やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜

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第一章

ゴブリンは女王に捕まりました1

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「クソッ……災難続きだな」

 ドゥゼアは引きずられていた。
 抵抗したくてもできない。

 なぜなら全身を白い糸でぐるぐる巻きにされているからである。
 ドゥゼアを引きずっているのは大きなクモだ。

「なあ、どこにいくんだよ?」

 話しかけてもクモから返事はない。
 ジジイからは逃げられたようなのにこれでは危機的なことに変わりがない。

 こうなったのは少し前のこと。
 ひたすらに逃げていたのだけど途中でジジイが追って来ていないことにドゥゼアは気がついた。

 だから少し立ち止まり息を整えがてら肩に刺さったままだった矢を抜いた。
 興奮状態にあるためかそんなに痛みも感じず抜くことができたが立ち止まってしまうと急に足がガクガクと疲労で震え出した。

 もうちょっとだけ休もうと木に寄りかかった。
 手に何かが触れた。

 それはクモの糸だった。
 ハッと気がついた時にはもう遅かった。

 木の上からクモたちが降りてきてドゥゼアに糸を吹きかけた。
 あっという間にドゥゼアの糸巻きの完成である。

 そこからクモに引きずられて今に至る。

「宙吊りかぁ……」

 明らかに周りにクモの糸が増えてきた。
 顔しか動かせないからただ見ているしか出来ない。

 巣についたみたいでドゥゼアはそのまま張られた糸にぶら下げられた。

「ドゥゼア!」

「ん?

 おっ、みんないたか」

 懐かしの声がしたので頑張って体を回転させるとそこにレビスやユリディカもいた。
 どうやらみんなも捕まってしまったらしい。

 やはり方角的に合流しそうだと思っていたのは間違いではなかった。
 こんな合流の仕方は一切想定していなかったけれど。

「大丈夫?」

「あんまり大丈夫じゃないな」

 ひとまずドゥゼアの心配をしてくれるレビスであるがみんなも同じく糸でぐるぐる巻きにされて吊るされている。

「せっかくダンジョンから出たのにここで死んじゃうのー!」

 ユリディカがどうにかしようと暴れるけど糸が揺れてビヨンビヨンするだけでなんの効果もない。

「とりあえず無事でよかったよ」

「ドゥゼアも」

「これが無事なんて言えないでしょうがー!」

 状況的に無事ではないが生きてる間は希望は捨てないので無事であると言ってもいい。
 まずはみんな生きていたということを喜ぼうとドゥゼアは思う。

 どうせ他に出来ることなんてない。

「なんでそんなに余裕なの……?」

 文字通り手も足も出ないのにドゥゼアはいつもと変わらない。

「糸の中って暖かくて眠くなるな」

「ちょっとー!」

「ユリディカ」

「なに?」

「今ここで俺たちに出来ることはない。

 だからそう焦らずに体力を温存しておくんだ」

 いくら暴れたって疲れるだけである。
 ならば少しでも今は逃げるのに消耗した体力を回復させることに努めるべきである。

 そしてドゥゼアには1つの確信があった。
 きっと今すぐ殺されて食われることはないという自信があるのである。

 肩の傷も治さねばならない。
 本当に糸の中は暖かいし囚われているということはさらに他の外敵に襲われることもない。

 ここは冷静さを保ち体力を温存して相手を刺激しないようにするのが1番である。

「むむぅー!」

 ユリディカは不満そうだけど何もしないことが最善なのだからしょうがない。

「分かった、寝る」

「えぇー!

 それでいいの、レビス!」

「ドゥゼアがそう言うから」

 レビスはドゥゼアの言うことに全幅の信頼を置いている。
 休めと言うなら今は休んだ方がいい。

 確かにそう考えて糸の中にいると意外と心地も悪くないと思った。
 ユリディカはまだちょっと信じられないと思って揺れていたがやがて諦めて疲労に任せて寝ることにした。

 ーーーーー

 寝て、起きても同じ状況。
 人に戻りもしなければ糸に巻かれたままである。

「あらぁ?

 静かなのね?」

 暇だから吊り下げられたままクルクルと回って周りを確認していたら目の前に逆さまの女の顔が現れた。
 ちょっとびっくり。

「ようやくお出ましか」

 少し視線を上げてみるとその正体はすぐに分かった。
 あたかも普通の人のように見えるのは体の半分だけ。

 顔から視線を上げていくと胸があり腹があり腹の下が境目となってそこから形が変わる。
 クモである。

 彼女の下半身は人ではなくクモの形をしているのであった。

「アラクネの女王に会えて光栄だ」

 この妖しく笑う女性は魔物である。
 アラクネという上半身が女性で、下半身がクモである強力な魔物。

 クモ系の魔物を率いる女王。
 知能も高くて残忍で狡猾。

 大規模なクモの根城なのでアラクネの巣なのでないかという予想はしていた。
 燃えるような真っ赤な髪の毛を垂れ下がらせてアラクネはドゥゼアの顔を覗き込む。

 顔の造形としては非常に美人である。
 アラクネでもいいなんて言い出すやつが出てきそうなぐらいには整った顔をしている。

「ふぅん?

 あなたのおかげで静かなのね?」

 大体捕まえられた魔物というやつは騒がしい。
 当然のことで助けてくれと叫んでいたり無駄に抵抗して糸を解こうとしたりする。

 そのためにうるさいのだけどドゥゼアたちは騒がない。
 体力を温存するためにジッと耐え、さらには寝ている始末なのである。
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