101 / 515
第二章
蛇の行方
しおりを挟む
「あの……クソ女!」
カイがコンテナを蹴飛ばした。
それだけで金属製のコンテナは大きくヘコむ。
「おいおい……大事な商品壊してもらっちゃ困るぜ」
「うるせえ! 殺されてぇのか!」
「ふん、殺してみればいい。そうすればお前さんはこの広い海の上で漂流することになる。それとも船でも壊すか? いくらA級覚醒者といっても大海のど真ん中からどこまで泳げるかな?」
カイに睨まれても老人は引き下がらない。
「……くそッ!」
カイがコンテナを殴りつけた。
再び大きくヘコんだコンテナを見て老人は深くため息をつく。
「三合会の依頼だから受けたが……追加料金が必要だな」
今カイがいるのは大海原のど真ん中。
日本から他の国へと荷物を運ぶ船の上であった。
北条を振り切ったカイはなんとか国を抜け出した。
老人は船の船長で殺してしまえば航行に支障をきたしてしまうのでそうできなかった。
北条率いる大和ギルドや覚醒者協会は執拗にカイを追跡した。
けれどなんとか厳しい監視の目を掻い潜り船に乗り込んだのだがその気分は晴れやかとはいかない。
痛む肩を押さえてカイは怒りの表情を浮かべる。
強く掴みすぎて治りかけた傷からまたじわりと血がにじんだ。
「クソックソックソッ!」
何度もコンテナを殴りつける。
老人は横目でカイの様子を見ながらあのコンテナはもうダメだなと考えていた。
カイが怒りを抱えているのは肩の傷が原因であった。
それなりに大きなケガであり当然カイも治そうと試みた。
しかし治せなかった。
C級ヒーラーを頼って傷の治療をさせようとしたのだが他の傷はともかく肩の傷は無理だった。
なぜならかなみの魔力が残っていたからである。
カイの魔力を抑えつけて爆発を防いだように傷口に残った魔力がヒーラーの治療を阻んだのである。
より等級の高いヒーラーならかなみの魔力を押し退けて治療が出来たのだろうがヒーラーはそもそも数が少なく、高い等級のヒーラーはさらに少なくなる。
表立って探すならともかくこっそりと高い等級のヒーラーと接触するのは楽なことではなかった。
結果的に回復限界を超えてしまった。
ヒーラーは上位の人になると斬られた腕も生やすことが出来る。
けれどヒーラーにも治療ができない場合があり、それが回復限界と言われている。
ケガをしてから一定時間が経過するとヒーラーの治療が効かなくなるのである。
C級ヒーラーでは治療できなかった。
どうにかB級、A級のヒーラーを探したのだが見つけられず、カイの肩は自然に治癒するのを待つしかなくなった。
大きな穴が空いた肩は非常に痛む。
治ったとしても傷跡が残ることは避けられない。
肩が痛むたびにかなみに対しての怒りが込み上げてくる。
「ああなった以上日本にはしばらく入れない……鉄鋼竜の心臓も狙われていると分かった以上馬鹿みたいに持ち続けるはずがない」
常識的に考えれば手放すか、厳重な警備の下に置かれる。
何もかも上手くいかない。
「ずいぶん荒れてるわね」
「……この声は、イリーナ」
老人は驚いた。
先ほどまでいなかったはずなのにコンテナの上に金髪の美人が座っていたからだ。
いや、そもそもこの船に女性は乗っていなかった。
なのにどこから出てきたのか。
カイから殺気がもれだす。
息苦しくなるような重たい空気の中でイリーナと呼ばれる女性はくすくすと笑う。
「私の言葉に踊らされてひどいことになったみたいね」
「うるさい……俺は今気が立っているんだ。お前の戯言に付き合ってやるつもりはない」
「あら怖い。でも今のあなたなら私でも軽く勝てそうね」
「クッ……」
殺気はすごいが顔色が悪い。
暴れたせいで肩ににじんだ血も目立っている。
万全な状態でないことは確実である。
軽薄でバカにしたような態度をとっているイリーナであるがカイはその実力は認めている。
万全の状態であっても本気で戦えば腕の一本ぐらいは覚悟しなければならない相手になる。
「それよりも何の用だ。こんなところにまで」
「仕事よ」
「仕事だと?」
「そうに決まってるじゃない。誰が好き好んであんたみたいのに会いにくると思って?」
「相変わらずの減らず口だな。こんなケガ人に何をさせるつもりだ」
「いつもの仕事よ。あなたが姿を消したからこっちだって色々探し回ったんだから」
「チッ……分かった。相手は誰だ」
「さあ? これを読んで」
イリーナは懐からファイルを取り出すとカイの足元に投げた。
「ふふふ、それにしてもジャパンは面白いところね。無敵のオロチ様がこんなことになるんだもの」
「治ったら覚えておけよ」
「あと5分もしたら忘れるわ」
そういうとイリーナは立ち上がった。
「じゃあ仕事は早めにね」
緑の魔力が渦巻いてイリーナはふわりと宙に浮いた。
そしてそのまま飛び去っていく。
「また会いましょ」
「……2度と会いたくないな」
どうやって船に乗ってきたのか分からなかったが船まで空を飛んできたのだ。
どれほどの力があったら海を横断できるのか。
老人はため息をつくと陸地の一切見えない水平線に目を向けた。
カイがコンテナを蹴飛ばした。
それだけで金属製のコンテナは大きくヘコむ。
「おいおい……大事な商品壊してもらっちゃ困るぜ」
「うるせえ! 殺されてぇのか!」
