僕は王室初のクズかもしれない。

猫宮乾

文字の大きさ
4 / 16

【四】

しおりを挟む

 そしてその日はみんなで飲みに行った。
 もちろん僕はいい子なので、きちんと連絡をしたし、SPもついてきた。
 そこそこの広間の外で待っていてもらったけど。
 懐かしい話に花を咲かせて、二軒目に行くことになった。
 メンバーがこれなので、あとは時間帯もあって、予定もOKだったので、お許しが出たのである。そちらでは、それとなく男女別の部屋にした。もちろん、特に礼に聞かせたくない話だったからである。

「――あのさぁ、紺」
「ああ、礼の話か」
「僕と春香も気にしてたんだよねぇ」

 頷いたアシェッドに、本当かよという感情を込めた視線を送ってしまった。

「何より体に悪いっていうのが第一だけどさ、他にも問題がある。あれでもね、一応ね、礼は女の子なんだよ? 僕は、一応もなにも男だし、この状況は、危険でしょう? 礼にとって」
「「……」」

 僕の言葉に、紺とアシェッドが黙ったあと、顔を見合わせた。
 それから二人は首を捻った。

「迷惑の間違いじゃないのか? 問題って」
「僕も、そこは問題じゃないと思うんだけど……問題なの?」
「……え?」

 狼狽えた僕の前で、二人が同時に頬杖をついた。
 左利きのアシェッドは左、右利きの紺は右だ。

「まぁ確かに礼は性別的には女だな」
「そうだねぇ。礼ちゃんは、非常に美人でもあるね。僕は春香が一番だけど」
「ああ。黙ってれば、礼は最高に美人だな。親戚の贔屓目かもしれないが」
「けど僕は、女性としてみたことは一度もなかったよ。てっきり柾仁もそうだと思ってた」
「俺もだ。正直な話、世話でブラック企業とやらのような勤務体制状態になっていて迷惑だという話だと思ってた」
「僕もだよ。絶対、三人でそれぞれ負担しようって提案だと思ってた。いないと困るから絶対礼ちゃんにはいてもらわないといけないけど、お世話が大変だから」

 その後、複雑そうな顔で、また二人は顔を見合わせ、そして僕を見た。

「迷惑じゃないんなら、今後もよろしく頼む」
「うんうん。だってそれって、柾仁が、性欲我慢すればいいだけだし!」
「ちょっ、違うから! 僕はもしもの場合を言ってるだけだから!」
「もしもだと……?」
「僕だったら礼ちゃんは絶対ない。もしもなんてない。そんなことを考えさえしないよ」「アシェッドの意見に賛成だ。それに、礼の側からお前に迫るとは思えない」
「同感同感。柾仁が何もしなきゃ、何も起きないよ!」
「誓って僕も何もしないけどね」
「「……」」
「僕だって女の子としては見れないよ」

 結局この話はそれで終わってしまった。
 その後は雑談に花を咲かせ、二人の恋バナを聞いて過ごした。
 幸せそうでなによりだ。

 つまり、この日常が続くのか。
 僕はため息をつきながら、翌日を迎えた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

悪役令嬢と氷の騎士兄弟

飴爽かに
恋愛
この国には国民の人気を2分する騎士兄弟がいる。 彼らはその美しい容姿から氷の騎士兄弟と呼ばれていた。 クォーツ帝国。水晶の名にちなんだ綺麗な国で織り成される物語。 悪役令嬢ココ・レイルウェイズとして転生したが美しい物語を守るために彼らと助け合って導いていく。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...