人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大

文字の大きさ
82 / 515
第二章

カレンと爺さん2

しおりを挟む
「覚醒したって言っても自覚もあんまりないしよぅ」

 ツンと唇を尖らせて不満を表してみる。
 覚醒したような感覚はあるけれどあまり能力そのものに実感がない。

 波瑠も覚醒したことは感じて少しの変化は感じていたが実際に目覚ましい能力の向上はなかった。
 当然それは能力がGから始まるためである。

 体軽い感じと波瑠は言っていたけどそれは速度タイプだったからかもしれない。
 カレンは覚醒してもそんなに違いがないなと思っていた。

 ただやっぱりレベルを上げると変わってくる。
 能力値が上がるまでは我慢である。

「はっ!」

 圭は剣を振り下ろしてモンスターの首を切りつける。
 イノシシのような姿をしたモンスターが首から血を噴き出させながら悲鳴を上げて倒れる。

 このモンスターは名前も単純ビッグボアといい、その肉は普通に食用としても食べられる。
 叫ぶイノシシとそんなに変わらないのだけどこちらはうるさく叫ぶことはない。

 普通だったら死体を台車なりに乗せて持ち帰るのだけど今回はそう出来ない
 今は毒を使ってカレンのレベル上げもしているので毒に冒された肉は食べられず捨て置くしかないのである。

 圭は分厚めの皮の手袋をつけてナイフを手に取った。
 肉は食えないがモンスターの魔石は取れる。

 解体用の手袋は血や油対策であるが毒の対策にもなる。

「ん? ……夜滝ねぇ、避けて!」

「えっ、うわぁ!」

「むっ!」

 腹を切り開いて魔石を探しているとなんだか嫌な予感がした。
 ふと振り返ると夜滝の後ろからビッグボアが走ってくるのが見えた。

 夜滝が転がるようにしてビッグボアをかわすとその先には和輝がいた。

「爺さん!」

 このままでは和輝がビッグボアにひかれる。
 そう思ったが和輝は迫り来るビッグボアを見ても冷静だった。

 一瞬ビッグボアが和輝をすり抜けたようにも見えた。

「あれ仕込み杖だったんだ……」

 無駄のない動きであった。
 和輝は体を横にして最小限の動きでビッグボアをかわすと同時に杖から剣を抜いてビッグボアを一太刀に切り裂いた。

 あれが前線で戦っていたアタッカーなのかと舌を巻くような見事な一撃であった。

「なんだいきなり……」

 和輝はいぶかしむように上下真っ二つに切り裂かれたビッグボアを見た。
 夜滝の方に走ってきたけれど夜滝を狙っていたようには思えなかった。

 もっと遠くから走ってきてたまたまそのルート上に夜滝がいたような雰囲気がある。
 何かに追われているような。

 そんな感じがあった。

「夜滝ねぇ、大丈夫?」

 手袋を脱ぎ捨てて圭が夜滝の元に駆け寄る。

「いてて……なんなんだい、全く」

 圭の手をとって夜滝が立ち上がる。
 発見が早かったので夜滝にケガはなかった。

 服についた土をパンパンと叩いて落とす。

「申し訳ありません!」

 ビッグボアがきた方から男性が走ってきた。

「あなたは?」

「齊藤と申します。狩りの途中でビッグボアが逃げてしまいまして……どうやらご迷惑をおかけしてしまったようで」

「そうだったんですね」

 30代ぐらいだろうか、人の良さそうな男性で申し訳なさそうに頭を下げる。
 狩りの途中でモンスターが逃げてしまうことはよくある。

 どれだけ気を張っていても相手も生き物な以上は想定外なことも起こりうるのだ。

「モンスターはそちらが倒されたようですしそのままお持ちください」

 時折他の覚醒者が追いかけていたモンスターを倒してしまって争いになることもある。
 しかし齊藤はビッグボアは圭たちが倒したのだからとあっさりと譲ってくれた。

「このまま狩りをなさるのですか? ではご一緒に……」

「いや、それには及ばん」

「そ、そうですか」

 圭たちの意思を確認するまでもなく和輝が齊藤の誘いを断った。
 どっちみち誘いは断っただろうけど和輝には迷いもなかった。

 齊藤はそれでも気を悪くした様子もなく再度頭を下げて謝罪すると戻っていった。

「こんなこともあるんだね」

 突然のことに驚いた波瑠もホッと胸を撫で下ろす。

「不測の事態は常に起こり得るからこうした場所では警戒しとかなきゃね」

「そうだねぇ。また圭に助けられちゃったね」

 圭が声をかけてくれなきゃ夜滝はビッグボアにひかれていた。
 体力や筋力のステータスが低い夜滝だったらビッグボアの体当たりも致命的になりかねない。

「夜滝ねぇが無事でよかったよ」

「ボーッと突っ立っていてはいけないね。気を引き締めるよ」

 モンスターがどこで現れるか分からない以上どんなことが起きてもいいような警戒はしなければならない。
 少し戦えるようになって油断していたと夜滝も反省した。

「ううむ……」

「どうかしましたか、和輝さん?」

 姿が見えなくなっても齊藤が向かった先を睨み付けるようにして悩ましげな和輝。

「いや、怪しくてな」

「何が怪しいんですか? 良い人そうでしたけど」

 和輝は齊藤を怪しんでいた。
 しかし圭は齊藤のどこが怪しいのか分からない。

「観察眼もこれから生き残る上で必要だぞ。こんな所に来るのにあの齊藤というかいう男、装備の1つも身につけておらんかった」

「そういえば……」

「装備がないような人もいないこともないが武器すら持っていないのはおかしい」

 齊藤はきっちりした服装をしていたがそれだけではモンスターと戦いにきたというよりも近所を散歩しているようだった。
 身軽さを重視して防具を身につけないなんて人も少数派ではあるがいる。

 しかし齊藤に関しては武器も所有していなかった。
 モンスターを追いかけているなら戦うつもりがあったはず。

 なのに武器もないのはかなり不自然である。

「実力差があると自負をするならあり得る話でもあるが……」

 仮に素手でも大丈夫だと言えるほどの実力者だと仮定することはできる。
 ただしそうであるならばこんなところで素手で狩りをしている理由などないのだ。

 それにそんな実力者がモンスターを逃すはずもない。
 どう考えてもおかしな人物になる。

「だから誘いがあっても断った」

「確かに……言われればおかしいですね」

「今日はもう切り上げた方がいいかもしれんな」

 目的も分からない怪しい人物。
 圭たちはまだ少し早いが狩りを切り上げることにした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!

雷覇
ファンタジー
とある出来事で自身も所属する焔木一族から幽閉された男「焔木海人」。 その幽閉生活も一人の少女の来訪により終わりを迎える。 主人公は一族に自身の力を認めさせるため最強の力を求め続ける。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...