軍用義体を取り上げられてセクサロイドに脳殻移植されたTS重サイボーグ傭兵(元40代おっさん)が少年の性癖をバキバキに折る話 代表作

ぱふぇ

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ACT 4:MERCENARY

[14] 潜入任務用の衣装合わせが、ブラッドの未知の性癖を発掘する。[制服コス/学パロ妄想]

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 俺たちはアダーから受け取ったデータチップの中身を洗いざらい確認した。
 ビルの見取り図、監視カメラの配置、警備のローテーション、ターゲットの身辺調査ファイル。
 夜になる頃には、なんとなく計画っぽいものが形になっていた。

 20時回ったあたりで、外に車が停まる音がした。
 バシリスクの使いが2人、無難なセダンに乗って現れた。上層地区のどのパーキングにもゴロゴロ並んでる、没個性の中級モデルだ。
 キーフォブを投げて、「ボスが期待してるってよ」とか何とか脅しみたいなことを呟いて、後ろについてきた2台目の車でとっとと消えた。

 セダンを工房に入れてエンジンを切る。背後でシャッターがガラガラと下りてくる。

「後ろに何かあるな」

 ムコが言った。

「何、トランクに? なんでそんなことわかんだよ」
「サスペンションが沈んでる。後方車軸が前方より3センチ低い。車両スペックと照合すると、70キロから80キロの積載物がある」
「……見ただけでそれわかんの?」
「ああ」

 ぐるっとリアに回ってトランクを開けた。
 マジだった。
 スペアタイヤとジャッキとか、そんな普通のもんじゃない。
 大型のポリマーケースが3つ、きっちり積まれてる。

 「……お前すげえな」

 まあ、ヒシガミで訓練されたキャリア軍人なら、バックグラウンドで走るレベルの脅威評価か。
 あそこの特殊戦闘員は車体のちょっとした傾斜角度から逆算して、車内の重サイボーグ警護の配置、保護対象の着座位置、そういうのを外から透視してるみたいに脳内マッピングできる化け物揃いだからな。

 ムコが俺の肩口に現れて、例の読めない能面でケースを観察する。

「支援物資か?」
「かもな」

 俺たちはケース3つを上階の居住エリアまで運んだ。クソ重い。俺の腕はプルプルだった。ムコは2つ同時に持って涼しい顔。わかっちゃいても情けなくなる。

「……よっし……、アダーのケアパッケージとやらを、見てみる、か……っ!」

 ケースを床に叩きつけた瞬間、衝撃でロックが外れた。
 蓋がバカンッ!! と開く。
 ラテックス、シルク、レース、レザー、PVC、メッシュ――ありとあらゆる色とテクスチャの布地が、爆発した。

 …………何だこりゃ。

 ムコが膝をついて、床に散乱した中から赤い布切れをつまみ上げる。危険物でも扱うみたいに慎重に光にかざす。
 カクテルドレスだ、たぶん。ネックラインがありえないくらい切れ込んでてVネックじゃ済まない、おそらくヘソまで行ってる。背中側も確認したら、多分ケツの割れ目まで見える。
 布の正体が次々と判明する。テッカテカのボディスーツ。スリット深すぎなチャイナドレス。個包装でパッケージングされたバニーガールセット一式。……と、何これ? バニー服を逆にしたみたいな、もはや意味不明な代物。

「うっわ……これは……」

 俺は呟きながら、ストラップとOリングだけで構成された謎の物体を持ち上げる。

「過剰だ」

 ムコが俺の文末を補足した。

「……『エグすぎ』って言おうとしてたけど、まあそれでもいいわ」

 セクサロイド用のエロ衣装だ。これ全部。
 しかもご丁寧に、クグツメボディのサイズぴったりに仕立てられてる。

「アダーはなぜこんなものを送ってきた」

 ムコが床一面に広がった布を見回して聞く。

「お前のためだろ。明日、雇われの娼婦として潜入するだろ? 高級コールガール。それがカバーストーリーだ」
「変装用資材か」
「そういうこと。わざわざ下着屋とかフェチショップ回らなくて済んだな。ありがたい話だ」