「ふん、殺してみればいい。そうすればお前さんはこの広い海の上で漂流することになる。それとも船でも壊すか? いくらA級覚醒者といっても大海のど真ん中からどこまで泳げるかな?」
カイに睨まれても老人は引き下がらない。
「……くそッ!」
カイがコンテナを殴りつけた。
再び大きくヘコんだコンテナを見て老人は深くため息をつく。
「三合会の依頼だから受けたが……追加料金が必要だな」
今カイがいるのは大海原のど真ん中。
日本から他の国へと荷物を運ぶ船の上であった。
北条を振り切ったカイはなんとか国を抜け出した。
老人は船の船長で殺してしまえば航行に支障をきたしてしまうのでそうできなかった。
北条率いる大和ギルドや覚醒者協会は執拗にカイを追跡した。
けれどなんとか厳しい監視の目を掻い潜り船に乗り込んだのだがその気分は晴れやかとはいかない。
痛む肩を押さえてカイは怒りの表情を浮かべる。
強く掴みすぎて治りかけた傷からまたじわりと血がにじんだ。
「クソックソックソッ!」
何度もコンテナを殴りつける。
老人は横目でカイの様子を見ながらあのコンテナはもうダメだなと考えていた。
カイが怒りを抱えているのは肩の傷が原因であった。
それなりに大きなケガであり当然カイも治そうと試みた。
しかし治せなかった。
C級ヒーラーを頼って傷の治療をさせようとしたのだが他の傷はともかく肩の傷は無理だった。
なぜならかなみの魔力が残っていたからである。
カイの魔力を抑えつけて爆発を防いだように傷口に残った魔力がヒーラーの治療を阻んだのである。
より等級の高いヒーラーならかなみの魔力を押し退けて治療が出来たのだろうがヒーラーはそもそも数が少なく、高い等級のヒーラーはさらに少なくなる。
表立って探すならともかくこっそりと高い等級のヒーラーと接触するのは楽なことではなかった。
結果的に回復限界を超えてしまった。
ヒーラーは上位の人になると斬られた腕も生やすことが出来る。
けれどヒーラーにも治療ができない場合があり、それが回復限界と言われている。
ケガをしてから一定時間が経過するとヒーラーの治療が効かなくなるのである。
C級ヒーラーでは治療できなかった。
どうにかB級、A級のヒーラーを探したのだが見つけられず、カイの肩は自然に治癒するのを待つしかなくなった。
大きな穴が空いた肩は非常に痛む。
治ったとしても傷跡が残ることは避けられない。
肩が痛むたびにかなみに対しての怒りが込み上げてくる。
「ああなった以上日本にはしばらく入れない……鉄鋼竜の心臓も狙われていると分かった以上馬鹿みたいに持ち続けるはずがない」
常識的に考えれば手放すか、厳重な警備の下に置かれる。
何もかも上手くいかない。
「ずいぶん荒れてるわね」
「……この声は、イリーナ」
老人は驚いた。
先ほどまでいなかったはずなのにコンテナの上に金髪の美人が座っていたからだ。
いや、そもそもこの船に女性は乗っていなかった。
なのにどこから出てきたのか。
カイから殺気がもれだす。
息苦しくなるような重たい空気の中でイリーナと呼ばれる女性はくすくすと笑う。
「私の言葉に踊らされてひどいことになったみたいね」
「うるさい……俺は今気が立っているんだ。お前の戯言に付き合ってやるつもりはない」
「あら怖い。でも今のあなたなら私でも軽く勝てそうね」
「クッ……」
殺気はすごいが顔色が悪い。
暴れたせいで肩ににじんだ血も目立っている。
万全な状態でないことは確実である。
軽薄でバカにしたような態度をとっているイリーナであるがカイはその実力は認めている。
万全の状態であっても本気で戦えば腕の一本ぐらいは覚悟しなければならない相手になる。
「それよりも何の用だ。こんなところにまで」
「仕事よ」
「仕事だと?」
「そうに決まってるじゃない。誰が好き好んであんたみたいのに会いにくると思って?」
「相変わらずの減らず口だな。こんなケガ人に何をさせるつもりだ」
「いつもの仕事よ。あなたが姿を消したからこっちだって色々探し回ったんだから」
「チッ……分かった。相手は誰だ」
「さあ? これを読んで」
イリーナは懐からファイルを取り出すとカイの足元に投げた。
「ふふふ、それにしてもジャパンは面白いところね。無敵のオロチ様がこんなことになるんだもの」
「治ったら覚えておけよ」
「あと5分もしたら忘れるわ」
そういうとイリーナは立ち上がった。
「じゃあ仕事は早めにね」
緑の魔力が渦巻いてイリーナはふわりと宙に浮いた。
そしてそのまま飛び去っていく。
「また会いましょ」
「……2度と会いたくないな」
どうやって船に乗ってきたのか分からなかったが船まで空を飛んできたのだ。
どれほどの力があったら海を横断できるのか。
老人はため息をつくと陸地の一切見えない水平線に目を向けた。
119
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!
雷覇
ファンタジー
とある出来事で自身も所属する焔木一族から幽閉された男「焔木海人」。
その幽閉生活も一人の少女の来訪により終わりを迎える。
主人公は一族に自身の力を認めさせるため最強の力を求め続ける。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる