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第二章
女神はワーウルフに目をつけました3
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「これを見せてどうしたいの?」
何が起きたのかはユリディカも理解した。
けれど崩壊の物語を見せられてもユリディカにはどうすることもできない。
そもそも相手も倒されたというのなら復讐だってしようもない。
「再び破壊の神が動き出そうとしています」
「だから?
止めろって言われても無理だよ?」
「分かっています。
もはや私にできるようなこともないので。
ですが私の力まで奪われてはいけないのです」
「……だから何なの?」
未だに話が見えてこない。
「そんな時にあなたが現れたのです」
「私?」
「そうです。
あなたの魂はとても清らかで純粋です」
「そ、それは褒められてる、かな?」
「褒めています。
そして是非ともあなたには私の力を受け継いでほしいのです」
「力?」
「このままここに置いておいては奪われてしまう。
どなたかこの力を持つに相応しい者に引き継いでもらいたいと思っていました。
それが人でも魔物でも清らかなものであるなら私は構いません」
「え、え?」
「あなたには私の力の後継者となってほしいのです」
予想だにしなかった話。
理解ができなくてユリディカは口を開けたままぼんやりとしてしまう。
「ち、力ってなに?」
「残念ながら私にはもうそれほど力は残っていません。
ですので与えられる力も限られています」
また景色が流れるように変化する。
荒れた町ではなく神殿も綺麗で町中には人が歩いている。
神殿の前で走っていた子供が転んだ。
それに気がついたのはあの杖を持った女性だった。
「彼女は私の力を強く受けた聖女でした」
杖を持った女性は子供に柔らかな笑みを浮かべながら声をかけた。
子供は泣いている。
膝をすりむいている。
杖を持った女性は一度うなずくと子供の膝に手をかざした。
ポワッと淡く光が膝を包み込み、すりむいた傷が治っていく。
「あれが私の力です。
癒し。
他者を治してあげられること、それが与えられる力になります」
「癒しの力……」
「神を信じる者としてそうした癒しの力を得られる人はいますが私の力はさらに強く、そして消耗も少ない。
あとは強化の力もあります」
「へぇ~」
「魔物があまり持つ力ではありませんが魔物が持ってはいけない力でもありません。
どうですか、受け入れてくれますか?」
「……ただ受け入れるだけでいいの?」
不安に思わないこともない。
だけどそれより期待する部分が大きく、ドゥゼアのためになれるならと思った。
「本当なら力の使い方も教えたいのですがおそらく力を受け継がせると私はもう消えてしまうでしょう」
アリドナラルはユリディカの前に立つと手を伸ばした。
顔を挟み込むように手を添えるとユリディカの額に自分の額をくっつけた。
「願わくば私の神殿でも建ててくれたら嬉しいですけど……あなたが健やかに生きてくれればそれで構いません」
ユリディカの体に温かいものが流れ込んでくる。
額から体全体に広がっていって、毛の一本一本にまで不思議な力が満ちてくるようだった。
「あのゴブリンはすでに破壊の神の縁を感じます……」
「どういうこと?」
「気をつけて……あなたの力で助けてあげて……」
「ねえ、どういう……」
世界が塗りつぶされていく。
アリドナラルが白く光り出しユリディカの視界も白く染まる。
「世界は愛で満ちている……」
まだ色々聞きたいのにユリディカは声が出なくなった。
まるで記憶にない母に抱かれたような温かさを感じながらユリディカの意識は遠のいていった。
何が起きたのかはユリディカも理解した。
けれど崩壊の物語を見せられてもユリディカにはどうすることもできない。
そもそも相手も倒されたというのなら復讐だってしようもない。
「再び破壊の神が動き出そうとしています」
「だから?
止めろって言われても無理だよ?」
「分かっています。
もはや私にできるようなこともないので。
ですが私の力まで奪われてはいけないのです」
「……だから何なの?」
未だに話が見えてこない。
「そんな時にあなたが現れたのです」
「私?」
「そうです。
あなたの魂はとても清らかで純粋です」
「そ、それは褒められてる、かな?」
「褒めています。
そして是非ともあなたには私の力を受け継いでほしいのです」
「力?」
「このままここに置いておいては奪われてしまう。
どなたかこの力を持つに相応しい者に引き継いでもらいたいと思っていました。
それが人でも魔物でも清らかなものであるなら私は構いません」
「え、え?」
「あなたには私の力の後継者となってほしいのです」
予想だにしなかった話。
理解ができなくてユリディカは口を開けたままぼんやりとしてしまう。
「ち、力ってなに?」
「残念ながら私にはもうそれほど力は残っていません。
ですので与えられる力も限られています」
また景色が流れるように変化する。
荒れた町ではなく神殿も綺麗で町中には人が歩いている。
神殿の前で走っていた子供が転んだ。
それに気がついたのはあの杖を持った女性だった。
「彼女は私の力を強く受けた聖女でした」
杖を持った女性は子供に柔らかな笑みを浮かべながら声をかけた。
子供は泣いている。
膝をすりむいている。
杖を持った女性は一度うなずくと子供の膝に手をかざした。
ポワッと淡く光が膝を包み込み、すりむいた傷が治っていく。
「あれが私の力です。
癒し。
他者を治してあげられること、それが与えられる力になります」
「癒しの力……」
「神を信じる者としてそうした癒しの力を得られる人はいますが私の力はさらに強く、そして消耗も少ない。
あとは強化の力もあります」
「へぇ~」
「魔物があまり持つ力ではありませんが魔物が持ってはいけない力でもありません。
どうですか、受け入れてくれますか?」
「……ただ受け入れるだけでいいの?」
不安に思わないこともない。
だけどそれより期待する部分が大きく、ドゥゼアのためになれるならと思った。
「本当なら力の使い方も教えたいのですがおそらく力を受け継がせると私はもう消えてしまうでしょう」
アリドナラルはユリディカの前に立つと手を伸ばした。
顔を挟み込むように手を添えるとユリディカの額に自分の額をくっつけた。
「願わくば私の神殿でも建ててくれたら嬉しいですけど……あなたが健やかに生きてくれればそれで構いません」
ユリディカの体に温かいものが流れ込んでくる。
額から体全体に広がっていって、毛の一本一本にまで不思議な力が満ちてくるようだった。
「あのゴブリンはすでに破壊の神の縁を感じます……」
「どういうこと?」
「気をつけて……あなたの力で助けてあげて……」
「ねえ、どういう……」
世界が塗りつぶされていく。
アリドナラルが白く光り出しユリディカの視界も白く染まる。
「世界は愛で満ちている……」
まだ色々聞きたいのにユリディカは声が出なくなった。
まるで記憶にない母に抱かれたような温かさを感じながらユリディカの意識は遠のいていった。
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