 ターゲットのハウザーはビルに立てこもって厳戒態勢だが、バシリスクの情報によるとサービス業者だけは出入りしてる。食事のケータリング、清掃スタッフ、そういう類。完全封鎖してるわけじゃない。
 そしてあいつはかなりの女好きらしい。もう何日もあのペントハウスに閉じこもってて……相当飢えてるだろうな。
 ついに耐えかねて女を呼んだとしても、不自然じゃない。……下の警備もそう判断するだろう。
 つまりムコは役を演じながら従業員用の裏口を訪ねる。高級娼婦のコスプレで、上のお呼びで夜のお相手をしに来ました~ってテイで。業務用エレベーターでペントハウスに直行、ハウザーのドアをノックして、後はムコ次第。どう料理するかはお任せだ。

 2つ目のケースを開けた。こっちも服、プラスでアクセサリー類――派手な宝飾品、ハイヒールの山、ブランドロゴ入りバッグ、リップスティックとかアイシャドウとかの化粧品。
 3つ目のケースは下着のみ。大量。

「……にしても多すぎだろ。どんだけあんだこれ」

 オープンクロッチのアホみてーなエロ下着を山に投げ戻しながら呟いた。
 ムコが言う。

「バシリスクはドールハウスを経営してる。在庫は大量にあるはずだ」
「ああ、そうだろうな在庫あるだろうよ。でもなんで1トンもうち宛ての車に詰め込んだんだって話」

 アダーの野郎、不良在庫の処分先探してたんじゃねーだろうな……。

「……着れそうなもん見極めようぜ。ついでに分別だ。明日の仕事だけじゃなくて、今後も使えるかもしれねーし」

 俺たちはリビングスペースに陣取って、黙々と作業した。
 服の山を扱いやすいカテゴリに仕分けていく。「後で役立つかも」、「攻めすぎだけどギリいける」、「ナイトクラブは追い出されるレベル」、「使えるわけねーだろこんなん」――最後の山が不穏なペースでデカくなってきた。
 妙に家庭的でシュールな光景だった。洗濯物を畳んでるみたいだ。ただしその洗濯物は全部、いかにチンポを煽るかに全フォーカスされた特殊装備だが。

 ムコが2つ目のケースの底から何かを引っ張り出して、首を傾げた。

「これは何だ」

 絡まったガーターベルトと格闘してた手を止めて顔を上げる。

 ……うげ。

 学校の制服だ。
 白いブラウスに紺のプリーツスカート。リボンタイもセットになってる。
 ブレザーはムコの手にはなかったが、ケースに折りたたまれてるのが見えた。お揃いの紺で、胸ポケットには様式化された「H」の校章が刺繍されてる。ハイソックスと黒いローファーも転がってた。

 デザインに見覚えがあった。
 パクり元はたぶん……コーポプラザに隣接して鎮座する、街のトップエリート学校の一つ。
 ヒシガミ付属校の女子制服だ。

 コーポ直営のアカデミーってやつ。メガコーポは自社の次世代育成のために専用教育機関を運営してる。入学資格は血筋か金かコネ。生徒が武装ドライバー付きの専用車で登下校して、構内に企業兵が常駐してるような場所だ。

 本物を着てる女子を何回か見たことがある。遠目でな。
 ……そういや昔、コーポプラザまで行ったことあったな。爺ちゃんが俺をテック見本市みたいなのに引きずってった時だ。
 あそこの生徒が校外学習で来てて、ライフル持った武装警備に囲まれて歩いてるのを見かけた。制服姿の女子が10人くらいの集団になって、パリっとプレスされたブレザーとスカート、磨かれたローファーで。たぶん俺には絶対理解できない話題でクスクス笑ってた。
 生まれた瞬間から特権バブルの中だけで人生が完結してる、俺とは別種の生き物だ。

 あと一回、下層に迷い込んだコーポのお嬢様を工房に匿ったことがあったけど……あれはもういいや。思い出したくもねえ。

 今ムコが手に持ってる制服は、基本デザインは元ネタと同じだが、完全にエロ化されてる。
 ブラウスはムコサイズの爆乳に対応するよう裁断されてて、スカートは校則どころか公序良俗に中指立ててるレベルで短い。真面目に授業受けるためにデザインされてないことは一目瞭然だ。
 ムコはそれをひっくり返して、まじまじ観察してる。

「これは教育機関の制服だろう。なぜこの中にある」

 ……えっ、そこからかよ!?

