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第一章

ゴブリンは猿と蜘蛛の仲介をします3

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「ただし、あんたのつがいと子供を私に預けなさい。

 子供につがいがいるならそれもね」

 完全に信用したのでもない。
 正直に頼みに来た姿勢は評価してやるがタダで杖を貸し出してやるはずがない。

「……分かった」

 ワナワナと震えながら悩んだボス猿だったが最後には条件を受け入れるしかなかった。

「あとは……」

「まだあるのか?」

「当然でしょう?

 私にも良いことなきゃね」

 最悪隣人が変わってもこちらに被害がないのならアラクネの生活には何ら変化がないことにはなる。
 猿が勝って隣人が変わらねば心配がないというだけでアラクネ自身に利益はあまりない。

「何を望む?」

「……そうねぇ。

 じゃああなたの山に生えている果物あるでしょう?

 一番良いもの私に納めなさい。
 私が満足するまで」

「お安い御用だ」

 その後ドゥゼアたちはボス猿をアラクネのところにおいて猿のところに戻った。
 そして次期ボスとなるボス猿の子供とボス猿のつがい、そしてボス猿の子供のつがいを連れてアラクネのところに戻った。

 ボス猿の子供は戦力となってくれるので惜しいところであるが立場上アラクネの方が上であるので人質は仕方がない。
 それにおそらくこの話を聞いた中でドゥゼアだけがアラクネのことを優しいなと思っていた。

 ボス猿にとって重たい人質であるのだけどその代わりに見方を変えればボス猿の子供はアラクネの保護下に置かれることになる。
 もし仮に猿たちが蛇に敗北して全滅したとしても猿たちには希望の芽が残される。

 猿たちが再起できるのかは分からないしアラクネの気まぐれがあるかもしれないけれどボス猿の子供とつがいが残っていれば将来猿たちがまた群れをなすことはできるかもしれない。
 アラクネがそんなことまで考えているのか実際のところは知らない。

 けれどもただの交換条件の人質なのではなく、そんなことまで考えて人質を取ったのだとしたらアラクネの頭の良さと秘められた優しさはスゴイものだ。
 元々人だったドゥゼアはどうしてもそんなひねくれたような考え方もしてしまう。

 きっと他の誰も気づかないような考えだけど意外と外れたものじゃないような気はした。
 魔物には意外とそんな側面もある。

 互いに敵対することも多いのだけど強者になるほど他の魔物に寛容であったりする。
 人に対して慈悲はないけれど魔物に対して慈悲を施すことがある。

 全くもって変な生き物である。
 そしてミザラの花の採取許可も貰ったので何体か猿を借りてせっせとミザラの花も集めた。

 一応戦いの協力もお願いしてみたけれどそれについては断られた。
 ともあれこれで猿たちを持ち直させることができる。

 何でコボルトに続いて猿の戦いに首を突っ込んでるんだと冷静になれば思うのだけど理性的で良い魔物は助けてあげたくなってしまう。
 いざ蛇に対して勝てなきゃドゥゼアはアラクネのところに逃げるつもりで蛇と戦うために何が必要かを考えるのであった。
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