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第166話 指名依頼 ②
しおりを挟むバルビロン要塞。
かつてアリシア王国が建設した、対モンスター戦の橋頭保。
その存在は知っている、ゲーム「ラングサーガ」にも登場した有名な要塞だ。
つまり、その時代からあるという事になる。中々年季が入ってるな。
だが、長年に渡り戦線を支えてきた要塞も、圧倒的な数のモンスターには手も足も出ず、とりわけ、オークの軍勢によって陥落し、占拠されてしまった。
40年前の事だそうだ、それから今まで、オーク共によって占領され続けている。
アリシアにとっては負の遺産って訳だ、だがこの要塞はアリシアだけがその恩恵に与かっていた訳ではなかった。
アワー大陸の中心国家、ユニコーン王国もまた、バルビロン要塞の防御力によってモンスターから守られていたのである。
なので、アリシア軍が撤退した後は、ユニコーン王国軍が軍を振り向けてきて、何とか戦線を維持できていた。
要塞からモンスターを出さない様に、今現在も常に見張っている。というのが現状だ。
そんなバルビロン要塞だから、危険が無い訳が無い。にも拘らず、このエルフの美少女、ユーシアは要塞で大切な母親の形見である魔法の杖を奪われたそうな。
「ユーシアさん、なんでまたそんな危険な要塞に行っていたのですか? あそこはオーク軍の大軍が居る事は解っていた筈だと思うのですが。」
俺に依頼を持ちかけてきたエルフの美少女、ユーシアはその表情を曇らせながらも、諦めきれない様子で俺に魔法の杖の奪還を依頼してきた。
まあ、俺がアリシアの英雄だという事は、知っていたらしいが、さてはて、難しい依頼になりそうだぞ。
「その事なのですが、バルビロン要塞は今も尚、戦いは続いているのです。私の母もまた、優秀な魔法使いとして参戦し、そして、モンスターによって殺されてしまいました。」
うーむ、今も対要塞戦は続いているという事か。40年も経っているのに。それでも奪還出来ないとなると、これはもう、要塞の方に何か秘密があるとしか思えんな。
「なるほど、母親の形見の杖を取り戻したい訳ですか、気持ちは解りますが、俺だけで事に対処出来ませんよ。」
「それならば、問題無いかと、ユニコーンの女王マリアが旗頭となって、四種族連合を結成していますから。」
「え!?それは何時、発足されたのですか?」
「私が知る限りでは、少なくとも30年前からです。」
四種族連合、人間、エルフ、ドワーフ、獣人からなる、連合軍。
対モンスター大戦になった時に、各種族がお互いに協力し合い、助ける為に結んだ協定。
そうか、四種族連合軍がとっくに動いているのか。知らんかった。それならばまだ希望はあるか。
だが、問題はそこだけじゃない、少なくともあと二人ほど仲間が必要だ。
俺一人敵陣に突っ込んでいくほど、俺は無謀ではない。慎重に事に対処したい。
そう考えていたら、ユーシアさんがこんな提案をしてきた。
「もし、私の依頼を受けてくれたら、報酬として私が保有するマジックアイテムの中から、どれでも一つ差し上げます。如何でしょうか?」
「ほう、マジックアイテムですか、確かに魅力的なお話ですな。ですが………。」
「勿論、金貨でのお支払いも約束します。金貨10枚。如何ですか?」
ふむ、金貨10枚に、マジックアイテムを一つか、悪く無い。
「期限は?」
「ありません、取り戻していただけるならば、いつまででも待ちます。」
ふーむ、今のところ断る理由が無い。仲間集めがネックにならなければいいのだが。
うーむ、この依頼。受けるべきか?
