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―― 本編 ――
005
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悶々とそんなことを考えながらシャワーを浴び、俺は夜の会食会でボディーガードとして春木に会う時、どんな顔をしていたらよいのか悩みながら日中を過ごした。
今日の会食会は、春木コーポレーションが定期的に行っている社員同士の親睦会だ。役員と社員が交流を深める場だ。俺はシャツを着てから黒いネクタイをビシリとしめて、シャツを纏った。そしてインカムをつけていつもと同じように会場に向かう。今日の春木の直接的な担当は別の者なので、俺の担当は会場警備だ。入り口脇に立ち、俺は入場してくる社員達を眺めていた。元々不審者がいるようなパーティーではないから気が楽で、ついつい昨夜の春木の言動の方を考えてしまう。
なお、大きな会社というのは、どちらかといえば頭脳明晰なアルファが多い。オメガが劣っているというのは昔の話で、今は知能的にはオメガもベータもあまり変化がないし、俺のようなアルファも必ずしも頭がいいというわけではないのだが、アルファの中にはやはり優秀な者が生まれる比率が高いそうで、この春木コーポレーションの上層部にいるのもアルファが多い。他にも、アルファは比較的体格が良い者が多い。これは俺にはほぼ当てはまる。俺は腰回りはあまり筋肉がつきやすくはないのだが、それでも腹筋は割れている。俺の数少ない取り柄は、体格の良さである。それも春木には負けているが。アルファはアルファとして、アルファの中でやはり優劣があると俺は思っている。
それにしても、なんだか腰のあたりが、ふわふわする。やはり昨日は……さすがに激しすぎたのかもしれない。いつも激しいといえばそうだが、昨日の春木はいつも以上だった。本当に……怒っていたのだろうか……。でも、どうして? いいや、愚問か。本当に俺を好きでいてくれるのだとすれば、俺は自分の自信のなさから酷いことを言ったとは思う。
だけど、オメガと比べられたのが辛かった。なにせ――誰よりもオメガだったらよかったと想っているのは、俺自身だ。可愛いとか、もっと若いとか、そこまで贅沢はいわない。ただそれでもオメガだったなら、せめて春木の隣に立つことを許されたのかもしれないのだから。ボディーガードとしてだけではなく、ただ純粋にそばに。
それにしてもなんだか、体に違和感がある。
なんとなく、全身が熱い。それに朝からなのだが、まだ体の奥に春木の感覚が残っているからなのか、身体の芯のような部分が熱を帯びている気がする。瞬きをして意識を鮮明にしようとするのに、それも上手くいかなくて、感覚もふわふわしている。
――その内に、会食会が始まった。
正面のプロジェクターに様々な会社の業績が映し出されるのを、シャンパングラスを片手に皆が見ている。俺は息をつく。何故か、それこそアルコールを飲んだときのように息が熱く感じる。
匂いがする。シャンパンだろうかと思ったが、甘い炭酸の葡萄酒の気配とは異なる。もっとこう、お香のような。精悍な青空を彷彿とさせるような甘い香りだ。
「う……」
その時。
体の奥がいよいよ熱を帯びた。思わず手で押さえた時、俺は気づいた。その不可思議な甘い香りは、俺から漂っている。気づいた直後には、全身が熱に絡め取られた。思わず座り込みそうになる。だが、それより早く、全身から力が抜けてしまい、俺は倒れそうになった。
「七瀬!」
今日の会食会は、春木コーポレーションが定期的に行っている社員同士の親睦会だ。役員と社員が交流を深める場だ。俺はシャツを着てから黒いネクタイをビシリとしめて、シャツを纏った。そしてインカムをつけていつもと同じように会場に向かう。今日の春木の直接的な担当は別の者なので、俺の担当は会場警備だ。入り口脇に立ち、俺は入場してくる社員達を眺めていた。元々不審者がいるようなパーティーではないから気が楽で、ついつい昨夜の春木の言動の方を考えてしまう。
なお、大きな会社というのは、どちらかといえば頭脳明晰なアルファが多い。オメガが劣っているというのは昔の話で、今は知能的にはオメガもベータもあまり変化がないし、俺のようなアルファも必ずしも頭がいいというわけではないのだが、アルファの中にはやはり優秀な者が生まれる比率が高いそうで、この春木コーポレーションの上層部にいるのもアルファが多い。他にも、アルファは比較的体格が良い者が多い。これは俺にはほぼ当てはまる。俺は腰回りはあまり筋肉がつきやすくはないのだが、それでも腹筋は割れている。俺の数少ない取り柄は、体格の良さである。それも春木には負けているが。アルファはアルファとして、アルファの中でやはり優劣があると俺は思っている。
それにしても、なんだか腰のあたりが、ふわふわする。やはり昨日は……さすがに激しすぎたのかもしれない。いつも激しいといえばそうだが、昨日の春木はいつも以上だった。本当に……怒っていたのだろうか……。でも、どうして? いいや、愚問か。本当に俺を好きでいてくれるのだとすれば、俺は自分の自信のなさから酷いことを言ったとは思う。
だけど、オメガと比べられたのが辛かった。なにせ――誰よりもオメガだったらよかったと想っているのは、俺自身だ。可愛いとか、もっと若いとか、そこまで贅沢はいわない。ただそれでもオメガだったなら、せめて春木の隣に立つことを許されたのかもしれないのだから。ボディーガードとしてだけではなく、ただ純粋にそばに。
それにしてもなんだか、体に違和感がある。
なんとなく、全身が熱い。それに朝からなのだが、まだ体の奥に春木の感覚が残っているからなのか、身体の芯のような部分が熱を帯びている気がする。瞬きをして意識を鮮明にしようとするのに、それも上手くいかなくて、感覚もふわふわしている。
――その内に、会食会が始まった。
正面のプロジェクターに様々な会社の業績が映し出されるのを、シャンパングラスを片手に皆が見ている。俺は息をつく。何故か、それこそアルコールを飲んだときのように息が熱く感じる。
匂いがする。シャンパンだろうかと思ったが、甘い炭酸の葡萄酒の気配とは異なる。もっとこう、お香のような。精悍な青空を彷彿とさせるような甘い香りだ。
「う……」
その時。
体の奥がいよいよ熱を帯びた。思わず手で押さえた時、俺は気づいた。その不可思議な甘い香りは、俺から漂っている。気づいた直後には、全身が熱に絡め取られた。思わず座り込みそうになる。だが、それより早く、全身から力が抜けてしまい、俺は倒れそうになった。
「七瀬!」
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