魔王の求める白い冬

猫宮乾

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*** 過去:Ⅲ ***

【055】過去――魔王三年目①

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 魔王になってから、三年が経過した。
 現実世界……だった日本の日々をカウントするならば、僕は漸く成人を迎えたところだと思う。ただし、ここでは三歳だ。

 この三年間、ただの一度も冬は来なかった。

 だけど、低俗と呼ばれる魔族や、下層に位置するという魔族達の街は、少しくらいは良くなったと思う。元々彼等は、豚肉や鶏肉、牛肉を日常的に食べていたらしかったから、酪農の仕事に親和性があったらしく、今ではこの魔界の主要な肉類を生産してくれる貴重な魔族達になった。

 最初に来た時から美味しいと感じていた果物は、どうやら、人間の土地との境界にはえていたらしい。現在では、そこには、人間の街が出来ている。僕が、魔族以外も受け入れたいと言ったからだ。最初こそ、食べられるのでは、と恐怖していた人間達も、今では仲間になってくれた。

 ――思いの外、魔族の土地に逃げてくる人間は、多い。

 死に場所を求めてやってくる人が大半だけれど、大抵は、《人間街》と僕らが呼んでいる場所で落ち着いている。

 難しかったのは、農耕だった。

 なにせ、出せと言われれば魔術で肥料などは出せたのだけれど、この土地で今後も農耕をするのであれば、土地の中で上手く土壌作りから始めるべきだと僕は思ったのである。
近場には海があるから、塩や、味噌、醤油などは、次第に作る事が出来るようになってきた。

 それらを城や、侯爵を始めとした魔族が買い取る事で、本当に少しずつだけれど、商業などが漸く発展してきたのが、そんな兆しが見え始めたのが、三年目となった現在だった。
それこそ寿命や、肌や髪の色の違いこそ在るが、僕の中では、人間も魔族も代わりはない。
この土地には、まだまだ未来がある。

 だから、そう思うからこそ、僕は出来る事をしたいのだ。
 たった十数年プラスこの世界の年齢……三年しか生きていない僕だけれど。

 幸せ、みたいな名前をした何かを、構築できるのではないかだなんて僕は考えていた。
たったの三年でも、これだけ変える事が出来たのだから。

 僕はこの時、多分希望に満ち溢れていたのだと思う。

「魔王様、この味、どうですか?」

 ぼんやりと考え事をしていると、次の料理長になるはずのリクスがそんな事を言いながら、試食用のかまぼこを持ってきた。


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