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第一章
ゴブリンは女王に捕まりました3
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どこがささやかなのだと思うがそんなツッコミは自殺行為にしかならない。
「条件がある」
「何かしら?
言ってごらん」
「俺だけじゃ無理だ。
仲間も解放してほしい」
「んー……でもみんな放したらあなたたち帰ってこないでしょう?」
「……じゃあ2体だけでいい」
捕まっているのはレビスとユリディカの他に巣から逃げてきたゴブリンたちもいる。
「んーーーー、分かった。
いいわよ」
アラクネがクモの足をちょいちょいと動かすとクモがやってきてドゥゼアを地面に降ろしてくれた。
アラクネも同じく地面まで降りてくる。
糸を解いてもらう。
肩の矢が刺さっていた傷は塞がりかけている。
人の体なら矢の刺さった傷を放置しておくと化膿して大変なことになっていたかもしれないがゴブリンの体ではこうした時には役に立つ。
「それで、どの子を連れて行くのかしら?」
「あいつとあいつ」
ドゥゼアはもちろんレビスとユリディカを指差した。
悪いが他のゴブリンたちには人質になってもらう。
「ゴブリンとワーウルフ……不思議な組み合わせね」
アラクネはユリディカを見て首を傾げた。
捕まえた時にはあまり意識していなかったけれどゴブリンとワーウルフが一緒にいることはとても奇妙なことである。
ゴブリンはコボルトといたりと比較的他の魔物を受け入れることもあるけれどワーウルフはそうではない。
というかほとんどの魔物はあまり他の魔物と仲良くはしないのだ。
魔物に常識なんてあってないようなものであるが変なものは変である。
それでも約束は約束なのでレビスとユリディカを解放してくれる。
「私もあまり気が長い方じゃないわ。
いつまでなんて言わないけど早くした方があなたのお仲間のためよ」
「やれるだけはやるさ」
装備品も返してもらう。
「あっちの方にある山よ。
ま、取り戻せたらご褒美ぐらいはあげるわ、賢いゴブリン」
「光栄です、女王様」
「うふふ、その響きいいわね」
案内役のクモに導かれてアラクネの巣を出る。
「本当にやるつもり?」
「しょうがないだろ?
やらなきゃ殺されるんだ」
ただどっちにしろあまり変わらないとドゥゼアは思う。
アラクネの隣にナワバリを陣取れる魔物が弱いはずがない。
アラクネの口ぶりからしてアラクネよりは格下なのだろうけど出向いていけばアラクネ側も痛手を負うぐらいの強さや規模の魔物であることは確実だ。
ゴブリン、あるいはワーウルフでも敵わないだろう。
でもやりません、けど助けてくださいじゃアラクネも助けてはくれない。
強いものが弱いものの生殺与奪の権利を握っている以上無理難題でも引き受けるしかない。
「それに最悪ダメそうならあいつらは諦める」
そしてドゥゼアは必要なら冷酷な判断も下すつもりだった。
そもそもレビス以外のゴブリンは仲間ではない。
せっかく助けたコボルトを助けたくてなし崩し的に同行させていたけれど助けなきゃいけない義務はない。
同族のよしみってものはあるけれどドゥゼアにとっては知らないゴブリンより自分の命やレビス、ユリディカの方が大事である。
優先順位を誤ってはならないのだ。
ただ何もしないで見捨てることはしない。
「一応言われた通り盗まれた杖の奪還には向かう。
ダメそうならこのまま逃げちまおう」
「分かった」
「ドゥゼアがそう言うなら」
レビスもユリディカも反対しない。
捕まってしまった時点で自分たちが悪い。
仮に見捨てられても文句は言えず、諦めることしかできない中で希望があることはむしろ感謝すらすべきだ。
ドゥゼアがレビスたちを見捨てることはないと信じている。
仮に見捨てられたとしたらショックだがそれを恨みに思うことはないだろう。
冷酷な魔物の世界の価値観である。
「まあそれにしても生きて合流ができてよかったよ」
「何があった?」
本来ならもっと早く合流する予定だった。
レビスもユリディカもドゥゼアのことを心配していた。
「それがな……」
やたら強い冒険者に追いかけられた。
それでなんとか逃げてきた。
「怪しい雰囲気はあったがなんとしてもゴブリンを消し去りたい奴がいるんだな」
あのジジイがそうなのではないかとドゥゼアは思っている。
「まあなんでもいい。
あそこに近づくことは金輪際ないからな」
ゴブリンにとって危険な地域ならそこにいなきゃいい。
移動は大変だけど世界は広い。
どこかにもっと良い場所があるはずだ。
「まずは目の前の問題から片付けなきゃな」
ひとまずやるべきは猿に盗まれた杖を取り戻すこと。
ドゥゼアたちはまっすぐに山に向かっていった。
「条件がある」
「何かしら?
