軍用義体を取り上げられてセクサロイドに脳殻移植されたTS重サイボーグ傭兵(元40代おっさん)が少年の性癖をバキバキに折る話 代表作

ぱふぇ

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ACT 5:CATALYST

[20] 念願のおっぱい解禁日は牛コスで、しかしブラッドは思わぬ「ミルク搾り」を体験する。[乳牛コス/授乳プレイ/アナル舐め/前立腺責め/搾

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 プツッ、と針が人工皮膚リアルスキンを貫く。

 何千回とやってきた作業だ。サイボーグの防弾メッシュにパッチを当てて、皮膚層を縫い合わせて、振動刀ヴィブロブレードや弾丸でえぐられた穴を塞ぐ。
 ただ普通はクライアントを施術台に固定して、神経ブロックで痛覚を遮断した状態でやるもんだ。

 ムコは施術台じゃなく、俺の私用デスクの縁に腰かけて、上裸の背中をこっちに向けてる。
 プラチナの髪からはまだ水滴が垂れてる。シャワーで血は大体流れ落ちたけど、ボディのあちこちを横切る裂傷はまだ生々しく口を開けたままだ。
 まあ、戦闘サイボーグの基準で言えば、かすり傷もいいとこだけど。
 ムコは工房に戻ってきてから、自分の傷をざっと見て、施術台は要らないと判断した。シャワーから出てきて、ここに座って、俺が出てくるのを待ってた。
 だから今こうなってる。ムコが生身の肉でできてるみたいに、手縫いで傷を閉じていく。

 今やってるのは左の腰。斜めに走る切り傷。
 長さ12センチ、最深部で3ミリってとこか。皮下防弾層サブダーマルアーマーで止まって下の構造には影響してないけど、自己修復機能だけじゃ塞がらない程度には深い。
 白づくめ野郎オーメンからの贈り物だ。視聴覚A/Vフィード越しに見てた時より、あいつ結構当ててたんだな。
 俺は針を構えながら言った。

「次、ちょっと痛むぞ」
「構わない」

 ムコは平坦な声音で受け入れる。
 ボイスモジュールをオフに戻したから、元通り。慣れって怖いもんで、このボディから低い男声が出てきても違和感がなくなってきた。
 針が刺さる。痛覚はオンラインのはずなのに、ムコはピクリともしない。肩に力が入る気配もない。
 糸を引く。傷口の縁同士が引き寄せられて、ゆっくり閉じていく。

 俺が取り付けた人工皮膚リアルスキンはソ連圏の軍用グレード。耐刺突性で自己修復機能つき。そんなハイエンドスキンでも、傷がここまでと逆に手助けがいる。
 単分子エッジは肉を「裂く」んじゃない、「分離」する。切断面が不自然なほどに滑らかで、細胞構造が自力で橋渡しするのに時間がかかる。だから縫合で物理的に密着させてやる必要がある。

 また一針。刺して、引いて、結んで。
 ムコの呼吸はずっと一定だ。
 俺のスウェット履いてる以外、何も着てねえけど……俺はこの4ヶ月で、「エロ脳」と「技師テッキーモード」を切り離す方法を学んだ。大体は、な。

「……お疲れ。これで最後な」

 俺は糸を結んで宣言した。
 余分な糸を切って、ナノスケール接着剤シーラントのパッチに手を伸ばす。傷口の上に丁寧に圧をかけながら貼りつけた。
 あとはハイエンドスキンが勝手にやってくれる。生体模倣システムが、どんな生身の体でも羨むような速度で周囲の組織を再生していく。明日の今頃には傷跡すら残ってないだろう。

「ありがとう」
「体張ったのはお前だろ」

 俺はウエスで手を拭いながら言った。
 ムコが立ち上がって、近くの椅子にかけてあったタクティカルボディスーツに手を伸ばす。その拍子に、剥き出しの乳がだぷん、と重たく揺れて、俺はすごく意識的になんもない壁の方に目を逸らした。

「……そのスーツ、置いてけよ。そっちも繕っとく」
「これ」

 振り向くと、ムコがOTFナイフを差し出していた。柄を俺に向けて。
 今日大活躍したマイクロレイヴン・バズヴ・カタⅣ。

「刃を見てくれ」

 受け取って、トリガーを押して刃を展開すると、言ってる意味がわかった。
 単分子モノエッジが、箱出しの時ほど完璧じゃない。本来なら透明なはずの刃線がかすかに曇っている。オーメンのブレードとぶつかった時に、小さな応力破壊が入ったんだろう。

「研ぎ直しが必要だ。できるか」
「ああ、できるよ。ただ時間かかるぞ。分子配列の再調整は急いでやれる作業じゃねえから」
「頼む」

 刃を格納して、デスクの端に置いた。

「しっかし……マジで買っといてよかったな、これ。オーメンとのタイマン、これなしだったら全然違う展開になってたろ」
「同感だ。かなり厳しかっただろうな。おそらく、致命的に」

 ムコにしては珍しい発言だ。今夜一晩で元取ったな、あの出費。
 頭の中でナイフ修理のステップを組み立てる。まず超音波洗浄で破片を除去、次に共鳴チャンバーで分子再配列、最後に研磨仕上げ――
 明日やるか。いや後回しかな……傭兵仕事で店閉めてたから、普通に工房の仕事が溜まっててヤバいんだよなぁ。明日はクソ忙しいだろうな……。まあいい、一個ずつ片付けるしかない。

 ムコがデスクから腰を上げた。
 プラチナの頭から、水滴がぱたぱたと落ちる。歩くたびに床に点々と軌跡を残していく。
 毎回これだ。こいつ、髪を乾かすってことに興味がない。

「おい。それ乾かす気ねえの」
「放っておけば乾く」
「そこら中濡らして回んなよ。……あーあ、見ろよ、さっき貼ったパッチも濡れてんじゃん」

 ため息。

「……もういい。座れ。俺がやる」

 俺が近づくと、ムコは素直にデスクに座り直した。触られることを許可した猫みたいだ。

 ムコの短い髪を、タオルでガシガシと拭く。
 空いた手で濡れた束をほぐしながら、水分を取り除く。透き通って暗く見えていた銀色が、徐々に乳白色に戻っていく。
 ムコが自分でザクザクやったセルフカットは毛先が不揃いで、シャワー後に乾かさないせいで余計にひどくなってる。
 クグツメの高級合成毛髪は本来メンテフリーだ。こうやって最低限ケアしてやれば、あっちこっちで変な角度に跳ねてた毛束が、ちゃんと収まるべき位置に落ち着く。

 ムコはそこに座って、俺の手の下で頭を軽く垂れて、ゆっくり規則正しく呼吸してる。
 細いうなじに触れる指先で、自分の脈を感じた。

 これ、なんか……医療行為よりよっぽど親密だ。
 サイボーグが技師にボディを弄らせてるんじゃなくて。
 ……彼氏にやらせることだろ。

 胸の中で心臓がうるさくなる。
 ほぼ全裸のボディにこんなに近いことを、今さらみたいに意識した。
 Kカップはこの角度だとほとんど見えない。でも片乳の側面がはみ出してて、髪を拭く振動でふるふる揺れてる。さりげなく頭を傾けると、ピンクの乳首が見えた。

 レオの銃砲店でのことが頭をよぎる。
 ムコがデカパイを俺の背中に押しつけてきて、耳元で囁いてきたこと。欲しいナイフを買ってやったら、見返りに、おっぱいを……

 ――触るだけじゃない。口をつけていい。吸いたいか? 噛んでもいいぞ――

 こいつ、そう言ったよな。俺が折れる直前に。

「なあ」

 乾かしてる髪に視線を戻して、目を固定したまま言った。
 出てきた声は狙ったより低くて、掠れてる。

「その、さ」

 脳直で性欲むき出しの言葉が飛び出さないよう、頭の中で文章を組み立てる。

「……あの、レオの店で。OTFナイフ買った時」

 やっと形になった。

「約束、したよな。俺が買ってやったら、いろいろ……していいって」

 咳払いひとつ。

「……胸」
「ああ。確かに言ったな」

 ムコの声は世間話みたいにフラット。ただの事実確認。

「で、」

 唾を飲み込んだ。

「……それって、まだ有効? それとも俺に買わせるための交渉戦術だっただけ?」

 精一杯カジュアルに聞こえるように言った。どうでもいいけど、みたいな顔で。
 ムコの頭がわずかに動いた。

「お前はどう思う?」

 は? どう思うって……なんだその質問。
 難しいこと考えさせんな。お前がKカップ押しつけて「吸いたいか?」とか耳元でぽそぽそ囁いてきた時点で、俺の脳みそはまともに動かなくなってんだから……っ。
 俺は慎重に言葉を選んだ。

「……たぶんお前は、守る気のない約束をするタイプじゃないと思う」
「正解だ」

 俺の指が白髪の中で止まった。
 ムコの頭が回る。冷たい色の目が、周辺視野で俺を捉えるくらいまで。

「この傷が塞がったらな。20時間から24時間か。……好きにしていいぞ」

 あんまりにも何でもないみたいに言うもんだから、明日の晩飯どうするって話でもしてるみたいに聞こえる。
 ……わかってんのか、お前。性欲の塊みたいな歳の男に向かって、Kカップの乳で好きなことしていいって。どんだけエロいこと言ってるか、自覚あるのかよ。

 下腹の奥で、攻撃的なムラつきが急速に膨らむ。

「……おう。うん。……了解」

 ムコは話が終わったと判断したらしい。
 力の抜けた俺の指から、タオルをするりと抜き取った。

「休む。お前も夜更かしするな」

 ムコが立ち上がった。寝床に向かう足音が背後を通り過ぎていく。裸足が床を叩く、ぺた、ぺた、という軽い音。
 スライドドアが開いて、閉まった。

 ――吸いたいか? 噛んでもいいぞ――

 ……ヤバ。
 このカウントダウンの終わりにが待ってるって知ってて、どうやって寝ろってんだよ……。

 ……。

 白状すると。
 結局眠れなかった。30分くらい粘って、諦めた。
 めちゃくちゃ悔しかったけど、ムコを刺激しないようにそーっとベッドから這い出して、トイレに向かった。
 便器にぶちまけて、はあ、はあ、と荒い息をつきながら、レバーを押す。
 水の中の白いのが、渦を巻いて流れていく。それを見下ろしながら、急速に冷静になっていく頭――

 アホか俺。
 本番前にトイレでシコるとか、いくらなんでもダサすぎだろ……ッ!

「…………」

 ……よし。寝よう。
 寝て、体力回復して、明日はバリバリ仕事しまくって、万全のコンディションで夜を迎えるんだ。
 これは、なんつーか……そう、ウォーミングアップだ。

 ……誰に言い訳してんだよ俺は。
 一発抜いたらさすがに頭が冷えて、今度はすんなり眠りに落ちることができた。



 仕事ジョブ明けの翌日。俺は取り憑かれたみたいに働いた。
 
 準備から本番まで店を閉めてたツケは重かった。本業がドカッと押し寄せてくる。
 受信箱はイラついた客からのメッセージで溢れかえってた。『いつ開くんだ』『急ぎなんだが』『連絡よこせ』――まとめて片っ端からさばいていく。予約客のメンテを順番にこなして、合間を縫って、棚に積み上がってた預かり仕事も消化した。
 昼飯食う暇もない。診断ケーブル繋いで、エラーコード読んで、損傷パーツ特定して、見積もり出して、承諾もらって、直して、テストして、金もらって、次。

 その間ずっと、ムコは工房をうろうろしてた。いつも通りに。

 隅っこの使い古されたソファでだらけてる。
 視界の端をKカップがゆっさゆっさ横切ったと思ったら、次の瞬間には作業台にあのケツがドカッと鎮座して、太ももを組んで俺の作業を眺める。
 何か思い立ったように立ち上がって、デカ尻を催眠術みたいに揺らして去っていく。
 気まぐれに待合スペースに出て客にセクハラされて、飽きたらまた戻ってくる。

 精密作業から顔を上げるたびに、視界の端に集中を乱す何かがチラつく。
 わざとじゃない、それが最悪なとこだ。ムコはあのボディがどんだけ目の毒か、まるで自覚がない。
 猫みたいなもんだ。やたらデカくて、やたら気が散る、Kカップ爆乳搭載でパーソナルスペースの概念がぶっ壊れてる猫。

 フラストレーションを生産性にぶち込んで、なんとか乗り切った。
 日が暮れる。最後の客が帰る。店のドアにCLOSEDの看板を下げる。
 バシリスクからの報酬と今日の売上で、口座残高は数ヶ月ぶりにまともな数字になってる。
 工具を必要以上に丁寧に片付けて、期待を最高潮まで膨らませた。
 
 もう一つの報酬を受け取る時間だ。
 ……ご褒美エッチタイム。



 俺はベッドの端に座ってる。ムコはその前に立って、じっとこっちを見下ろしてる。
 あのドールアイは相変わらず冷たくて、何考えてるか読めない。でも心なしか細められた眼差しに、なんかこう……あるな。あれは……

 ジト目だ。

「……本当にこれがいいのか?」

 低い男声が発せられる。……あのボディから、で。ミスマッチにも程がある。
 ムコの視線が落ちた。俺の体を臨床的な精度でなぞって、スウェットの前で止まる。正確には、スウェットの前に張ってるビンッビンのテント部分で。
 数秒、そこに留まった。

「……そのようだな」

 ジト目が二割増しになった気がする。

 ムコが着てるのは、俺がアダーの「ケアパッケージ」から選んでリクエストした衣装だ。
 仕事ジョブの前に仕分けしたフェチ衣装の山には、マジでイカれたアイテムがいくつかあったけど……これは、俺の性癖にクリティカルヒットした。

 ホルスタイン柄プリントビキニ。
 乳牛コス。

 白黒ブチ模様で彩られた極小の三角形が、このバカ乳ボディを品評会で最優秀賞取った牝牛みたいに飾り立ててる。横乳に紐が食い込んで、深呼吸一発で弾け飛びそうだ。
 ボトムも同様にバカバカしい。お揃いの柄の布切れは、ぶっとい太ももの間にほとんど消えてて、デカ尻に慎みを与える気がまるでない。なんつーかもう、隠せてない全てに視線を集めるためだけに存在する、冗談みたいな布面積。
 ニーハイソックスもホルスタイン柄。お揃いのアームカバーが手首から肘まで。俺のチンポをズキズキさせる以外の実用的な機能は一切ない。

 プラチナブロンドの低い位置には、クリップ式の牛耳が留まってる。
 ふわふわで、内側がピンク。片方の耳にリアルな黄色い家畜識別タグがぶら下がって、ムコの頬の横でぶらぶら揺れてる。
 仕上げに、動くたびにチリンと鳴る、小さなカウベルがついたチョーカー。

 色の相性が完璧すぎた。
 ムコのプラチナヘアーと色白の人工皮膚リアルスキンがホルスタイン模様の白い部分とマッチしすぎてて、まるでこのボディのためにデザインされたみたいだ。

 下品だ。品性ゼロ。エロすぎる。
 これ以上なく攻撃的に、「このでっかいウシ乳見て~♡」って主張してて、男の脳みその最下層にハードコードされてる「おっぱい、でかい、好き!!」レベルのリビドーにダイレクトにぶっ刺さってくる。

 なんとでも言え。俺は後悔してない。
 だってあのおっぱいにようやく口つけるなら――これ着せるしかないだろ。

 俺のチンコは痛いくらいにビンビンだった。
 対してムコの表情は……控えめに言って乗り気じゃない。
 いつも通りの能面。でもこんなカッコしてたら全身で叫んでるようなもんだ。
 「見て見てっ♡ あたし♡ デカパイ発情メス牛でーすっ♡ どーぞシコシコしてくださーいっ♡ モ~♡」――って。
 ……やべ。こいつが微塵も思ってないキャプションを脳内で勝手に重ねるの、めちゃくちゃ興奮する。
 変なアテレコされてるなんて知る由もなく。ムコは耳クリップの位置を直しながら、低いバリトンで淡々と言った。

「胸を好きにしていいとは言ったが……俺に家畜の格好をさせる必要があったのか? これは馬鹿げてる」
 
 それがいいんだろうがよぉっ!!! って喉元まで出かかった。
 バカみたいなのがいいの! ポイントなの! お前が! 俺が頼んだからって! ド下品な牛コスしてる! その事実込みでクソエロいんだって!!
 でも叫んだら負けな気がしたので、深呼吸した。

「……こんなんで興奮すんのがアホらしいってのは自分でもわかってるけど、今日一日ずっとマジでこのことしか考えてなかったから、お前に呆れられるパートはスキップしていい?」
「……」

 ムコは無言のまま、ベッドの端に寄ってきた。
 俺の隣に腰を下ろす。
 ――どっぷんっ♡
 座った衝撃で、重たい乳が大きくバウンドした。

 やっば。
 目の前に、バカ乳女がいる。
 搾られるの待ってるメートル超えのウシ乳ぶら下げて。
 バカみたいにサイズ超過の、ホルスタイン柄の、脳みそ空っぽにしてしゃぶりついていいことになってる110センチKカップが、すぐそこに。

 昨夜だけで武装した男を十何人ぶっ殺した奴が中身だとか……今はどうでもいい。
 脳が追いつく前に、口から言葉が飛び出した。

「おっぱい吸わせろッ!!!」



 30分後。

 俺を発情させたホルスタイン柄ビキニは上に押しのけられて、鎖骨のあたりで丸まってる。
 解放された110センチKカップは――ヌルヌル、テカテカ、ぐっちゃぐちゃ。
 テカってるのは、乳の隅々まで俺の唾液で覆われてるからだ。

 俺は乳首に吸い付いて、リズミカルにチュウチュウやって、舌は乳輪の周りをぐるぐる。フリーな手はもう片方の乳をわしづかみにして、無心で揉みしだいてる。

 いいか。俺は巨乳が好きだ。
 今、俺は天国にいる。

「……おい」

 頭上からムコの声が降ってきた。
 無視した。乳輪をゆっくり舌でなぞって一周してから、またカプッと食いつく。
 ムコのボディに仕込まれた感覚受容センサーが何か拾ってるのは、時々呼吸が乱れたり、体がピクッとするのでわかる。でも正直、俺はほとんど気にしてない。
 申し訳ないけど、今100パー自分の欲望だけで動いてる。

「もういいだろう。挿入しろ」
「んぐっ、」

 ムコの手が俺の額を押して、占拠中の乳から引き剥がそうとしてきた。
 抵抗した。両乳を掴んでしがみつく。

「ハァ……ハァ…っ……もうちょい……っ、もうちょっとだけ……」
「30分経ったぞ。そろそろ新鮮味も薄れる頃だろう」
「へーきだって……まだいける……」

 俺はツンと勃起した乳首に吸いつき直した。
 軽く歯を立てると、その肉は本物の乳房みたいに柔らかくへこむ。そう設計されてるからだ。カグラザカ・ニンギョウの天才変態エンジニアチームが、何年もかけてダイラタンシーポリマーで人工乳の質感と弾力を再現する技術を編み出した。その成果がこれ。

 やっべえ。最高すぎる……っ。
 みんな赤ん坊のときに乳離れするだろ? そういうもんだ。哺乳類は人生のほんの最初だけ乳を吸って過ごす時期があって、ある程度成長すると社会的に許容されなくなり、永遠に卒業する。
 でもな、男はさ、大人になると、急にまたやっていいことになる。ただしそれには、おっぱいの持ち主から自力で合意を取りつけなきゃいけないっていう高いハードルがある。再訪できる奴はそうそういない。

 で――俺は今、Kカップパラダイスに顔面ダイブ中。
 脳みそが興奮と多幸感のカクテルにどっぷり浸かってる。

 チンコはパンツの中でドクドク脈打ってる。でも不思議と、それは二の次だった。普段ならとっくに中に挿れたくて頭おかしくなってるはずなのに。
 昨日抜いといたのが正解だった。
 便所でシコって流したときはマジで負け犬みたいに感じたが、それがハンデじゃなくて味方になってる。脳がいつもみたいに射精に直行しない。イきたいっていう切羽詰まった衝動が、高次脳機能を乗っ取ってない。
 おっぱいを無限に楽しめる。

 右乳に移動。左乳はテカテカのぐちゃぐちゃで放置。
 乳首に吸い付いて、頬をへこませて、ぷっくりしたピンクの突起を口の奥深くまで引き込む。腫れた乳輪の周りに、もう一周歯形を追加する。
 噛まれたムコが微かに身じろぎして、カウベルがチリンと鳴った。

 ムコはといえば、退屈そうだった。
 天井を見つめてる。片手は俺の頭に軽く置いてあって、もう押しのけようともしてない。
 不快ではない、興奮もしてない。ソフトウェアアップデートのインストールが終わるのを待ってる、みたいなテンション。時々小さくため息をついてるけど、あれは許容ゲージが削れてきてる音かもしれない。

「……ブラッド」
「ん」
「飽きてきた」

 ……まずい。
 飽きたムコは危険なムコだ。

 この数ヶ月で学んだことがある。
 ムコはセックスを、効率的に完了すべきタスクみたいに扱う。俺が自力で終わらせるのに時間がかかりすぎてると判断したら、痺れを切らして……プロセスをしにかかる。

 そうなったら終わりだ。
 だってムコが早く終わらせたがるってことは、何がなんでもイかせにくるってこと。俺を最短距離で、最大火力で、尊厳ゼロで射精させるような、とんでもなくえげつない技を繰り出してくるってことだ。
 結果はいつも同じ。俺は記録的な速さでザーメンぶっこ抜かれて、ピクピク痙攣して息を切らしてる間に、ムコは満足して別のことに移行する。

 あれには勝てない。
 男の体から最大限の快楽を搾り取るために設計されたボディを、戦闘と同じ冷酷な効率でセックスに臨む意識が操ってる。そんなのに勝てるわけがない。

 すると細い指が、俺の髪を梳いていくのを感じた。
 一瞬、ムコが撫でてくれるのかと思ったが……

「……んぷっ、」

 甘かった。
 指が髪を握り込んで、グイッと頭を後ろに引き戻された。

「後ろを向け」
「……は?」
「俺に背を向けて四つん這いになれ」
「えっ、ちょっ、なんで?」
「やれ」

 問答無用でムコが俺の肩を掴んだ。
 華奢な細腕に見えるけど軍用グレードアクチュエータ搭載だ、抵抗なんか意味がない。強い力であっさりぐるんと回される。気づいたら俺はヘッドボードに向かって四つん這いになってた。
 この体勢、尻が……
 尻が、こう、ムコに対して丸出しで。

「な……何すんの? これ恥ずかしいんだけど。なんで俺が……」

 なんで俺、数秒前まで熱心にパフパフしてた相手にケツ向けてんの? 俺があっちに何かする側じゃなかったか?
 あいつの手が俺の腰に触れた。履いてたスウェットが一息で太ももまで引き下ろされる。
 ひんやりした空気が、剥き出しの尻に当たった。

「おっ……おい!? 何して……、うっ♡」

 ムコの手が股の間に伸びてきて、俺のチンコを掴んだ。
 細い指で作った輪っかが根元に巻き付いて、クイ、と下向きに曲げられる。充血してパンパンの海綿体に逆らって、強制的にマットレスの方を向かされる。
 馴染みのない変な角度に、チンコがビクッと跳ねた。

 次に、息を感じた。
 温かい吐息が、俺の――

 自分でもろくに触ったことがない場所。そうしたいと考えたことすらなかった、敏感な筋肉の輪っか。
 ――ケツの穴に。

「――……ッ!?!?」

 ……嘘だろ。絶対嘘だろ。まさかこいつ……っ、

 ちゅうっ。
 と、に柔らかい感触。

 これは現実じゃない。こんなことが実際に起きてるわけがない。
 ムコが――素手で男を殺せる恐ろしいサイボーグ傭兵の男が――、キスを押しつけてる。

 は……? は? はぁ? はぁぁぁぁっ!?
 普通におっぱい吸わせてもらう約束だっただけなのに何だよこれ突然……ッ!?
 ていうかこれって……俺たち今までこんなの……っ、いきなりアブノーマルすぎるだろ……っ!! こんなのムコのメニューにあるなんて聞いてねえ……

 チンポはしっかり下向きに固定されたまま、手が動き始めた。
 キツめの指輪っかがゆっくり下降して、チューブから最後の一滴を絞り出すみたいに、入念に、じっくり搾り取るような動き。

 くっ……そ……っ。

 ムコは飲み食いしない。昨日オーメンに出された酒を口にするまで、何も入れたことないはずだ。あの口は数ヶ月間、本来の目的には一度も使われず、清潔なままだった。なのに。

「あっ……はっ……ムコっ、そこ……そんなとこ、お前……」

 ムコの舌が、俺のケツ穴の周りでゆっくり円を描いた。

「っお……♡」

 腕の力が抜けそうになった。

 なんだよこれなんだよこれなんだよこれ――……っ

 また舐められる。さっきよりゆっくり。皺のひとつひとつをこそぐみたいに、丁寧に。
 舌がもっと深く探りを入れてきた。執拗に窄まりを押してくる。
 ……ついに、数ミリ入ってきた。

「んなぁっ! ちょっ――」

 下半身の筋肉ぜんぶがギュッと締まる。
 声が裏返って、声変わり以来出してない音域に達した。

「いやいやいや待って……っ」

 侵入した舌先が縁をぐるりとなぞる。つま先が勝手に丸まった。
 一度離れて――

「む、ムコっ、いきなりすぎ……っ♡」

 ぺろ。……チュッ。
 ムコの唇が敏感な肉に密着して、軽く吸った。ほんのちょっとだけ。そして俺の腕がほとんど崩れ落ちた。
 瞼がトロンと下がる。抵抗なんかとっくに消えて、感覚に身を委ねて、マットレスに蕩けていく。

 これ……結構やばいかも。視界がぼやけてきた。焦点が合わない。
 なんだこれ。すごい。すごく……気持ちいい。
 こんなの知らなかった。ハマったら絶対戻れない。

 客観的に見てめちゃくちゃ整った女の顔が、俺のケツに埋まって、恥ずかしい場所に口づけを捧げてる。
 こういうプレイが存在するのは知ってた。ダークネットには教材がいくらでも転がってる。「たぶん一生興味ないだろう変態フェチもの」カテゴリに自分の中で放り込んでた。
 クソ、こういうことか。美人にケツ舐めさせるのって、マジで超越的な体験だ。

 胸の奥で、感じたことのない何かがふつふつと沸き上がってくる。
 快感だけじゃない。それとは別の、すげえいい気分。
 支配感、っつーの……?
 四つん這いで、他人にケツ突き出して、傍目に見たら、俺は受け身の体勢にいる。
 でも精神的には? ムコが俺の後ろに跪いて、俺の一番汚い場所に奉仕してる。そう考えると……
 ……なんか別の意味で気持ちいい。
 あのムコに。信じられないくらい屈辱的なことをさせてる。自分が気持ちよくなるために、いっちばん下劣で最低なやり方で、使ってる。
 これって……かなりアルファなムーブだろ。

 あの夜。オーメンとウイスキーを啜ってた口。グラスの縁にリップマークを残していったのと同じ唇。
 ムコは今、それを使って……
 その考えに、興奮でくらくらした。

 暗いものがムクムク膨れ上がる。
 オーメンはムコと酒を酌み交わした。名前を交換して、たぶん次のチャンスを考えながら眠りについた。
 でもムコは、俺と、こんなことしてるんだ。
 パワートリップがヤバい。
 背筋をゾクゾク駆け上がる、強烈な優越感。
 
 ムコの頭が動いた。濡れた卑猥な音が聞こえる。吐息の熱さ、唾液のぬるっとした感触……。

「……ムコ……」

 声が息混じりに漏れた。

「舌……もっと奥、入れてくんね……」

 後ろで、一瞬の沈黙。
 それから、ムコの舌が、きつく締まった筋肉の輪を押し越えて、ちゃんと入ってきた。

「んっ……♡ そう、それ……くそっ……」

 もう堂々と喘いでた。恥じらいなんて残ってない。感覚が強すぎて、取り繕うとか無理。
 自分の声が、自分のものじゃないみたいに聞こえる。

「それ、もっとやって。……やめんな」

 俺いつからこんな偉そうになったんだ?
 でもムコは従う。唇が俺のケツ穴にぴったり密着して、
 ……ちゅぽっ、ちゅぷ、つぽっ、ぬぷっ……
 固く尖らせた舌が出たり入ったりを繰り返す。深いところでくねって動く。頭おかしくなりそう。

 チンポはもうダラダラだった。ムコの指が溢れた先走りを絡め取って、潤滑剤にして、親指で裏筋を押し潰しながら扱いてくる。一往復ごとに、尿道からさらにカウパーがじゅくじゅく絞り出されてく。

「……ニオイ、とか……すんの……?」

 なんでそんなこと聞いたのかわからない。興奮しすぎて朦朧としてた。
 奉仕が止まる。濡れた穴に、温かい息がかかる。

「……臭うぞ」

 ムコが低く囁いた。敏感なところに向かって。

「男の臭いがする」

 激しい震えが走った。
 低いバリトンで届けられた、ストレートな観察。
 俺はその言葉に恥ずかしがるべきで、興奮していい場面じゃ、絶対にないはずだ。なのにムコの唇は、言いながら、何の嫌悪も滲ませずに俺の穴に触れ続けてる。

「じゃあなんで……抵抗とか、ねえの……男の、んなとこ舐めて……」

 かすれた声で聞いた。

「……」

 答えは言葉じゃ返ってこなかった。

 チュッ。
 チュッ、チュッ……♡

 淫らで濡れた、キスの音。

 チュ、チュッ♡
 チュッ♡ チュッ♡ チュッ♡

 柔らかい唇が、何度も何度も押しつけられる。まるで、なんていうか、愛おしいものにするみたいに。
 ついばむようなキスの連打。そのあと、ぐっと口を押しつけて、深くて念入りなのが来た。舌が入って、ぐりゅっと捻って、抜いて。また入れて。
 俺のケツ穴に、恋人の口みたいにディープキスしてる。

 あいつは躊躇しない。俺がエスカレートしても、文句も言わない。
 それってどういう意味だ――?

「ン、ん……」

 ムコが唇を押し当てたまま低い音でハミングして、その振動がアナルの粘膜から背骨を駆け上がる。

「……肛門括約筋は、神経密度がかなり高い」

 ちゅ、と音を立てて唇が離れる。すぐ戻ってくる。

「……亀頭に匹敵する」

 またキス、引くときに舌先がチロッと出て、ひくついた縁をなぞっていく。

「……ほとんどの男は、社会的な条件付けのせいで探求しないが」

 舌がまた中に押し入ってきた。浅いところをぐるぐる。内壁を舐め回すように。

「だが生理学的には……驚くほど敏感な、男の性感帯だ」

 会陰から尾てい骨までべったりと。長く、ゆっくり舐め上げられて、目が裏返りそうになる。

「……性感のために刺激するのは、理にかなっている」

 ――――~~~~……っっっ♡

 マットレスに顔を埋めて呻いた。
 アルファなハイと、とろけそうな肉体的快感がぐちゃぐちゃに混ざり合って、頭の中がもう何もわかんない。

 はあぁぁ……クソッ……♡ ムコぉ……♡

 ……ちゅぽっ。
 舌が引き抜かれた。
 濡れてヒクついてる穴に熱い吐息がかかるのを感じながら、背後でムコが喋るのを聞いた。

「ボディのOSによれば、男の肛門刺激にはかなり効果的なテクニックがある」
「……、へ?」
「前立腺への的確な圧力で、射精を強制できる」

 淡々と。

「――搾精、というらしいな」

 意味を処理する前に、何かがアナルに押し当てられた。
 今度は舌じゃない。もっと硬いもの。

 指の腹。
 細くて。冷たくて。なんかでヌルヌルになってる……たぶんムコの唾液。
 さんざん舌でほぐされた筋肉の輪に、ぐっ、とプレッシャーをかけてくる。

「ちょっ、待ッ――……」

 ぬるん♡
 滑り込んできた。第一関節。第二関節。止まらない。

「っ……っ、……~~っ♡」

 中で、細い指が曲がった。
 何か探ってる。内壁のあちこちを押して、俺の中をマッピングしてる。
 そして、

 くにゅっ♡

 ——~~~~~~…………っっっ!!?♡♡

 目の奥で白い光が弾けた。
 視界がチカチカして、ホワイトアウトする。全身が勝手に硬直した。

「ああ……ここか」

 ムコの声が、ひどく遠くから聞こえた。

「これが前立腺だ」

 指先がそこを押した。小さな円を描くみたいに、こする。

「あ、んっ、やっ、待っ……――♡」

 なんだこれ。言葉にできない。
 チンコを完全にすっ飛ばして、脳みその「イく」を司ってる部分に直接触られてる。そうとしか表現できない。
 下向きにされたままのチンコが、俺の意思と関係なくびくびく脈打ち始めた。

 ぽたっ、ぽたっ……つぅーーー……
 先走りが透明な糸になって、シーツに向かって細く垂れ落ちていき、シーツを濡らす。

「ム……ムコ、待っ……くそ……やめ、ムコやめて……だめ……それ……俺……♡」

 指が強く押し込まれた。たった一本で、残酷なくらい正確に、そこを揉みしだいてる。

「ムコ、ムコ、ムコ、ムコおおお……♡ ちょ……待っ……むり……おねがい……♡♡」

 声が情けなく裏返る。自分でも引くくらいの泣き言が漏れた。
 チンコでは、ムコの親指が尿道の膨らみを押し潰して滑る。先っちょから透明な汁がじゅぷ、と押し出される。

 股の間に見える自分の下向きチンコ。痛いくらいカチカチに硬い。血管が浮き出てる。玉がキュッと引き上がって臨戦態勢。全システムが発射秒読みを叫んでる――のに、軌道がぜんぶおかしい。
 いつもなら射精の衝動はチンコで膨れ上がる。根元でぎゅうぎゅう圧が高まっていくのを感じる。
 でもこれは違う。
 中から来てる。
 あいつの指から、腫れた腺を的確にこね回す、たった一本の細い指から。

 くにゅ♡ くにゅ♡ くにゅ♡
 最高級セクサロイドの性能がフル稼働してる。ピンポイントで前立腺だけを攻めながら、もう片方の手は下向きのチンポをゆっくり搾るみたいにしごき続けて――

「あ……あぁっ……あああぁ……♡♡♡ いや待って……ムコおねがい……♡ む、ムコ♡ すご……すごすぎ……っ♡ イくっ、イくからっ……♡♡ させてっ、ちゃんと……こんなんじゃなくてっ……♡ おねがい、おねがい俺……っ♡」

 脳が警告を叫んでる。出すな、本番のために取っとけ、シーツの上じゃなくてマンコに出したいんだろお前――でも体が言うこと聞かない。

 やだ……やだやだやだ、やだあああ!!
 まだイきたくない!! もっとおっぱいタイム堪能するつもりだったのに、最後はちゃんとヤるつもりだったのに……っ!! ケツいじられて終わりとか嫌だっ!! これチートだろ!!
 ずるいだろこれっ、マンコでイきたかったのに……ケツでイかされる……っ、精液……精液盗られる……っ!! こんなんで無駄撃ちさせられる……っ!!

「やめっ……♡ 嫌だ……♡ 俺の精液……っ♡♡ 盗んな……っ!♡♡ 盗んなぁあっ♡♡ ムコおねがいっ♡ おねがいさせて♡ マンコ使いたい♡ マンコに出したかったのに俺――……っ」

 あいつの指がくいっ、と曲がった。
 それでおしまいになった。

「っひぃ……っ♡」

 神経系の地殻変動……そうとしか言えないなんかヤバいことが、骨盤の奥深くで始まる。
 ろくにしごいてないチンコが、びくん、びくんと激しく痙攣した。

「あ――ああああああああぁぁぁっ……♡♡」

 射精する。
 下向きに。
 受け皿みたいに添えられた、あいつの手のひらに向かって。

「はぁあぁぁ……っ、あ、ぁぁぁぁ……んんぅうぅぅぅ……♡♡♡」

 いつもみたいに勢いよくぶっ放すんじゃない。容赦ない内圧に押し出されて、強制排出させられてる。どこに溜まってたんだよこんなのって量の、濃くて、重いテクスチャの精液が、待ち構えてた白い手のひらにぼたぼた落ちて、指の隙間から零れた。
 ケツだけ間抜けに突き上がったまま。射精の最中も、ムコはゆっくりしごき続けてる。脈打つたびにあの指の輪っかがワンストローク搾って、俺のがビュクンって跳ねて、もう一発、そしてまた一発、あいつの手のひらに貢いだ。

 長い。
 5秒――10秒――15秒――
 昨夜の惨めな便所オナニーからなんとか再生産した分だけじゃ説明つかない。金玉の奥底にこびりついてた古い精子まで全部、根こそぎぶっこ抜かれてる感覚。

 人生最強のオーガズム。
 マンコに触れてすらいないのに。

 搾り尽くされた頃には、俺はかろうじて息ができる状態だった。人間の形を保ってるのが奇跡。
 ケツの方で、ぬぷ……と湿った音。ムコが指を引き抜いた。

「およそ15ミリリットル」

 頭上のどこかからムコの声が降ってくる。

「平均的な一回の射精量は2から5ミリリットルだ。……お前は3倍以上出したな」

 低い男のバリトン。間違いなくムコの声だ。でもその下に、何か別の色がレイヤーされてる。
 首を捻って、ムコを見た。
 あいつは手のひらで冷えていく白いドロドロを見下ろしてる。
 そして、小さな音。ほとんど聞こえないくらいの。
 俺の耳は確かに拾った。

 ムコが――クスッと笑うのを。

「本当に……出してしまうんだな。一点を押されただけで」

 読み取れるようになるまで数ヶ月かかったミリ単位の口角の動きじゃない。小さいけど、紛れもなく。唇がゆるく弧を描いて、マジで笑ってる。
 しかも、声にはちょっと小馬鹿にするような響きがあった。繁殖用家畜みたいに男の種を搾っといて、どんだけ簡単だったかあざけってる。

 俺の知ってる淡々とした無表情の傭兵は、男の恥辱を引き出して面白がったりしない。
 でもあのボディには、男の脳殻以外にも、別の人格が棲んでる。
 セクサロイドOS。
 カグラザカ・ニンギョウがプログラムした人工ペルソナ。男を喜ばせ、焦らし、手玉に取って、最大の満足を引き出すために設計された「そいつ」は。
 これを面白いと思ってる。

 俺は横たわったまま、荒い呼吸を整えながら、ムコを見つめた。

 ……心配すべきなのか?
 ムコの脳殻とセクサロイドOS。2つのシステムが1つのボディを共有して、常に手綱を奪い合ってる。それぞれが独自の優先順位、独自の行動パターン、独自の……欲求を持って。
 その均衡が崩れて、OSが表面に出てきてる。
 前にも片鱗は見た。
 バシリスクとの会合で、ムコがアダーに跨がって、俺たちの生存を勝ち取るためにセックスを武器にした時。あの時は明確だった。危機的状況を打開するために、ムコが意識的にOSにハンドルを渡した。
 でも今回のトリガーは何だ?
 何があいつを呼び出した?

「ムコ……?」

 人工虹彩が俺に再フォーカスした時には、読めないドールフェイスに戻っていた。俺が垣間見たものは、もう消えてる。

 俺は今気づいたことを説明しようか考えたが、ため息をついて、やめた。
 その会話は、カウパーと精液まみれのシーツに沈んでない時まで待てる。
 代わりに、俺は言った。

「お前さ、牛の格好してんだぞ。……なのに、お前が搾んのかよ……」

 力なくツッコんだ。
 ……逆だろ。そっちが搾乳されるべきだろ。
 俺のザーメン根こそぎ搾り取るんじゃなくてさ……。

 ムコが自分のバカみたいなコスチュームを見下ろした。ホルスタインプリントのビキニ。首から下がるカウベル。
 俺を見返して平坦に言う。

「皮肉は理解してる」

 ティッシュを取って、効率的な動作で片付け始める。

「次からは、30分も乳に気を取られないことだな」

 チリン、とカウベルが鳴った。
 俺はシーツに顔をつっぷして、呻いた。
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