人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

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第四章

愚かなる目論み8

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「つまりだな、今いるこの領地はプジャンではなく、元々クゼナの兄であるユゼナのものだった。プジャンが死ぬとまたユゼナがこの領地の領主に返り咲くことになる」

「そうそう」

「そしてプジャンがユゼナを押し退けて領主になれたのはクゼナを人質にとっているからで、プジャンが死ぬとクゼナも死んでしまう関係にある。
 ユゼナはクゼナを溺愛しているのでプジャンを殺してクゼナが死ぬとユゼナが怒ってモノランを許さないと。そういうことだな?」

「その通り。きっとユゼナお兄様は自分の命も一生も捧げて追いかけてきます。大切なものを亡くした気持ちはモノランさんにも分かるはずです」
 
 モノランが今プジャンを殺しに行けばユゼナはモノランと同じく大切なものを殺された復讐者になる。
 復讐が復讐を呼ぶ負のループが始まる。

 途中話が長くてラストの口を塞ぎそうになったモノランを抑えつつ、話を聞いてリュードがまとめる。

 ラストは何故なのかという理由の明言は避けたけれどプジャンを殺すとクゼナという人も死んでしまうらしい。
 ユゼナは優しい人らしいのだが妹であるクゼナが絡むと正気じゃいられなくなる人物であるようだ。

「なぜプジャンを殺すとそのクゼナが死ぬんだ?」

 一心同体でもあるまいしどうして連動して死ぬことになるのか分からない。

「……クゼナは病気なんです。石化病といって、全身が石になっていく奇病でプジャン兄さんの氏族が石化病の進行を遅らせる薬を作ることができるのです。だからプジャン兄さんが死んでしまうと薬がもらえずに、そのうちクゼナは石になって……」

「治してしまえばいいではないか」

「へっ?」

「なんだ、そんなくだらない問題。その石化病を治してやればいいじゃないか。そうすれば問題解決だろう?」

「でも治療薬はないって……」

「知らん、薬はある。というか作り方を知っている」

「本当ですか!」

「ウソなんか私は言わない」

「つ、作り方を教えてください! お願いします!」

「イヤダ」

「何で!」

「リュードの頼みならともかくどうして私がお前の頼みを聞いてやらねばいけないのだ? こうして話だけでも聞いてやっているではないか」

 とことんリュード以外には冷たいモノランはプイとラストから顔を逸らす。
 頭を下げたラストの頼みをモノランは取り付く島もなく断る。

「じゃあお願い」

「イーヤ」

「ええ……」

 リュードが頼んでみたけど断れる。
 結局ダメじゃないか。

「だってこれはリュードの頼みではなくて、この小娘のためにリュードが一時的に代わって頼んでいるに過ぎないではないか! だからイヤ、だ」

 ひねくれ者だなぁ。

「私に出来ることなら何でもします。だからお願いします、教えてください!」

「お前のような小娘に何が出来るという?」

「私はこれでも大領主です。必要ならお金でも何でも用意しますし意外と出来ることはあります!」

 今にもモノランの足に縋りつきそうなラスト。
 他の人の視線は気にならないけどリュードに冷たく見られてモノランは居心地の悪さを感じていた。

 実際大領主ではあってもまだ若いラストが振るえる権力はさほどでもない。
 それでもラストは必死だった。

 敵しかいないような周りの中でも数少ない味方で自分のことを可愛い妹だと言って守ってくれたのがクゼナだった。
 ユゼナもクゼナほどではないにしろそれなりに可愛がってくれたし、この兄妹にはラストも感謝をしていた。
 
 死んでしまうのは嫌だしずっと探していた治療法が分かるのなら何でも差し出すぐらいの気持ちであった。
 ユゼナは大領主だったのにクゼナが病気になり、プジャンのせいでなす術もなく権力を奪われていった。
 
 ラストはそれを止めることもできず黙ってみているしかなかった。
 恩を返せる希望の光が見えたのなら諦めることはできない。

「…………分かった。分かったからそのような目で見ないでほしい」

 モノランはラストの縋りつくような目、ではなくリュードの視線に耐えかねて折れた。

「神殿を建てるのだ。大きくて立派なやつをだ。……そうだな、私とあの子たち……私の姪っ子たちも住めるぐらいの大きさにしてもらおうか」

「し、神殿ですか? それはモノラン様の神殿をでしょうか?」

「違う。雷の神様のゼウラス様の神殿だ。そしてお前は雷の魔法を覚え、雷の力を布教して信者を増やすのだ」

「ちょっと聞いてもいいか?」

「なんでしょう、リュード」

 ラストに話しかける時とリュードに対応する時の声のトーンが違う。

「なんでそんなに雷の神様に執着しているんだ?」

 モノランが雷属性を使うことはわかっている。
 けれどどうしてそこまで雷の神様に敬意を払って、信者まで集めようとするのかが分からない。

 魔物が神様を信仰するのもおかしな話である。

「リュードの質問だから答えよう。私は、というか私の祖母であるペラフィランは雷の神獣であったのだ。雷属性を扱うものが激減して、信仰の力が失われてしまったので雷の神様が力を失い、私の祖母も神獣としての力を失ってしまった。
 もはや神獣としての格はないが、それでも私には神獣であったペラフィランの血が流れているのです!」

 ドーンと胸を張るモノラン。
 神獣という響きはすごいのだがそれがどれほどのものであるのかリュードにはイマイチ理解できていなかった。

「じい、神獣ってなんですか?」

「今ではすっかり話にも聞かなくなってしまった伝説上の生き物ですね。知らないのも無理はありません。神獣とは神様の加護や力を受けた神聖な生き物のことで神の使徒や寵愛を受けた者と同等に扱われる尊きものです」
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