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第三章
思いを返しに4
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「マクフェウスさんは凄いお方でしたよ」
慰めにはならないかもしれない。
それでもリュードはガイデンが人としての自我を保っていたこと。
最後はリュードと戦って武人として死んだことを伝えた。
室内が静まりかえってシンとなる。
「……私、頭を冷やしてくる」
憧れの祖父を思い、アリアセンが思い詰めたような顔をして部屋を出ていった。
「……私が父の事を英雄のように語りすぎてしまいました。あの子は父の、ガイデンの見えない背中を追いかけているのです」
「お姉ちゃんを、泣かせたのは、誰だ!」
アリアセンと入れ替わるように青い髪の少女が入ってきた。
「エリエス!」
「あっ」
「あっ」
リュードとエリエスの目が合い、お互いに気の抜けた声を出す。
見覚えのある少女だとリュードはエリエスを一目見て思った。
それもそのはずでエリエスはつい先日リュードたちをこっそりと付けていた少女であった。
思わず部屋に飛び込んでしまったエリエスはハッとした表情を浮かべて視線を父親に移した。
全く予想していなかった人物が多くてエリエスは状況把握が出来ていない。
リュードも訳が分かっていない。
「なんでお父さんがここにいるの?」
「私は呼ばれて来たんだ。お前こそなぜここにいる?」
他人の空似にしては似すぎている。
そんな風に思っていたのだが、他人の空似ではなかった。
アリアセンとエリエスは姉妹で、ということはアリアセンの父親はエリエスの父親でもある。
三人とも鮮やかな青い髪をしている。
顔も似ているし血縁関係には絶対にあると断言はできるぐらいに容姿的な特徴が同じだったのだ。
リュードはガイデンも生前は青い髪だったのだろうかと心の隅で思った。
「あー、失礼しまし……」
「待ちなさい! シューナリュードさん、ありがとうございました」
エリエスは逃げようとしたが素早く父親に捕まってしまった。
そして父親に引きずられるようにしてどこかに連れていかれてしまった。
「お呼びしたのはこちらなのにお騒がせしてしまい、申し訳ございません」
「こんな話を聞けば動揺してしまうのは当然ですよ」
聞くところによるとドランダラスも手紙を読んだせいなのか体調を崩してしまったらしい。
死の知らせを聞いて涙を堪えられなかったぐらいなので手紙を読んでさらに感情が揺さぶられてしまったのだろう。
王様だろうと1人の人間。
親しかった兄弟の突然の話に何も思わない方が難しい。
「今日お呼びしましたのは他でもありません。ご遺族の確認が取れて改めてお礼をと思ったのです。ですが1つご依頼があるのですがこれから何かご予定などありますか?」
「依頼ですか? 特に予定はないですよ」
「名簿を確認して分かったのですが、亡くなった者の多くがここよりも南にあります港湾都市のデタルトスかその周辺の者なのです」
船に乗って戦うというために普段から海に近いところに住んでいた騎士が多く動員されていた。
「ですのでわざわざこちらに来ていただくよりもデタルトスに遺品を運んだ方がスムーズに遺族に遺品を返せます。ですがお持ちになられた遺品は中々の量でございまして運ぶのも一苦労でございます。そこでシューナリュード様にお力添えいただければと思いまして」
遺族の中には高齢のものも多かった。
ゼムトは気をきかせて一箱にまとめたけれどそれでも船員全員の分となるとかなりの量になる。
輸送しようにも手間になるし、取りに来てもらうのも簡単ではない。
そこでリュードの持つマジックボックスの袋の力を貸してほしいということなのだ。
改めて出した荷物はものすごく量が多かった。
入れる時はスケルトンたちがせっせと入れてくれたので量が多いことを意識していなかった。
確かにあの量を運ぶのは大変だろうなと思う。
「冒険者ギルドを経由して、直接指名という形でご依頼を出します。こうしますと冒険者としての実績にも反映されます。どうでしょう、受けていただけますか?」
面倒なので袋だけでも渡すかなんて思っているとファランドールが先に条件を書いた紙をリュードに差し出す。
実績になるなら悪くないなと条件を確認する。
提示された金額も荷物を袋に入れて運んでいくだけにしては破格の金額である。