「えーっと。あー、これは……実際の学校用じゃない」
「では何のためだ」

 どう説明すんだよこれ。

「これは、ほら。コスプレ衣装。……女子校生のロールプレイ用」

 ムコの眉がさらに2ミリくらい寄る。

「女子校生は未成年だろう」
「そうだよ」
「ならなぜ」
「……あのな、ムコ。変な性癖持ってる奴がいんだよ。『女子校生』っていう記号に興奮する……みたいな」

 沈黙。
 俺は急いで付け足した。

「成人の女かドールにこれ着せてヤるってことだぞ! 本物のガキじゃない。っていうか……本物のガキじゃないことを心から祈るけど」

 また沈黙。
 俺は咳払いした。

「しかもこの制服は特別だ。別の文脈がある」
「文脈」
「ああ」

 あいつがまだ持ってるパチモン制服に向かって身振りする。

「現実にこれ着てる女子は、ヒシガミファミリーの超箱入り娘。下層の男が一生手に入らないものの究極のシンボルみたいなもんだ。金と権力持って生まれた若い女。だから一部の男が……自分のレベルまで引きずり降ろすって、そーゆークソみたいな妄想に興奮すんだろ」

 コーポの重役、政策立案者、あるいはその妻になる未来が約束されてる女子たち。俺みたいな人間が下層で必死にもがいてる間、優雅に勉強してる。それをチンポでメチャクチャにしてやるっていうのは……まあ言いたかないけど、ダークネットじゃ定番中の定番だ。
 ってかなんで俺、こんな一生懸命説明してんだ? 別に俺はこんなの好きじゃねえし。擁護する義理もない。

「……なぁ、俺が発案してるわけじゃないからな? ただ世の中そういうもんなんだって。こういう衣装が存在するってことは、金払う男どもがいるってことだ。需要があるから供給されてる。わかったか?」
「つまり階級格差に恨みを持った成人男性が、特権階級の未成年者の服装に欲情すると。娼婦に同じ格好をさせることで、対象を支配する幻想を得る。……異常な性的嗜好だ」
「そういう言い方するとめちゃくちゃキモく聞こえるけど……いやそう聞くとマジでヤバいな」
「ヤバいだろう」
「まあ、キモくてヤバいのは確かだけどさ、バシリスクがこういうドール衣装を在庫してるくらいには市場が成立してんだよ。『お高くとまった女子校生を堕とす』ってジャンルは。……悲しいことにな」

 もういいか? 頼むから興味失ってくれよ。

「……っつーかお前も男じゃん!! チンコついてた時代あっただろ!? なんで俺が男の性欲についてお前に講義しなきゃいけねえんだよ……」
「性器があったことは事実だが、俺の記憶にある限り、子供に欲情したことはない」

 ムコが淡々と答える。

 おい。んなこと言ってっけど、お前今まさに俺とヤりまくってんじゃねえか!! 俺だってその制服着てる女子校生連中とまったく同い年だからな!? まあ基本的に俺が溜まって、ムコがハメさせてくれてるだけだけどさぁ……。

 ……ん、ちょっと待て。
 これってもしかして、ムコは俺に対して、性的に全く欲情してないってこと……か?
 こいつにとって俺って「子供」?

 ……あ、そう。
 あーそうですか。
 なるほどね。

 …………。

 この話掘り下げんのやめよ。
 今はマジでやめよ。

 俺は服の山に戻って、逃げるように別の衣装を引っ張り出す。

 手を動かしながら、頭の片隅ではぼんやり想像してた。
 ムコの「チンコついてた時代」を。
 全身義体フルボーグになる前、まだ完全に生身だった頃。
 ……どんな男だったんだろうな。

 俺が持ってる判断材料は少ない。声、くらいか。低くて、ちょっと掠れてて、男の中の男って感じ。セクサロイドのボイスモジュールから出てきても凄みがある。
 あとは性格。無口でミステリアス。冷静沈着で効率主義。かと思えば喧嘩っ早い一面もある。

 そして何より――ムコは自分に自信がある男だ。
 これは疑いようがない。何があっても動じないあの態度。声を張り上げなくても、何か喋ったら周囲が勝手に黙るタイプの存在感。セクサロイドボディになった今でもそうなんだから、オリジナルはもっとすごかったんだろう。

