人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
25 / 550
第一章

15の春4

しおりを挟む
「殺す気か!」

「これぐらいで死ぬなら死んだ方がマシだろう!」

「このクソオヤジが!」

「はははっ! なんと言われようと手加減はしてやらんぞ!」

 魔人化したオヤジどもが身体強化を使って激しく攻撃をしてくる中で少し離れて魔法を得意にするオヤジたちがコンビネーションもよろしく正確にリュードに魔法を放ってくる。
 魔法は剣じゃ防ぎきれないから回避か魔法で相殺しなければいけない。

 どちらを取るにしても瞬間的な判断が必要になる上に近距離戦闘オヤジも魔法を放つこともあってリュードは体と頭も同時に疲弊していった。
 そのおかげか簡単な魔法なら無詠唱でも発動出来るようになり80日を迎える頃には大きなダメージを受けることがかなり少なくなっていった。

「いい目をしている。だいぶ強くなったな」

「おかげさまで」

「ふふっ、可愛くないな。ここからは俺が直接指導をつけてやろう」

 残り20日。
 もう終わりの方が近く、リュードも若干それを意識していた。

 珍しく朝からオヤジたちが来ないと思ったらこれまで来なかった師匠であるウォーケックが単独でリュードのところにやってきた。

「そうだな……まずはそのまま5日ほどやろうか」

 最初は真人族の姿のまま剣を抜く。
 純粋に剣の腕のみで戦い、他のオヤジはやってこない。

 師匠と弟子の真っ向勝負。
 周りのオヤジたちのちょっとした配慮である。

「次は魔人化だ」

 ウォーケックは剣を抜いて狼化する。人狼族は魔力の属性にかかわらず体毛は黒い。
 たった1人なのに威圧感は圧倒的でぐっと胸が苦しくなるような感覚まである。

 ウォーケックが笑うと牙が見える。始まりの合図もなく凶悪な笑み浮かべたまま体勢を低く構えて地面一蹴りでリュードに接近する。
 
 剣がぶつかり火花が散る。
 リュードは竜人化、ウォーケックは人狼化した魔人の姿のまま三日三晩戦った。

 そして一度3日分の食材を使って豪華な食事をしてまた2日夜通し戦う。

 最後は魔法ありで魔人族の姿と真人族の姿を1日ごとに切り替えてウォーケックと本気でやりあう。
 その間は差し入れはあったけれども食事もそこそこに戦い抜いた。

 ウォーケックがまだ本気なのかリュードには分からなかったけれど決して油断は出来ないレベルに達している自負はある。
 そして全体の日程が残り5日となった時点でリュードの所に更なる来訪があった。

「これは……」

「ウォーケック、残りは私に任せてくれないか」

「…………そうですね、弟子のためにもなるでしょう」

 ヤーネル・ドジャウリ、現段階でリュードが知る限り最強の男である村長自らがリュードのところに来てくれたのだ。
 後にこれは異例のことだと聞かされるのだが今のリュードにはそんなことは関係なかった。

 連日の訓練でハイにもなっているリュードは圧倒的強者を前にして笑っていた。

「ほう。竜人族にしては真人族のような感性を持つと聞いていたが……やはり竜人族のようだな」

「村長手ずから鍛錬してくれるというのだから嬉しくないわけないじゃないですか」

「そうか。では私も久々に本気を出すとしよう」

 身体中の毛中という毛穴が開くような殺気。
 とっさに身をよじって回避するとリュードがいたところにリュードの剣の倍はある太さの剣が振り下ろされていた。

 気を抜けば本当に死んでしまいそうな一撃。
 リュードは笑う。

 胸が高鳴って、これからの戦いに否が応でも期待してしまう。

「ここで俺が勝ったら村長交代ですか?」

「もし勝てるならそうしてみるといい!」
 
 5日後、リュードが訓練に使っていた家は壁も屋根も吹き飛んで野ざらしとなっていて、村長との鍛錬の激しさを物語っていた。

「くそっ……」

「はははっ、ここまでついてくるとはな。感心したぞリュード」

 結局村長を倒すことはできなかった。
 何度もやられてその度に治療をお願いして何度も立ち上がった。

 村長はリュードの能力だけでなくその諦めを知らぬ精神力にも感心していた。
 100日間の訓練が終わり、リュードは久々に家に帰った。

 極限の疲労はあったのだけどまだ精神的に興奮したような状態のリュードは周りの助けを借りることもなく家まで1人で帰ることができた。
 帰ってきたのは朝早くだったにも関わらずメーリエッヒもヴェルデガーも待ってくれていた。

 メーリエッヒは一つ、もしかするのもっと成長を遂げたリュードをぎゅっと抱きしめて迎えてくれる。
 料理も作ってくれていたみたいだけどリュードは母の抱擁の暖かさに負けて、そのまま気を失うように眠ってしまった。

「大丈夫かい?」

「ちょっと重たいけど大丈夫よ」

「ふむ、まだまだ子供だな。僕が部屋まで運ぼう」

「村長まで出てきてきっと大変だったんでしょう。案外この子も負けず嫌いだから」

「それでも大きくなってるな」

「いつの間にか私の背にも追いついているものね」

 ヴェルデガーは無邪気な寝顔を見て笑う。
 リュードを部屋に運んでやろうと背負って意外と息子が大きくなったことに気がついた。

 可愛い子供の成長を感じて2人は顔を見合わせて微笑んだのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...