「実は他にも仲間がいまして、相談する時間をいただいてもよろしいですか?」
南の都市には行くつもりではあった。
楽でいい稼ぎにもなって実績にもなる。
この依頼に今のところ断る要素がない。
けれども今はルフォンと2人で旅をしているのではない。
答えは分かりきっている気がしないでもないけれど、相談して意見は聞かなければいけない。
3人の判断しだいではこのままここに残って冒険者として活動するなんて話も有り得ないことでない。
ほとんどそんな判断をする可能性は無いとしてもゼロじゃない。
「ええ、もちろんですよ。お受けになるならお仲間様の実績にもなりますのでよろしければ是非」
遺品を返すことは約束なので出来るだけ手伝ってやりたい。
リュードたちが王城を出て宿に帰るとエミナたちもすでに宿に帰っていた。
今日受けた依頼は早めに終わったようで部屋で各々くつろいでいた。
心配だったエミナも依頼の回数を重ねていくと落ち着いてきて安定してきた。
連携も取れ始めてダカンも燃える可能性がグッと減った。
元々冷静になればちゃんとできる子なのである
3人は喧嘩も無く、次にどう動くべきかなど話し合って互いに高めあっていた。
低ランク帯の依頼なら危険も少なくこなせるだけの動きを3人は見せていた。
休んでいた3人を集めて細かな事情を話すことなくこんな依頼が舞い込んできたと言ってどうするかを問う。
ちょっと驚いたように顔を見合わせたエミナたち3人はすぐに行くと返事で返してきた。
完全に事前の想定通りの展開になった。
さっそく次の日に王城に向かってファランドールに依頼を受けることを伝えた。
てっきり冒険者ギルドに行くと思っていたエミナたちはビビっていたけれどこれは面白そうなのでわざと伝えなかったリュードが悪い。
一応ギルドを経由していることになっているのでギルドの印がある依頼書にサインをして依頼の受諾となった。
依頼を受けたのだがギルドのギの字もないほどにギルドには行っていない。
これでも実績としてカウントされるのなら言うことは無い。
「どんなことをしたら王様から直接指名で依頼が舞い込んでくるんですか……?」
失礼がないようにとファランドールに縮こまるエミナは疑いの目をリュードに向けていたけど、やがてため息をついた。
これがきっとリュードの言っていた用事に関することなのだろうと今気づいたのであった。
慰めにはならないかもしれない。
それでもリュードはガイデンが人としての自我を保っていたこと。
最後はリュードと戦って武人として死んだことを伝えた。
室内が静まりかえってシンとなる。
「……私、頭を冷やしてくる」
憧れの祖父を思い、アリアセンが思い詰めたような顔をして部屋を出ていった。
「……私が父の事を英雄のように語りすぎてしまいました。あの子は父の、ガイデンの見えない背中を追いかけているのです」
「お姉ちゃんを、泣かせたのは、誰だ!」
アリアセンと入れ替わるように青い髪の少女が入ってきた。
「エリエス!」
「あっ」
「あっ」
リュードとエリエスの目が合い、お互いに気の抜けた声を出す。
見覚えのある少女だとリュードはエリエスを一目見て思った。
それもそのはずでエリエスはつい先日リュードたちをこっそりと付けていた少女であった。
思わず部屋に飛び込んでしまったエリエスはハッとした表情を浮かべて視線を父親に移した。
全く予想していなかった人物が多くてエリエスは状況把握が出来ていない。
リュードも訳が分かっていない。
「なんでお父さんがここにいるの?」
「私は呼ばれて来たんだ。お前こそなぜここにいる?」
他人の空似にしては似すぎている。
そんな風に思っていたのだが、他人の空似ではなかった。
アリアセンとエリエスは姉妹で、ということはアリアセンの父親はエリエスの父親でもある。
三人とも鮮やかな青い髪をしている。
顔も似ているし血縁関係には絶対にあると断言はできるぐらいに容姿的な特徴が同じだったのだ。
リュードはガイデンも生前は青い髪だったのだろうかと心の隅で思った。
「あー、失礼しまし……」
「待ちなさい! シューナリュードさん、ありがとうございました」
エリエスは逃げようとしたが素早く父親に捕まってしまった。
そして父親に引きずられるようにしてどこかに連れていかれてしまった。
「お呼びしたのはこちらなのにお騒がせしてしまい、申し訳ございません」
「こんな話を聞けば動揺してしまうのは当然ですよ」
聞くところによるとドランダラスも手紙を読んだせいなのか体調を崩してしまったらしい。
死の知らせを聞いて涙を堪えられなかったぐらいなので手紙を読んでさらに感情が揺さぶられてしまったのだろう。
王様だろうと1人の人間。
親しかった兄弟の突然の話に何も思わない方が難しい。
「今日お呼びしましたのは他でもありません。ご遺族の確認が取れて改めてお礼をと思ったのです。ですが1つご依頼があるのですがこれから何かご予定などありますか?」
「依頼ですか? 特に予定はないですよ」
「名簿を確認して分かったのですが、亡くなった者の多くがここよりも南にあります港湾都市のデタルトスかその周辺の者なのです」
船に乗って戦うというために普段から海に近いところに住んでいた騎士が多く動員されていた。
「ですのでわざわざこちらに来ていただくよりもデタルトスに遺品を運んだ方がスムーズに遺族に遺品を返せます。ですがお持ちになられた遺品は中々の量でございまして運ぶのも一苦労でございます。そこでシューナリュード様にお力添えいただければと思いまして」
遺族の中には高齢のものも多かった。
ゼムトは気をきかせて一箱にまとめたけれどそれでも船員全員の分となるとかなりの量になる。
輸送しようにも手間になるし、取りに来てもらうのも簡単ではない。
そこでリュードの持つマジックボックスの袋の力を貸してほしいということなのだ。
改めて出した荷物はものすごく量が多かった。
入れる時はスケルトンたちがせっせと入れてくれたので量が多いことを意識していなかった。
確かにあの量を運ぶのは大変だろうなと思う。
「冒険者ギルドを経由して、直接指名という形でご依頼を出します。こうしますと冒険者としての実績にも反映されます。どうでしょう、受けていただけますか?」
面倒なので袋だけでも渡すかなんて思っているとファランドールが先に条件を書いた紙をリュードに差し出す。
実績になるなら悪くないなと条件を確認する。
提示された金額も荷物を袋に入れて運んでいくだけにしては破格の金額である。
「実は他にも仲間がいまして、相談する時間をいただいてもよろしいですか?」
南の都市には行くつもりではあった。
楽でいい稼ぎにもなって実績にもなる。
この依頼に今のところ断る要素がない。
けれども今はルフォンと2人で旅をしているのではない。
答えは分かりきっている気がしないでもないけれど、相談して意見は聞かなければいけない。
3人の判断しだいではこのままここに残って冒険者として活動するなんて話も有り得ないことでない。
ほとんどそんな判断をする可能性は無いとしてもゼロじゃない。
「ええ、もちろんですよ。お受けになるならお仲間様の実績にもなりますのでよろしければ是非」
遺品を返すことは約束なので出来るだけ手伝ってやりたい。
リュードたちが王城を出て宿に帰るとエミナたちもすでに宿に帰っていた。
今日受けた依頼は早めに終わったようで部屋で各々くつろいでいた。
心配だったエミナも依頼の回数を重ねていくと落ち着いてきて安定してきた。
連携も取れ始めてダカンも燃える可能性がグッと減った。
元々冷静になればちゃんとできる子なのである
3人は喧嘩も無く、次にどう動くべきかなど話し合って互いに高めあっていた。
低ランク帯の依頼なら危険も少なくこなせるだけの動きを3人は見せていた。
休んでいた3人を集めて細かな事情を話すことなくこんな依頼が舞い込んできたと言ってどうするかを問う。
ちょっと驚いたように顔を見合わせたエミナたち3人はすぐに行くと返事で返してきた。
完全に事前の想定通りの展開になった。
さっそく次の日に王城に向かってファランドールに依頼を受けることを伝えた。
てっきり冒険者ギルドに行くと思っていたエミナたちはビビっていたけれどこれは面白そうなのでわざと伝えなかったリュードが悪い。
一応ギルドを経由していることになっているのでギルドの印がある依頼書にサインをして依頼の受諾となった。
依頼を受けたのだがギルドのギの字もないほどにギルドには行っていない。
これでも実績としてカウントされるのなら言うことは無い。
「どんなことをしたら王様から直接指名で依頼が舞い込んでくるんですか……?」
失礼がないようにとファランドールに縮こまるエミナは疑いの目をリュードに向けていたけど、やがてため息をついた。
これがきっとリュードの言っていた用事に関することなのだろうと今気づいたのであった。
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