 ってことは、男バージョンムコはたぶん……
 チラッと横目で見る。
 ドールバージョンムコは今、床に正座してレザーハーネスを爆弾解除するみたいな集中力で調べてる。

 ……ムコはたぶん、女に困ったことなんてなかったんだろうな。

 キモい性癖を発達させる必要もなかったってことだ。そりゃ制服フェチもわかんねえわ。性欲と劣等感こじらせて、ヤれない女を妄想の中でどうこうしなきゃいけない男の気持ちなんて、想像もつかないだろう。
 ムコはただ……普通のセックスしてた。普通の女と。あいつに興味持った、適当な女と。

 いいよなあ……。
 ……っつーか、絶対チンコもでかかっただろ、こいつ。

 は!? いや何考えた俺。でももう考えちまった、取り消せない。
 クソ。
 やめろ。
 ……でも、でもさあ、たぶんそうだろ!? 声が低い男って大体そうじゃん。相関関係あるって聞いたことあるぞ。統計データは知らんけど、そういう傾向だろ。
 
 ……マジでなに考えてんだ俺……。

 頭を振って、物理的に思考を追い出そうとする。
 気づいたら、絶対に畳む必要のないスケスケのネグリジェを四角く折りたたんでた。こんなもん畳んでどうすんだよ。

 するとあいつが前触れなく言った。

「そういえば、お前は17歳か」
「……ああ? そうだけど? 今更気づいたか?」

 ムコが問題の制服にチラッと視線を落とす。

「ならこの衣装に対するお前の興奮は、年齢相応であって倒錯ではないな」
「……はぁあ!? 俺は別に、こんなので興奮しねえって! それに……コレが同年代って言われてもピンとこねーよ。学校行ったことないし」

 肩をすくめる。

「コーポが国家機能を掌握して20年だ。俺ら世代はもう、学園生活ってやつのリファレンスがないんだよ。授業中に可愛い子が隣に来るとか、廊下でぶつかってドキッとするとかさ……俺には全部フィクションだ。爺ちゃんの工房で働きながら、一人でバーチャル教育やってたから」

 ムコの視線が上がる。手に衣装を持ったまま、じっと俺を見る。

「学校に通わなかったのか?」
「何? いや、当たり前だろ。つっても政府配布の基礎教育プログラムは12で終わらせたけどな。パッケージダウンロードして空き時間に走らせるだけ。30分のモジュール何百個かこなせば修了証出る。俺は認定テストでさっさとパスしたから、実際ほとんどやってねーけど」

 ムコが手持ちの衣装を山に置いた。

「そこまで教育格差が進んでるとは把握してなかった」
「お前、記憶穴だらけだもんな。っつーかそもそもこの国の生まれじゃねえ可能性もあるか」

 はぐれたストッキングを拾って丸めて「後で役立つかも」の山に放り込みながら言った。

 ほとんどの奴は無料の公教育から先には進めない。高等教育にはコネと、一般市民には用意できない額の金が要る。システムはそうやって設計されてる。階級の再生産だ。俺たちは労働者として使える程度に訓練されて、危険分子になるほどの知恵は与えられない。

 普段あんまり考えたことなかったな。
 認定義体技師免許も、食ってくのに必要なスキルももう持ってるし。
 高校卒業証書で何すんだよ? 死んだ爺ちゃんの遺影の隣に額装すんのか?

 少し間があって、ムコが言った。

「勿体ないな」
「ん?」
「お前は賢い。もし高等教育にアクセスできていれば、そこで秀でていただろう」

 声に憐れみはなかった。同情でもない。
 ムコはただ客観的な事実を述べてる。お世辞は言わない奴だ。

「お前のような人材が適切な教育を受けられないのは、社会的損失だ」

 何て返せばいいかわからなかった。俺にそんな風に言ってくる奴は今までいなかった。
 ムコはもう服の仕分けに戻ってて、顔はいつも通りの能面で、今のが予想以上に俺に影響したなんて気づいてない。
 喉が詰まる感じがして、強引に視線を逸らした。

