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第一章
ゴブリンは嫌われているようです1
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ウルフに勝利した。
コボルトたちは互いに抱き合って勝利を喜んでいる。
100回戦えば100回負けるようなウルフを相手にして勝利を収めたのだから喜ぶのは当然だ。
しかし喜びと同じくらいに悲しみもある。
策を弄し、罠を準備し、それが成功してウルフの数を減らして動揺させた上で戦ってもコボルトは大きな被害を受けた。
最終的には3倍もの差があったのにだ。
仲間の死を悼む心はコボルトにもある。
死体はアンデッドになったり他の魔物に食い荒らされることがないように深く穴を掘って埋める。
「レビスもユリディカも無事か?」
「平気」
「う、うん。
助けてもらったから大丈夫……」
幸いドゥゼアの仲間には被害が出なかった。
ユリディカは間一髪だったけどドゥゼアが間に合った。
少し戦い方ってやつをユリディカにも教えなきゃいけないな。
「グガ、友よ、感謝する」
コボルト族長がドゥゼアのところに来た。
「勝ててよかったよ」
ギリギリの勝負だった。
もっと石が当たらなかったら、あるいは落とし穴に引っかからなかったら。
ウルフの残っていた数が少しでも多かったら負けていた可能性が大きい。
いくら周到に準備をしようと実力で戦う部分や運によるところは排除しきれない。
被害が出たとしてもこのコボルトたちは運が良かったのだ。
「勇敢なゴブリン、そしてワーウルフはこの先ずっとコボルトの友である」
「いいってことよ」
友になったところでこの先会うこともないだろうとドゥゼアは思う。
水を差すことはないので指摘はしない。
「ウルフは好きにしていい。
聞きたいことも何でも答える」
「ありがとな。
……まずは勝利でも祝うとしよう」
悲しみは容易くは癒えない。
だから喜ぼう。
一時でも悲しみを忘れて、尊い犠牲が悲しみではなく生きる喜びのためになってくれたのだと思えるように。
コボルトたちが穴を掘って仲間の死体を埋めている間にドゥゼアはウルフを解体する。
毛皮を使うことはないけれど食べる時に毛は口当たりが悪い。
差し迫った時なら気にしないが余裕があるなら皮は剥いだほうが美味しく食べられる。
ナイフで皮を剥ぎ、魔石も取り出す。
コボルトやゴブリンのものよりも一回りほど大きい。
「味見だ」
「いいの?」
「これは俺たちのものだからな。
好きに食え」
レビスとユリディカにウルフの魔石を1個ずつ渡す。
労いの意味も込めている。
「……どうした?
やっぱりウルフだと気がひけるか?」
「そんなんじゃない。
ウルフと私は別物だよ」
手に持った魔石をじっと見つめたままのユリディカが気になった。
レビスは魔石を口に放り込んで美味しそうに口の中で転がしている。
「役に立たなかったし、もらっていいのかなって」
ユリディカは自信満々にウルフと戦って挙句逆にやられかけたことを気にしていた。
ドゥゼアが助けに来なかったら喉を食いちぎられていた。
「ユリディカ」
適当にウルフの毛皮で血を拭ってユリディカの肩に手を置く。
「役に立たなかった何でそんなことはない。
偵察だってしてくれたし奇襲でウルフだって倒したじゃないか。
少し押されたぐらいで役立たずだったなんてことはない」
出来なかったこと、失敗したことに目を向けるのではなく出来たこと、やってくれたことに目を向ける。
ユリディカはウルフリーダーにやられそうになって助けられたことが全てだったように言うけれどユリディカの果たした役割は大きい。
偵察して結果的にウルフの足取りを送らせてくれた。
隠れてウルフを奇襲して動揺を誘ってくれた。
ウルフリーダーを引きつけてくれていたし十分すぎるぐらいの働きをしてくれている。
「ユリディカがいなかったらこの戦いは大変なものだった。
感謝しているぞ」
「ドゥゼア……」
褒めるべきところは褒めるべきだ。
恥ずかしがって口に出さないぐらいならそんな気持ち捨てて素直に誉めてやる。
「うっ!」
「ありがとう……!」
感極まったユリディカはガバッとドゥゼアに抱きついた。
モフっとしたユリディカの毛皮の感触は気持ちがいいけれど力が強くてドゥゼアの体が悲鳴を上げている。
しかしモフモフの胸毛に顔を押し付けられて声も出せない。
呼吸ができない。
「ユリディカ、死んじゃう」
今回のゴブ生で最大のピンチを迎えて死にかけているとレビスがユリディカをつついてドゥゼアの状態を教える。
「あっ、ごめん!」
「プハァ!」
「だ、大丈夫?」
「ハァッ……ハァッ……モフモフで気持ちがいいけど……少し加減はしてくれ……」
「き、気持ちいいの?」
何で都合のいいところしか聞こえてないんだ。
「ん?」
「ドゥゼア助けた。
偉い?」
今度はドゥゼアをちょんちょんとつついて気をひくレビス。
「ああ……助かったよ」
「褒めて」
レビスはパッと両手を広げる。
「……分かった。
ありがとう、レビス」
その意図を汲み取ったドゥゼアがレビスをギュッと抱擁してやる。
「ふへへ……」
何が悲しくてゴブリンを抱きしめねばならないのだとちょっと思うけどレビスも頑張ってくれた。
手先が器用なので投石器を作るのもドゥゼアと並んでやってくれたしウルフとの戦いではフォローの仕方も完璧だった。
