転生したら悪役だった俺、実は勘違いしていたのかもしれない。

猫宮乾

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―― 本編 ――

【三】正気を疑うに至った夜(★)

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「座れ」
「ああ……ああ? ベッドでいいのか?」

 この室内にはソファもあるが、現在ソファの上には俺が脱いだ服をたたんでおいてしまった。無駄に几帳面な俺は、衣類をテーブルの上に移動させるべきか悩んだ。

「ベッドでいい」
「分かった」

 おとなしく座ると、宰相閣下は拘束具を手に取ると、俺の前に立った。

「頭の上で腕を組め」

 素直に従うと、宰相閣下が俺の両腕を拘束した。手首を関節をきめられたので、その状態で軽く胸板を押された瞬間、俺はベッドに転がった。しかし尋問をするなら、全身を拘束した方がいいのではないだろうか。今の状態だと蹴り飛ばして、縄抜けができてしまう。俺はこれまでの人生、訓練の連続だったから余裕だ。筋力も鍛えているから、別に魔力を封じられても困らない。

「これがなんだか分かるか?」

 すると宰相閣下がポケットから小瓶を取り出した。

「これは、貴様を素直にさせる薬だ。即ち媚や――」
「つまり自白剤か」
「くッ……ま、まぁ、そ、そうかもしれないな!」

 俺が自分の導出した答えに満足していると、何故なのか宰相閣下が咽せた。

「……まぁいい。結果は同じだ。体にじっくり聞いてやる。そして俺を刻みつけてやる」
「刻む……? 尋問官以外は、暴力による自白の強制は禁止されているが……」

 鞭でボコボコに打たれて背中が傷つく光景を想像し、俺は少し悲しくなった。だが、フードを取っていても、俺は鉄壁の無表情である。恐怖で凍り付いているわけではなく、もう何年もフード任せで表情筋を動かさない生活をしてきたから、咄嗟に表情が変化しなかっただけだ。

「この状況でもまだクラウドは……なんというか……」
「?」
「とにかく先に既成事実だ」
「事実として、冤罪だ。俺は指示をしていない。ルインも俺が知る限りは、そういった機密情報の流出に加担する性格ではないが……事実は知らないから、そちらの擁護は控える」
「真面目だな。そういうところも実に……そそる」

 宰相閣下はそう述べると、胸元の服を緩めてから、上着を脱ぎ捨てた。
 そしてベッドの上にのり、俺にのしかかってきた。

「宰相閣下……?」

 ここにきてはじめて俺は、なんかちょっと変だなと気がついた。

「ん!?」

 気づいた一番の理由は、イメージとして自白剤は経口摂取だったのだが、それを指にまぶした宰相閣下に人差し指をズブリと後孔に突っ込まれたからである。

 確かにこういった拷問はあるとは聞く。
 羊の毛を入れて悶えさせて自白を促すと言った拷問だ。
 だが自白剤の中でこういう摂取の方法をする液体は、寡聞にして知らない。

 人差し指の第一関節、第二関節と、骨張った宰相閣下の長い指が入ってきた。押し広げられる感覚がするも、ぬめる自白剤(? なのか? そうなのか? らしきもの)のおかげで痛みはない。唖然としたままで俺は、目を丸くして宰相閣下を見ていた。すると指が二本に増えた。今度はより一層押し広げるように指が動く。弧を描いてみたり、二本の指を広げるようにしたり、それが続いてからゆっくりと抜き差しが始まった。

「……」

 これは、あれである。
 前戯だ……!
 俺がテストでプレイしたBLゲームで、国王陛下が散々攻略対象に似たようなことをされていたし、俺だって前世知識としてアナルセックスの存在くらい聞いた事がある。

 いよいよ俺は驚愕した。
 なにせ相手は宰相閣下だ。性的な気配なんて、それこそ微塵も感じさせない献身的な感じで、相思相愛になったハッピーエンドの時のみ優しく国王陛下を抱くという設定の、じれったくもどかしいキャラクター……のはずだった。

 しかしこの状況、間違いなく俺にエロ尋問をしようとしている。一体何故だ? 何が起きているんだ?

「……っ、宰相閣下」
「そろそろ効いてきたか?」
「あの、俺は何を話せばいいんだ? 話せることは何もないが、いいや、その……何が聞きたいんだ?」

 目的は尋問のはずである。困惑しっぱなしのままで俺が尋ねると、再び宰相閣下が咽せた。ちなみに俺は毒物に対する耐性訓練もそこそこしているので、実は自白剤は盛られたとしても、ちょっと頭がぼーっとしたくらいで終わる自信しかない。

「……、……」

 宰相閣下が残念なモノを見る目で俺を見た直後、急に意地悪く笑った。
 そして指先を軽く折り曲げた。

「あ」

 俺は思わず声を出した。何故かそこを刺激されると、ジンっと全身になにか熱のようなものが漣のように駆け抜けたからである。トントントンと宰相閣下が、俺が声を出した場所ばかりを刺激し始めた。慌てて俺は沈黙した。これは、きっと俗に言う(? 医学用語だったか? 保健体育の時間の記憶は遙か彼方だ)、前立腺に違いない。

