150 / 550
第三章
熱き砂浜の戦い11
しおりを挟む
「リューちゃーん!」
「おっと」
リュードの首に手を回して抱きつくルフォンは喜びを爆発させた。
尻尾がちぎれんばかりに振られていて、それを見てリュードも勝ったのだと実感が湧いてくる。
少し遅れてようやく喜びが溢れてくる。
「あのね、私頑張ったからさっきバーナードさんがエリザさんにやってたみたいに、してほしいなって……」
「やってたみたいってなんのことだ?」
色々していたからどれのことかわからない。
「ほっぺにちゅってしてたでしょ?」
旗取りでの競技でルフォンが勝った時の不自然な態度。
その理由がわかった。
バーナードは息止め対決のときに勝ったエリザに対して頬に軽くキスをした。
言葉で褒める代わりにおめでとうというスキンシップ。
ルフォンは限界まで息を止めて苦しい中でもその光景をバッチリ見ていたのであった。
負けたことも悔しくて、勝ったら絶対に自分もああしてもらうんだとひっそりと心の中で強く思った。
旗取りの時も勝ったのでそうしてもらおうかと思ったのだが恥ずかしくて言い出せなかった。
勝った喜びとこれが最後のチャンスなのでルフォンは思い切って言ってみた。
「い、今か?」
旗取りの時だったならリュードもすぐにオッケーした。
しかし今は一競技の中ではなく完全に全部が終わって、しかも優勝してみんなの注目の的になっている。
抱き合っているだけでもドキドキして周りの目がちょっと怖いことになっている人もいるのに、人前で頬とはいえキスするのは勇気がいる。
「ねぇ、ダメ?」
後でしてやるなんで言葉を言う前に懇願するように見つめてくるルフォン。
何かの気配を察した観客たちが歓声の声を少し落として2人の様子を見守る。
「ルフォン」
頭を撫でるのとはハードルの高さの違う、難易度の高い行為。
だけどルフォンはこのスナハマバトルの中で非常に頑張った。
リュードは持ちうる限りの勇気を振り絞ってルフォンの頬に優しく口づけをした。
「よく、やったな」
ボボボと、ルフォンの尻尾の毛が逆立って大きくなる。
顔も真っ赤になり、フニャリと表情が崩れる。
単に頬に口づけしただけなのだが周りから見ると普通にキスをしたように見えた。
歓声にヒューヒューと2人を冷やかすような声が混じる。
「これにて全ての競技が終わりました。最後に表彰式と……」
「きゃあーーーー!」
なかなか難しい雰囲気を司会のウェッツォが上手くまとめて次に行こうとした。
けれど女性の悲鳴が聞こえてきて会場に緊張感が走る。
途端にざわつく会場。
観客の後ろの方から聞こえてきた悲鳴の理由はすぐに分かった。
「魔物だー!」
観客が多く周りが見えないが男性の声がして、魔物が出てきたことが伝わってきた。
海の方に出たのか、それとももう浜辺に出ているのかまでは分からないが、もう見える位置にまで来ている。
「エミナ!」
「はい、ここにいます!」
「俺たちの荷物はあるか?」
「もちろんここに!」
エミナはリュードから預かっていたマジックボックスの袋をリュードに渡す。
人目はあるけれど緊急事態だし魔物騒動でリュードたちを見ている人はいない。
一応周りを気にしつつリュードは袋に手を突っ込んでナイフを取り出す。
「ルフォン!」
「ありがと!」
ナイフをルフォンに渡してまた袋に手を入れると今度は自分の愛剣を取り出す。
備えあれば憂いなし。
スナハマバトルの会場には武器持ち込み禁止だったので袋の中に入れてスナハマバトルを見に来てくれていたエミナに預けていた。
武器を身の回りに置くのはもはや習慣である。
海で遊んでいる時も荷物をマジックボックスの袋に入れて、それを水が入らない密閉できる袋に入れて身につけていたぐらいだ。
盗難防止にもなるし身近に剣がないと落ち着かない体になってしまったのだ。
よくウォーケックが剣は体の一部で常にそばに置けなんて言っていたが、今では本当に体の一部のようである。
「エミナも武器は持ってるな?」
「はい、もちろんです!」
一緒に旅している以上マジックボックスの袋の存在を隠すのは難しい。
一定の荷物は知らない人に見られても困らないように持ち運んでいるが、側にいるとそれ以上の物を取り出して使っているのは丸わかりだ。
単に秘密にしてもらうだけでなく当事者になってもらう。
エミナにも1つマジックボックスの袋をあげていて、エミナもその中に武器である杖を持ってきていた。
ちなみにヤノチとダカンはまだマジックボックスの袋の存在に気づいていなかったりする。
特別隠しているつもりもないが細かいことも気にする2人でもなかった。
5人もいると持てる荷物もそれなり多くなるし物の出どころをわざわざ仲間内で気にすることもない。
「よし、とりあえず見に行ってみよう。海に出てたらやることはないけど浜辺まで来たら大変だ」
浜辺の方から人が逃げていく。
流れとは逆行することになるので人の波をかき分けて進む。
「こりゃ……マズイな」
人の波を抜けると砂浜の状況が見えた。
もうすでに魔物が砂浜に上陸していた。
そこにいた魔物は魚のような見た目をしているが手足が生えていて二足歩行をしている。
マーマンと呼ばれる魔物である。
「きっもち悪いですね!」
エミナが嫌悪感に満ちた表情でマーマンを見る。
受け入れ難いフォルムをしていると思っていたのはリュードだけではなかった。
「おっと」
リュードの首に手を回して抱きつくルフォンは喜びを爆発させた。
尻尾がちぎれんばかりに振られていて、それを見てリュードも勝ったのだと実感が湧いてくる。
少し遅れてようやく喜びが溢れてくる。
「あのね、私頑張ったからさっきバーナードさんがエリザさんにやってたみたいに、してほしいなって……」
「やってたみたいってなんのことだ?」
色々していたからどれのことかわからない。
「ほっぺにちゅってしてたでしょ?」
旗取りでの競技でルフォンが勝った時の不自然な態度。
その理由がわかった。
バーナードは息止め対決のときに勝ったエリザに対して頬に軽くキスをした。
言葉で褒める代わりにおめでとうというスキンシップ。
ルフォンは限界まで息を止めて苦しい中でもその光景をバッチリ見ていたのであった。
負けたことも悔しくて、勝ったら絶対に自分もああしてもらうんだとひっそりと心の中で強く思った。
旗取りの時も勝ったのでそうしてもらおうかと思ったのだが恥ずかしくて言い出せなかった。
勝った喜びとこれが最後のチャンスなのでルフォンは思い切って言ってみた。
「い、今か?」
旗取りの時だったならリュードもすぐにオッケーした。
しかし今は一競技の中ではなく完全に全部が終わって、しかも優勝してみんなの注目の的になっている。
抱き合っているだけでもドキドキして周りの目がちょっと怖いことになっている人もいるのに、人前で頬とはいえキスするのは勇気がいる。
「ねぇ、ダメ?」
後でしてやるなんで言葉を言う前に懇願するように見つめてくるルフォン。
何かの気配を察した観客たちが歓声の声を少し落として2人の様子を見守る。
「ルフォン」
頭を撫でるのとはハードルの高さの違う、難易度の高い行為。
だけどルフォンはこのスナハマバトルの中で非常に頑張った。
リュードは持ちうる限りの勇気を振り絞ってルフォンの頬に優しく口づけをした。
「よく、やったな」
ボボボと、ルフォンの尻尾の毛が逆立って大きくなる。
顔も真っ赤になり、フニャリと表情が崩れる。
単に頬に口づけしただけなのだが周りから見ると普通にキスをしたように見えた。
歓声にヒューヒューと2人を冷やかすような声が混じる。
「これにて全ての競技が終わりました。最後に表彰式と……」
「きゃあーーーー!」
なかなか難しい雰囲気を司会のウェッツォが上手くまとめて次に行こうとした。
けれど女性の悲鳴が聞こえてきて会場に緊張感が走る。
途端にざわつく会場。
観客の後ろの方から聞こえてきた悲鳴の理由はすぐに分かった。
「魔物だー!」
観客が多く周りが見えないが男性の声がして、魔物が出てきたことが伝わってきた。
海の方に出たのか、それとももう浜辺に出ているのかまでは分からないが、もう見える位置にまで来ている。
「エミナ!」
「はい、ここにいます!」
「俺たちの荷物はあるか?」
「もちろんここに!」
エミナはリュードから預かっていたマジックボックスの袋をリュードに渡す。
人目はあるけれど緊急事態だし魔物騒動でリュードたちを見ている人はいない。
一応周りを気にしつつリュードは袋に手を突っ込んでナイフを取り出す。
「ルフォン!」
「ありがと!」
ナイフをルフォンに渡してまた袋に手を入れると今度は自分の愛剣を取り出す。
備えあれば憂いなし。
スナハマバトルの会場には武器持ち込み禁止だったので袋の中に入れてスナハマバトルを見に来てくれていたエミナに預けていた。
武器を身の回りに置くのはもはや習慣である。
海で遊んでいる時も荷物をマジックボックスの袋に入れて、それを水が入らない密閉できる袋に入れて身につけていたぐらいだ。
盗難防止にもなるし身近に剣がないと落ち着かない体になってしまったのだ。
よくウォーケックが剣は体の一部で常にそばに置けなんて言っていたが、今では本当に体の一部のようである。
「エミナも武器は持ってるな?」
「はい、もちろんです!」
一緒に旅している以上マジックボックスの袋の存在を隠すのは難しい。
一定の荷物は知らない人に見られても困らないように持ち運んでいるが、側にいるとそれ以上の物を取り出して使っているのは丸わかりだ。
単に秘密にしてもらうだけでなく当事者になってもらう。
エミナにも1つマジックボックスの袋をあげていて、エミナもその中に武器である杖を持ってきていた。
ちなみにヤノチとダカンはまだマジックボックスの袋の存在に気づいていなかったりする。
特別隠しているつもりもないが細かいことも気にする2人でもなかった。
5人もいると持てる荷物もそれなり多くなるし物の出どころをわざわざ仲間内で気にすることもない。
「よし、とりあえず見に行ってみよう。海に出てたらやることはないけど浜辺まで来たら大変だ」
浜辺の方から人が逃げていく。
流れとは逆行することになるので人の波をかき分けて進む。
「こりゃ……マズイな」
人の波を抜けると砂浜の状況が見えた。
もうすでに魔物が砂浜に上陸していた。
そこにいた魔物は魚のような見た目をしているが手足が生えていて二足歩行をしている。
マーマンと呼ばれる魔物である。
「きっもち悪いですね!」
エミナが嫌悪感に満ちた表情でマーマンを見る。
受け入れ難いフォルムをしていると思っていたのはリュードだけではなかった。
41
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる