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第一章
ゴブリンは戦いに備えます1
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倒した冒険者の戦利品の中に携帯用の鍋があった。
ドゥゼアは火を焚いて鍋を火にかける。
中にはすり潰したミザラの花やいくつかそこら辺に生えている薬草を入れてある。
強い葉っぱ臭にユリディカはかなり距離をとっている。
煮立たせて汁を濃くするととりあえず完成である。
「解毒薬……とまではいかないから耐毒薬……毒抑制薬?」
ドゥゼアが作ったのは解毒薬ではない。
揃っている材料だけで見るならば解毒薬を作ることも可能であるのだけど設備がない。
もうちょっとしっかりと成分を抽出しなければ解毒まで出来ない。
しかし今あるものでも毒に対する抵抗力を高める薬は作れる。
解毒する効果まではないけれど毒の効果を弱めて体の抵抗力を高めてくれる。
今現在も毒に負けずに頑張っている猿なら抵抗力を引き上げれば毒を乗り切れるだろう。
だから猿にとっては実質的に解毒薬だと言ってもいい。
そこに杖の効果で自己治癒力が高まればおそらく問題ない。
「しっかし……」
ただ青臭い。
煮詰まって濃ゆい青臭さに鼻の鈍いゴブリンであるドゥゼアも顔を歪ませる。
煮詰めたために汁もドロっとしている。
毒のためと言われてもこれを飲むのはためらわれるレベルだ。
毒に冒された猿にも飲むように渡したけれどこちらの方が毒であるかのように飲みたくないと拒否される。
「ウキ……貸せ!」
その様子を見ていた猿がドゥゼアから汁を奪い取る。
最初に山の麓でであった猿で他の猿に比べてみると魔力が強く、他の猿にも慕われている強い猿であった。
その猿はわずかにためらったが覚悟を決めると一気にその汁を口に含んだ。
ワナワナと体を震わせていたが汁を飲み込んでプハァと青臭い息を吐き出した。
「み、見ろウキ……飲んでも大丈夫……ウキ」
明らかに大丈夫そうではないけれど死にはしないことを身をもって証明する。
「俺たちは戦わなきゃいけないウキ。
これぐらい飲む……ウキュ!」
涙目で少し吐き戻しそうになりながらも仲間を説得する猿に勇気ももらって他の猿たちも汁を飲み始めた。
実はこの猿が次期ボス猿であると見られていた。
ボス猿の子供がボス猿になる。
それは比較的人に近いような知恵の高い考え方でアラクネもアラクネの子供が将来のボスとなるのでそう考える。
しかし猿たちは実力主義なところがある。
強いオスが尊敬を集め、将来的に群れを率いていく。
ボス猿の子供も弱くはないのだけど群れの中でボス猿に次いで強者であるのがこの猿なのであった。
さらには実際にはボス猿の子供にとっても兄貴分的な存在でありこの猿がボスになっても問題は起きなさそうなのである。
リーダー的な素質も備えた猿なのであった。
猿リーダーの説得でみんな汁を飲んで杖に手を伸ばす。
効果はすぐに現れ始めて楽になったと他の猿たちも言っていた。
「お前も飲むんだ」
「……………………なぜだ?」
効果があったことは確認できたのでさらに追加で汁を作った。
それをボス猿に差し出すドゥゼア。
ボス猿は差し出された濃い緑色の汁を見て顔をしかめている。
「これは毒への抵抗力を強めてくれる。
効果はしばらくあるから飲んどけば毒を食らう前でも有効で、食らった後も多少動けるだろう」
耐毒の効果が強いので別に毒の治療のみに役立つだけじゃない。
ドゥゼアだと延命ぐらいの効果しかないが猿たちなら毒を受けても戦い続けられるぐらいの対毒性を得られる。
蛇と戦うことになるなら間違いなく飲んでおいた方がいい。
「ボスであるあなたが飲めないなんて言いませんよね?」
どう見ても嫌そうな顔をしているけれど他の猿もすでに飲んでいる。
猿リーダーも飲んで大丈夫だと証明してみせたのに自分が拒否することもできなかった。
体の大きなボス猿なので他の猿よりも汁はだいぶ多めの量である。
ボス猿はドゥゼアから汁を受け取るとしばし汁を見つめた後グッと飲み干した。
「く……マズイ!」
「まあ体に悪いもんじゃないから」
ドゥゼアはせっせと汁を作って他の猿たちにも飲ませる。
「私たちはいいの?」
「いらんいらん」
レビスもいつしか覚悟を決めた顔をして汁を待っていたけどドゥゼアは飲ませるつもりがなかった。
ゴブリンじゃ効果が薄いからだ。
解毒薬があってそれを飲むまでの間耐えられるようにするならともかく解毒薬もない状況でドゥゼアたちが汁を飲んだとしても少し毒で苦しむ時間が長くなるだけだ。
猿は元々抵抗力があるから汁が効果を発揮するのだ。
ドゥゼアとレビスは毒にやられたら大人しく死んだ方が苦しまなくて良いのである。
「問題はユリディカだけど……」
「いだだい(いらない)」
鼻を抑えて涙目になっているユリディカは汁を拒否する。
ワーウルフがどこまで毒に抵抗があるのか知らないけれどドゥゼアたちよりは効果がありそう。
しかし嗅覚の良いユリディカには汁は毒よりも危険な香りがしている。
飲んだらとても立ち直れる気がしない。
「まあいい」
