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【第十六話】意識あるSpace
しおりを挟む「ぁ、ぁ、ぁ……ああ……」
その後、俺は全身にキスをされて、すすり泣いた。鎖骨、乳首、と、始まったキスであるが、その後、太股の付け根、膝の裏側、くるぶし、足の指や手の指、脇、肩と、全身にキスマークをつけられ、舐められ、甘く噛まれ――俺の体は熱を帯びて、ドロドロになってしまった。そうしながら、右手の指では、俺の後孔を、グレイグが丹念に解していった。気づくと俺の陰茎は反応していて反り返り、先走りの液が垂れていた。
「ひぁ!」
グレイグの三本の指がバラバラに動いていたのだが、その内の二本の指先が、俺の内部の感じる場所を掠めた。おもいっきり俺は背を仰け反らせる。すると気を良くしたように、グレイグが見つけ出したそこばかりを執拗に嬲り始める。
「ぁ、あア! ああ、っ……んン……っふ」
「まだまだキスは足りないか?」
「ああ……も、もう……もう、良い、良いから、あ、あ、早く、っ」
「早くなんだ? ≪教えてくれ≫」
「あぁ……っぁ……ァ……グレイグ。グレイグ、好き」
「俺も好きだ」
「好き、ぁ……あ、あ」
「だが、それでは、どうして欲しいのか分からないな。≪言え≫」
「挿れてくれ……――ひぁ、あああ!」
俺が懇願すると、指を引き抜き、すぐに屹立した先端を、グレイグがあてがってきた。そして一気に雁首まで、俺の中へと挿入した。俺は思わず、グレイグの体にしがみつく。
「ライナ、少し力を抜けるか?」
「む、無理だ、こんな、あ、あ、熱い……熱い! 体、熔ける、あ、ぁァ……あ、息できない……やぁ、ぁ……グレイグ、ぁ、俺、俺もう……」
「辛いか?」
「気持ち良すぎて辛い。グレイグが好きだ」
「! 俺も好きだ、が、そういう事なら、止めるつもりはない」
「あ、あ、あ」
そうして激しい抽挿が始まった。肌と肌がぶつかる音がする。痛みなどは無い。ただ繋がっている個所から、全身に快楽が響いてきて、頭が真っ白になってしまう。太く硬く長いグレイグの陰茎に、抉るように貫かれた時、俺はボロボロと泣いた。あんまりにも気持ちが良すぎた。Sexって凄いんだなって、俺は二度目の人生であるが、初めて学んだ。
「あ、ああ!」
その時、グリと感じる場所を突き上げられて、俺は射精した。するとほぼ同時に、内部に飛び散るグレイグの白液を感じた。そのまま、俺はぐったりと寝台に沈んだ。俺から、グレイグが陰茎を引き抜く。抜ける時、タラリと白液が零れる感覚がした。
「思いが叶った。俺は最高に幸せだ」
「……俺も……グレイグと一緒で、一つになれて、嬉しい」
「そう言う可愛い事を言うと、今夜は眠らせてやれなくなるな」
「――え?」
俺が目を丸くすると、満面の笑みでグレイグが俺を見た。
「≪四つん這いに≫」
「!!」
初めてのコマンドに、俺は息を呑む。先程までの行為で熱くなった体に浮かんでいた汗が、俺の髪を肌に張り付かせているのだが、思わずそれに触れてから――俺はギュッと目を閉じた。グレイグの希望は叶えたい。それは、グレイグが好きだからだ。無論、俺が褒められたいからでもあるが、グレイグが大切だから、グレイグの言葉には何でも従いたくなってしまう。
俺は力の入らない体を叱咤し、体勢を変えた。するとグレイグが俺の腰骨の少し上を掴み、バックから挿入してきた。
「あ、あああ!」
緩慢に、しかしじっくりと奥深くまで貫かれた。前立腺が擦り上げられ、その後最奥までグレイグの陰茎が届く。グっと深く結腸を刺激されて、俺は涙ぐんだ。頭が真っ白になる。ただでさえ快楽でその状態だったというのに――その時笑み交じりの荒い吐息と少し掠れた【命令】が響いて聞こえた。
「≪伏せろ≫」
「う……」
俺は上半身を支えていた腕から力を抜いた。すると俺の背中に、グレイグが体重をかけてきた。そうしながら、ギリギリまで陰茎を引き抜き、ねっとりと俺の耳の後ろを舐める。そのまま寝バックの体勢になり、緩やかにグレイグに腰を動かされ、俺はむせび泣いた。
「あ、あああ……ダメだ、イっちゃう、うあ、ああああ」
「≪Cum≫」
「やぁあああ!」
ぶわりと強い言葉に囚われて、俺は果てた。目をぎゅっと閉じると、眦から涙が零れ落ちていった。
「全然足りないな。俺が、どれだけこの日を待っていたか分かるか?」
「あ、ああ……」
「好きだ、ライナ」
「ああああ! 俺も、俺も好き――!! ひ、ぁ、まだ動かないでくれ、やぁあああ!」
残酷なほどの快楽に襲われながらも、俺は確かに感じた。幸せだ、と。
直後、俺の意識が、ぶわりと膜のようなものに飲み込まれたように変わった。フワフワと、視界が定まらなくなり、胸の中を満たしていた幸せな感覚が、俺の全身を覆った気がした。俺はこれまで、意識のある状態では、【Space】を経験した事が無かったのだが、この時は、はっきりと自分がその状態にあると分かった。
「あ……ぁ……」
俺の陰茎からは、ずっと白液が出ていく。俺の内部には、ずっとグレイグが放っている。繋がっている。はっきりと肉体はグレイグの陰茎の形を感じ、覚えていくというのに、乖離した意識は別の事を考えていた。夢見心地な意識は、フワフワしていて、俺の思考は麻痺していて、とにかくただただひたすらに幸せな感覚に飲み込まれている。
「ライナ、好きだぞ」
「あ……」
「ライナは俺をどう思っている? ≪言え≫」
「好き、好きだ……っく、ぁ、俺、好きでいて、良いの?」
「≪Good≫、当然だ。俺だけを好きでいなければ、≪許さない≫」
「好き、好きだ。グレイグ、ぁ……」
「もっともっと俺を好きになれ。そして、その愛よりも俺の愛の方が深い事、思い知ると良い」
グレイグが俺の後孔から、陰茎を引き抜いた。そして、俺を抱き寄せ、隣に寝転んだ。
「早く戻って来い、お前と話がしたい」
「あ……」
「まぁ、幸せに浸るライナを見るのは、俺にとっての幸福でもあるが」
その言葉を聞いたのを最後に、俺はどうやら眠ってしまったようだった。これが、俺の生まれて初めての、明確な記憶にある【Space】だった。
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