「宰相閣下……お、おい……」
「天国を見せてやる。もう俺なしではいられないようにな」
「!?」

 その後ぬめる液体を増量した宰相閣下は、指を三本に増やした。そして俺の内側をぐちゃぐちゃとかき混ぜるように解し始めた。薬が効いているかは知らないが、俺の全身が次第に熱くなってくる。

「ッ」

 そうして再びグリと強めに前立腺を刺激された時、俺は勃起した。
 まずいなこれ、普通に気持ちいいな? 激務過ぎてこの人生では処女童貞、前世においても同じ状況だった俺は、早々に出したくなった。なおこの世界には、振り返る限り女性は存在しない。子供は神殿で祈ると生まれてくるようだ。つまり、祈らないので性行為をしたからと言って、俺が妊娠するという不安はない。

 相手は宰相閣下。顔面が整っている麗人である。俺と同じくらいの背丈であり、現在服を脱ぎ捨てた姿を見ると、戦闘に使う筋肉は俺の方があるだろうが、宰相閣下も負けず劣らず文官にしては細マッチョだ。着痩せするタイプなのかもしれない。

 別に気持ちいいしこのままでもよくないかと思った俺は、そのまま視線を下げて、硬直した。

 ――デカい!

 宰相閣下の既にそそり立っているイチモツを見て、俺は一瞬で我に返った。なんでこの状況で宰相閣下が完全に反応しているのかはともかくとして、どう考えても俺のよりデカい。

「宰相閣下……」
「なんだ? 早く欲しくなってきたか?」
「正気か?」
「ああ。貴様がどんな風に啼くか楽しみだ」
「……俺を抱くつもりなのか?」
「やっと分かったか」

 ニヤリと宰相閣下は笑ったが、俺は完全に正気を疑うに至った。こんなにデカいものが俺の中に挿いるわけがないだろ!

「ああっ!」

 しかしそのまま指を引き抜かれて、一気に雁首まで挿入された。
 めり込んでくる熱に、俺は背を撓らせる。焦りすぎて反抗できない。驚きで全身をガチガチにしていると、陰茎がググっと挿入された。宰相閣下は容赦が無い。俺の内側がどんどん押し広げられていく。内壁を擦りあげるように動かれると、ゾクゾクゾクと背筋に熱がこみ上げていく。あ、やっぱり気持ちいい。衝撃は強いが、これは気持ちいい。じっくりと慣らされたからなのか、ここがBLゲームの世界だからなのかは知らないが、痛みは全然無くて、普通に気持ちいい。

 逆に気持ちよくて大変なので、俺はもがきかけた。そこに来て初めて、魔力が抜けているから、それに伴い全身からいつもより力が抜けていたのだと思い出した。身動きができない俺の腰をつかみ、より深く陰茎を進めた宰相閣下が動き始める。

「っ――ぁ……ッッ」

 声を堪えた俺は、肌と肌がぶつかる音を聞きながら、全身にびっしょりと汗をかく。
 宰相閣下は、今度は陰茎の先端で俺の前立腺をトントントントンと体を揺さぶるようにしながら突き上げている。まずい、これはまずい。全身にさらにびっしりと汗をかいた俺は、思った。これは、頭がバカになる。

「ッ!」

 そのまま少し強く突き上げられた瞬間、俺は放った。
 とんでもなく気持ちよかった。
 肩で息をしていると、パシャリと音がした。生理的な涙がにじむ目で俺がそちらを見ると、宰相閣下がいい笑顔で魔導動写機を構えていた。これは俺が前世知識で言うところのデジカメのような品である。この世界の写真は、写真なのだが中の人が動く。

「最強の部隊長が男に抱かれてよがっていた姿、広まれば貴様の権威は失墜だ」
「……」

 果たして俺に権威はあったのか分からないが、どう考えても尋問中に相手に勃起して抱いた宰相閣下の方の権威が失墜すると漠然と考える。

「約束通り、ルインは解放しよう。だが、これをばらまかれたくなかったら、今後俺の呼び出しには従ってもらう」
「解放は嬉しいが、それはできない」
「ばらまかれてもいいというのか?」
「――いや、俺は仕事で魔獣討伐で外に出ることも多いから、呼び出されても応えられるとは限らないからな。出張もあるし」
「真面目だな!? ッチ、そ、そうじゃないんだが、その、だから……無論俺がきちんと貴様が暇なときに声をかける」
「? そうか。ところで、ルインは結局どんな機密を盗み出したんだ?」
「――宰相府の来週の食事のメニューを、恋人経由で聞き出した」
「毒殺を危惧したと言うことか?」
「違う! 適当な理由をつけて貴様を呼び出して、今宵の行為をするために、だから――」
「宰相閣下。その魔導動写機はまだ稼働中のようだが……」

 自分の罪も撮影するというのは、ちょっと抜けていると俺は思った。
 すると宰相閣下が残念なモノを見る顔をした。

「とにかく! 以後、貴様は俺のものだ!」
「……」
「嫌だというなら、この映像写真をばらまくからな!」
「……」

 宰相閣下は威厳たっぷりの顔をしている。非常に自信に満ちあふれた顔に戻った。
 しかし俺は賢者タイムのままだったので、とりあえず無言になり、その後は――激務のせいで寝不足だったこともあり、その場で爆睡した。


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