ユリディカに対しても汁が効果があるのは不明だ。
変な期待をするより飲まないで必死になった方がいいかもしれない。
ドゥゼアは火を焚いて鍋を火にかける。
中にはすり潰したミザラの花やいくつかそこら辺に生えている薬草を入れてある。
強い葉っぱ臭にユリディカはかなり距離をとっている。
煮立たせて汁を濃くするととりあえず完成である。
「解毒薬……とまではいかないから耐毒薬……毒抑制薬?」
ドゥゼアが作ったのは解毒薬ではない。
揃っている材料だけで見るならば解毒薬を作ることも可能であるのだけど設備がない。
もうちょっとしっかりと成分を抽出しなければ解毒まで出来ない。
しかし今あるものでも毒に対する抵抗力を高める薬は作れる。
解毒する効果まではないけれど毒の効果を弱めて体の抵抗力を高めてくれる。
今現在も毒に負けずに頑張っている猿なら抵抗力を引き上げれば毒を乗り切れるだろう。
だから猿にとっては実質的に解毒薬だと言ってもいい。
そこに杖の効果で自己治癒力が高まればおそらく問題ない。
「しっかし……」
ただ青臭い。
煮詰まって濃ゆい青臭さに鼻の鈍いゴブリンであるドゥゼアも顔を歪ませる。
煮詰めたために汁もドロっとしている。
毒のためと言われてもこれを飲むのはためらわれるレベルだ。
毒に冒された猿にも飲むように渡したけれどこちらの方が毒であるかのように飲みたくないと拒否される。
「ウキ……貸せ!」
その様子を見ていた猿がドゥゼアから汁を奪い取る。
最初に山の麓でであった猿で他の猿に比べてみると魔力が強く、他の猿にも慕われている強い猿であった。
その猿はわずかにためらったが覚悟を決めると一気にその汁を口に含んだ。
ワナワナと体を震わせていたが汁を飲み込んでプハァと青臭い息を吐き出した。
「み、見ろウキ……飲んでも大丈夫……ウキ」
明らかに大丈夫そうではないけれど死にはしないことを身をもって証明する。
「俺たちは戦わなきゃいけないウキ。
これぐらい飲む……ウキュ!」
涙目で少し吐き戻しそうになりながらも仲間を説得する猿に勇気ももらって他の猿たちも汁を飲み始めた。
実はこの猿が次期ボス猿であると見られていた。
ボス猿の子供がボス猿になる。
それは比較的人に近いような知恵の高い考え方でアラクネもアラクネの子供が将来のボスとなるのでそう考える。
しかし猿たちは実力主義なところがある。
強いオスが尊敬を集め、将来的に群れを率いていく。
ボス猿の子供も弱くはないのだけど群れの中でボス猿に次いで強者であるのがこの猿なのであった。
さらには実際にはボス猿の子供にとっても兄貴分的な存在でありこの猿がボスになっても問題は起きなさそうなのである。
リーダー的な素質も備えた猿なのであった。
猿リーダーの説得でみんな汁を飲んで杖に手を伸ばす。
効果はすぐに現れ始めて楽になったと他の猿たちも言っていた。
「お前も飲むんだ」
「……………………なぜだ?」
効果があったことは確認できたのでさらに追加で汁を作った。
それをボス猿に差し出すドゥゼア。
ボス猿は差し出された濃い緑色の汁を見て顔をしかめている。
「これは毒への抵抗力を強めてくれる。
効果はしばらくあるから飲んどけば毒を食らう前でも有効で、食らった後も多少動けるだろう」
耐毒の効果が強いので別に毒の治療のみに役立つだけじゃない。
ドゥゼアだと延命ぐらいの効果しかないが猿たちなら毒を受けても戦い続けられるぐらいの対毒性を得られる。
蛇と戦うことになるなら間違いなく飲んでおいた方がいい。
「ボスであるあなたが飲めないなんて言いませんよね?」
どう見ても嫌そうな顔をしているけれど他の猿もすでに飲んでいる。
猿リーダーも飲んで大丈夫だと証明してみせたのに自分が拒否することもできなかった。
体の大きなボス猿なので他の猿よりも汁はだいぶ多めの量である。
ボス猿はドゥゼアから汁を受け取るとしばし汁を見つめた後グッと飲み干した。
「く……マズイ!」
「まあ体に悪いもんじゃないから」
ドゥゼアはせっせと汁を作って他の猿たちにも飲ませる。
「私たちはいいの?」
「いらんいらん」
レビスもいつしか覚悟を決めた顔をして汁を待っていたけどドゥゼアは飲ませるつもりがなかった。
ゴブリンじゃ効果が薄いからだ。
解毒薬があってそれを飲むまでの間耐えられるようにするならともかく解毒薬もない状況でドゥゼアたちが汁を飲んだとしても少し毒で苦しむ時間が長くなるだけだ。
猿は元々抵抗力があるから汁が効果を発揮するのだ。
ドゥゼアとレビスは毒にやられたら大人しく死んだ方が苦しまなくて良いのである。
「問題はユリディカだけど……」
「いだだい(いらない)」
鼻を抑えて涙目になっているユリディカは汁を拒否する。
ワーウルフがどこまで毒に抵抗があるのか知らないけれどドゥゼアたちよりは効果がありそう。
しかし嗅覚の良いユリディカには汁は毒よりも危険な香りがしている。
飲んだらとても立ち直れる気がしない。
「まあいい」
ユリディカに対しても汁が効果があるのは不明だ。
変な期待をするより飲まないで必死になった方がいいかもしれない。
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