世界へと思っていたら、転生先も俺でした。

猫宮乾

文字の大きさ
30 / 68

【30】お祖父様の家で二番目の召喚獣を手に入れようと考えた。②

しおりを挟む

 父上が立っていた。

 なぜここに?
 そう思ってから――俺は、強い既視感に襲われた。
 そうだ、俺は、前世でもこの光景を見たことがある。
 何故なのかそう理解した途端、全身が震えた。
  本能的に、絶対に父に、自分の存在を気づかれてはならないと思った。
 ――どうして? 自分の思考の理由がわからない。
 ドクンドクンと騒ぐ心臓の音に、焦燥感が浮かんでくる。こめかみから汗が伝った。俺は木に頭をあずけて、静かに目を閉じた。気配を殺さなければならない。

 どれくらいそうしていたかは分からない。
 嫌な風が、不意に消えた。途端、安堵で全身の力が抜けた。
 ホッとしながら、俺は再び、父がいた方角に視線を向け――硬直した。
 そこでは、父上が嗤っていた。しっかりと目が合った。瞬間、嫌な気配が舞い戻ってくる。一度気配が途切れたのは、罠だったのだと理解した。体が凍りついたようになって動かない。じっと見据えられ、蛇に睨まれた蛙よりも、己が無力であると気づかされた。果てしない絶望感が襲ってくる。なんだ、これは?

「!」

 その時、後ろからグイと抱き寄せられた。
 驚いて息を呑み、瞬時に視線で振り返ると、そこには険しい顔のラクラスが立っていた。

「今度こそ渡さない」
「っ」

 俺を抱きしめて、そのままラクラスは転移した。
 何が起きたのか分からなかったし、ラクラスの言葉の意味も分からなかった。
 ただ、助かったということは分かった。

「フェル様!」

 俺がラクラスに連れられて戻ったのは、お祖父様の家の庭だった。
 使用人達が走ってきた。

「お一人でであるかないでください! みんなで心配していたんです! ライネル様も探しておられます!」

 おずおずと頷きながら、俺は、俺を抱きしめているラクラスを見上げた。
 普段ならば、ラクラスの気配に人々は近寄らないから、不可思議に思ったのだ。
 だが現在は、ラクラスが強い威圧感を押し殺しているのが分かる。

「そちらの召喚獣は?」

 誰かが言った。俺は驚いて、ラクラスだと答えようとした。だが――……

「フェルの新しい召喚獣だ。二番目の」
「!」
「これからは常に共にいる」

 いつも気まぐれで束縛されるのも定住するのも大嫌いなのがラクラスだと、俺はよく知っていた。そのラクラスの口から、「共にいる」だとか、「常に」などという言葉が出てきたものだから、心底驚いた。しかし、ぎゅっと俺を抱きしめる腕に力を込めたラクラスは、それ以上何も言わない。使用人達もそれなら安全だと頷いている。

「ラクラ――……名前は?」
「ラクラスと呼んでいい。周囲には別の名前に聞こえ、別の外見に見えるように魔術をかけておいた」
「そうか」

 頷いてから、俺は思い出して口にした。

「助けてくれたんだな、ありがとう」
「――ああ」

 頷いたラクラスは、俺の頭の上に顎を乗せた。
 こうして――この日から、ラクラスがいつも俺のそばにいるようになった。
 近衛のライネルよりも、同じ部屋にいるから、ラクラスの方が距離は近い。
 そもそも関係性からして異なるが。

 さらに、俺は祖父の家で、新たな召喚獣を得たことになっているから、これでいつでも魔族を撃退できるようになった。しかもそこそこ強い召喚獣ではなく、そこそこの力に抑えているラクラスを従えているわけだから、怖いものなしである。

 なお、王宮に帰還して、父上である国王陛下に召喚獣の報告をしたのだが、いつもどおり柔和に微笑んでいた。顔立ちは同じなのだが、あそこで見た嫌な気配は微塵もない。白昼夢だったとは思えないが、父とあの異質な気配の持ち主が、同一人物だとも思えなかった。

「なんだったんだろうな」

 俺が呟くと、ラクラスがこちらを見た。

「忘れろ」

 ラクラスは、それしか言わない。

「俺が必ず守るから、安心しろ」

 そう言ってラクラスは、ソファに座って膝を組んだ。
 まぁ、最強の召喚獣がそういうのだから、大丈夫だろうか。




しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。

白家の冷酷若様に転生してしまった

夜乃すてら
BL
 白碧玉(はく・へきぎょく)はうめいていた。  一週間ほど前に、前世の記憶がよみがえり、自分が『白天祐の凱旋』という小説の悪役だと思い出したせいだった。  その書物では碧玉は、腹違いの弟・天祐(てんゆう)からうらまれ、生きたまま邪霊の餌にされて魂ごと消滅させられる。  最悪の事態を回避するため、厳格な兄に方向転換をこころみる。  いまさら優しくなどできないから、冷たい兄のまま、威厳と正しさを武器にしようと思ったのだが……。  兄弟仲が破滅するのを回避すればいいだけなのに、なぜか天祐は碧玉になつきはじめ……? ※弟→兄ものです。(カップリング固定〜) ※なんちゃって中華風ファンタジー小説です。 ※自分できづいた時に修正するので、誤字脱字の報告は不要です。 ◆2022年5月に、アンダルシュのほうで書籍化しました。  本編5万字+番外編5万字の、約10万字加筆しておりますので、既読の方もお楽しみいただけるかと思います。  ※書籍verでは、規約により兄弟の恋愛がNGのため、天祐が叔父の子――従兄弟であり、養子になったという設定に変わっています。

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

処理中です...