そういやあ、TRPGプレイヤーはエルフの美少女からの依頼は断れないというのをどこかで聞いた事があるな、うむ、気持ちは解らんでもない。確かに、エルフの美少女というだけで、どこか神秘的な雰囲気を醸し出している。力になってあげたくなるな。
聞く耳を持ちたくなるってもんだ。うむ、よし。この話、乗るか。俺も大概だからな。
「ユーシアさん、その依頼、俺は引き受けます。」
「まあ! ありがとうございます。英雄殿!!」
「なーに、困っている人を放ってはおけませんからな。」
まあ、報酬につられてしまった事は事実だし、やはり依頼を受けるなら美少女エルフからというのが、これまた燃える展開じゃないか。
「では、俺は早速行動を開始します。」
「お気を付けて、私はここで待っております。ご武運を。」
「ありがとう、それでは、行って来ます。」
こうして、俺は噴水広場から離れた。行先は冒険者ギルドだ、そこでまず仲間を募集する。
危険な依頼だ、ガーネットやラット君では荷が重い。今回二人は見送ろう。
さて、まずは冒険者ギルドだ。いい仲間が居るといいんだが。
町中を歩き、すぐにギルドに到着した。扉を開けて中へ入ると、冒険者たちで賑わっていた。
ざっと見渡し、誰か強そうな冒険者を探す。だが、中々居ない事に気付く。
「うーむ、そう上手くいかないもんだよな、バルビロン要塞という事は、相当強くないと耐えられないだろう。」
戦士や重戦士、軽戦士もいいな、だがここはやはりスカウトやシーフといった斥候偵察に向いた仲間が欲しいところだな。
俺はシーフやスカウトに片っ端から声を掛けたが、みんないずれかの一党に入っている為、中々いい返事は貰えなかった。
「うーむ、困った。要塞内部には色々なトラップなどの仕掛けがあるから、斥候探索に特化した人がよかったんだが、中々居ないなあ。」
居たとしても、既に他のメンバーに入っていたりで、思いの外仲間は集まらなかった。
というか、全然居ない。マジで困った。
と、そこへ様子を見ていたのか、姐御が俺に話しかけてきた。
「ジャズ、どうしたの?」
「姐御、いや~、それが中々パーティーに入ってくれそうな人が居なくて、困ってたんですよ。」
「仲間を募集しているの? 何処に行くの?」
「バルビロン要塞です。」
俺の答えを聞き、姐御は眉を上げ、驚きながら答えた。
「ええ!? バルビロン要塞ですって!? ジャズ! 何を考えているのよ! あそこはとても危険なのよ!」
「ええ、解っています、ですがそこへ行って奪われた魔法の杖を取り戻したいという依頼を受けましてね、流石に俺一人では難儀しそうなので、仲間を集めようかと。」
「あのねジャズ、バルビロン要塞っていうのは今もオークの軍勢に占領されていて、それを奪還する為に大勢の戦士たちが今も戦い続けているのよ。それでも奪還には至ってないわ。」
「ええ、解ってます、それを踏まえても、取り戻したいのです。俺は依頼を受けましたからね。」
俺の考えを聞いた姐御は、溜息を一つつき、俺に向き合った。
「はあ~~、解ったわジャズ。私を連れて行きなさい。私ならオーク相手に遅れは取らない筈よ。」
「え? よろしいのですか? そりゃあBランクの姉御が仲間になってくれたら心強いですけど。」
「ん、まあ私もそろそろ派手に行こうかと思ってたところだし、いいわよ。」
よっしゃ、やったね。姐御が仲間になった。こいつは凄いぜ。なんせBランク冒険者だからな。
「姐御、頼りにしてます。お願いします。」
「ええ、ジャズも、頼りにしてるわよ。」
こうして、俺と姐御は一党を組む事になった。後は斥候の問題だな。
これが大変だった、まったく居ないのである。みんなどこかのパーティーに入っている人ばかりだった。
「うーん、斥候が居ないと要塞内部への侵入が難しいわね。」
「そうですね、いっその事、王都まで出向いて探しませんか。姐御。」
「王都まで行くの? まあ、行先の要塞の手前にある王都へは寄るし、いいんじゃない。」
「決まりですね、必要最小限のアイテムを準備したら、早速向かいましょう。」
こうして、俺と姐御はパーティーを組んで、冒険に向けて準備していくのだった。
まずは王都まで出向き、そこで優秀なスカウトかシーフを雇う。
あてが無い訳ではない。盗賊ギルドのドニを頼ろうと思う。ドニならば優秀なシーフだから問題無い。
さてと、一丁行きますか。王都へ。
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