「……しょうがねえよ、そういうもんだし。代わりに俺には工房がある。ラッキーな方だ」

 ムコは一度だけ頷いて、もう話題を終えたみたいに別の服を手に取る。

「……とにかく、だ」

 無理やり話を軌道修正する。

「明日実際にどれ着るか決めた方がいいな。潜入で使うやつ」

 ムコが俺のあからさまな話題逸らしに気づいてないわけないだろうけど、追及はしなかった。
 ただ小さく頷いて言う。

「試着が必要だな」
「え」
「機動性が損なわれないか、実際に動いてみないと判断できない」

 ムコが整理された服の山に向かって歩き始める。そのまま振り返って、肩越しに俺を見た。

「どれから試すべきだ」

 俺も山を見る。そして――視線が勝手に、あの制服に吸い寄せられた。

 ダメだ。
 いや……?
 いや、絶対ダメだろ。
 でも正直……クソッ、マジで見たい……。

「……あー、試すならいくつか違う系統だな」

 適当にボディコンドレスを掴んで、ムコに投げた。

「これ。あと、そこのスカートとトップスの組み合わせとか。それと……」

 言うな言うな言うな俺。

「……まあ、その制服も? 合うかどうか確認するだけ、な。いざって時になんか使えるかもしんねーし」

 言った。バカがよ。



 ムコが着替えてる間、俺は背中を向けたままでいる。
 ガーターベルトを色別に整理するという超重要な作業に全集中してる。絶対に、赤いガーターが黒いのと混ざるわけにはいかないからな。というのは嘘で、振り返ってムコがセックス衣装に着替えてるのを見たら、脳みそが耳から溶け出して明日の仕事ジョブで使い物にならなくなるからだ。

 背後で、シュルシュル布地が滑る音。チーッとファスナーが上がって、どこかの留め具がカチッとはまる音。
 俺の想像力が想像の余地を埋めすぎてる。

 「終わった」

 ムコの声。
 息を吸う。覚悟を決める。
 ただの服だ。ムコは前にも服着てただろ? 大丈夫。普通のこと。俺の心拍が今バカうるさいのに理由なんてない。
 振り返る。

 ……あ。
 ああああ、俺、終わったわ。

 なんでよりによって真っ先にあの制服着てんだよこいつ!?!?
 ……っていうのはひとまず置いといて、だ。

 ムコがヒシガミ付属校の制服を着て立ってた。
 ブレザーは開けっ放し。ブラウスはあのバカ乳を何とか収めようと最善を尽くしてる。生地がパツンパツンに張り詰めて、ボタンが命がけで持ちこたえてる。
 爆乳の上にチョコンと乗ってるリボンタイは、きちんとしてて上品。それ以外の全部がクソ下品なのに。
 プリーツスカートは、もはや短いとかいう次元じゃねえ。ちっせえ。ギリッギリ。ぶっとい太ももにペロッと乗っかってるだけ。強風一発で公然わいせつ。
 足元はソックスにローファー。シンプルなフラットソールが場違いに清楚だ。

 ムコの手がスカートの表面をさらっと撫でて、プリーツを整える。
 姿勢を正して俺を見た。

「どうだ」

 どうだも何も。

 ……こんな女子校生は存在しねえ。
 学校がこんなの許可するわけねえだろ……ッ!!!
 もしこんな女子がクラスにいたら、全男子生徒が慢性的公開オナニーで退学だ。あいつは学校全体の共有オナペットになる。誰も話しかける度胸ないくせに、家帰ったら毎晩狂ったように名前呼びながらシコる対象。

 一番ヤバいのは……制服がムコにクソほど似合ってることだった。

 クグツメのフェイステンプレートは、スタイリングと状況次第で19~25歳くらいまでどこでも通用するようにデザインされてる。女子校生コスプレにゃギリ歳取りすぎてるはずなんだよ、本来は。
 でも……何だろうな……ムコの雰囲気? 態度? オーラ? そういう抽象的なやつ。それがやけに説得力を持たせてる。
 無表情なドールフェイスで、顎をわずかに上げて、肩の力が抜けてて。周りの全員を格下扱いしてるツンとした優等生に見える。近寄りがたい高嶺の花。

 ……「お嬢様」。
 そういえば、アダーがドールハウスで言ってたな。ムコのこと「お嬢様」って皮肉ってた。
 こうして制服姿のムコ見てると……ああ、マジでそれっぽいわ。冗談抜きで。

 考えてみりゃムコの出自って、その辺のストリートの傭兵とは格が違うんだ。
 40年前にフルボディコンバージョンを受けたってムコ自身が言ってた。企業戦争真っ只中、メガコーポが金に糸目つけずに戦力増強してた時代だ。しかもヒシガミ製。あのクソでかいコングロマリットの、専属サイボーグ部隊。
 2050年代、ヒシガミがバリバリ戦争やってた頃は、フルボーグ一体を稼働させるためだけに何十人もの専任のバックアップ要員がついてたはずだ。技術者、医療スタッフ、ロジスティクス、全部。ムコは常に最高の装備、最高の支援、湯水のように注がれるリソースの中で動いてた。

 ムコがやるべきことは一つだけ。
 標的に引き金を引くこと。

 ……色々納得できる。
 どおりでムコは武器に関しちゃ金銭感覚ゼロなわけだわ。
 今朝、あのOTFナイフを見て、値段を一切考慮せずに即決したのも不思議じゃない。
 ムコの元居た世界では、何か欲しかったら手に入るのが当然だった。「これ欲しい」って言ったらロジスティクスが勝手に調達してくれる。予算とかコストってのは他の誰かが懸念することだ。

 ある意味、本物の「お嬢様」だったってわけだ。
 下層地区に叩き落されて、人を効率的に殺すためのリソースが無制限に提供されるわけじゃないってことをまだよくわかってない、甘やかされたコーポの暴力プリンセス。
 ……中身は男なんだけどな。でも醸し出される雰囲気は同じ。高慢に近い静かな自信。自分が特別だっていうが無意識レベルで滲み出てる。

 そのプリンセス野郎が今、俺の目の前でドスケベ制服着て突っ立ってるせいで、チンコが破裂しそうなんだが。
 どうにか言葉を絞り出す。

「…………なんで、それ着た?」
「お前が選択肢に含めた」
「そうだけどさ……最初にそれ選ぶか、普通?」
「お前はこれを着た俺を見たくなかったのか?」
「……そうは言ってない」

 ムコがわずかに首を傾げる。動作でリボンタイがデカパイの上を揺れる。
 俺は死ぬ。

「……どーなん? きついとか……」
「サイズは許容範囲だ。だが胸部の圧迫感が強い」

 見りゃわかる。ブラウスのボタンが今にも弾け飛びそうなくらい張り詰めてる。
 で、めちゃくちゃきつく引っ張られてるから……ボタンとボタンの間にダイヤ型の隙間ができてて、下が覗いてる。
 何か黒いものがチラチラ。

 え? 黒って……。
 うっそだろ……。

 ムコが。
 ブラを。
 着けてる。

 よく見ると白いブラウスの生地越しに、うっすら透けて見える。黒いレースの縁取り。あのバカみたいにデカい乳を必死で支えてる、明らかにキャパオーバーなカップの輪郭が。

 基本的にムコはノーブラだ。セクサロイドの人工乳には劣化するクーパー靭帯なんてない。だからムコは今まで一度もブラなんてつけたことなかった。

「……お……おま……それ、下に着てんの……」

 声が出ない。喉が干上がってる。

「ああ、下着だ」
「なんで?」
「同じパッケージに、制服と一緒に入ってた」

 ムコが世界で最も当然で明白なことを説明してるみたいに言う。

 それから――
 ムコが無造作に手を下ろして、スカートの裾をぴらっ♡ と軽く持ち上げた。
 黒いレースのパンツが披露される。

「これも同梱されてた」

 ムコが何の感情も込めずに言う。俺の魂が体から抜け出していく間。

「上下セットだ」

 スカートがパサッと元の位置に落ちる。
 俺は死んだ。
 心停止。
 臨死体験。
 俺が人知れず静かに成仏しかけてる横で、ムコは襟元を引っ張りながら文句を言ってる。

「ただ、この衣服は品質が悪い。縫製が粗悪だ」

 そう言った瞬間――
 パチンッ! と、タイミング完璧にボタンがひとつ限界を迎えた。
 弾丸みたいな勢いで部屋をぶっ飛んで、壁にカンッと当たって床に転がる。
 ブラウスの前が割れて、人類史上最も過酷な任務を遂行中であろう黒レースのブラジャーが、もっと露わになる。カップがあの規格外の乳を下から持ち上げて、中央に寄せてる。いつもより更に濃密な谷間が形成されてる。

