人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

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第十章

心臓を捧げよ2

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「か、からかわないでください!」

「からかってなんかいないさ。こんなすすけた私を女として見てくれるのは嬉しいもんだよ」

 もうちょっとまともにすればもっとまともに見えるはずだとイスギスは思う。
 けれど普段から火の前にいるイスギスの肌はやや黒く煤がついている。

 女性としての心を捨てたわけじゃないが煤の化粧はあまり男受けは良くなかった。

「そ、そんなことなくて……き、綺麗ですよ……」

「ほーら、可愛いやつだ」

 煤けた顔もむしろ優斗からすれば鍛冶仕事をよくやっている証拠であり魅力的にすら見えた。
 頬を赤らめる優斗を見てイスギスは笑顔を浮かべる。

「さてじゃあ顔だけじゃないってところ見せてやるか」

 イスギスはテーブルを動かして場所を空ける。

「さてアダマンタイトリアンドラゴンの心臓、出してもらおうか」

「いいかな、優斗君?」

「もちろんです」

 シャリンとフィーネが豆をポリポリと食べるながら見守る中で圭は収納袋の中から鉄鋼竜の心臓を取り出した。

「わぁ」

「ピピピピ……」

「いつ見ても不思議だよな」

 金属で作られた心臓が工房の中に現れる。
 細かいところまで精巧に作られた心臓は金属質の見た目をしているのに心臓という臓器の生々しさも持っている。

「これは完全な成体のものではないな。だが持っている力は凄まじい」

 鉄鋼竜の心臓に触れながらイスギスは恍惚とした表情を浮かべる。

「さて……まずはこいつを加工しよう。このままじゃ使えない。一部だけ切り取って使うことも難しいから一度まとめちまうからな」

 真剣な顔になったイスギスは炉の火に手を伸ばす。

「全ては火から始まる」

 鉄鋼竜の魔力が満ちていた工房にそれを上回るほどのイスギスの魔力が広がる。
 炉の中の炎が激しく燃えてすでに熱かった部屋の中の気温がさらに上がっていく。

 ただ立って見ているだけなのに汗が吹き出してくるがイスギスは汗ひとつかかずに炎を見つめている。

「こいつを溶かして、素材にしてやる」

 イスギスが炉から鉄鋼竜の心臓に向けて手を動かすと炉の炎が鉄鋼竜の心臓を包み込む。
 渦を巻くように炎がまとわりついて鉄鋼竜の心臓が見えなくなる。

「……次元が違う」

 巨大な火の塊のようになった鉄鋼竜の心臓がふわりと浮き上がって炉の中に吸い込まれていく。

「ふん、流石だな……なかなか火が通らない」

 イスギスの額にも汗が滲み始める。
 直接火を当てられているような熱を圭すら感じている。

 炉の前にいるイスギスが感じる熱気は想像もつかない。
 やがてドロリとしたものが炉の中から出てきた。

 イスギスはそれを延べ棒の形に整えると、真っ赤な延べ棒を魔力で浮かせて近くにあった水の中に放り込む。
 水が沸き立つ激しい音がして白い煙が上がる。

 熱さだけだった部屋の中の湿度が一気に上がって汗がより出てくる。
 水の中から黒く輝くような金属の延べ棒が出てくる。

 鉄鋼竜の心臓だった時にはメタリックな見た目をしていたので少し印象が違う。
 アダマンタイトリアンドラゴンの延べ棒はテーブルの上に置かれた。

「まだ熱いから触るなよ」

 フィーネが延べ棒に目を奪われている。
 イスギスの警告もあって触れないようにはしているけれど非常に興味があるようだ。

 イスギスはその後もアダマンタイトリアンドラゴンの延べ棒を作っていき、最終的に鉄鋼竜の心臓はアダマンタイトリアンドラゴンの延べ棒三十本になった。

「はぁ……結構辛いな」

 最初は余裕のありそうなイスギスも終わってみれば汗だくで肩で息をしていた。

「意外と少ないんだな」

「こんなもんだ。心臓なんて中に空洞あるしこうやって形成すると少し圧縮される。むしろ私は無駄を作らず多く生み出した方だ」

「なるほど……」

「このまま作業といきたかったが結構消耗してしまったな。これを使って作業するのはまた次回だ」

 本当なら作業して剣を直してしまうつもりだった。
 しかし鉄鋼竜の心臓を加工することに力を使ってしまったので万全の状態で挑むために次回剣を直すことにしようとイスギスは考えた。

「ネーエー? フィーネ……コレホシイノォ~」

「フィーネ?」

 人型フィーネはアダマンタイトリアンドラゴンの延べ棒を凝視したまま甘えた声を出している。
 今にも涎を垂らしそうな顔をしていた。

 そういえばフィーネは希少金属が好きであった。
 取り込んだ金属を自由に取り出して使えるらしく強い金属を取り込むほどフィーネも強くなるらしい。

 アダマンタイトリアンドラゴンの延べ棒はおそらく世界でも最高品質の金属である。
 フィーネが欲しくなるのも当然なのだ。

「全部使わないんですよね?」

「ああ、使っても半分……多分もっと少ない」

「じゃあ……一本ならいいですよ」

「ピピ!?」

「いいのかい、優斗君?」

 まさかの許可にフィーネも圭も驚いてしまう。

「今の僕には扱え無さそうです。それなら使ってください」

 加工だけでも優斗にはとてもできることじゃなさそうだった。
 いつか手を出してみたいと思っていたがイスギスがやったことを再現できる気はしなかった。

「この状態になれば使うのも多少は楽になるぞ」

「そうなんですか。それでも一本なら……あくまでも一本だけ」

 何本もあげるのは流石に惜しい。
 でもフィーネは圭の仲間で必要なら使ってくれればいいと許可してくれた。
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