人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
56 / 550
第一章

伝えられぬ思い1

しおりを挟む
 行商まで残り時間は少ない。
 リュードはポーションや薬を作って貯めておき、仲の良かったやつに挨拶に行ったりしていた。

 リュードが旅に出るというとみんな驚いたものであるがリュードなら大丈夫だろう、元気でなと言ってくれた。
 中には力比べで準決勝まで行ったリュードに戦いを挑んでくる奴もいた。

「私と戦いなさい!」

 仲が良いかと聞かれるとちょっと微妙なところだが何かと突っかかってくることもあり、意外と会話することも多かったテユノ。
 挨拶ぐらいはしておこうと考えていたのに狭い村でどうしてなのか中々テユノに会うことができなかった。

 あと数日。
 もう少しで出発の日になるという時、いつものように鍛錬していたリュードの前にテユノが現れた。

 そしていきなり槍をリュードを向け、勝負するようにと告げた。
 テユノの宣戦布告を聞いたメーリエッヒやルフォンたちお隣さん一家が何事かと顔を覗かせる。

「覚悟!」

 リュードが戦うことを承諾していないのにテユノはリュードにかかっていった。
 リュードはテユノの突きを剣の腹で受ける。

 今は慣れるためにたまたま黒重鉄の剣を持っていた。
 リュードはこの剣の名前をシュビナスと名付けていた。

 何がなんだから分からないが大人しくやられてやるつもりもない。
 けれどリュードもなんだか攻められなくて防戦を強いられる中テユノは前に出る。
 
 交戦距離も槍らしく離れたり、接近して打ちつけるようにして振り回したりと刻一刻と変化して戦いにくい。
 接近しての攻撃も回転させたり体ごと回して槍を振るので例え柄の部分でも当たれば十分な威力がある。

 甘く考えてはいけない。

「はあっ!」

 テユノが体を回転させてリュードの側面に回り込みながら石突でリュードの頭を狙う。
 リュードは頭を下げて槍をかわす。

 すぐさま槍を切り上げるもグッと足に力を入れてバク転して回避すると同時に距離をとる。
 剣などの武器よりも間合いを取って戦い、距離を詰められることを嫌うのが普通の槍使いというものだがテユノは少し他とは違う。
 
 持っている槍は一般の物よりもやや短めになっていてロングレンジとしての優位さは幾分か損なわれているが長槍よりも取り回ししやすい。
 その上テユノは槍を使って杖術や棒術のようにも戦い、近距離戦闘もお手の物であるのだ。

 リュードの武器は剣なので戦う距離は近い方がよかったがテユノは戦う距離を巧みに変えてリュードを翻弄していた。
 けれどリュードもそんな変則的なテユノの攻撃をなんとか防いでいた。
 
 できるならすぐに勝負を決めるつもりだったテユノは内心舌打ちしたい気持ちだった。
 急に戦いを仕掛けたのにリュードは持ち直すのも早く、テユノの攻撃を冷静に見ていた。

 リュードも力比べでテユノの戦いはよく見物していた。
 完全な初見だったら危なかったかもしれないと思う。

「いきなりだな」

「ふん、これぐらいかわせなくて村の外でやっていけるわけないでしょ」

 まあ一理ある言葉ではある。
 外の世界では何があるか分からない。

 いきなり襲撃されることはないなんて考える方が危険であるのは確かに言う通り。
 だからと言って奇襲する理由にはならない。

「まあいい、戦いを始めたのはそっちだからな!」

 相手は女性なので乗り気ではないが村でも腕が立つ方に入るテユノである。
 気を抜いて戦えばあっという間にやられてしまう。

 同時に少しだけワクワクとした気持ちもある。
 そうそうテユノの手合わせする機会はない。

 戦闘狂な竜人族の本能が刺激されているのだ。
 槍先はリュードを捉えている。
 
 短槍といえど間合いはリュードの剣よりも広い。
 リュードが接近すると先に攻撃するのは当然テユノである。

 接近するリュードに合わせて素早く鋭い突きを繰り出す。
 リュードは槍を剣で防ぎながら無理やり自分の間合いに入ろうとする。

 しかしテユノも棒立ちで槍をついているのではない。
 距離をとりながら槍を突き、一方的に攻撃を加えていく。

 リュードが槍を上手く受け流してもテユノは崩れない。
 このままではらちが明かないので力を込めてやりに剣をぶつける。

 テユノも比較的力のある方の女性ではあるがリュードの力には敵わない。
 しけしテユノはあえて抵抗せずに片手を離してはじかれることで大きく体勢を崩されることを防いだ。
 
 それでもそのわずかなスキにリュードは大きく足を踏み出して距離を詰めた。
 ようやく自分の距離になったと思ったらテユノはなんとさらに距離を詰めてきた。
 
 近すぎると近すぎるでやりにくい。
 驚くリュードをよそにテユノはリュードの足を石突で突こうとする。
 
 足を引いてかわすと今度は下から突き上げられ顎をかすめる。
 上手くリュードの周りをまわるようにして側面に周りこみ膝裏を狙う。

 剣を差し込んで防いだがまたもや完全にテユノのペースになっている。
 これが男相手なら胸倉でもつかんで殴り合いにでも持ち込むのだけれどテユノ相手にそんなことはできない。

 それにしても殺気は感じられないのに当たると致命傷になりかねない攻撃が多い。
 なんとなく、ちぐはぐな感じがする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

処理中です...