言ってごらん」
「俺だけじゃ無理だ。
仲間も解放してほしい」
「んー……でもみんな放したらあなたたち帰ってこないでしょう?」
「……じゃあ2体だけでいい」
捕まっているのはレビスとユリディカの他に巣から逃げてきたゴブリンたちもいる。
「んーーーー、分かった。
いいわよ」
アラクネがクモの足をちょいちょいと動かすとクモがやってきてドゥゼアを地面に降ろしてくれた。
アラクネも同じく地面まで降りてくる。
糸を解いてもらう。
肩の矢が刺さっていた傷は塞がりかけている。
人の体なら矢の刺さった傷を放置しておくと化膿して大変なことになっていたかもしれないがゴブリンの体ではこうした時には役に立つ。
「それで、どの子を連れて行くのかしら?」
「あいつとあいつ」
ドゥゼアはもちろんレビスとユリディカを指差した。
悪いが他のゴブリンたちには人質になってもらう。
「ゴブリンとワーウルフ……不思議な組み合わせね」
アラクネはユリディカを見て首を傾げた。
捕まえた時にはあまり意識していなかったけれどゴブリンとワーウルフが一緒にいることはとても奇妙なことである。
ゴブリンはコボルトといたりと比較的他の魔物を受け入れることもあるけれどワーウルフはそうではない。
というかほとんどの魔物はあまり他の魔物と仲良くはしないのだ。
魔物に常識なんてあってないようなものであるが変なものは変である。
それでも約束は約束なのでレビスとユリディカを解放してくれる。
「私もあまり気が長い方じゃないわ。
いつまでなんて言わないけど早くした方があなたのお仲間のためよ」
「やれるだけはやるさ」
装備品も返してもらう。
「あっちの方にある山よ。
ま、取り戻せたらご褒美ぐらいはあげるわ、賢いゴブリン」
「光栄です、女王様」
「うふふ、その響きいいわね」
案内役のクモに導かれてアラクネの巣を出る。
「本当にやるつもり?」
「しょうがないだろ?
やらなきゃ殺されるんだ」
ただどっちにしろあまり変わらないとドゥゼアは思う。
アラクネの隣にナワバリを陣取れる魔物が弱いはずがない。
アラクネの口ぶりからしてアラクネよりは格下なのだろうけど出向いていけばアラクネ側も痛手を負うぐらいの強さや規模の魔物であることは確実だ。
ゴブリン、あるいはワーウルフでも敵わないだろう。
でもやりません、けど助けてくださいじゃアラクネも助けてはくれない。
強いものが弱いものの生殺与奪の権利を握っている以上無理難題でも引き受けるしかない。
「それに最悪ダメそうならあいつらは諦める」
そしてドゥゼアは必要なら冷酷な判断も下すつもりだった。
そもそもレビス以外のゴブリンは仲間ではない。
せっかく助けたコボルトを助けたくてなし崩し的に同行させていたけれど助けなきゃいけない義務はない。
同族のよしみってものはあるけれどドゥゼアにとっては知らないゴブリンより自分の命やレビス、ユリディカの方が大事である。
優先順位を誤ってはならないのだ。
ただ何もしないで見捨てることはしない。
「一応言われた通り盗まれた杖の奪還には向かう。
ダメそうならこのまま逃げちまおう」
「分かった」
「ドゥゼアがそう言うなら」
レビスもユリディカも反対しない。
捕まってしまった時点で自分たちが悪い。
仮に見捨てられても文句は言えず、諦めることしかできない中で希望があることはむしろ感謝すらすべきだ。
ドゥゼアがレビスたちを見捨てることはないと信じている。
仮に見捨てられたとしたらショックだがそれを恨みに思うことはないだろう。
冷酷な魔物の世界の価値観である。
「まあそれにしても生きて合流ができてよかったよ」
「何があった?」
本来ならもっと早く合流する予定だった。
レビスもユリディカもドゥゼアのことを心配していた。
「それがな……」
やたら強い冒険者に追いかけられた。
それでなんとか逃げてきた。
「怪しい雰囲気はあったがなんとしてもゴブリンを消し去りたい奴がいるんだな」
あのジジイがそうなのではないかとドゥゼアは思っている。
「まあなんでもいい。
あそこに近づくことは金輪際ないからな」
ゴブリンにとって危険な地域ならそこにいなきゃいい。
移動は大変だけど世界は広い。
どこかにもっと良い場所があるはずだ。
「まずは目の前の問題から片付けなきゃな」
ひとまずやるべきは猿に盗まれた杖を取り戻すこと。
ドゥゼアたちはまっすぐに山に向かっていった。
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