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第八章

アツアツ、モフモフ3

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『フェンリルの卵
 本来胎生であるフェンリルが子供を守るために卵の形で生み出したものである。
 非常に頑丈な殻を持っていて中の子供が生まれる時まで守る役割を果たしている。
 十三階に住むフェンリルの卵であり、親は卵が戻ってくることを望んでいる』

「あー……」

 確認してみるとちゃんとフェンリルの卵であった。
 ただやっぱりと思ったこともある。

 フェンリルは卵から生まれるのかという疑問が圭の中にはあったのだけど普通は卵ではないようだ。
 特別な場合に卵として子供を保護することがフェンリルにはあるようで、目の前の卵はなんらかの事情により周りから子供を保護しているようである。

 守れとシークレットクエストで言われているので脅威にさらされていることは想像に難くない。
 それに加えて十三階にはフェンリルがいるらしい。

「とりあえずこれを守ればいいのか?」

 カレンが卵に触った。
 表面はツルツルとしていて手触りが良く、ほんのりと温かい。

 抱えるような大きさの卵を持ってみるけれど意外とずっしりとしていて抱えて戦うのは難しそうだなとカレンは思った。

「というか何から守ればいいんですかね?」

「ピピ……クル」

「来る?」

「みんな、周りを見て!」

 卵がフェンリルの卵であることは分かったし守るということも分かっている。
 ただ何から守るのだと思っていたら周りをいつの間にかレッドフォックスに囲まれていた。

 レッドフォックスは体の毛を燃やしながら威嚇するような唸り声をあげている。

「なるほどね……」

 カレンはそっと卵を置いて盾とメイスを構える。

「そういえばそんな話あったな……」

 圭は八階のことをネットで調べていた時に不確定の情報として卵のことが小さく書いてあったことを思い出した。
 卵を見つけるとレッドフォックスの群れに襲われるなんてことが書いてあったのだけど、小さい話であるし気に留めておらず忘れていた。

「来るぞ!」

 大きく威嚇の鳴き声を出していたレッドフォックスが走り出した。
 それに続くようにレッドフォックスが動く。

「夜滝ねぇ、壁をお願い!」

「分かった!」

 夜滝が杖をグルンと動かすと圭たちを囲むように水が噴き出す。
 最初に走り出した数体は水の内側に入ってきたが他のレッドフォックスは噴き出す水を前にして足を止めた。

 体が燃えているレッドフォックスは水にとても弱い。
 水を異常に警戒するので簡単に突破出来そうな水壁でも立ち止まってしまう。

「こいつら挑発通じないぞ!」

 カレンが魔力を差し向けてレッドフォックスを引きつけようとしたけれどレッドフォックスはカレンに目も向けない。
 挑発が通じていないとカレンはすぐに察した。

「卵を守れ!」

 レッドフォックスが向かっているのは卵であった。
 圭たちはレッドフォックスの前に割り込む。

「ピピッ!」

 フィーネが横から大鎌を振り回す。
 二匹がフィーネに切り裂かれるけれどレッドフォックスは仲間がやられたことも気にしないで卵の方に走る。

「はっ!」

 薫も腰に杖を簡易的に差して武器を弓矢に持ち替えて攻撃する。
 真っ直ぐに走ってくるレッドフォックスはいい的であり、薫の矢は目の上に深々と突き刺さってレッドフォックスは足をもつれさせて地面を転がる。

 圭、カレン、波瑠もそれぞれレッドフォックスを倒す。

「させないよぅ」

 最後のレッドフォックスは卵の間近まで迫っていた。
 夜滝が放った水の球が卵の後ろから回り込むように飛んできてレッドフォックスを吹き飛ばした。

 水の壁を維持しながらの攻撃は普通の魔法使いにはなかなか高度な技である。
 けれど夜滝は魔法の行使を補助してくれるスキルや才能があるのだ。

「ふぅ……」

 なんとかレッドフォックスを倒して圭は小さく息を吐き出した。
 モンスターが人間を全て無視するなんてなかなかあり得ることではない。

 少しでも対応が遅れていたら卵が攻撃されていたかもしれない。
 周りを見ると水の壁の向こうに煌々と燃えているレッドフォックスの姿が見える。

 戦い始める時よりも数が明らかに増えている。

「これは……結構ヤバそうだな」

 まるで火の中に入れられたようだと思った。

「守れっていうけどどうなれば守ったことになるんだ?」

「それも問題だねぇ」

 時間なのか、相手を倒した数なのか。
 あるいはどこかに持っていくとか何をもって卵を守ったことになるのか分からない。

『シークレットクエスト!
 フェンリルの卵を守れ!
  フェンリルに認められろ! クリア
  フェンリルが出てくるまでレッドフォックスを倒せ! 0/50』

「おっ、出てきたな!」

 シークレットクエストの表示が出てきた。
 圭だけではなく夜滝たちみんなにも現れている。

 フェンリルに認められろがなんなのか分からないけれどすでにクリアになっている。
 おそらくそれがシークレットクエスト開始のトリガーなのだろうと思う。

 最初の襲撃で卵をちゃんと守ったから始まったのかもしれない。

「50かぁ……」

 30でも面倒なのに50体も倒さなきゃいけないのはかなり大変だなと波瑠はため息をついた。

「まあそう難しくもないかもよ、数だけなら」

 カレンが水の壁の外に目を向ける。
 どれほどの数レッドフォックスがいるのかは知らないけれど何十体もいることは確実である。
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