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第一章
初めての力比べ7
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リュードは水にレモンのような酸味のある果物の果汁を加えたサッパリとしたドリンクをチビチビ飲みながらトーナメントのくじ引きの様子を見ている。
木の棒に先に番号が書いてあり、年配からくじを引いていく。
相手を見て喜ぶ者や絶望する者、挑戦してやると意気込む者もいる。
"怒れる蒼竜姫"なんて昔呼ばれていたとか呼ばれていないとかいうメーリエッヒの対戦相手はもうすでに死んだような顔をしている。
真人族と違って竜人族や人狼族は女性も血気盛んな人も多い。
多くの女性たちが女性たちが一喜一憂するくじ引き大会が進み、トーナメント表に名前が書きこまれて掲示される。
それを見ながら観客の間ではすでに優勝予想が始まっていてああでもないこうでもないとみんな予想を肴に酒を飲む。
くじ引きが終わったので休憩時間も終わる。
つまり決勝が始まる。
実際疲労はまだ残っているし脇腹はちょっと痛む。
勝者は基本治療してもらえないからしょうがないけどもうちょっと休みたいというのがリュードの本音だ。
あんまり間隔を空けすぎて体を冷やしてしまうのもよくはないからやるしかない。
「リュード君」
入場の時を待って出入り口前にいると決勝の相手、フテノ・ドジャウリに声をかけられた。
ドジャウリ、そうフテノは村長の息子、テユノの兄である。
気の良さそうな青年に見えるフテノは父親と同じ燃えるような真っ赤な髪を揺らしてリュードと並ぶ。
「まさかディーアを倒しちゃうとはね……不思議と君ならって思ったけど」
これから戦うのに日常の一幕でもあるかのようにフテノは話をする。
フテノはテユノと違ってリュードに対するあたりは強くなく普段から物腰が柔らかい。
父親の血を継いでいるのか同年代の子よりもがっしりとした体つきで身長も高いけれど威圧感よりも優しい雰囲気がある。
「見ていてくれたんですか?」
「妹からもよく話を聞くし村でも話題だから注目してたよ。
さっきの戦いでまだ疲れてるとは思うけど……僕も手加減はしないから」
「もちろんです」
フテノの目を見返すと笑顔を浮かべているけれど静かに、だけど熱く闘志が燃えているのが分かった。
柵の中の闘技場に中に入るよう言われる。
大きな声援に迎えられてリュードとフテノは歩いていき、真ん中付近で一定の距離を開けて向かい合い剣を構える。
戦いが始まる前の独特の張り詰めた緊張感。
先ほどまで穏やかに笑っていたフテノの顔から笑顔が消えて真剣なものになる。
「始め!」
試合開始の号令がかかっても睨み合ったまま2人は動かない。
集中力が高まっていき、やがて周りの音が遠ざかっていき雑音が何も聞こえなくなる。
先に動いたのはフテノ。
スッと距離を詰めてきてまっすぐ下ろされた剣をあえてそれを真正面から受け止め同じように剣を返す。
足を止めまさしく互いに力を比べるかのように何回も剣と剣をうちあわせるような攻防。
鍔迫り合いになって押し合いになる。
やはり子供にとって年齢の差は大きく、たった3歳の差であるけれどほとんど大人に近いフテノの方が力が強く徐々に押されていく。
「フッ!」
押し切ってリュードを払うように振った剣を飛び退いてかわす。
「行くぞ!」
ここまでは挨拶のようなもので休む間もなくフテノの更なる攻撃が始まる。
力の差があることは分かりきっているので真っ向から受けるような真似はしない。
しかし人狼の青年とは違い一撃一撃が重いのに素早くて受け流すように防ぐだけで腕がビリビリと痺れる。
先ほどのように一回相打ちでなんてことをすればやられるのはこちらになるので無茶はできない。
1分2分、あるいは数分、もっと長かったかもしれない。
もしかしたらもっと短かったかもしれない。
重たい攻撃を防ぐのに神経はすり減り、短い時間にもかかわらず滝のような汗が流れ、服が張り付くようになって気持ちが悪い。
防ぎながら敵の隙を誘い狙う。
そうするのが本来のやり方なのだがこのまま受け続けているだけでは負けてしまうという警鐘が頭の中で鳴っている。
同い年でも人狼族の青年とは違う。
焦りや疲れの色が見えない。
フテノだってここまで来るのに2人の15歳を相手にしてきているはずなのに。
正攻法だけでは勝てないと思った。
竜人族や人狼族的ではないけどこの際なりふり構っていられない。
「ハアッ!」
気合いとともに袈裟切りに振られる剣をフテノは難なく受けるがそこで剣を引かず、体全体で相手を押すようにグッと力を入れて踏み込む。
押されてフテノの体勢がほんのわずかだけ崩れこれまでにない隙が生じる。
頼む!と思いながら剣を振るうもフテノは冷静に距離を空けて回避し剣は虚しくも空を切った。
リュードの狙い通りに。
逃がさないとばかりに地面を蹴って距離を詰めようとするもフテノはすでに体勢を整え迎撃の構えを見せていた。
しかしその瞬間リュードが消えたようにフテノには見えた。
もちろんリュードは消えたのではない。
飛び上がったのではない。
「下か!」
フテノが視線を下げるとそこにリュードがいた。
地面を蹴った勢いを活かしてスライディングで近づくリュード。
あまりこうした行動は竜人族がやらない。
生き残るためなら地面を転がることだって厭わないがスライディングという行為をあまりやらないのである。
単純にやる必要がないからやらないのだろう。
一瞬ではあるけれどフテノの虚をつくことに成功した。
滑るように移動しながら足をめがけて剣を振るがすぐにリュードに気付いたフテノは飛んでそれをかわす。
流石としか言いようのない反応であるがまだリュードのターンは終わらせない。
木の棒に先に番号が書いてあり、年配からくじを引いていく。
相手を見て喜ぶ者や絶望する者、挑戦してやると意気込む者もいる。
"怒れる蒼竜姫"なんて昔呼ばれていたとか呼ばれていないとかいうメーリエッヒの対戦相手はもうすでに死んだような顔をしている。
真人族と違って竜人族や人狼族は女性も血気盛んな人も多い。
多くの女性たちが女性たちが一喜一憂するくじ引き大会が進み、トーナメント表に名前が書きこまれて掲示される。
それを見ながら観客の間ではすでに優勝予想が始まっていてああでもないこうでもないとみんな予想を肴に酒を飲む。
くじ引きが終わったので休憩時間も終わる。
つまり決勝が始まる。
実際疲労はまだ残っているし脇腹はちょっと痛む。
勝者は基本治療してもらえないからしょうがないけどもうちょっと休みたいというのがリュードの本音だ。
あんまり間隔を空けすぎて体を冷やしてしまうのもよくはないからやるしかない。
「リュード君」
入場の時を待って出入り口前にいると決勝の相手、フテノ・ドジャウリに声をかけられた。
ドジャウリ、そうフテノは村長の息子、テユノの兄である。
気の良さそうな青年に見えるフテノは父親と同じ燃えるような真っ赤な髪を揺らしてリュードと並ぶ。
「まさかディーアを倒しちゃうとはね……不思議と君ならって思ったけど」
これから戦うのに日常の一幕でもあるかのようにフテノは話をする。
フテノはテユノと違ってリュードに対するあたりは強くなく普段から物腰が柔らかい。
父親の血を継いでいるのか同年代の子よりもがっしりとした体つきで身長も高いけれど威圧感よりも優しい雰囲気がある。
「見ていてくれたんですか?」
「妹からもよく話を聞くし村でも話題だから注目してたよ。
さっきの戦いでまだ疲れてるとは思うけど……僕も手加減はしないから」
「もちろんです」
フテノの目を見返すと笑顔を浮かべているけれど静かに、だけど熱く闘志が燃えているのが分かった。
柵の中の闘技場に中に入るよう言われる。
大きな声援に迎えられてリュードとフテノは歩いていき、真ん中付近で一定の距離を開けて向かい合い剣を構える。
戦いが始まる前の独特の張り詰めた緊張感。
先ほどまで穏やかに笑っていたフテノの顔から笑顔が消えて真剣なものになる。
「始め!」
試合開始の号令がかかっても睨み合ったまま2人は動かない。
集中力が高まっていき、やがて周りの音が遠ざかっていき雑音が何も聞こえなくなる。
先に動いたのはフテノ。
スッと距離を詰めてきてまっすぐ下ろされた剣をあえてそれを真正面から受け止め同じように剣を返す。
足を止めまさしく互いに力を比べるかのように何回も剣と剣をうちあわせるような攻防。
鍔迫り合いになって押し合いになる。
やはり子供にとって年齢の差は大きく、たった3歳の差であるけれどほとんど大人に近いフテノの方が力が強く徐々に押されていく。
「フッ!」
押し切ってリュードを払うように振った剣を飛び退いてかわす。
「行くぞ!」
ここまでは挨拶のようなもので休む間もなくフテノの更なる攻撃が始まる。
力の差があることは分かりきっているので真っ向から受けるような真似はしない。
しかし人狼の青年とは違い一撃一撃が重いのに素早くて受け流すように防ぐだけで腕がビリビリと痺れる。
先ほどのように一回相打ちでなんてことをすればやられるのはこちらになるので無茶はできない。
1分2分、あるいは数分、もっと長かったかもしれない。
もしかしたらもっと短かったかもしれない。
重たい攻撃を防ぐのに神経はすり減り、短い時間にもかかわらず滝のような汗が流れ、服が張り付くようになって気持ちが悪い。
防ぎながら敵の隙を誘い狙う。
そうするのが本来のやり方なのだがこのまま受け続けているだけでは負けてしまうという警鐘が頭の中で鳴っている。
同い年でも人狼族の青年とは違う。
焦りや疲れの色が見えない。
フテノだってここまで来るのに2人の15歳を相手にしてきているはずなのに。
正攻法だけでは勝てないと思った。
竜人族や人狼族的ではないけどこの際なりふり構っていられない。
「ハアッ!」
気合いとともに袈裟切りに振られる剣をフテノは難なく受けるがそこで剣を引かず、体全体で相手を押すようにグッと力を入れて踏み込む。
押されてフテノの体勢がほんのわずかだけ崩れこれまでにない隙が生じる。
頼む!と思いながら剣を振るうもフテノは冷静に距離を空けて回避し剣は虚しくも空を切った。
リュードの狙い通りに。
逃がさないとばかりに地面を蹴って距離を詰めようとするもフテノはすでに体勢を整え迎撃の構えを見せていた。
しかしその瞬間リュードが消えたようにフテノには見えた。
もちろんリュードは消えたのではない。
飛び上がったのではない。
「下か!」
フテノが視線を下げるとそこにリュードがいた。
地面を蹴った勢いを活かしてスライディングで近づくリュード。
あまりこうした行動は竜人族がやらない。
生き残るためなら地面を転がることだって厭わないがスライディングという行為をあまりやらないのである。
単純にやる必要がないからやらないのだろう。
一瞬ではあるけれどフテノの虚をつくことに成功した。
滑るように移動しながら足をめがけて剣を振るがすぐにリュードに気付いたフテノは飛んでそれをかわす。
流石としか言いようのない反応であるがまだリュードのターンは終わらせない。
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