「欠陥品だな」

 ムコが弾けた部分を見下ろして、1ミリも動揺せずに観察した。

「実用に耐えない。脱ぐべきだな」

 指が次のボタンに向かう。

「……ッ待て!!!」

 声量がデカすぎたし声音がシリアスすぎた。
 ムコが一時停止。首を傾げて俺を見る。

「……どうせ脱ぐなら、さ。俺の言うとおりにやってくんね……?」
「どうやれと」
「ボタン。上と下は留めとけ。真ん中のだけ外す」
「なぜだ」
「いいから。ただ……信じろ」

 なんか俺の迫力に押されたのか、ムコの指がその通りに動く
 飛んだボタンの上から真ん中のボタンが3つ、ぽちぽちと外れていく。ブラウスの中央が割れる。
 現れた。
 あの黒レースブラジャーが完全に露出して、カップは溢れんばかりに満杯。

「で……ブラは押し上げるだけ。脱がない。そのまま……上にずらせ」
「目的がわからない」
「わかる必要ない。ただやってくれ、頼む」

 ムコが無言で従う。
 ブラカップの下に指をかけて、そのまま――ぐいっと上に。
 カップが滑り上がって、越えて、鎖骨の上へ。
 でムコの乳が、ばるんっっっ♡ と溢れ出た。

 ……やっ、べ……

 制服ほぼ着たまま。ブラウスは開いてる。乳が出てる。ブラはずり上がって、ピンクの乳首が、大きめの乳輪ごと丸出し。
 良い子ちゃんの仮面が剥がされて、真実が明らかに。
 「今から彼氏とエッチします」って感じだ。空き教室で彼氏に揉まれてそのまま流れでヤることにした、みたいな。

 チンポがズボンの中でドクンドクン脈打ってる。

「何の意図だ? これは」

 ムコが自分の露出した胸を見下ろして、完全に冷静に聞いてくる。
 俺は答えられなかった。口が開いて動かない。

 脳みそが暴走を始める。
 今まで見てきた学園モノの要素を片っ端からかき集めて、勝手にシナリオを組み立ててる。

 お嬢様ムコ。
 成績優秀、容姿端麗、誰とも群れない孤高の優等生。廊下を歩けば視線が集まる。でも本人は一切気にしない。全く興味ない。
 告白する勇気を出した男子は、冷たい一瞥と切れ味鋭い発言で撃墜される。
 男子全員が妄想する。絶対処女だろ。セックスどころかオナニーすら知らないんじゃないか。そういう俗なこと、あいつの辞書にないだろ。

 でも本当は、ムコは興味がないわけじゃない。ただ選り好みしてるだけだ。
 氷のような軽蔑で男子を遠ざけてるけど、その壁を越えられる奴が、たった一人だけいる。
 秘密の彼氏。

 二人はこっそり付き合ってる。誰にも言ってない。バレたら厄介だから。だってムコには守るべき評判がある。本当は彼氏に何でもヤらせてる悪い子だって知られるわけにはいかない。

 授業の合間、空の教室で彼氏と密会。二人きりになった瞬間、完璧な優等生の仮面が剥がれる。
 ムコが彼氏に襲いかかる。髪に手を絡めて、清楚を演じてる奴にしちゃ経験豊富すぎる、攻撃的で要求的なキス。舌まで使う。廊下で足音がして、彼氏が慌てて囁く――「やば、誰か来るかも」――でもムコは止めない。

「なら静かにしろ」

 普段めちゃくちゃ冷たいムコの声が、今は低くて、キスで乱れて吐息混じり。
 唇で壁に押し付けて黙らせながら、下では手がカチャカチャとベルトを外してる。彼氏が腰に手を回そうとするけど払いのける。ムコが教室の床に膝をつく。慣れた手つきでチンポを引っ張り出して、躊躇なく、あのお上品な顔で、しゃぶりつく。
 彼氏は気持ちよすぎて立ってられない。
 性的なことなんて何も知りませんって顔してるお嬢様。男子の間で裏でデカパイの盗撮写真回されてシコられまくってるオナペット女子。それが今、一日中このことだけ考えてたみたいに、そいつのチンポをしゃぶってる。
 彼氏がイきそうになると、口を離す。立ち上がる
 壁に手をついて振り返って、スカートを腰にたくし上げて、ケツを後ろに突き出す。

「……急げ。10分で次の授業だ」

 ムコは声を殺すために自分の袖口を噛みながら、彼氏のチンポでめったんめったんに突かれる。
 数分後、気持ちよく中イキきめた後、制服整えてコンパクトミラーで髪をチェック。何もなかったみたいに教室を出ていく。また誰にも触れられない孤高の優等生に戻る。
 ムコを遠くから眺めて妄想してシコってる奴らは何にも知らない。実はあいつが毎日彼氏とヤりまくってるなんて。

 で、俺の脳みそが許可なしに構築してるこのヤバい妄想シナリオの中で、その「彼氏」役にキャスティングされてんのは俺――

「おい」

 ムコの声が現実に引き戻す。
 あのドールアイが冷ややかに見つめてて、自分がどれくらい固まってたのか気づく。

「……ん」
「ずっと凝視してるぞ」
「そうだな」
「心拍数が140まで上昇してる。大丈夫か」
「だいじょぶ」

 全然大丈夫じゃない。 
 長い沈黙がある。
 ムコが俺をじっと観察してる。
 それから、極めて冷静に、命令口調で言った。

「座れ」
「え?」
「そこに正座しろ」

 大人しく膝を折りたたんで床に座る。太ももをギュッと閉じて、膝の上に両手。今ズボンの中で起きてる絶対的緊急事態を隠せるかもしれない唯一の体勢だ。

 ムコが俺を見下ろす。
 ……この角度からの眺め、えっっっぐ……、
 重力に逆らって突き出てる双丘が、俺の真上に。

「興奮してるな?」
「……はい」

 うなだれて、観念した自白が絞り出される。

「この衣装のせいで」
「はい」
「制服だからか」
「はい」
「別に好きじゃないと言ってたと思うが」
「……っ、そう思ってたんだよ……今日の今日までは……っ」
「だが好きなんだな」
「そうらしい。嘘ついた。めちゃくちゃ興奮してます。ごめん。お前の完全勝利」

 シュルシュルと音がして、顔を上げた。
 ムコがブレザーを脱いでる。
 肩から滑り落ちて、しわくちゃの紺色の塊として床に着地する。それから指がスカートのホックを見つけて、外す。あの長い脚を滑り落ちていく。ローファーの周りに輪っかになって溜まる。
 リボンタイとブラウスも脱がれる。スカートの上にふわっと落とされる。
 ブラジャー、パンツ。ソックス。靴。
 全アイテムが取り除かれて制服一式の山に加えられる。

 ムコが完全に裸で立ってる。
 俺の心臓はバクバク言って肋骨を殴り抜こうとしてる。
 ……今から何が起こるんだ……?

 ムコが屈んで、制服のピースを拾い集めた。
 全部持って、俺たちがさっきまで分類してた「後で役立つかも」衣装の山に歩いていく。
 ポイッと上に落とす。

 後で。
 後で役立つかも。
 後で……俺と?

 この制服を、また。
 ……マジかよ。

 ムコが全裸に全く動じずに振り返って、俺を見下ろす。
 低い声で、語り出した。

「知っておくべきだ。重要なオペレーションの前の禁欲は、パフォーマンスを向上させる」
「……は?」
「攻撃性、集中力、競争心。それらは適度な性的欲求不満によって増強される」

 ムコが淡々と続ける。

「したがって今夜は、お前の処理を手伝わない」

 それって。

「……お前が言ってんのって……これ、抜くなってこと?」
「そうだ」
「どんくらい?」
仕事ジョブの後まで」
「それ30時間くらいあんだけど!?」
「ああ」
「マジで言ってんの」
「任務が最優先だ」

 ムコが試着予定の衣装を拾い上げる。

「俺は準備を進めておく」

 そのまま寝室エリアに消えていった。
 全裸で。
 堂々と。

 俺は床に正座して一人取り残される。
 ……めちゃくちゃに勃起してて、それについて何もするなっつー明確な指示と共に。

 俺OTFナイフ買ってやったじゃん!!!
 詐欺かよ!!?
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