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第一章
ゴブリンは女王に捕まりました2
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「女王……なんて言われたのは初めてだけど悪い気分じゃないわ」
クモたちが糸を渡してせっせと何かをしているのが視界の端に見えていた。
編み込まれて一本の道のようになった糸の上にアラクネは降り立った。
「どうしてそんなに冷静なのか教えてくれるかしら?
面白かったらあなたのこと殺さないでいてあげてもいいわよ」
賢いゴブリンだとアラクネは思った。
他のゴブリンは騒ぐだけでうるさく生かす価値もないが非常に冷静にアラクネの目を見返すゴブリンは大きく興味をそそられた。
ゴブリンなど食っても美味くない。
気まぐれな提案だがどうして騒がずにいられるのか気になった。
「俺たちを殺すつもりがないからだ」
「……あら?
どうしてそう思うのかしら?」
ドゥゼアの答えを聞いてアラクネは大きく口の端を上げて笑った。
これは面白い回答だと思った。
「殺すならとっくに殺している……そうでなくとも頭まで糸で巻いて好きな時に食えばいい話だ。
なのにそうしないで頭は出したまま宙吊りにした。
何か目的があるんだろ?」
誰がどう見ても危機的な状況であるがわずかな違和感にドゥゼアは気がついていた。
ゴブリンなど簡単に殺せる相手。
殺さずに保存しておくにしても騒ぐのに頭を出して置いておく必要なんてないのだ。
口を塞いで糸で巻いておけばそれで済む話なのにクモはそうしなかった。
さらには群れのボスであるアラクネまで現れて声をかけてきた。
エサにする以外に目的がなければそんなことしない。
「あっはっはっ!
良いわねぇ!
あなた、そこらの有象無象の魔物とはちょっと違うのね」
アラクネは愉快そうに笑う。
尊大であってはならない。
だからといって下手に出過ぎてもいけない。
堂々としながらも謙虚に見えるように。
弱いと見れば見下され、偉そうと見えれば相手を怒らせてしまうのでドゥゼアはギリギリのところを攻めていた。
見下されないようにしながらもやや下なぐらいで対等に話が出来るように見せる。
「面白いゴブリン、あなたにチャンスを与えましょう」
「チャンス?」
「そう……私はこのままあなたの首をへし折っても、糸で巻いて非常食にしてもいいの。
でもあなたにあなたと……お仲間かしら?
あなたとお仲間を助ける機会与えてあげるのよ」
「……何をすればいい?」
一瞬悩んだような素振りを見せておく。
やらせたいことがあったのは分かりきっているのでどんな願いであれ引き受けるつもり満々だったがあんまり先読みしすぎても相手の気に触る可能性がある。
「いいわよ、その態度」
理解が早くて従順な態度がアラクネのお好みのようだ。
「私は綺麗なものが好きなの」
アラクネは宝飾品を身につけている。
華美ではないがよく見るとその1つ1つが高そうに見える。
「時々マヌケな人間が迷い込んだり私を倒そうと来るのだけどそうした奴らから綺麗なものを奪うの。
結構色々とコレクションしてあるのよ」
当然魔物に宝飾品を作る技術なんてない。
アラクネが身につける宝飾品の数々はこれまでアラクネが打ち果たしてきた冒険者の持ち物であった。
ここまで聞いた時点でドゥゼアはまさか宝飾品を持ってこいだなんて言われたらどうしようと思った。
レビスにあげたイヤリングで許してくれるかなとかちょっと思考が飛んだ。
「そんなアタシのコレクションの1つが盗まれたの」
想像していた話とは流れが変わった。
「犯人はお山の猿よ……アイツら私の大切なコレクションを盗んだのよ」
アラクネの目が怖い。
周りにいたクモたちも少しアラクネから距離を取る。
「まさかそれを取り戻してこいというのか?」
「頭がいいわね。
その通りよ。
殺して奪っても、盗み出しても、話し合いでもいいわ。
私の大事なコレクションを取り戻してちょうだい」
「……その猿とやらは近くに?」
やるかやらないかで悩むこと選択肢などない。
やらねば殺されるのだからやることは大前提である。
問題はどうやるかだ。
必要な情報を引き出して作戦を考える。
「隣の山よ。
こっちが手を出さないからって調子に乗って……」
「盗まれたのはどんなものだ?」
「杖よ。
どれだけ攻撃しても仲間のことをことごとく治してくれた人間の冒険者が持っていたものよ。
派手なものじゃないけど作りが美しいのよ」
「なるほど……」
「私が行ってもいいのだけどそうすると猿は皆殺しよ。
隣山までナワバリを広げると面倒だからやらないし、どんな魔物がくるか分からないものね」
アラクネとしては杖を取り戻したくあるが面倒ごとは避けたかった。
攻め入って相手を全滅させることだって出来るのだけどそうすると巣を空けることになるし猿がいるところの支配も維持できない。
そうなるとまた別の魔物がそこを根城にするのだろうけどどんな魔物が来るのかアラクネには選ぶこともできない。
盗みはしたけれど猿は隣人として悪くない。
知恵があって余計な手は出してこないので比較的平和なのである。
なぜ突如として盗みを働いたのか疑問なほどである。
「どうかしら?