これぐらいはしてやってもいいだろう。
コボルトたちは互いに抱き合って勝利を喜んでいる。
100回戦えば100回負けるようなウルフを相手にして勝利を収めたのだから喜ぶのは当然だ。
しかし喜びと同じくらいに悲しみもある。
策を弄し、罠を準備し、それが成功してウルフの数を減らして動揺させた上で戦ってもコボルトは大きな被害を受けた。
最終的には3倍もの差があったのにだ。
仲間の死を悼む心はコボルトにもある。
死体はアンデッドになったり他の魔物に食い荒らされることがないように深く穴を掘って埋める。
「レビスもユリディカも無事か?」
「平気」
「う、うん。
助けてもらったから大丈夫……」
幸いドゥゼアの仲間には被害が出なかった。
ユリディカは間一髪だったけどドゥゼアが間に合った。
少し戦い方ってやつをユリディカにも教えなきゃいけないな。
「グガ、友よ、感謝する」
コボルト族長がドゥゼアのところに来た。
「勝ててよかったよ」
ギリギリの勝負だった。
もっと石が当たらなかったら、あるいは落とし穴に引っかからなかったら。
ウルフの残っていた数が少しでも多かったら負けていた可能性が大きい。
いくら周到に準備をしようと実力で戦う部分や運によるところは排除しきれない。
被害が出たとしてもこのコボルトたちは運が良かったのだ。
「勇敢なゴブリン、そしてワーウルフはこの先ずっとコボルトの友である」
「いいってことよ」
友になったところでこの先会うこともないだろうとドゥゼアは思う。
水を差すことはないので指摘はしない。
「ウルフは好きにしていい。
聞きたいことも何でも答える」
「ありがとな。
……まずは勝利でも祝うとしよう」
悲しみは容易くは癒えない。
だから喜ぼう。
一時でも悲しみを忘れて、尊い犠牲が悲しみではなく生きる喜びのためになってくれたのだと思えるように。
コボルトたちが穴を掘って仲間の死体を埋めている間にドゥゼアはウルフを解体する。
毛皮を使うことはないけれど食べる時に毛は口当たりが悪い。
差し迫った時なら気にしないが余裕があるなら皮は剥いだほうが美味しく食べられる。
ナイフで皮を剥ぎ、魔石も取り出す。
コボルトやゴブリンのものよりも一回りほど大きい。
「味見だ」
「いいの?」
「これは俺たちのものだからな。
好きに食え」
レビスとユリディカにウルフの魔石を1個ずつ渡す。
労いの意味も込めている。
「……どうした?
やっぱりウルフだと気がひけるか?」
「そんなんじゃない。
ウルフと私は別物だよ」
手に持った魔石をじっと見つめたままのユリディカが気になった。
レビスは魔石を口に放り込んで美味しそうに口の中で転がしている。
「役に立たなかったし、もらっていいのかなって」
ユリディカは自信満々にウルフと戦って挙句逆にやられかけたことを気にしていた。
ドゥゼアが助けに来なかったら喉を食いちぎられていた。
「ユリディカ」
適当にウルフの毛皮で血を拭ってユリディカの肩に手を置く。
「役に立たなかった何でそんなことはない。
偵察だってしてくれたし奇襲でウルフだって倒したじゃないか。
少し押されたぐらいで役立たずだったなんてことはない」
出来なかったこと、失敗したことに目を向けるのではなく出来たこと、やってくれたことに目を向ける。
ユリディカはウルフリーダーにやられそうになって助けられたことが全てだったように言うけれどユリディカの果たした役割は大きい。
偵察して結果的にウルフの足取りを送らせてくれた。
隠れてウルフを奇襲して動揺を誘ってくれた。
ウルフリーダーを引きつけてくれていたし十分すぎるぐらいの働きをしてくれている。
「ユリディカがいなかったらこの戦いは大変なものだった。
感謝しているぞ」
「ドゥゼア……」
褒めるべきところは褒めるべきだ。
恥ずかしがって口に出さないぐらいならそんな気持ち捨てて素直に誉めてやる。
「うっ!」
「ありがとう……!」
感極まったユリディカはガバッとドゥゼアに抱きついた。
モフっとしたユリディカの毛皮の感触は気持ちがいいけれど力が強くてドゥゼアの体が悲鳴を上げている。
しかしモフモフの胸毛に顔を押し付けられて声も出せない。
呼吸ができない。
「ユリディカ、死んじゃう」
今回のゴブ生で最大のピンチを迎えて死にかけているとレビスがユリディカをつついてドゥゼアの状態を教える。
「あっ、ごめん!」
「プハァ!」
「だ、大丈夫?」
「ハァッ……ハァッ……モフモフで気持ちがいいけど……少し加減はしてくれ……」
「き、気持ちいいの?」
何で都合のいいところしか聞こえてないんだ。
「ん?」
「ドゥゼア助けた。
偉い?」
今度はドゥゼアをちょんちょんとつついて気をひくレビス。
「ああ……助かったよ」
「褒めて」
レビスはパッと両手を広げる。
「……分かった。
ありがとう、レビス」
その意図を汲み取ったドゥゼアがレビスをギュッと抱擁してやる。
「ふへへ……」
何が悲しくてゴブリンを抱きしめねばならないのだとちょっと思うけどレビスも頑張ってくれた。
手先が器用なので投石器を作るのもドゥゼアと並んでやってくれたしウルフとの戦いではフォローの仕方も完璧だった。
これぐらいはしてやってもいいだろう。
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