217 / 550
第四章
毒草を探せ!3
しおりを挟む
「な、なんだこいつら……」
十数人もいた仲間たちが次々にやられていくことに山賊のリーダーは顔を青くした。
山賊たちは全くルフォンたちの相手にならず、気づけば残ったのはリーダーの男とルフォンたちの実力の差がわかって怖気付いてしまっていた何人かの獣人族だけであった。
ルフォンもさることながら服に返り血すらつけていないヴィッツの腕前はかなりのものである。
山賊ごときのレベルでは2人にかすり傷一つ負わせることもできなかった。
「お、お命だけはお助けください!」
最初の勢いは何処へやら、山賊のリーダーは小さくなってルフォンたちに対して平伏する。
そんなリーダーの姿を見て獣人族たちも地面に膝をつく。
人数差もあるし、相手は小娘とジジイ。
余裕で勝てると思ったのに余裕で負けてしまった。
命のためならプライドも捨ててみせる。
助かるためならなりふり構っていられない。
「イェミェンについてお教え願えますか?」
ヴィッツは剣の血を布で拭いながら山賊のリーダーに目を向けた。
「そ、それは、その……」
「命が惜しくないというのならそのまま口を閉じていても結構ですよ」
「あ、いや、イェミェンがあるところまでご案内します」
剣を首に突きつけられてあっさりと陥落した。
ルフォンとヴィッツの二人では手に余るし処理も面倒であるので降参した残りの山賊は武装を解除して解放した。
運が良ければ魔物にも会わずどこかに辿り着くだろう。
本当なら山賊であるので捕まえてどこかに突き出したいのだけどプジャンの領地でそんなことをすれば目立つし、ゾロゾロと捕らえた山賊を連れて歩くわけにもいかない。
大部分は倒したし武装も解除して取り上げたので今後大きな問題になることはない。
「こ、こちらです」
山賊のリーダーに案内されて山の中を進んでいく。
山頂からでは見えない、山が裂けて人一人がようやく通れるぐらいの入り口がある洞窟に辿り着いた。
周りは木々が多めのところであるし、山頂から見るどころか近づかなきゃこれには気づけなかったとルフォンは思った。
体の大きな山賊では横になってようやく入れるぐらいの裂け目に入っていく。
覗き込むと中は空間が広がっていて洞窟になっていた。
ヴィッツが先に中に入り、警戒をする。
壁にかけてある松明に火をつけると中の様子が見えてきた。
「ここは……」
先に続いている洞窟ではなく広い1つの部屋のようになっている洞窟だった。
そして地面一面には赤紫色の葉っぱが生えている。
イェメェンだった。
外から見えるよりもはるかに広く感じられる洞窟の中にびっしりとイェミェンが生えていたのである。
「イェミェンを栽培していたのですか?」
ルフォンにナイフを突きつけられて洞窟に入ってくる山賊のリーダーにヴィッツは顔を向ける。
「栽培ってほどじゃ……上手く育つようには手を入れましたが元々ここに生えていたものです」
「うわぁ……こんなところにあったんだ」
「自然に生えていたものなら取っていっても構いませんよね?」
「はは……どうぞお持ちください。これが取る時に使ってました手袋とカマです。よければお使いください」
生えている状態では人に毒の影響を及ぼすものではないと言われてはいるけれど、イェミェンはそれでも猛毒の毒草である。
本当に影響がないとは言い切れないし、長時間触って確かめた人もいないだろうから手袋をして作業を行うのは正しい判断である。
分厚い手袋をつけたヴィッツがカマで丁寧にイェミェンを刈り取っていく。
その間もルフォンは山賊のリーダーの後ろに立って変なことをしないように監視する。
「不思議な匂い……だけどそんなに嫌じゃないかも」
ヴィッツがイェミェンをカマで切るとイェミェンの香りが洞窟に広がる。
匂いだけなら爽やかで良い匂い。
リュードがいたならシソみたいな香りだなと思ったことだろう。
イェミェンの必要量はそれほどでもないのだけど初めて作る治療薬なので失敗する可能性もある。
ギリギリの量でなく余裕を持って多めにイェミェンを採取した。
ただこれだけの量であっても一体どれだけの人を殺せる毒薬が作れてしまうことか。
「あぁ……」
イェミェンは育成が遅い。
あんなにいっぺんに取るものでもないし、大切に育ててきた苦労を思うと山賊のリーダーが泣きそうな顔になる。
イェミェンにもう関わることはないのだから気にしなければいいのに残念に思ってしまう。
「1つお聞きしたいのですがよろしくですか?」
「……なんでしょうか?」
「ここであなたたちにこんなことをさせていたのは誰ですか?」
「えっ! そ、それは……」
黒幕がいる。
ヴィッツはそう考えていた。
イェミェンは知る人が少ない毒草である。
たまたま山賊がここを見つけたとしても生えている葉っぱを見てイェミェンだと気づくはずもない。
こんな風に手袋を用意したり、手を加えて育成を補助したりするなんてことまずしない。
誰か知識のある人がイェミェンの育成を山賊たちにやらせているのだとヴィッツは勘づいていた。
うっすらと予想はできるのだけれど山賊のリーダーの口から出来れば吐いていただきたい。
「う……あ……グフっ! 分かった、言う、言うから暴力はやめてくれ!」
ヴィッツが突如として山賊のリーダーを蹴り飛ばした。
カマを捨てて剣を抜くヴィッツを山賊のリーダーは血の気の引いた顔で見る。
しかしヴィッツは口どもる山賊のリーダーに怒ったのではない。
「うぇ!?」
山賊のリーダーがいたところに紫色の液体が落ちてきて、地面がジュワジュワと音を立てながら溶けていく。
十数人もいた仲間たちが次々にやられていくことに山賊のリーダーは顔を青くした。
山賊たちは全くルフォンたちの相手にならず、気づけば残ったのはリーダーの男とルフォンたちの実力の差がわかって怖気付いてしまっていた何人かの獣人族だけであった。
ルフォンもさることながら服に返り血すらつけていないヴィッツの腕前はかなりのものである。
山賊ごときのレベルでは2人にかすり傷一つ負わせることもできなかった。
「お、お命だけはお助けください!」
最初の勢いは何処へやら、山賊のリーダーは小さくなってルフォンたちに対して平伏する。