ささやかなお願い、聞いてくれるかしら?」
クモたちが糸を渡してせっせと何かをしているのが視界の端に見えていた。
編み込まれて一本の道のようになった糸の上にアラクネは降り立った。
「どうしてそんなに冷静なのか教えてくれるかしら?
面白かったらあなたのこと殺さないでいてあげてもいいわよ」
賢いゴブリンだとアラクネは思った。
他のゴブリンは騒ぐだけでうるさく生かす価値もないが非常に冷静にアラクネの目を見返すゴブリンは大きく興味をそそられた。
ゴブリンなど食っても美味くない。
気まぐれな提案だがどうして騒がずにいられるのか気になった。
「俺たちを殺すつもりがないからだ」
「……あら?
どうしてそう思うのかしら?」
ドゥゼアの答えを聞いてアラクネは大きく口の端を上げて笑った。
これは面白い回答だと思った。
「殺すならとっくに殺している……そうでなくとも頭まで糸で巻いて好きな時に食えばいい話だ。
なのにそうしないで頭は出したまま宙吊りにした。
何か目的があるんだろ?」
誰がどう見ても危機的な状況であるがわずかな違和感にドゥゼアは気がついていた。
ゴブリンなど簡単に殺せる相手。
殺さずに保存しておくにしても騒ぐのに頭を出して置いておく必要なんてないのだ。
口を塞いで糸で巻いておけばそれで済む話なのにクモはそうしなかった。
さらには群れのボスであるアラクネまで現れて声をかけてきた。
エサにする以外に目的がなければそんなことしない。
「あっはっはっ!
良いわねぇ!
あなた、そこらの有象無象の魔物とはちょっと違うのね」
アラクネは愉快そうに笑う。
尊大であってはならない。
だからといって下手に出過ぎてもいけない。
堂々としながらも謙虚に見えるように。
弱いと見れば見下され、偉そうと見えれば相手を怒らせてしまうのでドゥゼアはギリギリのところを攻めていた。
見下されないようにしながらもやや下なぐらいで対等に話が出来るように見せる。
「面白いゴブリン、あなたにチャンスを与えましょう」
「チャンス?」
「そう……私はこのままあなたの首をへし折っても、糸で巻いて非常食にしてもいいの。
でもあなたにあなたと……お仲間かしら?
あなたとお仲間を助ける機会与えてあげるのよ」
「……何をすればいい?」
一瞬悩んだような素振りを見せておく。
やらせたいことがあったのは分かりきっているのでどんな願いであれ引き受けるつもり満々だったがあんまり先読みしすぎても相手の気に触る可能性がある。
「いいわよ、その態度」
理解が早くて従順な態度がアラクネのお好みのようだ。
「私は綺麗なものが好きなの」
アラクネは宝飾品を身につけている。
華美ではないがよく見るとその1つ1つが高そうに見える。
「時々マヌケな人間が迷い込んだり私を倒そうと来るのだけどそうした奴らから綺麗なものを奪うの。
結構色々とコレクションしてあるのよ」
当然魔物に宝飾品を作る技術なんてない。
アラクネが身につける宝飾品の数々はこれまでアラクネが打ち果たしてきた冒険者の持ち物であった。
ここまで聞いた時点でドゥゼアはまさか宝飾品を持ってこいだなんて言われたらどうしようと思った。
レビスにあげたイヤリングで許してくれるかなとかちょっと思考が飛んだ。
「そんなアタシのコレクションの1つが盗まれたの」
想像していた話とは流れが変わった。
「犯人はお山の猿よ……アイツら私の大切なコレクションを盗んだのよ」
アラクネの目が怖い。
周りにいたクモたちも少しアラクネから距離を取る。
「まさかそれを取り戻してこいというのか?」
「頭がいいわね。
その通りよ。
殺して奪っても、盗み出しても、話し合いでもいいわ。
私の大事なコレクションを取り戻してちょうだい」
「……その猿とやらは近くに?」
やるかやらないかで悩むこと選択肢などない。
やらねば殺されるのだからやることは大前提である。
問題はどうやるかだ。
必要な情報を引き出して作戦を考える。
「隣の山よ。
こっちが手を出さないからって調子に乗って……」
「盗まれたのはどんなものだ?」
「杖よ。
どれだけ攻撃しても仲間のことをことごとく治してくれた人間の冒険者が持っていたものよ。
派手なものじゃないけど作りが美しいのよ」
「なるほど……」
「私が行ってもいいのだけどそうすると猿は皆殺しよ。
隣山までナワバリを広げると面倒だからやらないし、どんな魔物がくるか分からないものね」
アラクネとしては杖を取り戻したくあるが面倒ごとは避けたかった。
攻め入って相手を全滅させることだって出来るのだけどそうすると巣を空けることになるし猿がいるところの支配も維持できない。
そうなるとまた別の魔物がそこを根城にするのだろうけどどんな魔物が来るのかアラクネには選ぶこともできない。
盗みはしたけれど猿は隣人として悪くない。
知恵があって余計な手は出してこないので比較的平和なのである。
なぜ突如として盗みを働いたのか疑問なほどである。
「どうかしら?
ささやかなお願い、聞いてくれるかしら?」
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