人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

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第四章

毒草を探せ!3

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「な、なんだこいつら……」

 十数人もいた仲間たちが次々にやられていくことに山賊のリーダーは顔を青くした。
 山賊たちは全くルフォンたちの相手にならず、気づけば残ったのはリーダーの男とルフォンたちの実力の差がわかって怖気付いてしまっていた何人かの獣人族だけであった。

 ルフォンもさることながら服に返り血すらつけていないヴィッツの腕前はかなりのものである。
 山賊ごときのレベルでは2人にかすり傷一つ負わせることもできなかった。

「お、お命だけはお助けください!」

 最初の勢いは何処へやら、山賊のリーダーは小さくなってルフォンたちに対して平伏する。
 そんなリーダーの姿を見て獣人族たちも地面に膝をつく。

 人数差もあるし、相手は小娘とジジイ。
 余裕で勝てると思ったのに余裕で負けてしまった。

 命のためならプライドも捨ててみせる。
 助かるためならなりふり構っていられない。

「イェミェンについてお教え願えますか?」

 ヴィッツは剣の血を布で拭いながら山賊のリーダーに目を向けた。

「そ、それは、その……」

「命が惜しくないというのならそのまま口を閉じていても結構ですよ」

「あ、いや、イェミェンがあるところまでご案内します」

 剣を首に突きつけられてあっさりと陥落した。
 ルフォンとヴィッツの二人では手に余るし処理も面倒であるので降参した残りの山賊は武装を解除して解放した。

 運が良ければ魔物にも会わずどこかに辿り着くだろう。
 本当なら山賊であるので捕まえてどこかに突き出したいのだけどプジャンの領地でそんなことをすれば目立つし、ゾロゾロと捕らえた山賊を連れて歩くわけにもいかない。
 
 大部分は倒したし武装も解除して取り上げたので今後大きな問題になることはない。

「こ、こちらです」

 山賊のリーダーに案内されて山の中を進んでいく。
 山頂からでは見えない、山が裂けて人一人がようやく通れるぐらいの入り口がある洞窟に辿り着いた。

 周りは木々が多めのところであるし、山頂から見るどころか近づかなきゃこれには気づけなかったとルフォンは思った。
 体の大きな山賊では横になってようやく入れるぐらいの裂け目に入っていく。

 覗き込むと中は空間が広がっていて洞窟になっていた。

 ヴィッツが先に中に入り、警戒をする。
 壁にかけてある松明に火をつけると中の様子が見えてきた。

「ここは……」

 先に続いている洞窟ではなく広い1つの部屋のようになっている洞窟だった。
 そして地面一面には赤紫色の葉っぱが生えている。

 イェメェンだった。
 外から見えるよりもはるかに広く感じられる洞窟の中にびっしりとイェミェンが生えていたのである。

「イェミェンを栽培していたのですか?」

 ルフォンにナイフを突きつけられて洞窟に入ってくる山賊のリーダーにヴィッツは顔を向ける。
 
「栽培ってほどじゃ……上手く育つようには手を入れましたが元々ここに生えていたものです」

「うわぁ……こんなところにあったんだ」

「自然に生えていたものなら取っていっても構いませんよね?」

「はは……どうぞお持ちください。これが取る時に使ってました手袋とカマです。よければお使いください」

 生えている状態では人に毒の影響を及ぼすものではないと言われてはいるけれど、イェミェンはそれでも猛毒の毒草である。
 本当に影響がないとは言い切れないし、長時間触って確かめた人もいないだろうから手袋をして作業を行うのは正しい判断である。

 分厚い手袋をつけたヴィッツがカマで丁寧にイェミェンを刈り取っていく。
 その間もルフォンは山賊のリーダーの後ろに立って変なことをしないように監視する。

「不思議な匂い……だけどそんなに嫌じゃないかも」

 ヴィッツがイェミェンをカマで切るとイェミェンの香りが洞窟に広がる。
 匂いだけなら爽やかで良い匂い。

 リュードがいたならシソみたいな香りだなと思ったことだろう。
 イェミェンの必要量はそれほどでもないのだけど初めて作る治療薬なので失敗する可能性もある。
 
 ギリギリの量でなく余裕を持って多めにイェミェンを採取した。

 ただこれだけの量であっても一体どれだけの人を殺せる毒薬が作れてしまうことか。

「あぁ……」

 イェミェンは育成が遅い。
 あんなにいっぺんに取るものでもないし、大切に育ててきた苦労を思うと山賊のリーダーが泣きそうな顔になる。

 イェミェンにもう関わることはないのだから気にしなければいいのに残念に思ってしまう。

「1つお聞きしたいのですがよろしくですか?」

「……なんでしょうか?」

「ここであなたたちにこんなことをさせていたのは誰ですか?」

「えっ! そ、それは……」

 黒幕がいる。
 ヴィッツはそう考えていた。

 イェミェンは知る人が少ない毒草である。
 たまたま山賊がここを見つけたとしても生えている葉っぱを見てイェミェンだと気づくはずもない。

 こんな風に手袋を用意したり、手を加えて育成を補助したりするなんてことまずしない。
 誰か知識のある人がイェミェンの育成を山賊たちにやらせているのだとヴィッツは勘づいていた。

 うっすらと予想はできるのだけれど山賊のリーダーの口から出来れば吐いていただきたい。

「う……あ……グフっ! 分かった、言う、言うから暴力はやめてくれ!」

 ヴィッツが突如として山賊のリーダーを蹴り飛ばした。
 カマを捨てて剣を抜くヴィッツを山賊のリーダーは血の気の引いた顔で見る。
 
 しかしヴィッツは口どもる山賊のリーダーに怒ったのではない。

「うぇ!?」

 山賊のリーダーがいたところに紫色の液体が落ちてきて、地面がジュワジュワと音を立てながら溶けていく。
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