後天性オメガになった俺の顛末

猫宮乾

文字の大きさ
1 / 8
―― 本編 ――

001

しおりを挟む
「ぁ……ッッ」

 体から陰茎が引き抜かれる感触、たらりと零れた白濁。

 ぐったりとベッドに頬を預け、俺はうなじに感じる噛み傷の痛みに、さすがはアルファだなだなんて考える。俺を抱いたのは、俺がボディーガードを担当している、春木コーポレーションの若き代表取締役である、春木幸平はるきこうへいだ。俺と同じ、二十七歳。この国屈指のセレブは、何かと敵も多いそうで、専属契約をしている警備会社があり、俺はそこから派遣されて、もう春木社長について長い。今年で三年だ。春木は二十二歳で起業して、すぐに世界を股にかける企業の代表となったという逸材だ。

七瀬ななせ、大丈夫かい?」

 俺の頬に触れながら、春木がにこりと笑った。俺はかなりガタイのよいアルファなのだが、そんな俺のどこを好んでなのか、アルファ同士だというのに、春木は俺を頻繁に抱く。俺は、断らない。

 元々ボディーガードになった頃から、春木に惹かれていたからだ。みんなが羨望し、憧憬する春木は、俺から見ても魅力的な人物で、世の中にはこんな風に何でも持っている人格者もいるのかと憧れていたら――ある日不意に、ベッドに誘われた。

 ホテルの客室まで春木を送って、帰ろうとした時だ。

『七瀬も一緒に寝ていかない? これは――夜のお誘いだよ』

 その時も、春木はにこりと笑っていた。俺よりも長身の春木を見上げた俺だって、別段背が低いわけではない。百七十八センチほどだ。ただ春木は百八十九センチもある。

 俺はその時、硬直した。自分側が、春木を見る度に胸が疼くのを見透かされたのかと思ったせいだ。続いて、〝夜のお誘い〟という言葉を理解した瞬間、カッと赤面した自信がある。熱い頬を見られたくなくて、その時俺は俯いた。するとベッドに座っていた春木が立ち上がり、俺の前に立ち、俺の顎を持ち上げた。

『七瀬みたいな男前を照れさせると気分がいいな。もっともっと、乱れる姿が見たい』

 それが、契機だった。

 てっきり俺は、春木が酔っていて、一夜限りのあやまちが発生するのだと思っていたけれど、その夜を境に、今日もこうして抱かれている。泊まりがけの夜、ホテルの部屋まで送った場合、高確率で俺は、春木に抱かれるようになった。

 男同士のアルファ同士だ。生産性もなにもあったものではなく、一体何故春木が俺を抱くのかも分からない。だというのに困ったもので、俺の中の春木が好きだという思いだけが、日増しにムクムクと膨れ上がっていく。

 俺を抱く時、春木は俺の中に散々放つ。さすがはアルファというだけあって、その量も大量で、幾度も幾度も放たれるから、いつも俺の中はぐちゃぐちゃになる。そして春木は、俺はオメガでもなんでもないのに、衝動が堪えきれないのか、うなじを存分に噛む。痛みが走るほどに、だから俺のうなじには、いつも噛み傷がある。黒いスーツに白いシャツという出で立ちが義務づけられている俺は、大きめの絆創膏を貼って誤魔化している。

「七瀬?」
「っ、ぁ……大丈夫です……」
「そ? じゃあ、もう一回」

 俺は自分の返事に後悔した。すぐに俺は、咽び泣くことになった。

「ああああっ、やぁ……あ、あああ!」
「うん。七瀬はいつも声を堪えるし、こうでもしないと理性を飛ばしてくれないものなぁ」
「あ、あ、ダメ、ダメだ、う、うあ、体おかしっ、うああぁ」

 容赦なく最奥を責め立てられて、俺は無我夢中で首を振る。俺の黒い髪が左右に揺れる。思わず春木の首に腕を回す。すると交わりがより深くなり、俺は中だけで果ててから、気絶した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい

冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」 婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。 ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。 しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。 「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」 ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。 しかし、ある日のこと見てしまう。 二人がキスをしているところを。 そのとき、私の中で何かが壊れた……。

【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。 世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。 ざまぁ必須、微ファンタジーです。

レイブン領の面倒姫

庭にハニワ
ファンタジー
兄の学院卒業にかこつけて、初めて王都に行きました。 初対面の人に、いきなり婚約破棄されました。 私はまだ婚約などしていないのですが、ね。 あなた方、いったい何なんですか? 初投稿です。 ヨロシクお願い致します~。

【完結】貴方が幼馴染と依存し合っているのでそろそろ婚約破棄をしましょう。

恋愛
「すまないシャロン、エマの元に行かなくてはならない」 いつだって幼馴染を優先する婚約者。二人の関係は共依存にも近いほど泥沼化しておりそれに毎度振り回されていた公爵令嬢のシャロン。そんな二人の関係を黙ってやり過ごしていたが、ついに堪忍袋の尾が切れて婚約破棄を目論む。 伯爵家の次男坊である彼は爵位を持たない、だから何としても公爵家に婿に来ようとしていたのは分かっていたが…… 「流石に付き合い切れないわね、こんな茶番劇」 愛し合う者同士、どうぞ勝手にしてください。

処理中です...