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番外編

【彼方誕生日編(四)】僕の生まれた日をお祝いしてくれる家族。(一)(彼方視点)

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「わ、本当に透けてる……っ!」
 夕空に今日撮ったプリクラをかざすと、背景がオレンジ色に染まる。穴のあいたハート同じ色だ。
「折り紙を背景にしてもいいかもね。花柄とか、キャラクター柄とか……。百円ショップ寄っていく?」
「夕焼け色……。彼方の色だ」
 水樹は空にかざしたまま、ぽうっとブリクラを……、空を眺めている。白系統に纏めた服が淡いオレンジに染まり、彼方は胸が詰まった。
(僕の噛み跡もある。指輪も戸籍も一緒……)
「……彼方?」
 視線にようやく気づいた水樹が、固まる彼方を不思議そうに見つめている。
 時折、愛おしい人を見ると込み上げてくるものがあった。適当な言葉を当てはめようとするが、上手くいかない。
「好きだなって」
「い、いきなり!?」
「いきなり。うん、好きだよ、水樹」
 じわじわ濃い夕焼け色に染まる顔。その現象は自分にも起こっているので、水樹の手を引きながら素数を数え始めた。
 
 真っ直ぐ家へ帰ると、出迎えてくれたのは天使達だった。翼を生やし、頭には輪っかがある。
「パパー! しごと、おつかれさまー!」
 白とフリルのワンピースを着た天使は、隣にいた水樹へ飛び付く。
「お帰り、パパ」
「父さんの面倒見てくれてありがとう」
 遅れてやって来た兄達は、ワンピースの代わりに白いパンツを合わせている。
 手作りにしてはクオリティーが高い。
 そして、自分は面倒を見てもらう側だったのか、とあながち間違いでもない息子達の指摘に納得する。
「パパ、うれしそうだね! いいことあったの?」
「久し振りに父さんとデートできたからね。楽しくて格好良かったんだよー?」
 水樹の反応に遊佐家の男達は振り返る。反応も速度も全く同じで、まさに親子だった。
(にこにこする娘と旦那が国宝にしたいくらい可愛い)
「へえ。父さんが」
「父さんが、か……」
 意味深な発言の後にジト目。双子からの攻撃に心が抉られそうになっていると。
「「やるじゃん」」
 予想外の認められように、思わず目を剥いた。
「いいなー。あゆみもとーさまとデートしたかったなあ。パパだけずーるーいー!」
「「やっぱり許さない」」
「セコム度が増してるな、お兄ちゃんズ……」
 苦笑いで返しつつ、羨ましくもあった。純粋に仲が良い二人が。
 彼方は、血を分けた双子の兄とはそこまで仲良くなかった。兄弟の縁はとっくの昔に切れたと思われたが、水樹や懐いた息子達を経由し、またちょっかいかけられている。
(僕が憧れているのは仲良い兄弟像であって、水樹に酷いことしたあいつと仲良くなりたいわけじゃないんだけどな)
 敵意をむき出しているが、これは守谷双子の問題だ。子供達や水樹には強制したくないとは常々思っている。ただ、大切な人達を傷付けたら……わからない。
「とうさまがわらいながらおこってるよ! もう、おにいちゃんたち、あんまりいじめちゃだめでしょ!」
「いじめるつもりは……」
「きょうのしゅやくはとうさまだよ? パパだってかなしむんだから!」
「ごめん。父さん、歩美。パパも。ほら、陽翔」
「ご、ごっ、ごめん……」
「あーあー、父さん達大丈夫だからな? 陽翔も泣かなくていいぞ?」
「うんうん。パパも平気だよ?」
「ほーら、もうすぐパーティーの準備……って、彼方ぁ?」
「ママはもう黙ってて!!」
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