人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

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第九章

シャリンは圭に任された

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「圭……圭……」

 処遇が完全に決まるまでスマホも無しだなんて非情な判断で暇を持て余しながら過ごしていた。
 日中は伊丹が持ってきてくれた本を読んだり言葉も分からないアメリカのテレビを見たりして時間を潰す。

 病院の消灯時間は早く、夜になるとできることもなくなってしまうので早めに寝て健康的なサイクルを送っている。
 話がほとんどまとまって後は複雑な手続きを終えれば帰ることができる見通しが立ったと明るいニュースを聞いた日の夜、自分の名前を呼ぶ声が聞こえて圭は目を覚ました。

「ケーイ?」

「……寝てていいよ、シャリン」

 圭が起き上がったので横で寝ていたシャリンも目を覚ます。
 シャリンにも病室はあるのだけどずっと圭のそばにいて離れない。

 病院側も認めているので誰も何も言わない。
 圭がそっと頭を撫でてやるとシャリンは眠たそうな目で軽く微笑んでまた寝始めた。

 圭と接する限りでは素直な良い子であり、毎日一緒にいる圭も何だか可愛く思えるようになってきた。

「ピピ、ルシファー」

「ルシファー……ルシファー!」

 再び病室に視線を戻して自分を呼んだものを探す。
 圭の枕元にいたフィーネがサイドテーブルを指した。

 そこには圭の荷物のほか、ルシファー人形が置いてあった。
 本当はダンテの持ち物なのであるが大の大人が人形を持っているとは思われずシャリンの持ち物として圭のところに置いてあったのである。

 魔界から戻ってきてもルシファー人形にルシファーは戻ってきていなかった。
 ダンテの力は失われていないのでルシファーが魔界で無事なことはわかっていたのだけど、ダンテにもルシファーからのメッセージもなくてどうしているのか謎だった。

 そんなルシファー人形が動きを見せていた。
 ルシファーによって修復されたルシファー人形がゆっくりと立ち上がる。

「んん~、この感覚、久しぶりだな」

 ルシファーが宿るとルシファー人形は不思議と少しリアルっぽく見えるようになる。
 動いているためなのか、あるいはルシファーが宿ると人形に変化が起こるのか圭には分からない。

「ルシファー、大丈夫だったのか?」

 あまりにも連絡がないからルシファーのことは圭も心配していた。

「遅れてすまないな。一度依代との関係が途切れると再び戻るまでに力と時間を要する。向こうで家を移すなんてことも必要でどうしても大変だったのだ」

「い、家?」

 悪魔がこちらの世界に来るのは大変なことだから依代に憑依するという方法でも時間がかかってしまうことは理解する。
 しかし家、さらには移すとは何事なのか。

「サタンのやつの城を吹き飛ばしてやっただろう? あそこに私の家を持ってきたのだ」

「えええ?」

 ルシファーは爽やかに笑って答えた。

「な、なんで?」

「あやつのことが嫌いだから……という他にあそこには門があるからだ」

「門が……」

「次に使う機会があるかは分からん。現世からどう使うかの不明だからな。だがサタンの好きにさせておくと使いたいときに面倒が起こるやもしれぬ」

 サタンの領域を奪ってしまうなんていう意趣返しの意味もあるが、ルシファーが住んでいる場所を移したのは門を確保するためだった。
 最初はそれぐらいの意味であったけれど、今となってはシャリンのことも含めてあながち間違いではない判断だったとルシファーは思っている。

「それよりもシャリンのことだ」

 ルシファーは車輪のことを見る。
 スヤスヤと寝ているシャリンは人畜無害に見えるけれど中身はサタンと対等に渡り合った悪魔なのである。

「どうしてシャリンは小さくなったんだ?」

「それは中身が子供だったからであろう」

「中身が? 確かに子供っぽいけど……」

「そうではない。魔界と現世では時の流れが違う。魔界では大人の見た目になるほどの時が流れていたとしても現世ではまだ子供ぐらいの時が流れていない。召喚によらない方法で現世に渡ったから現世の方の時の流れに体が合わされたということなのだろう」

「……そんなことが?」

「原理は聞くなよ? そんなもの説明できん」

 長いこと魔界にいた。
 なのにこちらに帰ってくると三日しか時間が経っていなかった。

 つまりシャリンの成長も魔界時間で考えれば大人になるのに十分だが、こちらの時間ではまだ子供程度の長さしかないのである。
 ただ何でそれでこちらの時間に合わせて子供になるのかまではルシファーにも分からない。

「魂の契約の影響もあるのかもしれないな」

「帰す方法はないのか?」

 一応今は保護する方向で進んでいるけれどいつ悪魔だとバレるのか気が気でならない。
 シャリンには申し訳ないけれど魔界で大人しくしていてもらうのが圭の精神安定上もいいのである。

「召喚された悪魔は契約が終われば帰る。あるいは強制的な逆召喚という方法がある。ただ門を通って現世に行ったものがどう帰るのかは……私も知らないのだ。また門を通ることになるのだろうが現世の門のことなど私は知らないからな」

 魔界に門があったということは現世にも魔界に通じる門がある可能性がある。
 ただしそんなもの知らないと圭もルシファーも思う。

「調べてみるがしばらくは圭が預かってくれるしかない」

「やっぱりそうだよな」

「現世では悪魔も落ちる。けれどサタンと戦うほどの力を持っているのだから上手く使えばきっとお前の助けになる。何なら抱いてしまえ」

「うっ、げほっ!?」

 少し喉が渇いたと水を口に含んでいた圭はいきなりの発言に吹き出してしまった。

「悪魔との情交はなかなかのものだぞ」

「そ、そんなことできるか!」

 大人の状態でも手を出すつもりもないのに子供の状態のシャリンに手など出すことはない。

「シャリンなら喜ぶと思うのだがな」

「付き合っておらねば手を出さぬとかお堅い考えではなかろう?」

「そんなつもりはないけど……」

「また無理に勧めるつもりはない。しばらくは悪魔の方の動きも大人しくなるだろう」

 暴食の魔王ベルゼブブは魔界の入り口が崩壊した影響で大きなダメージを受けた。
 その結果階段も崩壊して魔界で批判にさらされていて復活したとしても身動きは取れない。

 憤怒の悪魔サタンもシャリンとルシファーによって瀕死のダメージを負った。
 居城も失い、実は城の中に配下である悪魔もいてサタンが怒ったときに吹き飛ばしてしまった。

 魔界における魔王が二人もしばらく再起不能となった。
 対してルシファーはサタンを倒したのだと大々的に噂を流している。

 さらにはクォカドオーンという準魔王レベルの悪魔もルシファーのところに身を寄せることになってより力を誇示することに成功した。

「圭はそちらでのことに集中するといい。私やダンテは他の悪魔を狙いながらお前をバックアップしよう」

「……分かった」

「にしてもこの小娘は……暴れんよう気をつけろよ」

「俺にどうやって止めろと……」

 ひとまず今回の出来事によって悪魔教の動きがしばらく静かになることは間違いない。
 アザードのせいで悪魔のことが広く知られ渡ってしまったし魔界でも魔王が潰されたのだから自然と様子を見るような動きになる。

 思わぬ利益もあったけれどシャリンという問題は結局圭が抱えるしかなくてため息しか出てこないのであった。
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