そんなリーダーの姿を見て獣人族たちも地面に膝をつく。
人数差もあるし、相手は小娘とジジイ。
余裕で勝てると思ったのに余裕で負けてしまった。
命のためならプライドも捨ててみせる。
助かるためならなりふり構っていられない。
「イェミェンについてお教え願えますか?」
ヴィッツは剣の血を布で拭いながら山賊のリーダーに目を向けた。
「そ、それは、その……」
「命が惜しくないというのならそのまま口を閉じていても結構ですよ」
「あ、いや、イェミェンがあるところまでご案内します」
剣を首に突きつけられてあっさりと陥落した。
ルフォンとヴィッツの二人では手に余るし処理も面倒であるので降参した残りの山賊は武装を解除して解放した。
運が良ければ魔物にも会わずどこかに辿り着くだろう。
本当なら山賊であるので捕まえてどこかに突き出したいのだけどプジャンの領地でそんなことをすれば目立つし、ゾロゾロと捕らえた山賊を連れて歩くわけにもいかない。
大部分は倒したし武装も解除して取り上げたので今後大きな問題になることはない。
「こ、こちらです」
山賊のリーダーに案内されて山の中を進んでいく。
山頂からでは見えない、山が裂けて人一人がようやく通れるぐらいの入り口がある洞窟に辿り着いた。
周りは木々が多めのところであるし、山頂から見るどころか近づかなきゃこれには気づけなかったとルフォンは思った。
体の大きな山賊では横になってようやく入れるぐらいの裂け目に入っていく。
覗き込むと中は空間が広がっていて洞窟になっていた。
ヴィッツが先に中に入り、警戒をする。
壁にかけてある松明に火をつけると中の様子が見えてきた。
「ここは……」
先に続いている洞窟ではなく広い1つの部屋のようになっている洞窟だった。
そして地面一面には赤紫色の葉っぱが生えている。
イェメェンだった。
外から見えるよりもはるかに広く感じられる洞窟の中にびっしりとイェミェンが生えていたのである。
「イェミェンを栽培していたのですか?」
ルフォンにナイフを突きつけられて洞窟に入ってくる山賊のリーダーにヴィッツは顔を向ける。
「栽培ってほどじゃ……上手く育つようには手を入れましたが元々ここに生えていたものです」
「うわぁ……こんなところにあったんだ」
「自然に生えていたものなら取っていっても構いませんよね?」
「はは……どうぞお持ちください。これが取る時に使ってました手袋とカマです。よければお使いください」
生えている状態では人に毒の影響を及ぼすものではないと言われてはいるけれど、イェミェンはそれでも猛毒の毒草である。
本当に影響がないとは言い切れないし、長時間触って確かめた人もいないだろうから手袋をして作業を行うのは正しい判断である。
分厚い手袋をつけたヴィッツがカマで丁寧にイェミェンを刈り取っていく。
その間もルフォンは山賊のリーダーの後ろに立って変なことをしないように監視する。
「不思議な匂い……だけどそんなに嫌じゃないかも」
ヴィッツがイェミェンをカマで切るとイェミェンの香りが洞窟に広がる。
匂いだけなら爽やかで良い匂い。
リュードがいたならシソみたいな香りだなと思ったことだろう。
イェミェンの必要量はそれほどでもないのだけど初めて作る治療薬なので失敗する可能性もある。
ギリギリの量でなく余裕を持って多めにイェミェンを採取した。
ただこれだけの量であっても一体どれだけの人を殺せる毒薬が作れてしまうことか。
「あぁ……」
イェミェンは育成が遅い。
あんなにいっぺんに取るものでもないし、大切に育ててきた苦労を思うと山賊のリーダーが泣きそうな顔になる。
イェミェンにもう関わることはないのだから気にしなければいいのに残念に思ってしまう。
「1つお聞きしたいのですがよろしくですか?」
「……なんでしょうか?」
「ここであなたたちにこんなことをさせていたのは誰ですか?」
「えっ! そ、それは……」
黒幕がいる。
ヴィッツはそう考えていた。
イェミェンは知る人が少ない毒草である。
たまたま山賊がここを見つけたとしても生えている葉っぱを見てイェミェンだと気づくはずもない。
こんな風に手袋を用意したり、手を加えて育成を補助したりするなんてことまずしない。
誰か知識のある人がイェミェンの育成を山賊たちにやらせているのだとヴィッツは勘づいていた。
うっすらと予想はできるのだけれど山賊のリーダーの口から出来れば吐いていただきたい。
「う……あ……グフっ! 分かった、言う、言うから暴力はやめてくれ!」
ヴィッツが突如として山賊のリーダーを蹴り飛ばした。
カマを捨てて剣を抜くヴィッツを山賊のリーダーは血の気の引いた顔で見る。
しかしヴィッツは口どもる山賊のリーダーに怒ったのではない。
「うぇ!?」
山賊のリーダーがいたところに紫色の液体が落ちてきて、地面がジュワジュワと音を立てながら溶けていく。
31
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
タイム連打ってなんだよ(困惑)
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」
王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。
パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。
アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。
「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」
目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?
※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。
『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる